河川敷の堤防の坂でひぃひぃしていたのに、なぜそれよりも遥かにキツいコースで完走できたかがさっぱり分からない。”ツール・ド・ちば”で初めての100km越え、初めての本格的なアップダウンコースに挑んだ連載レポート。



そんなに練習ができていた訳ではないし、正直前日までは「大型台風直撃で開催中止とかにならないかな?」とかも思ったりしていた。迎えにきてくれた編集部の磯部さんにも、「大丈夫です?不安って顔に書いてありますよ!」と言われる始末。

それと言うのも、目標としているツール・ド・東北を半月後に控えているにも関わらず、2週間前に参加した東京センチュリーライドであまりにもダメダメだったから…。目的地へと向かう車中で磯部さんがいろいろと励ましてくれるものの、全く耳に入ってこない…。正直、とても憂鬱でした。

スタート会場となった鴨川総合運動場スタート会場となった鴨川総合運動場 青空をみて、どうせなら思いっきり楽しんでやろうと吹っ切れることができました青空をみて、どうせなら思いっきり楽しんでやろうと吹っ切れることができました


でも目的地に向かう途中で上った朝日を見て「どうせダメになっても、回収車が拾ってくれるだろう。だったらそれまでは楽しまなきゃ」と云うある意味開き直った気持ちに切り替わりました。幸い最高の秋晴れだから、寒暖で辛い思いをする事はなさそう。

会場に到着すると、そこには既にたくさんの参加者がズラリ。荒川よりも遥かに"走れそう"な方々がいて、余計に心がギュウとなる。だけど一緒に列に並んだすぐ横にはイケメンの外人さんグループがいて、少し励みになったりして。つくづくロードレースは海外のスポーツだな、と思う。だって、あのウェアの似合いっぷりといったら!

朝陽を浴びつつ、スタートゲートをくぐっていく朝陽を浴びつつ、スタートゲートをくぐっていく
イケメンの外人さんグループと一緒にスタートイケメンの外人さんグループと一緒にスタート スタートしたすぐに現れる、太平洋のオーシャンビュースタートしたすぐに現れる、太平洋のオーシャンビュー


まだ慣れない準備にワタワタしながらも、前回のTokyoセンチュリーライドの様子を思い出して準備完了。そして私は遥か彼方にあるゴールを目指し、いよいよスタートを切ったのです。

スタートしておよそ40kmほどは海沿いの道。会場を出て最初の信号こそ渋滞があったものの、その後は全くと言って良いほどスムーズ。すぐさま現れた綺麗な海を見てワーッ!と爽快な気分になったり、漁港や民宿が立ち並ぶ昔ながらの港町の雰囲気に癒されたり。都内を走るだけでは味わえない感動がありました。

追い風に押されてペースも快調!あっという間に第一エイドに到着追い風に押されてペースも快調!あっという間に第一エイドに到着
私は(と言うほど大層なことでは無いが)東京から遠く離れた新潟の出身。今は仕事のために都内に住んではいるものの、やっぱりどこか慣れ親しんだ田舎の風景に親しみを感じるのです。もちろん房総と新潟は違うけれど、漁師町や長閑な田園風景の中を走り抜けるコースは、ある意味とてもフィットしたというか、心が開放されたというか…。私の"自転車で走りたい道"はこういうところだったんだな、と走りながら、おぼろげながらに気づかされました。

そうしたことで心が晴れやかになったのか、スピードも快調です!潮風に背中を押されつつ、自分でもびっくりするくらいのハイペースを維持したまま、最初のエイドステーション(34km地点)に到着。今朝まで感じていた不安は少しづつ消え、「行けちゃう…かも?」という思いが芽生えてきました。

幾重にも連なる入江を越えていく。潮の香りがすごい!幾重にも連なる入江を越えていく。潮の香りがすごい! 野島崎灯台を過ぎてもオーシャンビューは続きます野島崎灯台を過ぎてもオーシャンビューは続きます

のんびりムードのエイドステーションのんびりムードのエイドステーション 追い風に押されてペースも快調!あっという間に第一エイドに到着追い風に押されてペースも快調!あっという間に第一エイドに到着


でも、それがそうもいかなくなったのが、エイドを出てすぐ始まる長い登り。今まで多摩湖サイクリングロードの、ほんの数百メートルの登りしか走った事のない私にはあまりにもキツく、あっという間に時速は5km/h以下へ。当然男性ばかりのグループの速さには付いていけず、ものすごい勢いで後ろから来る人に抜かれる始末。

安全を確保するため、最初「なるべくグループを維持して走りましょうね」と言われていました。だからなんとかペースの合いそうな人を見つけて追いかけるもののその都度遅れ、またもや「もう嫌だ!」という思いが顔を出しそうになりました。

グリーンライントンネルは、上り勾配で今大会の最難関ポイントグリーンライントンネルは、上り勾配で今大会の最難関ポイント トンネルを過ぎてもなお続く上り。我慢して少しずつ進みますトンネルを過ぎてもなお続く上り。我慢して少しずつ進みます


そして私は、またも開き直って、人の後ろに付いて走ることを一切止めました(一緒にいこう!と声をかけてくれた方々、ごめんなさい!)。他の人につられず慌てず、自分のペースでゆっくりと。そうすれば毎回心が折れることもないし、幾ら遅くとも少なくともペダルを回し続ける限り自転車は前に進んでくれる。もちろん辛いけれど、ここ数週間仕事で激務が続いたことを考えれば、それよりは楽。と、そんな事を考えているうちに、いつしか頂上に到着できたのです!以後長い登りが2カ所現れたものの、マイペースを死守することで、何とか押し歩き無しで登頂する事ができた。これには自分でもびっくり!でした。

でもその代償というべきか、中盤のアップダウンをこなしているうちに体力が削られてしまい、平坦や下りでもスピードが上がらない事態に…。

アップダウンで体力を使ってしまい、平坦でも単独に...アップダウンで体力を使ってしまい、平坦でも単独に... 快適なペースで引っ張ってくれた指導員さん。とてもありがたかったです快適なペースで引っ張ってくれた指導員さん。とてもありがたかったです

抜けるような青空が私を励ましてくれました抜けるような青空が私を励ましてくれました
そんな私のことを気遣ってくれる方が、今回のイベントでは何と多かったことか!お揃いのジャージを着た指導員さんはもちろん、参加者の方もアドバイスをくれたり、坂道の辛さを紛らわしてくれたり。ほんのちょっとの時間ではあったけれど、"集団での走りかた"を実践できた事も大きな収穫だった。遅いテンポで走る私に付き合ってくれた指導員さんもいたり、本当にとても嬉しかったし、ありがたかったな。スキー場のインストラクターの如く、カッコ良さ3割増しで見えました(笑)。

そんな調子で、ゆっくりと、でも確実にゴールは近づいてきてくれた。残り15kmからは遠ざかっていた海が近づき、再び爽快な気分に。ペダルにも少しずつ力が入ってくるのがわかる。そして最後は指導員さんにサポートされつつ、15時過ぎにゴール。自分の頑張り、サポートしてくれた方への感謝、そして疲労と安堵感が一緒くたになった感動が、心の底から湧き出てきました。



あちこちに応援の方々がいてくれて、とても力になりましたあちこちに応援の方々がいてくれて、とても力になりました あれほどスタート前まで憂鬱だったのに、終わってみれば一度も押し歩きをせずとも(坂で途中休憩は入れました)完走できたことには、数日経った今でも不思議で仕方ありません。

考えてみると、企画自体も持ちかけられたものだったし、正直今までは自分からツール・ド・東北というイベントに興味を持ちつつも、自転車に乗る事に対して、どこか受け身でいたのかもしれません。だから辛いことは辛いまま、それがどんどん積み重なってしまったのだと思います。

でも今回、ある意味自分にとって無謀すぎるチャレンジだけに、吹っ切れることができました。人と合わせて走るのを止めたり、どうせリタイアするから、それまで楽しんで走ってやろう!と考えたり。受動ではなく、能動だった。ここが大きかったんでしょう。

やっとありつけたお弁当やっとありつけたお弁当 海岸のエイドステーションでのんびり。最後の10kmに向けて力を溜めます海岸のエイドステーションでのんびり。最後の10kmに向けて力を溜めます


多分旦那さんや彼に進められて、ちょっと嫌々ながら乗っている女性もいるんじゃないかな、と思います(これまでに何回か、そうじゃないかな?と感じる人を見ました)。自転車歴4ヶ月の私が言うことでは無いですが、そうやって気持ちを切り替えることができれば、自転車とずっと長く付き合っていくことができるんじゃないでしょうか。そう思えたことが、今回最大の収穫でした。

ついにゴール!初の本格ロングライドをゴールできましたついにゴール!初の本格ロングライドをゴールできました
初めての本格的な上りと、100kmオーバーを走り切りました初めての本格的な上りと、100kmオーバーを走り切りました 最後私を引っ張ってくれた指導員さんとパチリ!ありがとうございました最後私を引っ張ってくれた指導員さんとパチリ!ありがとうございました


”ツール・ド・ちば”に出ることは、企画を進めるにあたって提案されたことでした。スタート前まで本当に嫌だったにも関わらず、出会いや学ぶことも多く、最終的には本当に出て良かったなと思っています。

本番の”ツール・ド・東北”は今回のコースよりも50km長く、獲得標高は600m多い。制限時間も今回の結果と照らし合わせると、実はぎりぎりです。当日の目標は、あくまで頑張らず、楽しみながら完走を目指すこと。あと半月しか無いけれど、限られた時間の中でやれることをやっていきたいと思います。


文:佐藤真理
Edit:So.Isobe