ジロ・デ・イタリア開幕当日、ガゼッタ・デッロ・スポルト紙は巻頭に10ページも割いてジロ特集を行なった。デンマークで開幕した昨年よりもずっと扱いが大きい。「何かトラブルが起こりそうな」ナポリだけに注目度は大きい。

前日のチームプレゼンテーション会場プレビシート広場がスタート地点前日のチームプレゼンテーション会場プレビシート広場がスタート地点 photo:Kei Tsuji
どこか懐かしさを感じさせるファビオ・フェリーネ(イタリア、アンドローニジョカトリ)どこか懐かしさを感じさせるファビオ・フェリーネ(イタリア、アンドローニジョカトリ) photo:Kei Tsuji大いに盛り上がるフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)とダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム)大いに盛り上がるフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)とダニエル・オス(イタリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji

今年のジロには、31カ国の選手たちが集まった。この31カ国という数字はジロ史上最多で、主催者のプレスリリースには「史上最も国際的なジロ」という文字が踊る。国別で見ると、最も多いのは当然イタリア人で58名。続いてオランダ17名、スペイン16名、コロンビア15名、ベルギー15名、フランス13名、オーストラリア10名、ロシア8名、イギリス6名、ドイツ5名、アメリカ5名、カナダ4名、ポルトガル4名…など。4年ぶりに日本人選手がいないジロが始まる。中国出身のジ・チェン(アルゴス・シマノ)が出場しているため、レース会場で中国人と間違われる確率が10倍ぐらい増した(当社比)。

出場選手の平均年齢が最も低いチームはバルディアーニで、平均24歳4ヶ月。逆にエウスカルテルは最も高く、平均32歳1ヶ月。最年長は今年7月に40歳の誕生日を迎えるステファノ・ガルゼッリ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)だ。ちなみにイタリア人選手58名のうち、17名がヴェネトの名門アマチュアチーム「ザルフ」出身。

なお、2010年の落車事故で亡くなったワウテル・ウェイラント(ベルギー)がつけていた108番は今年も欠番。今年はFDJが100番台を付けており、繰り上げでナセル・ブアニ(フランス)が100番を付けている(本来なら101番)。

ナポリの海側に作られた市街地サーキットナポリの海側に作られた市街地サーキット photo:Kei Tsuji
カステル・デッローヴォ(卵城)とプロトンカステル・デッローヴォ(卵城)とプロトン photo:Kei Tsuji
ジロの開幕前から「ナポリではくれぐれも用心するように。身の回りのものはもちろん、車上荒らしには気をつけろ。運転もむちゃくちゃだから。コントロールされていない世界だ」と、何度も何度もイタリア人から忠告を受けて来た。

確かに、日本人の一般的な感覚で言うと、交通事情は驚くほど悪い。車線なんてあってないようなもの。クラクションはひっきりなしに鳴っている。僅かな車の隙間を縫うようにバイクが左右から飛んでくる。全ての車の方向指示器が壊れているんじゃないかと思うときもある。赤信号でも平気な顔して突っ込んでくる。

でも全般的に車両の間合いの取り方が上手いので、そこまで運転しにくいとは思わない。他車の動きを把握しながら間合いが取っているので、信号機が無くても事故が起こらない。ルールで縛らずに、人と人との間にコミュニケーションの余地が残されている。信号機を増やせば、きっと信号機に頼りがちになって周りが見えなくなり、間合いが取れなくなり、事故が起こるという悪循環に陥る。話がそれたものの、どれだけナポリらしい刺激的なトラブルが連発しても、ピッツァや魚介類、コーヒーがとにかく美味しいので全て許せてしまう。

プロトンの登場に大興奮プロトンの登場に大興奮 photo:Kei Tsuji本人はもみあげをすっかり剃ってしまったが、やっぱりウィギンズといえばもみあげ本人はもみあげをすっかり剃ってしまったが、やっぱりウィギンズといえばもみあげ photo:Kei Tsuji

オメガファーマ・クイックステップがメイン集団を率いるオメガファーマ・クイックステップがメイン集団を率いる photo:Kei Tsuji
そんな刺激的なナポリの街を第1ステージは走る。おそらく主催者は路面状況の良い道路をコースに指定したのだと思う。それでもトラムの線路が道路を斜めに横切っていたり、パリ〜ルーベ並に荒れたパヴェがあったり、アスファルトで油断していると突如穴が出現したり、マンホールが陥没していたり…。ナポリ市内は決して快適に走れない。主催者が発表した難易度は一つ星だが、路面を考えると三つ星ぐらい与えてもいいんじゃないかと思うほどの危険度。ただでさえ落車が起きやすいステージレースの初日にナポリはキツイ。

そして案の定レース序盤から落車が多発した。少しでも落車のリスクを避けるために、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、スカイプロサイクリング)は常に集団前方にいる。マリアローザを狙うためには、初日から転ぶわけにはいかない。気温30度の暑さで滲んだ汗と、道路から巻き上がった埃と煤が混ざりあい、肌はどことなく黒くなっている。ゴールし終えた選手たちの顔には、難関山岳ステージでも走った後のような疲労の色が浮かんでいた。

コースに関する選手たちからの批判的な声はあったものの、ナポリでの第1ステージは無事に終わった。翌日、ジロはナポリの沖合に浮かぶイスキア島に渡る。選手たちは朝8時のフェリーで、報道陣は朝10時のフェリーでイスキア島に向かう。慌ただしくも、3週間のジロが始まった。

スピード勝負を繰り広げながら最終周回に入るプロトンスピード勝負を繰り広げながら最終周回に入るプロトン photo:Kei Tsuji
シャンパンを開けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)シャンパンを開けるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ゴール後のシャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング)ゴール後のシャビエル・ザンディオ(スペイン、スカイプロサイクリング) photo:Kei Tsuji

text&photo:Kei Tsuji in Napoli, Italy
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