2回目の休息日に向かってマイヨロホ争いは加熱する。怒濤のアストゥリアス山岳4連戦の初日、第14ステージ。アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)の攻防にアンカレス峠が沸いた。

第14ステージ・コースプロフィール第14ステージ・コースプロフィール image: Unipublic150kmに満たないショートコースに詰め込まれたカテゴリー山岳は5つ。スタートからゴールまで登りと下りしかないようなコースレイアウトであり、特に終盤のガリシア州、アストゥリアス州、カスティーリャ・イ・レオン州をまたぐ2連続1級山岳に注目が集まる。

ゴール24km手前の1級山岳フォルゲイラス・デ・アイガス峠でセレクションがかかり、最後は標高1470m、登坂距離9.5km、平均勾配8.1%の1級山岳アンカレス峠を駆け上がる。しかもラスト3kmから勾配はコンスタントに10%以上を刻む。

2分前後のリードを得て逃げるフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)ら2分前後のリードを得て逃げるフアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)ら photo:Kei Tsujiそんな「勝負の一日」は、アタック合戦でスタートする。

19km地点で16名が集団から抜け出すことに成功し、逃げに選手を送り込めなかったチームがメイン集団を率いる展開。4年連続山岳賞獲得中のダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)や、すでにステージ優勝を飾っているサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らが逃げた。

メイン集団の前方で走る土井雪広(アルゴス・シマノ)メイン集団の前方で走る土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsuji逃げの中にアルベルト・ロサダ(スペイン)を送り込んだカチューシャと、ハビエル・モレーノ(スペイン)を送り込んだモビスターは、当然集団コントロールに興味を示さない。この日はサクソバンク・ティンコフバンクがコントロールを担い、逃げグループとのタイム差を3分以内に抑え込んだ。

山岳王モンクティエは最初の3級山岳を先頭通過したものの、その後の山岳では山岳賞3位のクラークにことごとく敗北。クラークはこの日だけで18ポイントを稼ぎ出し、山岳賞トップの座をアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)から奪い返すことに成功した。

1級山岳フォルゲイラス・デ・アイガス峠で逃げグループは10名に絞られ、その後方にサクソバンク・ティンコフバンクがリードするメイン集団が迫る。

同峠の頂上手前でコンタドールの前輪がパンクしたが、ヘスス・エルナンデス(スペイン)が差し出したホイールを装着して再スタート。コンタドールが集団に戻ると、再びサクソバンク・ティンコフバンクがメイン集団の指揮を執る。

ガリシア州を東に進み、カスティーリャ・イ・レオン州ならびにアストゥリアス州の山岳地帯へと入っていくガリシア州を東に進み、カスティーリャ・イ・レオン州ならびにアストゥリアス州の山岳地帯へと入っていく photo:Kei Tsuji

1級山岳アンカレス峠に向けてメイン集団をコントロールするサクソバンク・ティンコフバンク1級山岳アンカレス峠に向けてメイン集団をコントロールするサクソバンク・ティンコフバンク photo:Unipublicやがてこの日最後の1級山岳アンカレス峠に差し掛かり、先頭グループからロサダがアタック。約2分のリードを得て全長9.5kmの登りを進む。メイン集団ではセルジオ・パウリーニョ(ポルトガル)、ダニエル・ナバーロ(スペイン)、ラファル・マイカ(ポーランド)がコンタドールのためにペースを作る。

サクソバンク・ティンコフバンクはペースアップの手を緩めず、総合5位ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)が脱落。そしてラスト3kmを切って本命が動いた。

1級山岳アンカレス峠でペースを上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)1級山岳アンカレス峠でペースを上げるアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク) photo:Unipublicチームメイトに終始リードされたコンタドールが、ラスト3kmからの急勾配区間を前にアタック。これにバルベルデとロドリゲス、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)が合流し、それまで逃げていたロサダを抜き去っていく。

総合3位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が出遅れる中、ラスト2kmでコンタドールが独走に持ち込む。しかし集団を木っ端みじんにするような全盛期の走りは見られず、ラスト1kmを切ってロドリゲスが先頭コンタドールに合流。こうして総合ワンツーの2人による山岳バトルが再燃した。

アタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)と、反応するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)アタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)と、反応するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji白い歯を剥き出しにし、執拗にアタックを繰り返すコンタドール。しかしマイヨロホは軽いダンシングでアタックを処理する。ラスト200mの最終コーナーを曲がり、今一度ペースを上げるコンタドールに対し、ロドリゲスがスプリント体勢で加速する。

そのまま先頭を守り抜いたロドリゲスがステージ3勝目をマーク。コンタドールを5秒、バルベルデを13秒、そしてフルームを38秒引き離すとともに、貴重なボーナスタイム12秒をゲットした。

1級山岳アンカレス峠頂上ゴールを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)1級山岳アンカレス峠頂上ゴールを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Unipublicロドリゲスは「まだ何かに勝ったわけじゃない」と、慎重な姿勢を崩さない。「一日でも悪い日があれば表彰台も危うくなる。でも今日は調子が素晴らしかったと言う他無い。コンタドールのアタックには無理に反応しなかった。仮にすぐに反応したら、彼はカウンターアタックで僕を窮地に追い込んだと思う」。

アストゥリアスの山岳1戦目を終え、苦戦すると思われたロドリゲスが総合リードを広げることに成功した。翌日の超級山岳ラゴス・デ・コバドンガ頂上ゴールで再び総合上位陣が激突する。

「プリート(ロドリゲス)を除いた他のライバルたちからタイムを奪うことが出来たので満足している。チームとしての走りは素晴らしく、責任感溢れるものだった。でも、間違いなくトップコンディションのプリートを頂上ゴールで引き離すのは難しい」と、総合で22秒遅れのコンタドールは話す。

フルームは総合3位の座を守ったが、同タイムでバルベルデが総合4位に。総合表彰台を懸けた闘いもこの先のステージで加熱するだろう。総合上位の選手たちは、下山の渋滞を避けるため、主催者が用意したヘリコプターで約150km離れたレオンのホテルに向かった。

頂上ゴールが設定された1級山岳アンカレス峠頂上ゴールが設定された1級山岳アンカレス峠 photo:Kei Tsuji1級山岳アンカレス峠1級山岳アンカレス峠 photo:Kei Tsuji

土井雪広(アルゴス・シマノ)は11分58秒遅れの66位でフィニッシュ。前日に139位から160位まで落とした総合順位を、133位まで上げることに成功した。「昨日のステージと比べたら全然辛くない。『ここでグルペットに入るべきかな?』と何度か思ったけど、身体は軽いし、最後の登りまで問題なく集団に残ることが出来た」と振り返る。次なる平坦ステージに向けて体力を温存しながら、全日本チャンピオンはアストゥリアスの山岳に挑む。

ヘリの出発を待つニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)ヘリの出発を待つニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) photo:Kei Tsuji「昨日と比べたら全然辛くない」土井雪広(アルゴス・シマノ)「昨日と比べたら全然辛くない」土井雪広(アルゴス・シマノ) photo:Kei Tsuji


ブエルタ・ア・エスパーニャ2012第14ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              4h10'28"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)      +05"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)                +13"
4位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                  +35"
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                   +38"
6位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)           +44"
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)                 +56"
8位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)                 +1'04"
9位 トマシュ・マルチンスキー(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)        +1'13"
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)          +1'17"
66 位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                    +11'58"

敢闘賞
フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン、ラボバンク)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              53h06'33"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)      +22"
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                  +1'41"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)               +1'41"
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                 +4'16"
6位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)                 +5'07"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)           +5'51"
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)          +6'13"
9位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)                 +6'34"
10位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)               +7'16"
133位 土井雪広(日本、アルゴス・シマノ)                   +1h38'04"

ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               144pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              122pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、アルゴス・シマノ)              112pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 サイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        34pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               30pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              26pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               4pts
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              9pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)    10pts

チーム総合成績
1位 ラボバンク                               159h01'48"
2位 チームスカイ                                +1'16"
3位 カチューシャ                                +5'08"

text&photo:Kei Tsuji in Puerto de Ancares, Spain