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アンカーのカーボンバイクでベストセラーとなっているのがRFX8シリーズだ。この「RFX8エキップ」は、シリーズのセカンドグレード。シマノ・105のコンポを搭載した完成車が26万5000円で、フルカーボンモデルとしては手が届きやすい内容だ。しかもフレーム重量は1000g(480㎜サイズ)で、これはアンカーのカーボンフレームで最も軽量に仕上げられる。ラインナップにおける位置づけも、RMZやRHM9RSといったレーシングバイクよりも快適性を高めた剛性とジオメトリーの採用により、特にロングライドやヒルクライムといった用途が狙われている。

アンカー RFX8 Equipeアンカー RFX8 Equipe
フレーム形状はレーシングモデルと比べると快適性を目指して全体のボリュームをやや抑えた印象。とはいえフォークはRHM9と同じ。特徴的なヘッドチューブの補強、ドラゴンクローヘッドもまた踏襲している。このあたりはハンドリングやブレーキングの正確性、ダンシングにおける軽さを目指したもの。コンフォートモデルでもフロントまわりの確実な剛性は、ライダーに操作性の安心感と走りの軽快感を与えるための要素として、レーシングモデルの設計を踏襲しているのだろう。

上下のヘッドペアリングはオーソドックスな1-1/8インチを採用するものの、側面にリブのあるドラゴンクローヘッドをRHM9シリーズから受け継ぎ、ヘッド部のねじれ剛性を高めている上下のヘッドペアリングはオーソドックスな1-1/8インチを採用するものの、側面にリブのあるドラゴンクローヘッドをRHM9シリーズから受け継ぎ、ヘッド部のねじれ剛性を高めている フロントフォークもまたRHM9シリーズから受け継ぐ。ブレードの外側にリブを設けてねじれ剛性が高められている。ブレードはアールを描くタイプで振動吸収性に配慮した仕様だフロントフォークもまたRHM9シリーズから受け継ぐ。ブレードの外側にリブを設けてねじれ剛性が高められている。ブレードはアールを描くタイプで振動吸収性に配慮した仕様だ モノステータイプのシートステーは、路面からの高い振動吸収性を確保するためにレーシングモデルと比べると細身に設計されている。フレーム構造は3ピースモノコックを採用しているモノステータイプのシートステーは、路面からの高い振動吸収性を確保するためにレーシングモデルと比べると細身に設計されている。フレーム構造は3ピースモノコックを採用している

快適性という面では、まずBB周辺の剛性が挙げられる。高剛性のモデルでは、特に一般のライダーの場合、重いギヤを踏んだ時に脚がはねのけられるような印象を持つこともある。RFX8ではこうしたライダーの脚質と急激なスピード変化の少ない走行用途に合わせ、BB部分の剛性をRHM9シリーズに比べて20%ほど抑えて乗りやすい剛性感を演出している。数値だけを聞くと単に柔らかいだけに聞こえるが、そこはアンカーの最適構造解析技術を駆使して最適な剛性バランスによる軽い走りが追求される。脚質がマッチすればある程度高い実力を持つライダーの走りにも対応してくれる。

BBシェルはオーソドックスなスレッドタイプ。チェーンステーはRHM9シリーズと同じようにBB側を角断面に整形して剛性を高めている。リヤエンドに向かって徐々に丸断面に変化するBBシェルはオーソドックスなスレッドタイプ。チェーンステーはRHM9シリーズと同じようにBB側を角断面に整形して剛性を高めている。リヤエンドに向かって徐々に丸断面に変化する チェーンステーとシートステーは内側方向にベンド加工が施され、乗り心地と剛性がバランスされる。リヤエンド部分を幅広に設計することでリヤハブ近くでのねじれ剛性を高めているチェーンステーとシートステーは内側方向にベンド加工が施され、乗り心地と剛性がバランスされる。リヤエンド部分を幅広に設計することでリヤハブ近くでのねじれ剛性を高めている

振動吸収性の向上もロングライドでは大きなテーマだ。これはフレームのアッパーラインの形状に見てとれる。トップチューブは横扁平を強調して整形され、さらにシートステーのボリュームも抑えられる。また、トップチューブとシートステーの接合部を流れるように成型しているのも高い振動吸収性を実現するひとつの要素と言えるだろう。

そしてジオメトリーも快適な走りを生み出す要素のひとつ。これはヘッドチューブをレーシングモデルに比べて10㎜ほど長く設計して対応している。これによりアップライトなポジションを実現しやすくなり、ヒルクライムでは呼吸のしやすさにつながり、ロングライドではその高い振動吸収性と相まって肩や腰、そして首の疲れを軽減してくれるに違いない。

BBシェルの横幅いっぱいに近い状態に広げられたダウンチューブの接合部。最適なペダリングフィールを演出する要素のひとつ。ダウンチューブ裏側にもグラフィックが施されているBBシェルの横幅いっぱいに近い状態に広げられたダウンチューブの接合部。最適なペダリングフィールを演出する要素のひとつ。ダウンチューブ裏側にもグラフィックが施されている ドラゴンクローヘッドの一部となるヘッド側を菱形断面に整形したダウンチューブは、BBに向かって徐々に横方向に広がり、三角断面に近い形に変形してヘッドとBB部分の剛性を両立するドラゴンクローヘッドの一部となるヘッド側を菱形断面に整形したダウンチューブは、BBに向かって徐々に横方向に広がり、三角断面に近い形に変形してヘッドとBB部分の剛性を両立する シートチューブはRMZのようなギミックは存在しない丸断面。しかもオーソドックスな27.2㎜直径のシートポストを採用することで、不快に感じる路面からの突き上げを緩和しているシートチューブはRMZのようなギミックは存在しない丸断面。しかもオーソドックスな27.2㎜直径のシートポストを採用することで、不快に感じる路面からの突き上げを緩和している

サイズ展開という面においても見逃せないのがRFX8シリーズだ。6種類の豊富なサイズ展開はもちろんだが、特筆すべきは390㎜という小さなサイズが用意されること。しかもトップチューブ長は488㎜。海外ブランドなら650Cホイールを採用するのが普通だが700Cホイールで実現しているのは驚きだ。海外ブランドの小さいフレームサイズのモデルはハンドリングにクセがあるものもあるが、アンカーではフォークオフセットとサイズごとに細かく用意することで最適なトレール値を追求することで、スモールサイズでも自然で扱いやすいハンドリングを実現している。

トップチューブは横扁平を強くした形状。シートチューブに向かってさらに薄さが強調される。フレームアッパー部の垂直方向へのしなりを演出して乗り心地を高めつつねじれ剛性も確保するトップチューブは横扁平を強くした形状。シートチューブに向かってさらに薄さが強調される。フレームアッパー部の垂直方向へのしなりを演出して乗り心地を高めつつねじれ剛性も確保する トップチューブからモノステーまでのラインは連続性を持たせたシルエットを採用。流行のアーチ型シェイプのトップチューブにも似た効果でスムーズに振動吸収を行う効果が期待できるトップチューブからモノステーまでのラインは連続性を持たせたシルエットを採用。流行のアーチ型シェイプのトップチューブにも似た効果でスムーズに振動吸収を行う効果が期待できる

その価格と細やかなスペック、使用用途も含め、現在の一般的ホビーサイクリストの要望に等身大で応えたモデルがRFX8エキップだ。ベストセラーになっているのも納得できる。

アンカー RFX8 Equipeアンカー RFX8 Equipe

スペック

フレーム3ポースカーボンインテグラルヘッド
フォークHMカーボンモノコック オーバーサイズ
サイズ390、420、450、480、510、540㎜
メインコンポシマノ・105
ホイールシマノ・WH-R500
タイヤブリヂストン・エクステンザRR-2X 700×23C
ハンドルアンカー/ニットー・M101S φ31.8
ステムアンカー/ニットー・UI-21
シートポストアンカー・アルミニウム φ31.6×300L
サドルアンカー・レーシングM-ブラック
重量8.2㎏(490㎜ ペダル付き)、
1000g(480㎜フレーム単体)、
1450g(480㎜フレームセット)
カラーレーシングカラー2色、
シングルカラー36色から選択可
(一部カラーはアップチャージが必要)
価格265,000円(完成車標準価格)
170,000円(RFX8 Eliteのフレームセット標準価格)
※セレクトパーツの仕様によって価格は変わります。



インプレッション

「優れた巡航性が魅力。ロングライドやブルベに最適」
(YOU CAN 八王子店 浅野浩一)

CW:アンカーのラインナップの中で最もフレーム重量が軽いのがこのRFX8エキップ(以下RFX8)ですね。ヒルクライムやロングライドなどの用途を重視して、レーシングモデルよりもハンガー横剛性などを抑えたモデルですが、どんな印象をもたれましたか?

浅野:やはりRMZやRHM9みたいに加速の切れがものすごくあるというレーシーなキャラクターではないですね。だけど一度スピードを上げてしまうとペダリングはしやすいのでスピードは落ちにくいと感じました。優れた巡航性はRFX8の魅力と言えます。

CW:加速の切れで勝負したり、楽しんだりするよりも、時速40㎞程度までの速度域においてアベレージで走り続けるような走り方が向いているという感じですか?

浅野:そうですね。

佐野:レーシングモデルに比べると踏んだ時の剛性感は高くないので、やはりそれと比べると加速自体は穏やかです。あくまでもトップレベルのレーシングモデルと比較するであって、このモデルの位置づけからすれば十分なレベルにあると思います。ただ、フレームの性能に対してホイールのグレードは安いものを装備しているので、それがやや加速感を鈍らせているという印象は受けました。

長い時間乗っても疲れにくいし、操作性も自然で扱いやすい(浅野)長い時間乗っても疲れにくいし、操作性も自然で扱いやすい(浅野)
CW:乗り心地の面はどうですか。

佐野:剛性が抑えられた分だけ、振動吸収性はとてもいいです。荒れた路面でも細かな振動をよく吸収してくれるのでバイクはバタバタと跳ねるような感覚も無く、ハンドルも取られにくいのでとても安定しています。ハンドリングも素直で扱いやすいので、下りの走りもスムーズです。大げさかもしれませんが、地面にバイクが吸い付いて下れるような感じがありますね。また、Gフォースが大きなコーナリングなどでは、バイクが粘ってくれるので安心して曲がることができます。色々な部分でライダーへのストレスを軽減してくれる快適性があるので、長距離を走るにはアドバンテージは大きいと思います。

浅野:路面から伝わる振動もしっかり和らげてくれる感覚があるので、長い時間乗っても疲れにくいし、操作性も自然で扱いやすいのでストレスは少ないですね。

「ライダーのストレスを軽減してくれる抜群の快適性」
(YOU CAN 海老名店 佐野友哉)

CW:ヒルクライムの性能はどうですか。

浅野:コースと走り方によっても変わってくると思います。例えばMt.富士ヒルクライムのように勾配がそれほどきつくなく、淡々とペダルを回しながら上って行けるタイプのコースでは、巡航性の高い走行性能が生きてくるのでアドバンテージは大きいと思います。その一方、つづら折れで切り返しが多く、コーナーを曲がるごとに腰を上げて踏まなきゃいけないようなコースでは、加速的な性能を必要とされるので少し走りは重く感じることもあるかもしれないですね。

CW:比較的軽めのギヤを選び、シッティングでケイデンスを重視して上って行くようなライダーには向いているということでしょうか。

浅野:そうですね。順位を目指すような、ある程度の加速を強いられる走り方よりも、マイペースで上って行くようなライダーには特にいいと思います。

CW:佐野さんはヒルクライムの性能についてはどうですか。

佐野:フレーム重量が軽いという事なので、パーツアッセンブルを煮詰めてゆけば、かなり軽いモデルができると思います。その点においてはヒルクライムにはいいと思います。ただし、そのままのホイールのグレードだと踏み出しを鈍らせているので、特にヒルクライムではそれが目立ってしまうと思います。これを交換するだけで走りはかなりシャープになり、そうするとヒルクライムだけでなく用途の幅も広がってくると思います。

CW:そのあたりアンカーの場合ホイールを選べるシステムもあるので、価格は上がりますが定評のあるマヴィック・キシリウムエキップを選べます。またはイベント参加用に重量1500g程度のホイールを買い足せば、RFX8が持つ潜在的な性能を引き出せるということですね。

エンデューロやグランフォンドみたいな用途に向いており、剛性も過度ではないので女性にも扱いやすい(佐野)エンデューロやグランフォンドみたいな用途に向いており、剛性も過度ではないので女性にも扱いやすい(佐野) 佐野:そうですね。基本性能はかなりいいものを持っているので。ヒルクライムの走り方としては基本的にアベレージスピードで上ってゆくような走り方が合っていると思います。

CW:総合的に見てRFX8のターゲットはどんなところにあるでしょうか。

浅野:やはりコンセプト通りロードレースよりもロングライドなどを楽しむようなライダーにはとてもいいと思います。最近流行っているブルベみたいなのも適しています。アンカーのラインナップの中ではレースとロングライド系の区別が明確になっているのでいいと思います。

佐野:カーボンフレームならではの高い快適性は、エンデューロやグランフォンドみたいな用途にとても向いていると思います。あとは重量も軽めに仕上げられているし、剛性も過度ではないので女性が乗るにはとても扱いやすいと思います。

CW:390㎜というフレームサイズ展開されていますし、RFX8をベースにした女性用モデル「RFX8Wエキップ」もあるので女性にはうれしい存在ですね。そしてホビーサイクリストの現状は、ロードレースよりもロングライドやヒルクライム、エンデューロに参加する場合が多いので、見事にマッチした1台と言えますね。

提供:ブリヂストンサイクル株式会社 企画/制作:シクロワイアード