日本を代表する避暑地、軽井沢にて開催されたグランフォンド軽井沢。雲が太陽を隠し、霧が立ち込める灰色の世界を走り抜けた前編に打って変わり、太陽が顔を出した浅間山麗を一周するライドのレポートをお届けしよう。(前編はこちら



ダイナミックな地形を走るつまごいパノラマラインダイナミックな地形を走るつまごいパノラマライン
東海大学嬬恋高原研修センターに設置された第2エイドステーションでうどんと白玉あんこを頂いたCW取材班は再び走り出す。ここまでの走行距離は44km。全行程は124kmだから残り80kmといったところだ。

嬬恋エイドから少し下り、つまごいパノラマラインに戻ると、曇り空だった空に少しずつ晴れ間が広がり始める。そう、待ちに待った太陽が顔を出したのだ。それも本大会で1番のハイライトたるつまごいパノラマラインに差し掛かったところで天候が好転するとは我々は運が良いかもしれない。日頃の行いが良いからかなと呑気なことを考えながらペダルを回す。

つまごいパノラマラインはその名の通り、嬬恋エリアの大パノラマが堪能できるグランフォンド軽井沢随一のビューポイント。パッチワークの様に何枚ものキャベツ畑が辺り一帯に広がり、都会では見ることが出来ないダイナミックな風景を目の当たりにすることが出来る。今年は天候が急変した直後という事もあり、畑から出る湯気が神秘的な雰囲気を醸し出していた。

沿道にはタンポポが咲き乱れる沿道にはタンポポが咲き乱れる 眼下には広大なキャベツ畑が広がる眼下には広大なキャベツ畑が広がる

日本愛妻家協会公認の愛妻の丘を通過する日本愛妻家協会公認の愛妻の丘を通過する 畑の中、アップダウンとコーナーの続くコースだ畑の中、アップダウンとコーナーの続くコースだ


リスミカルなアップダウンが続くつまごいパノラマライン。ここまで10km弱のヒルクライムを2本もこなしている参加者にとっては、地味に厳しいセクションである。だが、非日常の高揚感からか、はたまたうどんの効果かは分からないが、皆小気味いいリズムで難なくこなせてしまう。

そのまま妻への日頃の愛を叫ぶための台が設置されている日本愛妻家協会公認の愛妻の丘を通過し、鳥居峠へ。約3.5km、平均斜度約5%ヒルクライムが始まるが、今までの半分以下となる距離と、回復した天候を鑑みればそこまで難易度が高くないことは容易に分かる。黙々と脚を回し3.5kmをこなすと頂上ではサイクリスト達が休憩中。鳥居峠は丁度長野県と群馬県の狭間に位置するとあって、その証である石標で記念撮影をするグループも多くいるスポットだ。

その後は上田市方面へダウンヒル。高速かつテクニカルな下りは細心の注意を持って下りたいところ。路面の状況なども逐一観察しつつ無理をしないでほしい。ディープリムホイールを履いたバイクに乗っている人はいきなり吹く横風にも注意だ。下り終えたポイントには第3エイドステーションとなる真田エイドが待っている。

鳥居峠の石標で記念撮影はマストだ鳥居峠の石標で記念撮影はマストだ ニンニクの効いた焼き鳥でパワーアップニンニクの効いた焼き鳥でパワーアップ

これでもかというフルーツ飴をくれるおばちゃんこれでもかというフルーツ飴をくれるおばちゃん 野沢菜の塩気がちょうどいいおやき野沢菜の塩気がちょうどいいおやき


2016年NHK大河ドラマ「真田丸」で一躍有名になった長野県上田市に設置された真田エイドでは焼き鳥や野沢菜のおやき、フルーツ飴など食べ応えのあるメニューが頂ける。全部食べるとお腹一杯になるほどのボリュームだ。中でも私が気に行ったにが野沢菜のおやき。濃いめの味付けがされた野沢菜とモチモチの生地がベストバランスで、お腹にもしっかり溜まるので満足感が高い。

フルーツ飴のコーナーではスタッフのおばちゃんが必要以上に「これも持っていき」と参加者全員に飴を配る姿も。これぞ田舎の優しさだろう。ポケットに入れておくと中で溶けちゃいそうなので全部食べることに。日差しが強くなってきたため、ボトルにしっかり水を補給し出発。次なる目的地を目指す。

ここから次のエイドステーションとなる小諸エイドまでは東御市を通過し小諸市に至る道。大きな幹線道路を避け、住宅地と畑が交互に現れる田舎道を走る。ここでも平地という訳には行かず、登り下りコーナーを含むコースだ。途中にはしれっと全長2.7km、平均勾配6%という登坂路が現れるのが何とも憎たらしい。流石、国内有数の山岳グランフォンドである。

青い空のもとペダルを回す青い空のもとペダルを回す
更に追い打ちをかけるのが昼頃を過ぎ強まってきた風の存在だ。ただでさえ登りできつい身体に鞭を打つように向かい風が襲ってくる。日頃の練習不足がたたった私は今となればこの区間が一番辛かったように思える。そんな私に突如冷たいプラコップを渡してくれる人達が現れる。中身はキンキンに冷えたレモン水だ。

口に含むと爽やかな酸味と冷たさがヒルクライムで火照った身体に沁み込むように吸収されるのが分かる。ここ一番の辛いポイントで渡してくれるコップ1杯のレモン水は参加者にとっての救世主だろう。私も切れかけていた気力を繋ぎ直し再び登り始める。

このレモン水を渡してくれるのはこの付近でワインを生産している「Rue de Vin」の皆さん。毎年BBQを楽しみながら応援してくれ、去年からは勝手にエイドステーションということでドリンクを配っているとのこと。自分たちも楽しみながら応援する。なんとも粋な心遣いではないだろうか。人の優しさを噛みしめ、東御のワイン通りを登る。

青いTシャツを着た人がレモン水を渡してくれる青いTシャツを着た人がレモン水を渡してくれる Rue de Vinの看板が見えたらコップを受け取るスタンバイだRue de Vinの看板が見えたらコップを受け取るスタンバイだ

突如として後ろから現れたスーパーグランフォンド隊はプロチームの様に統率のとれた集団突如として後ろから現れたスーパーグランフォンド隊はプロチームの様に統率のとれた集団 東御市を一挙に望む一直線のダウンヒルが設定された東御市を一挙に望む一直線のダウンヒルが設定された


そしてこのポイントで本大会のエースグループ、スーパーグランフォンド隊にも遭遇。国内の有名クラブチームから選抜されたメンバーを中心に構成された8名はプロチームのような統制のとれたローテーションを繰り広げながら、私が必死になって登った東御のワイン通りを颯爽と駆け抜ける。普段は違うチームの面々ということだが、そのままチームTTの大会に出れば優勝してしまうのではないかという地脚の揃い具合だ。素直にカッコ良かった。

途中、東御市が見渡せる高台を通過、そこから一気にダウンヒル。どこまでも続く一直線を下る。一番下の幹線道路まで下り、歩道をゆっくりなペースで移動する。そこから案内標識に従い左に曲がると始まるのが最後の難所である菱野温泉へのヒルクライム。

距離2.6km、平均斜度6.9%に及ぶ登坂路はラスト100mに20%にも迫る激坂を含むプロフィール。ここまで数えきれない峠や坂の数々を登ってきた参加者にトドメを刺すように現れる言わば壁だ。その壁を越えればすぐ横には第4エイドステーションが構え待つ。

菱野温泉までの登りは蛇行してしまう程の勾配だ菱野温泉までの登りは蛇行してしまう程の勾配だ
いなり寿司の甘さがパワーになるいなり寿司の甘さがパワーになる 菱野温泉のマスコットであるポニーの田吾作くんとポンタくん菱野温泉のマスコットであるポニーの田吾作くんとポンタくん


ここ小諸エイドではいなり寿司といちごなどを用意。いなり寿司でエネルギーを回復しつつ、いちごのビタミンが疲労回復に効く形だ。補給を摂りしばしの休憩。エイド内は芝生が敷き詰められており、横になっている人も多い。そしてエイド敷地の端には馬舎があり菱野温泉のマスコットであるポニーの田吾作くんとポンタくんがおり、参加者に愛想を振りまいていた。

小諸エイドを出て再びコースに戻ると、ここからは標高1,000mの林道を走り抜ける大会最後のビューポイント。小諸市を眼下に望み、まるで空を走っているかのようだ。ここまできたら大きな登りはなく、残り約20kmをこなせばゴールとなるため走る参加者の顔もどこか穏やかだ。

そのまま細やかな下り基調の林道を抜け、軽井沢エリアに戻り、別荘地を走り抜ける。最後のエイドステーションとなる軽井沢エイドに到着。千ヶ滝温泉に設置されたこのエイドでは羊羹が太っ腹に2個頂け、軽井沢プリンスホテルスキー場までの最後のエネルギーを補給することが出来る。正直見るものは特にないが、ここでしっかり糖分が補給出来ることは有難い。

空を飛んでいるような標高1000mの林道を行く空を飛んでいるような標高1000mの林道を行く
エネルギー補給を完了し、ラスト5kmを走り抜ける。ここからは幹線道路を走ることになるので車に注意したい。1列棒状になり気持ちいいペースで走れば程なくしてゴール地点の軽井沢プリンスホテルスキー場に到着。ゴール後にはおでんとおにぎりが提供され、ベンチで頬張りながら今日のライドを振り返る。

16時を過ぎた後も続々と会場に戻ってくる参加者の面々。大会本部では最後尾の方の所在が共有され完走までの手立てを立てていた。このような最後の最後まで参加者を全力でサポート体制が9割という完走率を実現しているのだろう。国内有数の過酷な山岳グランフォンドでありながら、人気ある大会になったのはこのような全力のサポート体制もあるかも知れないとい感じた。

羊羹は1人2個までだ羊羹は1人2個までだ 2人合わせてゴール!2人合わせてゴール!

仲間と共に走り切った達成感は何者にも変えられない貴重な体験だ仲間と共に走り切った達成感は何者にも変えられない貴重な体験だ
完走後にはおでんとおにぎりが頂ける完走後にはおでんとおにぎりが頂ける 完走賞を手にパシャリ!完走賞を手にパシャリ!


朝6時にスタートし約10時間の長い旅であったが、終わってみれば非常に短く感じる充実した時間だった。都会では絶対に体験することが出来ない最高のロケーションを最高のサポートの元で走る事が出来るグランフォンド軽井沢。まだ計画途中で確定事項ではないのだが、来年はコースの大幅変更を計画しており、より多くのレベルの人が走ることが出来るコースプロフィールとなる可能性もあるとのことだ。国内有数のリゾート地、軽井沢で上質なサイクリング体験を是非味わってみてはいかがだろうか。


text:Kosuke.Kamata
photo:Makoto.AYANO
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