2013年2月21日、18回目の開催となるツール・ド・ランカウイ(2.HC)がマレーシアで開幕する。春先に開催されるアジア最高峰のステージレースとして、世界のレースシーンに定着。優れたレース運営や寒いヨーロッパとは対照的な温暖な気候から、たくさんの有力チームが今年も赤道近くのランカウイ島へとやってきた。

キャメロン&ゲンティン、2つの山頂ゴールが勝負の要!

2011年のキャメロンハイランドで上りスプリントを制した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)2011年のキャメロンハイランドで上りスプリントを制した綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) photo:Yuko Sato今年のツール・ド・ランカウイは2つの超級山岳ステージを含む、全10ステージで熱戦が繰り広げられる。マレー半島を駆け抜けるコースは毎年大きく変わるが、ツール・ド・フランスでいうラルプ・デュエズのような“お決まり”のステージがいくつかある。それが、今年は第3ステージに組み込まれたキャメロンハイランドと第5ステージのゲンティンハイランド、2つの超級山岳だ。

昨年はゲンティンハイランドのみ登場し、そこがクイーンステージとなったが、今年はキャメロンハイランドと2つの超級山頂フィニッシュが組み込まれる形となり、勝負2012年、雨のゲンティンハイランドにゴールするホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ)2012年、雨のゲンティンハイランドにゴールするホセ・セルパ(コロンビア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Sonoko Tanakaはより盛り上がりを見せるだろう。このコース設定は、2年前のものと似ており、そのときはキャメロンハイランドで綾部勇成(愛三工業レーシング)が小集団でのスプリントを制し、暫定リーダーとなってイエロージャージを獲得、続くゲンティンハイランドでは、ジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、2011年当時アンドローニ・ジョカトリ)が勝利し、結果的に彼が総合優勝を果たした。今年もここが総合優勝を決めるクイーンステージとなるだろう。

レースはその名前の通り、マレーシア北西部に位置するランカウイ島で幕開けする。が、しかし、ランカウイ島で開催されるのは事前イベントであるチームプレゼンテーションのみ。開幕前日にプレゼンテーションを行い、一行はフェリーでマレーシア本土に上陸、そして第1ステージが始まる形となる。

テレビ中継のためのヘリコプターが舞う中で開催されたチームプレゼンテーションテレビ中継のためのヘリコプターが舞う中で開催されたチームプレゼンテーション photo : Sonoko Tanaka
チームプレゼンテーションを終えて、フェリーに乗ってランカウイ島からマレーシア本土をめざすチームプレゼンテーションを終えて、フェリーに乗ってランカウイ島からマレーシア本土をめざす photo : Sonoko Tanaka新しいチームでシーズンを迎えたオスカル・プジョルとビクター・セリス(スペイン、RTSレーシング)がフェリーの操縦席に座る新しいチームでシーズンを迎えたオスカル・プジョルとビクター・セリス(スペイン、RTSレーシング)がフェリーの操縦席に座る photo : Sonoko Tanaka

山岳ステージの第3、第5ステージ以外は基本的に平坦基調。ステージ優勝をかけたゴールスプリントが予想されるが、毎年果敢に逃げる選手たちも多くいる。第6ステージに組み込まれる連続する小さな上りや、マレーシア特有の激しいスコールが、そんなアタッカーたちの味方になるかもしれない。

ツール・ド・ランカウイ2013コースマップツール・ド・ランカウイ2013コースマップ photo : Le Tour De Langkawi2013そしてレースはマレー半島の東海岸へと移動し、マレーシアでもっとも自転車熱の高い街・クアラトレンガヌ近郊で最後の3ステージは開催される。全走行距離は1,469km、名実ともにアジア最高峰の戦いが繰り広げられる。

ツール・ド・ランカウイ2013 ステージリスト
第1ステージ 2月21日 カンガー〜クリム
第2ステージ 2月22日 セルダン〜クアラカンサール
第3ステージ 2月23日 スンガイシィプット〜キャメロンハイランド
第4ステージ 2月24日 タパ〜カパール
第5ステージ 2月25日 シャーラム〜ゲンティンハイランド
第6ステージ 2月26日 メンタカ〜クァンタン
第7ステージ 2月27日 クァンタン〜ドゥングン
第8ステージ 2月28日 クアラトレンガヌ〜タナメラ
第9ステージ 3月1日 パシプティ〜クアラバラン
第10ステージ 3月2日 タシクニャル〜クアラトレンガヌ




ツール・ド・ランカウイ初参戦となるオメガファーマ・クイックステップツール・ド・ランカウイ初参戦となるオメガファーマ・クイックステップ photo : Sonoko Tanaka5つのUCIプロチームと日本人11選手が出場

年々豪華になる出場チーム。今年はオメガファーマ・クイックステップやオリカ・グリーンエッジ、ガーミン・シャープなど5つにまで増えたUCIプロチームと、6つのプロコンチネンタルチームを含む全22チーム、132選手がスタートリストに名前を連ねた。参加選手の国籍数は30、なんともインターナショナルな選手構成になっている。

日本からは、先日発表されたUCIフィクティショスランキング(所属選手のUCIポイントにUCIのチーム評価が加えられたランキング)でアジアツアー3位に入り、全アジア4回目の出場でステージ優勝をめざす愛三工業レーシング4回目の出場でステージ優勝をめざす愛三工業レーシング photo : Sonoko Tanakaツアーレース(HC以外)への自動招待権を得た愛三工業レーシングチーム、さらに同ランキング6位、昨季のポイントランキングでアジアツアー4位につけたチームNIPPO・デローザの2チームが出場する。

愛三工業レーシングチームは、今回で4年連続の出場となる。2010年に西谷泰治がゴールスプリントで、2011年に綾部勇成が超級山岳でステージ優勝を挙げており、アジアを代表する強豪チームとして現体制では初参戦となるチームNIPPO・デローザ現体制では初参戦となるチームNIPPO・デローザ photo : Sonoko Tanaka知名度が高い。今年もステージ優勝をめざして、シーズン初戦ながら、もっとも難易度の高いレースに挑む。

一方のチームNIPPO・デローザは初出場ながら、何度もツール・ド・ランカウイを走った経験があるフォルッナート・バリアーニ(イタリア)と若手のジュリアン・アレドンド(コロンビア)、2人のクライマーが総合上位をめざす。そしてマッシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)と新加入の福島晋一がステージ優勝を狙いにいく。鹿屋体育大学に在学中の石橋学と徳田鍛造も初めてプロチームの一員として参戦する。

また新城幸也(ユーロップカー)や、新チームに移籍したばかりの佐野淳哉(ヴィーニファンティーニ)も参戦し、日本人選手は合計11名、豪華な顔ぶれが揃った。


一昨年の総合優勝者ジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ)がランカウイに戻ってきた一昨年の総合優勝者ジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ)がランカウイに戻ってきた photo : Sonoko Tanaka世界中から集まったビッグネームたち

やはりキャメロンハイランドとゲンティンハイランド、この2つの超級山岳を制した選手がイエロージャージを手にすることになるだろう。優勝候補は、2011年の総合優勝者ジョナサン・モンサルベ(ベネズエラ、ヴィーニファンティーニ)を筆頭に、ピエール・ローラン(フランス、ユーロップカー)、アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ)、2011年ジャパンカップ覇者ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)、オーストラリアチャンピオンのルーク・ダーブリッジ(オリカ・グリーンエッジ)らが挙げられ、アジアツアーで活躍するクライマー、ジョン・アブセン(デン新城幸也のチームユーロップカー。ピエール・ローラン(フランス)の総合優勝をめざす新城幸也のチームユーロップカー。ピエール・ローラン(フランス)の総合優勝をめざす photo : Sonoko Tanakaマーク、シナジー・バク)やオスカル・プジョル(スペイン、RTSレーシング)らの走りも楽しみだ。

そして今年は強豪スプリンターが多くエントリーしているのも特徴的。ミスターランカウイと呼ばれ、すでに本大会でステージ11勝を挙げているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、スティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)、アラン・デーヴィス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、テオ・ボス(オランダ、ブランコプロサイクリング)、フランチェスコ・キッキ(イタリア、ヴィーニファンティーニ)らに、アジアからも西谷泰治(愛三工業レーシング)、アヌアール・マナン(マレーシア、シナすでに本大会11勝を挙げているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、UCIプロチームでの1勝目を挙げたいと話すすでに本大会11勝を挙げているアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)、UCIプロチームでの1勝目を挙げたいと話す photo : Sonoko TANAKAジー・バク)、メディ・ソウラビ(イラン、タブリーズ)、ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌ)と、名前を挙げ始めたらきりがないくらいのメンバーが揃った。ほぼすべての主要チームにスプリンターがいるため、ゴールスプリントは非常にハイレベルなものとなるだろう。

UCIプロチームを迎え撃つアジアの強豪チーム。この勢力図が言うまでもなくツール・ド・ランカウイの魅力となるが、この大会はヨーロッパとアジアの架け橋となるとても有意義なもので、いろんなチャンスを秘めている。明日から始まる熱戦を楽しみにしたい。


photo & text : Sonoko Tanaka in Langkawi

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