滝沢牧場の「大将」に話を聞いたvol.1に続く野辺山シクロクロスインタビューvol.2では、エリートレースのチーフコミッセールを務めるため来日したミロスラフ・ヤーノ氏の談話を紹介。世界の最前線を知る彼の目から見た野辺山シクロクロスとは、そして世界のトップレースで起こっていることとは?

インタビューを行ったのは、野辺山シクロクロスから一週間後のUCIレース、関西クロス第3戦ビワコマイアミランドに向かうため、野辺山のホテルから小淵沢駅に向かう車中のこと。ヤーノ氏はUCIレース2連戦のチーフコミッセールを務めるため、UCIから派遣されてきた。



「野辺山」に、アジアやオセアニアのシクロクロス界を牽引できるポテンシャルを感じた

チェコから来日したミロスラフ・ヤーノ氏チェコから来日したミロスラフ・ヤーノ氏 「ツーリストとして、UCIのコミッセールとして、私にとって今回が初めての日本でした。野辺山シクロクロスはClass2ながら非常に良くオーガナイズされていて、本場と比べて全く遜色の無いレースでした。また、昨年よりも女子の参加人数が増えたそうですが、これは世界的にも同じ風潮がありますね。この部分を確認できたことも私にとって収穫でした。

小淵沢駅へ向かう道中で話を聞いた小淵沢駅へ向かう道中で話を聞いた また、C3やC2でも皆真剣に走っていたことがとても印象的で、グラスルーツレベルの競技発展に大いに期待できました。また、小坂正則(スワコレーシング)は50歳にもなるのに、第一線でレースをしている。これは本当にみんなの勇気になりますね。

ヨーロッパ発祥のシクロクロスが日本でこのように発展しているのを見てとても嬉しく思いました。この野辺山シクロクロスには、アジアやオセアニアのシクロクロス界を牽引できるポテンシャルを十二分に感じたのです。」

—カテ3、カテ1と呼ばれるようなレーサーカテゴリーと同じく、UCIレースにもカテゴリー区分がある。野辺山シクロクロスは国内における数少ないUCI公認レース(男女エリート)だが、現在の位置づけはClass2。Class1へと昇格すればレーサーはより多くのUCIポイントや賞金を獲得でき、多くの強豪海外選手を招き呼ぶことができる。そのためにはどうすべきだろうか?

ほんの少しの手直しでUCIレースカテゴリーを上げられる

「野辺山シクロクロスをUCI Class1へと昇格させるには、あとほんの少しの改善を行えば良いだけ。それほどまでに良い大会でした。例えば、60〜70人を一斉スタートさせるにはスタートから第1コーナーまでの距離が短く、かつ未舗装路であるために、海外トップカテゴリーレースで見られるような全力ダッシュができません。これは牧場前の舗装路を使うことで改善できますが、ここで気を付けたいのは下りスタートにしないこと。牧場横の舗装路もコースに組み込まれていましたが、あの道は幅が狭いためスタートには向きませんね。

「スタート地点を変更すれば、ほぼレースカテゴリーを昇格させられる」「スタート地点を変更すれば、ほぼレースカテゴリーを昇格させられる」 photo:Kei Tsuji
もう一つは、泥区間が長過ぎたこと。ただ一日目の終了時点で私がこれを伝えたところ、すぐに手直しされて2日目はワールドカップと遜色の無いコースに変わりました。言ったことが形になるまでのスピードが素晴らしく、とても評価できるポイントです。

「初日の泥区間は長過ぎたが、すぐに修正された。」「初日の泥区間は長過ぎたが、すぐに修正された。」 photo:Kei Tsujiまた、UCIのルール上、コースには4つ以上の観客横断ポイントが無ければいけません。今回は2カ所でしたが、それでもトラブルが起きなかったのは日本人がとても礼儀正しいからでしょう。1万人の観客が訪れ、しかもほぼ全員がビールを飲んで酔っぱらっているベルギーだったら大変な騒ぎになっていたと思いますよ(笑)。

野辺山ならではの独自色に、今後期待したい野辺山ならではの独自色に、今後期待したい photo:Kei Tsujiその他ゴール計測のシステムなど細かい運営上の注文はありますが、大まかにはそれくらいしかありません。今回3日間の野辺山滞在で、とにかく人々の心優しさやおもてなしの心、大会運営の素晴らしさに感銘を受けました。」

—アメリカとヨーロッパではシクロクロスのスタイルが違うと言われすが、野辺山シクロクロスはどちらに近いと思いましたか?それとも全く別のものでしたか?

「確かにアメリカは革新、ヨーロッパは保守という風潮があります。アメリカでは今シクロクロスがブームになっていて、50から60の国際レースが開催されています。またヨーロッパと比べてシーズンが長く、その辺りに限って言えば日本のシクロクロスはアメリカに似ていますね。

でも今ベルギーでは新しい試みが始まっていて、例えば着順では無くゴールに入った時のタイムで争われる全10戦のシリーズ戦は面白いですね。これには中間スプリントポイントやゴールポイントが設けられており、1位-15秒、2位-10秒といった具合にタイムを稼ぎ、最終的に総合時間で順位を決めます。

ですからヨーロッパかアメリカかと言うよりも、今後野辺山ならではの独自色を出していければ良いのではないでしょうか。その部分は主催者に大いに期待したいところです。」

—ヤーノさんはターボルのコースから60kmほどの場所に住み、様々な国際トップレースにコミッセールとして関わっていると聞きました。今、世界のレース現場では、何が起こっているのですか?

ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント)ラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント) photo:Cor Vos「そうですね。ワールドカップ第1戦のターボルではピットコミッセールを務め、またアメリカでの世界選手権にも行きました。ここ数年来、トップカテゴリーレースは常にベルギー人選手が席巻していました。しかし最近ではU23のラルス・ファンデルハール(オランダ)をはじめ、チェコ、ドイツ、イタリアなどでも有望なジュニア選手が育ってきています。

これがトップカテゴリーにおける最近の風潮であり、私も含めて関係者一同が期待していること。やはり競技発展の上で国際化は欠かせません。

機材的な面で言うと、現在世界トップレベルのレースにディスクブレーキが登場したことが挙げられるでしょう。それを駆ったファンデルハールがワールドカップ開幕2連勝も大きな話題になりましたね。

シマノの11速Di2・ロードバイク用油圧ディスクブレーキを使用するラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント)シマノの11速Di2・ロードバイク用油圧ディスクブレーキを使用するラルス・ファンデルハール(オランダ、ラボバンクデベロップメント) photo:Cor Vos
ただ野辺山のような泥レースでは非常に大きなメリットがあるものの、コクサイデに代表される細かい砂のレースでは、ブレーキに砂粒が噛んでしまうのではと聞いたこともあります。最近はカンチブレーキに似たフィーリングで効く油圧ディスクブレーキが出てきているので、良い技術進歩だと思います。」

—小淵沢駅に到着してふと気づけば、ヤーノ氏の荷物はスーツケースと小さなショルダーバッグがひとつだけ。来日した際も、成田空港から野辺山駅まで一人で移動してきたそう。聞けば「年間30ほどのレースに帯同しているから必然的に旅慣れますし、何より旅することが好きなんです」と笑う。野辺山の一週間後に開催された関西クロス(第3戦ビワコマイアミランド)までは、京都周辺を観光しながら過ごす予定だと言う。

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氏曰く、UCIコミッセールは自分の仕事と掛け持ちしていることがほとんど。しかし、ひとたびグランツールに帯同するとなると、年間70日ほど家を空けるそうだ。どのようにその時間を捻出しているのか気になり聞いてみた。

ホームで手を振るヤーノ氏。次なるレースでもその手腕を振るってくれたはずホームで手を振るヤーノ氏。次なるレースでもその手腕を振るってくれたはず 「もともと私は合成布地を作る研究者で、衣類を始め自動車のシート材を作ったりしていたんです。でも中国やトルコで安く生産できるようになって、僕が会社に入った時に1万5千人いた従業員は、辞める時には300人になっていた。今は息子が経営している会社で仕事をしているから、比較的自由な時間を多く取れるんです。」

「私はUCIコミッセールとしても年長だから、様々なレースに帯同して様々な経験を積んできました。2015年のシクロクロス世界選手権は私の地元でもあるターボルで開催されますから、それがコミッセールとして私が関わる最後のレースとなるでしょう。最近まで無理矢理取った休暇はほぼ全てレースに充てていましたから、引退後はゆっくりとバカンスを楽しみたいと思っていますよ。」

そう言い残して改札をくぐり、ホームに消えたヤーノ氏。11月25日に開催された関西クロス第3戦でも、大会の裏側から大いにその手腕を振るってくれたに違いない。


text&photo:So.Isobe

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