ゴール前に現れた宇都宮ブリッツェンの飯野智行と増田成幸は並んでゴール。ワン・ツーフィニッシュで増田の個人とチームの年間総合優勝を飾った。

ゴール前に現れた飯野智行(宇都宮ブリッツェン)と増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ゴール前に現れた飯野智行(宇都宮ブリッツェン)と増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGI

最終第17戦の輪島大会
このレースで引退する廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン)このレースで引退する廣瀬佳正(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGIパレードスタートパレードスタート photo:Hideaki.TAKAGI1周目から逃げる阿部嵩之(シマノレーシング)1周目から逃げる阿部嵩之(シマノレーシング) photo:Hideaki.TAKAGI5周目、先頭の7人5周目、先頭の7人 photo:Hideaki.TAKAGI6周目、飯野智行(宇都宮ブリッツェン)がアタック6周目、飯野智行(宇都宮ブリッツェン)がアタック photo:Hideaki.TAKAGI7周目、先頭の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)と後続は5秒差7周目、先頭の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)と後続は5秒差 photo:Hideaki.TAKAGI7周目、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)に飯野智行(宇都宮ブリッツェン)が追いつき2人でゴールへ7周目、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)に飯野智行(宇都宮ブリッツェン)が追いつき2人でゴールへ photo:Hideaki.TAKAGI年間個人総合優勝の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)年間個人総合優勝の増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGI年間団体総合優勝の宇都宮ブリッツェン年間団体総合優勝の宇都宮ブリッツェン photo:Hideaki.TAKAGI女子 独走する西加南子(LUMINARIA)女子 独走する西加南子(LUMINARIA) photo:Hideaki.TAKAGI
3月から続いた実業団Jプロツアーも、17戦目のこの輪島大会が最終戦。すでに個人とチームの年間総合優勝を決めている増田と宇都宮ブリッツェンだが、7月の石川ロード以来、じつは勝ち星がない。年間団体成績は2位以下が100点前後の差で並ぶ接戦で、この輪島での成績で2位から4位が確定する。さらにJプロツアー残留資格もかけた戦いもあり、AAクラスのレーティングの輪島はどの選手もモチベーションが高い。

そして増田にとっては昨年、個人総合優勝目前で落車によりその夢が潰えた大会。それどころか複数個所の骨折などにより選手生命さえも危ぶまれた重症だった。その後の厳しいリハビリで奇跡的に復帰し、直後4月の全日本選手権ロードでは2位になるまで復活した。そして1週間前に発表されたキャノンデールプロサイクリングチームへの電撃移籍。増田にとってもチームにとってもいい成績を出したいレースだ。

上りで絞られた先頭集団

1周目スタート直後からペースが上がる。阿部嵩之(シマノレーシング)がまずアタック、2周目に清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)がペースを上げる集団に吸収。平坦区間では畑中勇介・平塚吉光(シマノレーシング)が仕掛ける。この時点で集団は20人ほどに絞られる。

3周目、平塚がペースを上げ50mほどリード、これを清水が追い上げる。このハイペースに集団はばらけて7人に。飯野、増田、清水都貴・西薗良太・井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)、平塚吉光(シマノレーシング)、窪木一茂(マトリックスパワータグ)だ。井上は一旦遅れるが再び合流する。この7人でローテーションを重ねる。上り区間は清水が中心にペースを作る。

6周目、上りすぐで増田がアタック、これに清水と飯野が反応、さらに飯野と清水が抜け出す。ここから飯野が単独で先頭に立つ。しかし半周ほどで清水がおもに追走する後続が吸収する。その30秒後、今度は増田がアタックして緩い上りから下りをクリア。差は5秒から10秒ほど。届きそうで届かない差だ。

増田リードのまま最終周回へ。上り区間で増田と後続の差が次第に広がる。1つ目の上り頂上手前で、先行する増田を追って飯野が単独アタック。下りを経て飯野単独で増田に合流、同チームの2人がゴールを目指す。横に並んだ2人は飯野が前に出て先にゴールを踏む。
飯野が自身初のロードレースの優勝を達成。宇都宮ブリッツェンにとっても7月の石川ロード以来の3ヶ月ぶりの優勝だ。
またジュニア世代の小橋勇利(ボンシャンス飯田JPT)が11位、岡篤志(キャノンデール・スペースゼロポイント)が14位と健闘。

プロ1年目で優勝の飯野

序盤から単独のアタックはあったが、人数が絞られたのは上り区間でのペースアップ。それもほとんどは清水によるものだった。アタック合戦によるものでなく登坂能力で形成された7人の先頭集団だった。ハイペースの維持は清水が大半を、ほか増田がおもに担った。増田と飯野2人の連携が功を奏したが、清水の走りも群を抜くものだった。

飯野は今年3月まで中央大学の学生。学生時代前半はトラック中心の選手で、ロードは後半からだった。全国優勝はなく、この輪島ロードが初のビッグタイトルだ。しかし宇都宮ブリッツェン加入後は走力をつけて、チームの重要な戦力となり増田はじめ各選手の優勝や入賞に貢献してきた。加入直後4月の全日本選手権ロード4位の力は本物だった。9月のツール・ド・北海道の最難関ステージでは最後まで優勝を争う位置でゴール、もはや増田と同等の走力を持つ選手に。
「ゴール前、増田さんから自分が先にゴールしていいと言われた」と飯野。増田は来シーズン移籍するため、飯野がチームの主力選手になる。今年に圧倒的力を示した宇都宮ブリッツェンは若手を育成しつつ、しっかりと世代交代もする。来シーズンも注目だ。


結果
P1 88.6km
1位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)2時間35分07秒
2位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+01秒
3位 清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)+43秒
4位 西薗良太(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)+1分36秒
5位 平塚吉光(シマノレーシング)+2分17秒
6位 窪木一茂(マトリックスパワータグ)+3分32秒
7位 井上和郎(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)+4分20秒
8位 狩野智也(チーム右京)+5分22秒
9位 原川浩介(キャノンデール・スペースゼロポイント)
10位 初山翔(宇都宮ブリッツェン)+6分44秒

年間総合成績
個人総合 
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)12700点
2位 飯野智行(宇都宮ブリッツェン)10926点
3位 初山翔(宇都宮ブリッツェン)8102点

U23賞 1位 安原大貴(マトリックスパワータグ)

団体総合
1位 宇都宮ブリッツェン 38075点
2位 キャノンデール・スペースゼロポイント 20028点
3位 マトリックスパワータグ 19977点
4位 チーム右京 19076点
5位 シマノレーシング 17677点
6位 ブリヂストンアンカーサイクリングチーム 12526点

女子  25.6km
1位 西加南子(LUMINARIA)53分23秒
2位 長谷川馨(Nasu Fan Club)+39秒
3位 星川恵利奈(湘南ベルマーレクラブ)+1分16秒

photo&text:高木秀彰