逃げグループから飛び出して逃げ続けた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)も、ラスト10kmを切って吸収。ツアー・オブ・ターキー(UCI2.HC)第2ステージは大集団によるゴールスプリントに持ち込まれると思われたが、ラスト600mで発生した落車がスプリンターの明暗を分けた。



レミ・ポリオル(フランス、ソジャサン)とスタートに向かう別府史之(オリカ・グリーンエッジ)レミ・ポリオル(フランス、ソジャサン)とスタートに向かう別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji前夜は停電を伴う雷雨に見舞われたが、レース当日の朝は晴れ。気温が20度を少し上回るぐらいで実に過ごしやすい。観光客向けの遊覧船が多く停泊するアランヤの港の前で、第2ステージのスタートが切られた。

佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)が逃げに乗る佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)が逃げに乗る photo:Kei Tsuji初日の第1ステージで大柄な選手を揃えるブランコプロサイクリングやアルゴス・シマノに圧倒された佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)は逃げへの執念を燃やしていた。エーススプリンターのフランチェスコ・キッキ(イタリア)の調子が思わしくないことで、チームとして逃げに選手を送り込む考え。そして佐野はそれを実行へと移した。

アルゴス・シマノがメイン集団をコントロールし続けるアルゴス・シマノがメイン集団をコントロールし続ける photo:Kei Tsuji5km地点で逃げに乗ったのは、こんがりと焼けた肌と蛍光イエロージャージのコントラストが眩しい佐野。ファブリシオ・フェラーリ(ウルグアイ、カハルーラル)ら5名と逃げた佐野は「今日は早めにアタックに反応するようにしました。集団が緩んだタイミングで自分からアタックして4人で抜け出し、そこに2人が合流。スプリントポイントを除いて、逃げグループはみな協力的でした」と話す。6人での逃げが始まった。

第2ステージはアランヤから地中海に沿って西に向かい、トルコ南部の大都市アンタルヤに至る150km。ロシアやドイツ、オランダ、イギリスからの観光客で溢れるリゾート地を駆け抜ける。1km毎に巨大なリゾートホテルが立ち並ぶ幹線道路がコースの大部分を占める。

美しいコースとは裏腹に、欧米と比べてその路面は荒い。観光客が多い地域や幹線道路のアスファルトは滑らかだが、地方の舗装は凸凹。小石が混ざっているというよりは、小石が全体に敷かれているような舗装だ。

絶えず振動があるため、実際の距離以上に疲労を伴うと選手たちは言う。凸凹舗装対策として太いタイヤを使用するチームも多い。サクソ・ティンコフやオメガファーマ・クイックステップはFMBパリ〜ルーベの25mmチューブラーを常時使用している。

晴れ渡るトルコ南部の街を抜ける晴れ渡るトルコ南部の街を抜ける photo:Kei Tsuji
アルゴス・シマノがコントロールするメイン集団アルゴス・シマノがコントロールするメイン集団 photo:Kei Tsujiトルコ国旗が沿道で踊るトルコ国旗が沿道で踊る photo:Kei Tsuji

仲良く話しながら走る別府史之(オリカ・グリーンエッジ)と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)仲良く話しながら走る別府史之(オリカ・グリーンエッジ)と宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsujiやがて佐野を含む6名の逃げが6分20秒のリードを稼ぎ出すと、ターコイズブルーのリーダージャージを擁するアルゴス・シマノが集団の先頭に立ってコントロールを開始する。今大会唯一中国から参戦しているジ・チェン(アルゴス・シマノ)は「他のチームが協力するだろうから、そんなに厳しい一日にはならない」と話していたが、実質的にアルゴス・シマノのみがメイン集団をコントロールする状況。

アルゴス・シマノが率いるメイン集団アルゴス・シマノが率いるメイン集団 photo:Kei Tsuji逃げる佐野は時折チームカーに下がって監督と言葉を交わしながら6人のペースをコントロールする。ラスト25kmでタイム差は1分30秒。幅広で直線的なコースは完全に大集団に味方する。タイム差が1分を割り込むと、ラスト17kmで佐野が先頭グループからアタックした。

平坦路を逃げ続ける佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)平坦路を逃げ続ける佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji佐野はビッグギアを踏んでしばらく独走したが、スプリンターチームの勢いには敵わない。「はじめにブルターニュの選手がアタックし、吸収後に自分がアタック。ソジャサンとコロンビアの選手が付いてきましたが、みんな力が残ってなかった。風が終始吹いていて、きつく感じました」と、ラスト10kmを切って吸収された佐野は語る。140km逃げた佐野は、すっきりとした表情でゴールした。

逃げが吸収されるとスプリンターチームがポジションを争いながらペースアップを開始。オメガファーマ・クイックステップやブランコプロサイクリングが集団をリードしながらアンタルヤの街を抜けてラスト1km。すると2番手を走っていたマーク・レンショー(オーストラリア、ブランコプロサイクリング)が突如バランスを崩して落車した。

ラスト600mで発生したこの落車には、レンショーのすぐ後ろを走っていたテオ・ボス(オランダ、ブランコプロサイクリング)や、クーン・デコルト(オランダ)の力を借りて集団先頭に上がったマルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)らが突っ込み、後続の選手たちも止まりきれずに重なりあって行く。道路は完全に塞がれた。

チームメイトとともに隊列を組んでスプリンターを守り、仕事を終えて少し番手を下げていた別府史之(オリカ・グリーンエッジ)は「選手が四段重ねになっていた。あんな落車は初めてみた」と言う。

佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)らの後ろにメイン集団が迫る佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)らの後ろにメイン集団が迫る photo:Kei Tsuji
しばらく単独で逃げ続ける佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)しばらく単独で逃げ続ける佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji隊列を組んで集団先頭にでるオリカ・グリーンエッジ隊列を組んで集団先頭にでるオリカ・グリーンエッジ photo:Kei Tsuji

落車によってバラバラになった集団でのスプリントで勝利したアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)落車によってバラバラになった集団でのスプリントで勝利したアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiスピードダウンすることなくこの落車を免れたのは僅かに数名で、先頭に躍り出たマルコ・コレダン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)がラスト400mから一気にスパート。しかし、徐々にスピードを失ったコレダンを抜き去ったクルオピスが勝利した。

優勝したクルオピスと讃えあう別府史之(オリカ・グリーンエッジ)優勝したクルオピスと讃えあう別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji「落車を何とか免れた時点で、自分の前には5人の選手がいた。そこからスプリントを開始して一人一人捕まえ、ゴール前で最後の一人を追い抜いた。落車しなかったのは運とスキルのおかげ。そしてリー(ハワード)をはじめとするチームメイトたちのおかげだ」。26歳のリトアニア出身スプリンターは、ステージ41位でゴールした別府史之らと抱き合って勝利を喜んだ。

ゴール後、悔しい表情を浮かべる宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)ゴール後、悔しい表情を浮かべる宮澤崇史(サクソ・ティンコフ) photo:Kei Tsuji落車がラスト3km以内で発生したため、足止めを食らって遅れた選手もステージ優勝者と同タイム扱いに。前日のステージ2位に続いてステージ3位に入ったグライペルがボーナスタイムによって総合首位に立っている。

落車の原因となったレンショーは鎖骨骨折と歯の欠損。グライペルのリードアウト役を担っていたヨナス・ファンヘネヒテン(ベルギー、ロット・ベリソル)は鎖骨脱臼。ともにレースを去ることが決まっている。ボスはハムストリングスの負傷で、レースを続行するかは翌日決める。

この日もキャントウェルのリードアウト役を務めた宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)は89位。「残り2kmでジョニー(キャントウェル)とジョインしたが、既に前に出るには不利な位置になってしまい、最終コーナーでは30番手ほど。そこから前に上がって行くも、集団前方で落車が起こり集団はストップした」。

「上手く噛み合わない」と歯がゆい表情を浮かべる宮澤。「明日からは山岳ステージ。この大会では後半のスプリントステージに勝負をしたいので、明日はアシストに徹する」。翌日の第3ステージは標高1850mの1級山岳ゴグベリにゴールするクイーンステージであり、どのチームも戦略を入れ替える。

140kmにわたって逃げた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)140kmにわたって逃げた佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiグライペルとコレダンをおさえて表彰台の真ん中に立つアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)グライペルとコレダンをおさえて表彰台の真ん中に立つアイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji


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ツアー・オブ・ターキー2013第2ステージ結果
1位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)         3h23'54"
2位 マルコ・コレダン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)
4位 セルゲイ・グレチン(ウクライナ、トルクセケルスポール)
5位 アレクサンドル・ポルセフ(ロシア、カチューシャ)
6位 リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ビセンテ・レイネス(スペイン、ロット・ベリソル)
8位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
9位 マテウス・ノワク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
10位 フィリッポ・フォルティン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
41位 別府史之(オリカ・グリーンエッジ)
89位 宮澤崇史(サクソ・ティンコフ)
177位 佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)

個人総合成績
1位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)               6h32'21"
2位 アイディス・クルオピス(リトアニア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、アルゴス・シマノ)
4位 マルコ・コレダン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)    +04"
5位 ユーリ・メトルシェンコ(ウクライナ、トルクセケルスポール)            +06"
6位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)           +10"
7位 リー・ハワード(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
8位 フィリッポ・フォルティン(イタリア、バルディアーニヴァルヴォーレ・CSFイノックス)
9位 グジェゴシ・ステプニャク(ポーランド、CCCポルサットポルコウィチェ)
10位 バティスト・プランカールト(ベルギー、クレラン・ユーフォニー)

ポイント賞
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)

山岳賞
ムスタファ・サヤル(トルコ、トルクセケルスポール)

ターキッシュビューティースプリント賞
アフメット・オルケン(チュニジア、トルクセケルスポール)

text&photo:Kei Tsuji in Antalya, Turkey

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