前回のレポートで、ビルダー目線でみたNAHBSの様子をレポートしてくれたツヨシさん。今回は、2編にわたって、ツヨシさんがビビッときたNAHBSビルダー達のオリジナリティあふれるバイクを紹介していきます。



まず、紹介していくのはまずは、新進気鋭のNew Builder Tableの出展者達から。12くらいのテーブルがあって、それぞれの個性が強く反映されたバイクが展示されていた。“New Builder”と言うからには新人だと思うけど、とてもそうは思えない出来のバイクもあり、そのモノ作りのレベルはかなりばらつきがあるように見えた。

LoveBaum Bicycles

LoveBaum BicyclesのChad LovingsLoveBaum BicyclesのChad Lovings
LoveBaum BicyclesのChad LovingsとBryce Baumannは、コロラド州デンバーを拠点とする20代の若手ビルダー2人組。LoveBaum Bicyclesと言う形で工場をシェアしているとのことで、お互いが切磋琢磨しあってバイク制作に取り組んでいるようだ。今回“NAHBS 2015”には2人それぞれが個別に特徴あるフィレットブレージングのスチールバイクを出展していた。2台とも、オリジナルステムでISPを採用している所が共通点。その辺りの部分がこのブランドの意匠の特徴と言えるだろう。

グリーンとオレンジのツートーン(湘南色のメタリック)のディスクブレーキのシクロクロスバイクで“Best New Builder”を受賞していたChad Lovings。シートステーの取り回しが左右非対称になっている所が非常にユニークで、このバイクのデザインアクセントになっている。

湘南色のメタリックカラーのシクロクロスバイクを展示していた湘南色のメタリックカラーのシクロクロスバイクを展示していた シート周りの処理が特徴的なシクロクロスシート周りの処理が特徴的なシクロクロス バイクに快くサインしてくれたChad Lovingsバイクに快くサインしてくれたChad Lovings


その工作の理由を尋ねると「なんとなくひらめいた」という。ヘッドチューブには“LB”“KP”と言う浮き彫りが施されており、それぞれがブランド名と実車のオーナーの名前とのこと。所有欲をくすぐってくれるこういったワンオフの工作で、これぞカスタムオーダーの醍醐味と言ったところだろうか。

Bryce Baumannはシンプルな白色の美しいピストバイクを出展。横から見るとS字にうねった扁平になっているシートチューブが特徴的な一台だ。使用しているチューブはよく見かけるモデルなので市販品だと思われる。大柄の車体は“自分用”との事だった。

LoveBaum BicyclesのBryce Baumannが出品したピストバイクLoveBaum BicyclesのBryce Baumannが出品したピストバイク
ブレーキは付いていなかったのでピュアレース用に仕立てた1台と思われるが、細かいところは尋ねるのを忘れた。誠実な感じの好青年だった。Yamaguchi BicyclesのKoichi Yamaguchさんに師事してフレームビルディングを習ったと言っていた二人。だからか、彼のピストは競輪の影響を色濃く受けているように見て取れた。



Pedalino Bikes
Pedalino BikesのJulie Ann PedalinoPedalino BikesのJulie Ann Pedalino
ヘッドバッヂが印象的ヘッドバッヂが印象的 ラグも非常に凝った造形だラグも非常に凝った造形だ Julie Ann Pedalinoと愛車と記念撮影!Julie Ann Pedalinoと愛車と記念撮影!


今回“NAHBS 2015”で唯一の女性ビルダーだったPedalino BikesのJulie Ann Pedalino。ホワイトカラーが印象的な、フィレットブレージングのスチールフレームを出品していた。金色に塗った雪模様みたいな浮き彫りマークで装飾されていて、アートの勉強をしたと言う人らしい、機能一辺倒でない華やかな意匠が目を引いた。

小さいフレームだったので、背の低い彼女自身のバイクと思われる。色と装飾以外は、ごくオーソドックスなスローピングフレームで、メカはカンパニョーロで統一されていた。比較的近所だから来たと言っていたが、拠点はカンザス州なので1000km近くはあるだろう。それでも西海岸に行く半分くらいの距離なんだそうだ。



Machine Bicycle Co.

Machine Bicycle Co.Machine Bicycle Co.
遠くからでは伝わらないが、ディテールには非常にこだわりをみせるMachine Bicycle Co.遠くからでは伝わらないが、ディテールには非常にこだわりをみせるMachine Bicycle Co. ダウンチューブ裏側もかなり手が込んでいるダウンチューブ裏側もかなり手が込んでいる ロゴを彫った栓抜きなども用意されていましたロゴを彫った栓抜きなども用意されていました


Machine Bicycle Co.のKyle Wardは、ブランドの名前が“機械”だから無味乾燥なバイクを想像していたが、きっと器用な人なのだろう、何でも自分の手でやってる風で、バイクの細部に至るまで一手間がかかっている感じに共感が持てた。ポートランドに拠点を置いているビルダーと言う事だった。

バイク自体としては、オリジナルのロゴに特徴がある。塗装は非常に凝っていて、近くで見ると細々と手がこんでいるのだが、遠目に見たマットブラウンのバイクはなんとなくどこかで見た風な感じがするのが惜しいと感じる。そうそう、この色はあちこちのブースでみかけたので、今年はマットブラウンが流行るのかも知れない。



UnaTandem

名前の通りタンデムを出品していたUnaTandem名前の通りタンデムを出品していたUnaTandem 名前の通りタンデムを出品していたUnaTandem。ここのタンデムの特徴は、小径車であるということ。そして通常前のライダーが行う、ハンドルとブレーキの操作を後席の人が行うということだ。なので、前には子供など、小さな人を乗せる事を想定していて、特許を出願中だと言っていた。

なのでステムは逆方向に付いていて、ハンドルもかなり手前にオフセットされたなかなか他では見ない形のもの。前の人が掴むためのバーと、足をおくためのステップが設置されていて、子どもが疲れてしまっても、問題ないような工夫が随所に施されている。

ただ、やたらと寝かされたヘッドチューブと少し前へとベンドするステアリングコラムが、乗りこなすことの難しさで有名なパナソニックのロデオを彷彿とさせる。はたしてタンデムで乗れる人がどれほどいるのだろうか、余計なお世話かもしれないが少し心配になってしまう。

また、非常に小さく畳めるという事を強調して売り込んでいたUnaTandem。現にこの会場に来るにあたって、ダンボール箱で梱包しゴルフバッグと言い張ってタダで飛行機に乗せる事が出来たエピソードを高言していた。ビルダーのShawn aymondはとても新人には見えない貫禄があった。



さて、個性豊かなNew Builder Tableの出展バイク達はいかがだっただろうか。次回は、有名ビルダーたちが登場するブース編をお届けする予定。お楽しみに。