師走も目前に迫った11月最終週。伊豆・修善寺にある日本サイクルスポーツセンターにて「A&F 24時間耐久 MTB CUPinサイクルスポーツセンター」が開催されました。仲間とともにMTBを、キャンプを楽しんだみなさんの様子をお伝えしましょう!



雲ひとつない快晴に恵まれた A&F24時間耐久MTB CUPinサイクルスポーツセンター雲ひとつない快晴に恵まれた A&F24時間耐久MTB CUPinサイクルスポーツセンター
24時間耐久レース。このフレーズだけ聞けば、どれだけ過酷なイベントなんだろうかと不安に感じてしまう人も多いだろう。空腹を補給食で紛らわし、眠い目をこすりながら走り続ける……。そんなストイックなイメージでもって取材入りしたシクロワイアード編集部。さてさて、どうなることやら。

11月28日、土曜日。晴れ渡った空の下、修善寺の日本CSC、5kmサーキットに続々と集まってくるクルマたち。MTBを積んでいるのは当然として、車内にはテントやグリルなどのキャンプ用品がこれでもか!と言わんばかりにパンパンに詰め込まれている。あらかじめ割り振られたピットエリアに駐車すると、手なれた様子でテントを設営し始める参加者のみなさん。あれよあれよという間に24時間を過ごすこととなる秘密基地の完成である。

ずらりとテントが立ち並ぶ日本CSC5kmサーキットのホームストレートずらりとテントが立ち並ぶ日本CSC5kmサーキットのホームストレート キッズレースに臨む子どもたち。真剣な表情だ。キッズレースに臨む子どもたち。真剣な表情だ。

一斉に子どもたちがダッシュしていく一斉に子どもたちがダッシュしていく 最後の登りで押しが入るけど、頑張るキッズ!最後の登りで押しが入るけど、頑張るキッズ!


いつもであれば実業団をはじめとした、様々なロードレースが行われる5kmサーキットのホームストレートが、この日は完全にオートキャンプ場に。9時からはコースを確認するための試走タイムとなる。真剣に走行ラインを確認する人がいれば、試走もそこそこにテントで料理の仕込みに入る人も。

そんな中、本レースに先駆けてキッズレースがスタート。一人づつ名前を紹介された子どもたちがスタートラインにつき、大人たちが見守る中、一斉にスタートしていく。短縮されているとはいえ、非常にテクニカルなセクションもあるコースを危なげなく走り抜ける子どもたち。トップ争いは大人顔負けの白熱バトルで、応援している親御さんも思わずヒートアップ。

レースディレクターの小林さんによるライダースミーティングレースディレクターの小林さんによるライダースミーティング 出走前に一人一人インタビューを受ける。一番多かった答えは「24時間、食べきります!」出走前に一人一人インタビューを受ける。一番多かった答えは「24時間、食べきります!」

さあ、長いレースの始まりだ。さあ、長いレースの始まりだ。
大盛り上がりのキッズレースを終え、諸ルールの説明を行うライダーズミーティングが終わると、いよいよ本レースの召集が始まる。一昨年、昨年とソロの部を連覇している足立磨砂幸(京都MTB朝ライド)を筆頭に、一人づつ順番にMCにコールされ、所信表明をしてからスタートラインへと着く。

そして、12時ちょうど。第1走者たちが一斉にスタートしていく。ここから明日の正午まで、走り続けることになる。長丁場のレース、待機しているメンバーや、サポーターもそれぞれ思い思いの様子で出番を待っている。仲間を応援する人、夜に備えて早速仮眠をとる人、自慢の料理を仕込み始める人、子どもと遊ぶ人、既に酔っぱらっている人などなど。

最初の周回をリードした、ソロ参加の國分選手最初の周回をリードした、ソロ参加の國分選手 林の中のテクニカルな区間を連なって走る林の中のテクニカルな区間を連なって走る

もちろん女性ライダーも参加しているもちろん女性ライダーも参加している 今年の目玉セクションであるドロップオフ今年の目玉セクションであるドロップオフ

かなりスリッピーだった丸太セクションかなりスリッピーだった丸太セクション BMXコースの横を下っていくBMXコースの横を下っていく


ちなみに、コースの説明をすると、5kmサーキットのホームストレートをスタートして、最初のコーナーを外側の林へと入っていく。そのまま登り続けてプールの横をかすめ、スキルパークの上に出てくると、そのまま全日本MTB選手権でも使われた林間エリアに突入。ぬかるんだ九十九折れのテクニカルなセクションをこなせば、BMXコースの横を下っていく。

昨年とは異なり、今年はパノラマエリアには入らず。しかし、その代わりに設けられたドロップオフが参加者を待ち構える。しっかりと体重移動しないとクリアできないセクションだ。この難関をクリアすれば後はスタート地点へと登る、地脚が問われる区間となる。

なお、選手交代には、足首に巻いたチップを交換するだけとなっており、昨年まで行われていたゼッケンの交換は参加者全員がFOXのロゴ入りゼッケンプレートをバイクに取り付けることで必要なくなったのは、嬉しい改善点だ。

FOXゼッケンが各バイクに取り付けられているFOXゼッケンが各バイクに取り付けられている ストライダーレースのルール説明ストライダーレースのルール説明

ストライダーレースも出走前にインタビューが入るストライダーレースも出走前にインタビューが入る 一斉にスタート一斉にスタート

ちょっとカオスなストライダーレースの表彰式ちょっとカオスなストライダーレースの表彰式 同時にキッズレースの表彰式が行われ、優勝者には完成車が贈られました同時にキッズレースの表彰式が行われ、優勝者には完成車が贈られました


かなり攻略し甲斐のあるコースが用意され、出走者は目まぐるしく変わるコースを思いっきりエンジョイできる。でも、待っている人は退屈なんじゃ?いえいえ、そんなことはありません!待ち時間も楽しく過ごせるように、沢山のサブイベントが用意されているのがサイクルスポーツセンター流。

最初に行われるのは、大人たちがスタートした後すぐに開催された「ストライダーdeミルキーレース!」。これがなかなか速く、スタートを撮ってから走ればフィニッシュも撮れるだろう、なんて甘く見ていたら、一瞬でコースを走り抜ける子どもたち。しかし、先頭の2人はストライダーに乗らずに完全に押して走っていたとの審判の判断により、3着の選手が1位になるという大番狂わせも。

夕闇に溶け込むコントロールタワー夕闇に溶け込むコントロールタワー 夕食の準備が進むピットエリア夕食の準備が進むピットエリア

テーブルトップで夕日を背負うテーブルトップで夕日を背負う
昼と夜の合間の一瞬。夜がそこまで迫ってきている。昼と夜の合間の一瞬。夜がそこまで迫ってきている。 もう少しで完全な闇に包まれようとするサイクルスポーツセンターもう少しで完全な闇に包まれようとするサイクルスポーツセンター


冬の日が沈むのは早いもので、16時にはあたりは段々と薄暗くなっていく。走行している選手たちはライトの点灯が義務付けられ、薄暮のなかを2灯以上のライトをつけた選手たちが走っていく光景は幻想的な美しさ。1時間もすれば、完全に日は沈んでしまい、いよいよこのイベントの本番ともいえるナイトレースの始まりだ。

夜の帳がおりたコースを、ライトの灯りが移動していく様子は見ているだけでも面白い。夜になるとペースも落ちるのかな? なんて思っていると、夜が深まるにつれてだんだんとラインが洗練されていくことで、大胆に攻める選手もちらほら。ものすごい勢いで下りのドロップオフをクリアしていくライダーを見て思わず歓声を上げてしまう。

燃え上がる焚火を前にテンションは最高潮!燃え上がる焚火を前にテンションは最高潮! ターンテーブルを持ち込んだ猛者もターンテーブルを持ち込んだ猛者も

あぶりチャーシューにあぶりチャーシューに 手づくり餃子。ノーマルとゆずの2種類が手づくり餃子。ノーマルとゆずの2種類が

これには審査員の二人も思わずにっこりこれには審査員の二人も思わずにっこり 滋味あふれる大根の炊き上げに思わずほっこり滋味あふれる大根の炊き上げに思わずほっこり


深々と冷え込み始めたコース上で繰り広げられる熱い走りとはまた別に、ピットエリアでももう一つの戦いが幕を上げていた。その名はピット料理コンテスト。各チームが腕によりをかけて作り上げたピット料理を審査員たちが評価していくというこのイベント、熱の入りようでいくとレース自体よりも盛り上がっているのでは?と思うほど気合をいれたチームが多数エントリーしていた。

タコライスやローストビーフ、イノシシ肉のローストなど、さまざまな料理が各チームのピットを訪れるたびに振る舞われ、審査員も段々とお腹いっぱいに(笑)。そんなピット料理コンテスト、まず発表されたのは特別賞。前日から会場入りし、献立表を作るほどの気合いを見せていた、その名も「チーム飲食」が見事に特別賞を射止める。サーモンカルパッチョにビーフシチュー、そして〆のティラミスというフルコースで審査員の胃袋をがっしりと掴んだ。

チーム飲食の夕食は前菜からはじまったチーム飲食の夕食は前菜からはじまった 滞在中の献立表!滞在中の献立表!

ミネストローネが美味しそう!ミネストローネが美味しそう! ハッピーハンバーグ(チーム名)によるハッピーハンバーグ(料理名)ハッピーハンバーグ(チーム名)によるハッピーハンバーグ(料理名)

優勝を喜ぶチームM.D.S優勝を喜ぶチームM.D.S 優勝商品のナイフをゲットしたチームASTのコック長。3連覇おめでとうございます!優勝商品のナイフをゲットしたチームASTのコック長。3連覇おめでとうございます!


そして、あまりにも美味しい料理が並んだため同率1位のチームが3つ選ばれることに。チームM.D.Sは優しい味付けの出汁で炊き上げた大根とジャスミン茶で、チームハッピーハンバーグはその名のとおりのハンバーグで、そしてこのコンテストを連覇中のチームASTはもはや満漢全席といってもいい中華料理のフルコースで、それぞれ栄えある1位を獲得。

大盛り上がりで幕を閉じたピット料理コンテストだが、まだまだ夜は長い。次に行われたのは大人も参加できるストライダーカップ。とはいえ、脚が長い大人は実はストライダーでは完全に不利。あっというまに子どもたちに置いていかれてしまう大の大人たちに野次が飛ぶ笑。ゴールしたら、おもちゃの景品が配られ、子どもたちも大満足。

ナイトストライダーレースにエントリーした参加者たちナイトストライダーレースにエントリーした参加者たち ビアカーレースの優勝チーム。腰を浮かせて40秒間もがききりました。ビアカーレースの優勝チーム。腰を浮かせて40秒間もがききりました。

疾走するビアカーを見守る観客たち疾走するビアカーを見守る観客たち ビアカーレースで優勝したぞう!ビアカーレースで優勝したぞう!


そして、ナイトイベントのトリをつとめるのが、サイクルスポーツセンターらしい変わり種自転車の「ビアカー」を使ったレース。バーカウンターにペダルが付いた10人乗りの自転車(?)を即席のチームでどれだけ速く走らせることが出来るのかを競う、お祭りイベントだ。

軽快なDJミュージックがかかる中、ビアカーがホームストレートに設けられたコースを登ってはスタート地点へと下ってくる。第1出走者の記録は50秒と少し。第2走のチームが40秒台を叩きだすものの、3回目に走ったチームが39秒99という驚異的な記録を出す。後に続くチームも支援を浴びながらも奮闘するも40秒の壁を破ることはできず。大声援の内にビアカーレースは終了。優勝チームにはKAVUのニットキャップが進呈されていた。

煌々と照らし出されるピットエリア。その下を出走者は走り続ける煌々と照らし出されるピットエリア。その下を出走者は走り続ける 夜の帳が下りた中、頼りになるのは自分の記憶とライトのみ夜の帳が下りた中、頼りになるのは自分の記憶とライトのみ


参加者のライトがコースを描く参加者のライトがコースを描く
路面状況が変わる夜はまた違った走り方が要求される路面状況が変わる夜はまた違った走り方が要求される 投光機が設置された区間は、ひと時の安らぎ投光機が設置された区間は、ひと時の安らぎ


盛りだくさんのナイトイベントもこれにて終幕。ここから朝までは、黙々と参加者たちは走り続けていくことに。BBQメインのチームには走らないという選択肢もあるけれど、トップ争いをしているチームやソロの参加者は淡々と走り続ける。暗闇を切り裂く大光量ライトを頼りに、周回を重ねていく参加者たち。

さいわい大きな事故は無かったが、そんな参加者たちの安全を守るべく、コーススタッフたちもシフトを組んでライダーたちを一晩中見守ってくれるので、安心して走ることが出来る。そうして、長い夜が過ぎ、6時ごろになると待ちに待った太陽が顔を出す。

朝焼けの富士山をバックに走る。長いレースはあと少し!朝焼けの富士山をバックに走る。長いレースはあと少し!
コースのほぼ最高標高地点からはピットエリアが眼下に見えるコースのほぼ最高標高地点からはピットエリアが眼下に見える テクニカルな下りをこなしていく。24時間前よりも、どのライダーも上手くなっていたような。テクニカルな下りをこなしていく。24時間前よりも、どのライダーも上手くなっていたような。


コースの最高地点からは朝焼けに染まる富士山を望むことが出来る。雄大な景色を味わいながら、残り6時間を味わいつくすべく、最後のスパートとなる。7時からはヨガストレッチが、各ピットでは朝餉の支度が始まり、残り少なくなったイベントを楽しみつくす準備が始まった。9時からは竹細工のワークショップが行われ、子どもも大人も工作を楽しんだ。

そして、迎えた29日の正午。ついに長い長い1日が終わりを告げる。次々にフィニッシュゲートをくぐりぬけてくる参加者たち。仲間たちが出迎え、健闘を讃えあう中、最後にフィニッシュラインを越えたのはゼッケンナンバー1番、ソロで24時間を走り切った、ディフェンディングチャンピオンの足立磨砂幸(京都MTB朝ライド)だった。

仲間と手を取り合ってゴール!仲間と手を取り合ってゴール! お母さんを迎えにきた子どもたちお母さんを迎えにきた子どもたち

フィニッシュエリアに来ていたチームメイトとハイタッチ!フィニッシュエリアに来ていたチームメイトとハイタッチ! なぜか祝福の水をかけられる(真冬です)なぜか祝福の水をかけられる(真冬です)

ソロの表彰台の真ん中に立つのは3度目の勝利を飾った足立選手ソロの表彰台の真ん中に立つのは3度目の勝利を飾った足立選手 優勝チームにはプロダクションプライヴィーのフレームが贈られました!優勝チームにはプロダクションプライヴィーのフレームが贈られました!


そして、24時間楽しんだ選手たちの表彰式もこのイベントはユニークだ。ソロやチームの順位による表彰はもちろんのこと、多くの特別賞が用意され、「いちばん遠くからきたで賞」とか「たくさんたこ焼きをやいたで賞」といったアットホームながらも、この1日を積極的に楽しんだ人に向けて嬉しいサプライズが届けられた。

そして、ストイックに走り続けたライダーたちを讃える表彰が行われる。多く集まったライダーの中でも、最も長く走ったのは、3度目の勝利を飾った足立選手。なんと95周もの周回を重ねた足立選手はほとんど休憩せずに走り切ったという。ちなみに2位の選手は30分、3位の選手は4時間も(?)寝てしまったとのことで、耐久レースという名にふさわしい結果になったと言えよう。

フォークいただきました!フォークいただきました! おたのしみ抽選会の当選者を選ぶおたのしみ抽選会の当選者を選ぶ

リザルトボードを確認するリザルトボードを確認する 帰る前には洗車が必須ですね。(ちょっと水がかかった決定的瞬間でした)帰る前には洗車が必須ですね。(ちょっと水がかかった決定的瞬間でした)


最後には抽選会が行われ、SR サンツアーのサスペンション、POCのサングラスやヘルメットといった豪華景品が当たるということもあり、盛り上がりは最高潮に。24時間、設営や撤収も含めればそれ以上になる時間を共に過ごした参加者たちは、既に全員が仲間といった雰囲気。会場を去る時にどこか後ろ髪をひかれながら帰ったのは、きっとみな同じだったのではないだろうか。

蓋を開けてみれば、「24時間耐久」という過酷な字面からは想像できないようなワイワイと楽しい時間を過ごすことができる「A&F 24時間耐久 MTB CUPinサイクルスポーツセンター」。別に走らなくたって、仲間とBBQするためだけに参加したってOK。もちろん自分の限界に挑戦することもできるし、シリアスライダーからパーティー派までどんな人でも楽しめるアウトドアフェスティバルだった。

24時間楽しみきったみなさん。来年もまたお会いしましょう!24時間楽しみきったみなさん。来年もまたお会いしましょう!

text&photo:Naoki.YASUOKA