8月23日、ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第4ステージが行われ、シエラネバダ山頂のゴールへ向けて集団から飛び出したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)が区間勝利。57秒遅れでゴールしたシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)が新リーダーの座についた。

逃げグループをリードするクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)逃げグループをリードするクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ) photo:Cor Vos山岳の険しいブエルタ・ア・エスパーニャらしく、早くも第4ステージに登場する超級山頂ゴール。バーサ~シエラネバダ間の170kmは1級と3級の山岳が待ち受け、最後に登坂距離23km、高低差1322mの超級シエラネバダへゴールする難ステージ。総合争いの行方に注目が集まった。

昨日のステージ勝者で、この日マイヨロホを着るパブロ・ラストラス(スペイン)を擁するモビスター勢が集団をコントロール。厳しい山岳ステージということもあり、10kmを過ぎたところで集団は逃げを容認する。逃げグループを形成したのは以下の7名だ。

集団のコントロールに積極的なラボバンク集団のコントロールに積極的なラボバンク photo:Cor Vosトーマス・ローレッガー(オーストリア、レオパード・トレック)、クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)、ギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル)、マシュー・ブッシェ(アメリカ、レディオシャック)、セヴィセンテ・トリビオ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)、ヨアン・バゴ(フランス、コフィディス)、エデュアルド・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)。

この7名は31km地点の1級山岳アルト・デ・フィラブレスで7分の差を稼ぎ出す。この山頂を先頭で通過したのは、土井雪広(日本、スキル・シマノ)のチームメイトであるデコルト。この日を終えての山岳賞ジャージに意欲を見せるデコルトは、続く125km地点の3級山岳プエルト・デ・ロス・ブランカレスもトップ通過。逃げる7名は集団に対し6分弱の差をつけて下りに入ったが、ラボバンクがコントロールを始めた集団は、シエラネバダの登り口で4分までその差を詰める。

クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)が積極的に登りで走るクーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)が積極的に登りで走る photo:Cor Vos長く険しいシエラネバダの登りが始まると、ここまで力走を見せたデコルト、バゴ、トリビオが遅れ始める。モビスターに替わり前を固めるラボバンクはどんどん逃げグループとのタイム差を削り取っていく。カチューシャやヴァカンソレイユも人数を揃え、最終局面に備える。ピーター・サガン(スロヴァキア、リクイガス・キャノンデール)がエースのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)のために前を走る姿も。

シエラネバダ山頂を制したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)シエラネバダ山頂を制したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vos残り17km地点でタイム差は2分9秒。リーダーのラストラスは集団のペースについていけず、残り10kmで5分以上離される。集団は1分30秒まで逃げる4人を追い込んでいく。この集団のテンポに苦しんだのは優勝候補の一角イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)。しばらく集団の後方を走っていたが、残り8kmを切って脱落。アシスト選手が下がってくるが、アントンから集団が遠ざかる。

少しずつ人数を減らすメイン集団からラファル・マイカ(ポーランド、サクソバンク)がアタックを仕掛けると、集団が活性化。アントンとのタイム差を拡大したいリクイガス・キャノンデールがハイペースで集団のテンポを刻むと、そこからクリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)がアタックしてかき乱しにかかる。これにヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が反応する一幕もあったが、再度集団が落ち着いた瞬間にセレンセンがカウンターで飛び出す。

マイヨロホを獲得したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)マイヨロホを獲得したシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vosセレンセンのアタックについたのはロバート・キセロフスキー(クロアチア、アスタナ)。この2人は快調にペースを刻み、前を走る逃げグループの4人をキャッチし、追い越していく。ここで足を残していたボナフォンがキセロフスキーに替わってセレンセンをフォロー。先頭は2名となる。メイン集団との差は残り4kmで11秒。

さらに集団からダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)がアタック。ボナフォンが脱落し、先頭はソレンセンとモレーノの2名となり残り3kmに突入。その差は13秒差。セレンセンのハイペースに一時、モレーノが切れかかる場面もあったが、先頭2人のまま15秒で残り1kmを迎える。

山岳賞を同時に獲得したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)山岳賞を同時に獲得したダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosここまでずっと前でペースを作ったセレンセン。残り300mからのモレーノのステージ優勝狙いのアタックには反応できなかった。余裕でセレンセンをかわしたモレーノが先頭でシエラネバダ山頂に飛び込んだ。セレンセンは3秒遅れの2位に。2009年のジャパンカップとは逆の結果になった2人。高い登坂力をグランツールの舞台で見せつけた。

集団は11秒遅れでダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)を先頭に30名弱でゴール。近年のジャパンカップの顔が上位を占めた。苦しんだアントンは1分38秒遅れで最初の山岳ステージを終えた。この結果、総合リーダーは57秒遅れのステージ38位でゴールしたシャヴァネルの手に渡った。2008年以来3年ぶりにブエルタのリーダージャージに袖を通したシャヴァネル。ツール・ド・フランスのトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)のようなリーダージャージマジックが続く山岳で見られるか。

暑さに苦しんだ土井雪広(日本、スキル・シマノ)は24分25秒遅れのグルペット内180位でゴールしている。登りの厳しさを警戒したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)はこの日のレース中盤でリタイヤを選んだ。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第4ステージ結果
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)        3h58'00"
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)     +15"       
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・ISD)   +1'43"
6位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ) 
7位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)     
8位 ワウテル・ポーエルズ(オランダ、ヴァカンソレイユ)
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)
10位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)
180位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +24'25"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)         13h19'09"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               +43"       
3位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)         +49"
4位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)       
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)    +53" 
6位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)       +58"  
7位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)            +59"     
8位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)             +1'03" 
9位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)   
10位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)       +1'04" 

11位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)     +1'06"
12位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)  +1'07"
13位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           
15位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)      +1'18"
19位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)         +1'21"
21位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)         +1'31"
25位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックスTMC)           +1'52"
26位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)      +2'11"
28位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)           +2'23"
38位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)           +2'55"
191位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +41'37"

ポイント賞(プントス)
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)          28pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)    26pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)         25pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          20pts
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)     15pts
3位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ)          13pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          6pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)     15pts
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)   24pts

チーム総合成績
1位 レディオシャック        39h26'16"
2位 ラボバンク            +1'16"
3位 クイックステップ         +1'31"



text:Yufta Omata
photo:Cor Vos

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