7月4日(土)にモナコ公国で幕が開く第96回ツール・ド・フランス。3週間に渡って繰り広げられるこの世界最高峰レースの総走行距離は3500kmに及ぶ。選手たちを待ち構えるのは、ピレネーやアルプスの厳しい山々だ。

第96回ツール・ド・フランス概要

第96回ツール・ド・フランス全体図第96回ツール・ド・フランス全体図 image:A.S.O.開催期間:7月4日(土)〜26日(日)
通過国:フランス、モナコ、スペイン、アンドラ、スイス、イタリア
出場チーム:20チーム(プロツアー17チーム)

ステージ数:21
総走行距離:3445km
1ステージ平均距離:164km
休息日:2

平坦ステージ:10
上級山岳ステージ:7
中級山岳ステージ:1
個人タイムトライアル:2
チームタイムトライアル:1
頂上ゴール:3

グランデパールはモナコ公国

第1ステージはF1モナコGPと同じアルベール1世通りをスタート第1ステージはF1モナコGPと同じアルベール1世通りをスタート photo:A.S.O.今年のグランデパール(全体のスタート地点)はフランス南部コートダジュールに位置する小国、世界のセレブが集まるモナコ公国。初日は個人タイムトライアル(以下TT)で、スタート&ゴール地点はF1モナコGPのそれと同じ場所。上りを含むこのテクニカルな15.5kmが最初のマイヨジョーヌ着用者を選び出す。

翌日モナコを脱すると、ツールは一路スペインに向かって西進を始める。今大会「平坦ステージ」に区分されているのは10ステージで、そのうちスプリンター向きと見られているのは8ステージ。序盤の平坦ステージでスプリンターたちは早速熱いバトルを繰り広げるだろう。

第4ステージは2005年以来4年ぶりに復活したチームタイムトライアル。実際のタイム差がそのまま総合成績に反映される方式に戻されたため、距離は39kmと短めだ。レースは第6ステージでスペインに入国し、バルセロナでの上りスプリントで序盤の平坦シリーズが終了する。


アンドラ・アルカリスが前半戦の山場

1997年にアンドラ・アルカリスを制したヤン・ウルリッヒ(ドイツ)、同年ツール総合優勝1997年にアンドラ・アルカリスを制したヤン・ウルリッヒ(ドイツ)、同年ツール総合優勝 photo:Cor Vos今年のツールは全部で6カ国を通過する。初日から順に追うと、モナコ→フランス→スペイン→アンドラ→フランス→スイス→イタリア→フランス。つまりアルプスの前にピレネー山脈が登場する。

今大会には3つの頂上ゴールが設定されており、ピレネー初日の第7ステージで早速一つ目の難所が登場する。標高2240mのスキーリゾート地、アンドラのアルカリスに至るカテゴリー超級の上りだ。登坂距離10.6km・平均勾配7.1%のこの上りが、ツール前半戦のクライマックス。総合成績はこの上りで大きな打撃を受けるだろう。

アルカリス終了後、1級山岳アニエス峠や超級トゥールマレー峠が登場するピレネーの2ステージを経て、ツールは1回目の休息日を迎える。選手たちは休むまもなく空路でフランス中部へと移動する。


アルプス山岳で加熱する総合争い

難関第17ステージで通過するロズラン峠難関第17ステージで通過するロズラン峠 photo:Cor Vosピレネーからアルプスまでの、いわゆる“つなぎステージ”は、コルマールにゴールする第13ステージを除いて、平坦なコースレイアウト。この頃にはマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)争いも白熱しているだろう。

そしてツールは16日目にしてアルプス山脈に突入する。スイスに入国する第15ステージは、標高1468mに位置するスイスアルプス有数のスキーリゾート、1級山岳ヴェルビエの頂上ゴール。ツール・ド・スイスでお馴染みのこの山岳は、登坂距離8.8kmで平均勾配7.5%。他の超級頂上ゴールと比べると難易度は低いが、この日を境にマイヨジョーヌ争いは加熱していくだろう。

大会2回目の休息日を挟み、第16ステージは今大会の最高地点、超級山岳グラン・サン・ベルナール峠を越えてイタリアに入国し、続いて1級山岳プティ・サン・ベルナール峠を越えてフランスへ。この大小2つのサン・ベルナール峠では、総合争いだけでなく壮大なパノラマにも注目したい。

その後もアルプスの山々は容赦なく選手たちを襲う。難易度の高いロズラン、セジエー峠、アラシュ峠、ロム峠、コロンビエール峠を越える第17ステージは、アルプス最後の試練。このアルプス3連戦で総合成績は大きく変動するだろう。しかしまだマイヨジョーヌ争いは決着しない。


総合争いはモンヴァントゥーで決着

総合争いは禿げ山モンヴァントゥーで決着総合争いは禿げ山モンヴァントゥーで決着 photo:Cor Vosアルプスで消耗した選手たちを待っているのは、アヌシーで行なわれる40.5kmの個人TT。今年の個人TTの合計距離は、初日のモナコと合わせても55kmと短めだ。

マイヨジョーヌ争いの最後を締めくくるのが、第20ステージ、カテゴリー超級の「死の山」モンヴァントゥーの頂上ゴール。最終日前日にこの難所を組み込んだことが、コース発表時から大きな話題となった。地中海を望むこの奇抜な単独峰が、第96代目チャンピオンを選び出す。最後の最後に大逆転劇も起こりうる。ラスト1kmまで先が読めない混沌としたマイヨジョーヌ争いに持ち込まれるかもしれない。

最終日は例年通りパリに帰着。シャンゼリゼ通りで最後のスプリントバトルが繰り広げられ、3週間の闘いに幕が降ろされる。総走行距離は3445km。今年も世界最高峰レースに相応しい舞台は整った。



詳しいステージ説明は以下のコース紹介(前編・後編)をご覧下さい。
コース紹介前編・第1〜11ステージ
コース紹介後編・第12〜21ステージ