2017/05/22(月) - 09:05
スポーツジャーナリストのハシケンこと橋本謙司が、南アフリカのケープタウンで開催されている世界最大規模のロングライドイベントに2年連続で参加。しかし、今年は強風により大会は中止に!(中止に至るレポート前編はこちら)来年に向けて、魅力いっぱいのサイクルツアーの様子を紹介しよう。
世界中を駆け巡ったニュース
決して演技をしているわけではない。普段は乗り物のはずの自転車が、宙を舞ったり、暴れてしまい制御不能に! 前進しようとしても押し戻されるほどだ。台風レベルの時速100kmの突風が、3万5000人のサイクリストを直撃! 2017年3月12日、40年の歴史を誇るロングライドイベントであるケープタウンサイクルツアーは、大会史上初の中止に追い込まれてしまった。
過去に世界の自転車イベントで、これだけ凄まじい強風によって、大会途中で中止になった前例はないだろう。衝撃のニュースは、瞬く間に参加者のフェイスブックやツイッターで世界中を駆け巡り、日本国内のテレビニュースでも取り上げられるほどの反響だった。
スポーツジャーナリスト・ハシケンが昨年に続いて参加した南アフリカのケープタウンで開催されるケープタウンサイクルツアー。大会エキスポの様子や当日のレポートは「世界最大のロングライドイベントは時速100kmの暴風で大会史上初の中止に!?」をどうぞ。
テーブルマウンテンとライオンズヘッドはケープタウンの象徴
今回のケープタウンサイクルツアーの旅程は、やや弾丸ツアーであった。日本を木曜に発って、現地には金曜日の昼ごろに到着。そして、大会前日の土曜は南アフリカ観光を満喫するために、サイクルエキスポ会場での受付などは到着日の午後に済ましていた。
ケープタウンのよいところは、観光スポットがコンパクトに凝縮していることだ。街を見下ろす標高1086mの山であるテーブルマウンテン。その名の通り、約3kmに渡り山頂が平坦な山で、山頂へのロープウェイがあり、ケープタウン観光の定番スポットだ。
山頂からはケープタウンの街並みが一望でき、ライオンズヘッドの独特の山容が美しい。その近くには、先ほどまで大会のエキスポで訪れていた巨大サッカースタジアムが確認できる。テーブルマウンテンから望む大西洋に沈む夕陽は、日本の日常から離れたプライスレスなものだった。
「ワインランド」で贅沢なワイナリー巡りを満喫
サイクルエキスポ会場にワインテイスティングのエリアが設けられているほど、南アフリカは世界的なワインの産地として有名だ。ケープタウンの街から北東へクルマを30分も走らせれば、のどかな田園風景の中に広大なぶどう畑が広がるワイナリーが次々に現れてくる。
南アフリカで2番目に古い街であるステレンボッシュは、300を超えるワイナリーが密集する世界有数のワイナリーエリアとして知られる。大西洋とインド洋に挟まれた温暖で乾燥した地中海性気候が高品質なワインを生み出しているそうだ。そう聞くだけで、ワイン好きにはたまらないだろう。
そして、人生初の本格的なワインテイスティングへ。高貴な雰囲気のなかで、目の前に並ぶグラスとチョコレートのマリアージュを楽しんだ。今回訪れたLa MotteとSpierは、共に歴史がある人気ワイナリー。
そして、フルーティーな白ワインから深みのある赤ワインまでテイスティングを終えると、ワイナリーに併設されたレストランでの優雅なランチタイムだ。これだけでも南アフリカにきた価値がある!たまには贅沢な時間を過ごしてもバチは当たらないだろうと、南アフリカ料理を代表するダチョウ肉のステーキをワインとともにいただいた。
この日は、大会を翌日に控え、夕方にはバイクチェックがてらケープタウンの街中をサイクリングに出かけた。自転車道が整備されていて街の中心地でも快適にライドを満喫。少し寄り道をして、原色ばかりのカラフルな家が立ち並ぶボカープ地区へ。南アフリカらしい景観のひとつだ。
南アフリカの魅力が凝縮した109km
40周年記念大会を迎えたケープタウンサイクルツアーは、当日の強風に加え、コース近隣の街で発生した火災などの影響も受け、大会史上初めての中止となってしまった。昨年参加し、この大会の魅力を知っているだけに、記念大会をレポートできないことは残念でならない。
しかし、ポジティブに考えれば世界中を駆け巡ったインパクトのある大会中止のニュースは、別の意味で大会の認知が広がったと考えられる。今年初めてこの世界最大のロングライドイベントの存在を知ったという日本人サイクリストも多いのではないだろうか。
ケープ半島を時計回りに1周する全長109kmのロングライド。コースは適度に起伏があるものの、コース最高地点のチャップマンズピーク(86km地点)でも標高は583mほど。ケープタウンの街中をスタートすると、まもなく高速道路へとコースは移っていく。自転車で交通規制された高速道路を走る感覚はなんとも痛快だ。さすが世界最大規模のイベントだけあり、交通規制もケープタウンの街を挙げての大規模なものだ。
地元の住民にとっても、この日は特別。世界中から集まるサイクリストをもてなす一日だからだ。世界一の参加者数に劣らず、沿道からの応援も世界一だ。独特のノリの良さに加え、応援スタイルも南アフリカの民族楽器を使った趣向を凝らした応援スタイルだ。
序盤しばらく続く高速道路に別れを告げると、インド洋を望むケープ半島の東海岸へと出る。アフリカペンギンが生息するボルターズビーチなど、アフリカならではの自然を身近に感じながらのライドだ。野生のかわいらしいペンギンに出会える可能性も高い。
コースも後半。東海岸から大西洋を望む西海岸へとペダルをこぎ、地元住民が住むタウンシップを通過。南アフリカの大空のように、青く澄んだ子供たちの透き通った瞳に心を洗われるだろう。大西洋に出ると、いよいよ、コースのハイライトシーンであるチャップマンズピーク・ドライブウェイだ。青々した大西洋の潮風を左ほおに爽やかに感じながら、断崖絶壁に沿って北上していくシーサイドライン。ピークのチャップマンズピークまでの約10km続く上り坂は、世界有数の絶景ルートだ。
コースの最高地点を越えれば、あとは、ケープタウン街中のフィニッシュエリアへとラストスパートだ。途中のエイドステーションで、マッサージサービスを受けたり、記念写真を撮ったりしながら走っても、朝から夕方までめいっぱいライドを楽しめるだろう。
イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、スペインなど欧州各国はじめ、ケニア、ジンバブエ、ナミビアなどのアフリカ諸国からも参加するケープタウンサイクルツアー。地球規模のサイクリングの祭典は、日本からの参加者を待っている。今年はまさかの事態で、大会は中止となってしまったが、来年は、多くの日本人サイクリストたちと、再び世界一のロングライドイベントの魅力を共有できることを楽しみにしている。
著者プロフィール:ハシケン
ロードバイクをメインにするスポーツジャーナリスト。これまでにエタップ・デュ・ツールや太魯閣国際ヒルクライム、ツールドグアム、ハレイワ・メトリックセンチュリーライドなど海外イベントも多数経験。ケープタウンサイクルツアーは、2016年、2017年大会に連続で参加。Mt.富士ヒルクライム一般クラス優勝。UCIグランフォンド世界大会(豪州)出場
report&photo:Kenji.Hashimoto
取材協力:南アフリカ観光局
世界中を駆け巡ったニュース
決して演技をしているわけではない。普段は乗り物のはずの自転車が、宙を舞ったり、暴れてしまい制御不能に! 前進しようとしても押し戻されるほどだ。台風レベルの時速100kmの突風が、3万5000人のサイクリストを直撃! 2017年3月12日、40年の歴史を誇るロングライドイベントであるケープタウンサイクルツアーは、大会史上初の中止に追い込まれてしまった。
過去に世界の自転車イベントで、これだけ凄まじい強風によって、大会途中で中止になった前例はないだろう。衝撃のニュースは、瞬く間に参加者のフェイスブックやツイッターで世界中を駆け巡り、日本国内のテレビニュースでも取り上げられるほどの反響だった。
スポーツジャーナリスト・ハシケンが昨年に続いて参加した南アフリカのケープタウンで開催されるケープタウンサイクルツアー。大会エキスポの様子や当日のレポートは「世界最大のロングライドイベントは時速100kmの暴風で大会史上初の中止に!?」をどうぞ。
テーブルマウンテンとライオンズヘッドはケープタウンの象徴
今回のケープタウンサイクルツアーの旅程は、やや弾丸ツアーであった。日本を木曜に発って、現地には金曜日の昼ごろに到着。そして、大会前日の土曜は南アフリカ観光を満喫するために、サイクルエキスポ会場での受付などは到着日の午後に済ましていた。
ケープタウンのよいところは、観光スポットがコンパクトに凝縮していることだ。街を見下ろす標高1086mの山であるテーブルマウンテン。その名の通り、約3kmに渡り山頂が平坦な山で、山頂へのロープウェイがあり、ケープタウン観光の定番スポットだ。
山頂からはケープタウンの街並みが一望でき、ライオンズヘッドの独特の山容が美しい。その近くには、先ほどまで大会のエキスポで訪れていた巨大サッカースタジアムが確認できる。テーブルマウンテンから望む大西洋に沈む夕陽は、日本の日常から離れたプライスレスなものだった。
「ワインランド」で贅沢なワイナリー巡りを満喫
サイクルエキスポ会場にワインテイスティングのエリアが設けられているほど、南アフリカは世界的なワインの産地として有名だ。ケープタウンの街から北東へクルマを30分も走らせれば、のどかな田園風景の中に広大なぶどう畑が広がるワイナリーが次々に現れてくる。
南アフリカで2番目に古い街であるステレンボッシュは、300を超えるワイナリーが密集する世界有数のワイナリーエリアとして知られる。大西洋とインド洋に挟まれた温暖で乾燥した地中海性気候が高品質なワインを生み出しているそうだ。そう聞くだけで、ワイン好きにはたまらないだろう。
そして、人生初の本格的なワインテイスティングへ。高貴な雰囲気のなかで、目の前に並ぶグラスとチョコレートのマリアージュを楽しんだ。今回訪れたLa MotteとSpierは、共に歴史がある人気ワイナリー。
そして、フルーティーな白ワインから深みのある赤ワインまでテイスティングを終えると、ワイナリーに併設されたレストランでの優雅なランチタイムだ。これだけでも南アフリカにきた価値がある!たまには贅沢な時間を過ごしてもバチは当たらないだろうと、南アフリカ料理を代表するダチョウ肉のステーキをワインとともにいただいた。
この日は、大会を翌日に控え、夕方にはバイクチェックがてらケープタウンの街中をサイクリングに出かけた。自転車道が整備されていて街の中心地でも快適にライドを満喫。少し寄り道をして、原色ばかりのカラフルな家が立ち並ぶボカープ地区へ。南アフリカらしい景観のひとつだ。
南アフリカの魅力が凝縮した109km
40周年記念大会を迎えたケープタウンサイクルツアーは、当日の強風に加え、コース近隣の街で発生した火災などの影響も受け、大会史上初めての中止となってしまった。昨年参加し、この大会の魅力を知っているだけに、記念大会をレポートできないことは残念でならない。
しかし、ポジティブに考えれば世界中を駆け巡ったインパクトのある大会中止のニュースは、別の意味で大会の認知が広がったと考えられる。今年初めてこの世界最大のロングライドイベントの存在を知ったという日本人サイクリストも多いのではないだろうか。
ケープ半島を時計回りに1周する全長109kmのロングライド。コースは適度に起伏があるものの、コース最高地点のチャップマンズピーク(86km地点)でも標高は583mほど。ケープタウンの街中をスタートすると、まもなく高速道路へとコースは移っていく。自転車で交通規制された高速道路を走る感覚はなんとも痛快だ。さすが世界最大規模のイベントだけあり、交通規制もケープタウンの街を挙げての大規模なものだ。
地元の住民にとっても、この日は特別。世界中から集まるサイクリストをもてなす一日だからだ。世界一の参加者数に劣らず、沿道からの応援も世界一だ。独特のノリの良さに加え、応援スタイルも南アフリカの民族楽器を使った趣向を凝らした応援スタイルだ。
序盤しばらく続く高速道路に別れを告げると、インド洋を望むケープ半島の東海岸へと出る。アフリカペンギンが生息するボルターズビーチなど、アフリカならではの自然を身近に感じながらのライドだ。野生のかわいらしいペンギンに出会える可能性も高い。
コースも後半。東海岸から大西洋を望む西海岸へとペダルをこぎ、地元住民が住むタウンシップを通過。南アフリカの大空のように、青く澄んだ子供たちの透き通った瞳に心を洗われるだろう。大西洋に出ると、いよいよ、コースのハイライトシーンであるチャップマンズピーク・ドライブウェイだ。青々した大西洋の潮風を左ほおに爽やかに感じながら、断崖絶壁に沿って北上していくシーサイドライン。ピークのチャップマンズピークまでの約10km続く上り坂は、世界有数の絶景ルートだ。
コースの最高地点を越えれば、あとは、ケープタウン街中のフィニッシュエリアへとラストスパートだ。途中のエイドステーションで、マッサージサービスを受けたり、記念写真を撮ったりしながら走っても、朝から夕方までめいっぱいライドを楽しめるだろう。
イギリス、イタリア、フランス、ドイツ、スペインなど欧州各国はじめ、ケニア、ジンバブエ、ナミビアなどのアフリカ諸国からも参加するケープタウンサイクルツアー。地球規模のサイクリングの祭典は、日本からの参加者を待っている。今年はまさかの事態で、大会は中止となってしまったが、来年は、多くの日本人サイクリストたちと、再び世界一のロングライドイベントの魅力を共有できることを楽しみにしている。
著者プロフィール:ハシケン
ロードバイクをメインにするスポーツジャーナリスト。これまでにエタップ・デュ・ツールや太魯閣国際ヒルクライム、ツールドグアム、ハレイワ・メトリックセンチュリーライドなど海外イベントも多数経験。ケープタウンサイクルツアーは、2016年、2017年大会に連続で参加。Mt.富士ヒルクライム一般クラス優勝。UCIグランフォンド世界大会(豪州)出場
report&photo:Kenji.Hashimoto
取材協力:南アフリカ観光局
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