最終日を翌日に控えた6日目は、午前に6Aステージ、午後に6Bステージと1日で2ステージが開催された。94.6kmの6Aステージでは序盤にできた6人の逃げに木守望が乗り、区間4位でフィニッシュ。一方39kmで開催された6Bでは綾部勇成が区間3位でゴールした。

蒸気機関車の横から第6Aステージがスタート蒸気機関車の横から第6Aステージがスタート (c)Sonoko.Tanaka

ザ・ツーリズム。蒸気機関車でスタートへ

午前・午後のダブルヘッダーとなる第6ステージは、白い蒸気が吹き出す蒸気機関車に乗るところから幕開けした。観光名物にもなっている現役の蒸気機関車が選手たちを出迎え、スタート地点まで機関車で移動するもので、“ツーリズム”に重点を置くツール・ド・シンカラを象徴するようなシーンだ。そして愛三工業レーシングチームの“テッチャン”こと中島康晴は、線路のすぐ側まで集まった地元の観客たちに笑顔で手を振り、選手たちは束の間の旅情を味わった。

「メガネなしはNGなんです!」中島康晴(愛三工業レーシングチーム)「メガネなしはNGなんです!」中島康晴(愛三工業レーシングチーム) スタート地点に到着し、汽車を降りる鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)スタート地点に到着し、汽車を降りる鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanaka


初海外、木守が6人の逃げに乗る力走

27km地点の中間スプリントポイントまで、集団では小さなアタックが頻繁にかかっていたが、スプリントポイントを越えると、集団が少し落ち着き始め、そのすきをついて、木守望(愛三工業レーシングチーム)と五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)を含む6人の逃げが決まった。

第6Aステージ、中盤に決まった6人の逃げ第6Aステージ、中盤に決まった6人の逃げ (c)Sonoko.Tanaka静かな田園のなかを抜けるプロトン静かな田園のなかを抜けるプロトン (c)Sonoko.Tanaka

「今まであまり逃げに乗った経験がないので、今回は逃げに乗りたいですね」と話していた木守。初めての海外レースでそのチャンスに恵まれることになった。しかしゴール手前の高低差200mほどの上り区間で、五十嵐とともにアタックをかけた3選手に遅れをとってしまう。

先行した3人がそのまま逃げ切り、イーミン・ジャオ(中国、ホーリーブラザー)がステージ優勝を挙げる。そして先頭からは遅れてしまったものの、木守は残された3人でのスプリントを制して区間4位、五十嵐は6位でフィニッシュした。

3人のスプリントを制したイーミン・ジャオ(中国、ホーリーブラザー)3人のスプリントを制したイーミン・ジャオ(中国、ホーリーブラザー) (c)Sonoko.Tanaka区間4位でゴールした木守望(愛三工業レーシングチーム)区間4位でゴールした木守望(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanaka

木守は「最後に上りがあるのがわかっていたので、体力をできるだけ温存したかったけど、先頭交代のローテーションを休むことはできなかった。上りでアタックがかかったときに付いていける脚がほしいです。足りないものや課題が明確になったので、次につなげる経験にしたいです」とコメント。

別府監督は「後ろ3人のスプリントで1番を取っているので、なんとか上りで付いて行ければ、区間優勝の可能性も高かったと思います。なので、チームとしてはちょっと悔しいですね。上りで仕掛けられる脚があるといいと思いますが、本人のいい経験になったと思います」と話す。




気分はインドネシア人。昼食をとる愛三工業レーシングチーム気分はインドネシア人。昼食をとる愛三工業レーシングチーム (c)Sonoko.Tanakaインドネシアの正装で昼食をいただく木守望(愛三工業レーシングチーム)インドネシアの正装で昼食をいただく木守望(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanaka


ステージ6B
綾部は区間3位、総合8位にランクアップ


そして王宮で昼食をとったあと、39kmという短い距離で第6Bステージが開催された。緩い上り基調だが残り10kmにかけて一度下り、またゴールに向けて上るのがコースの特徴だ。

ゴールを前に、上り基調になると集団のペースは上がり、残り5kmというところでアザド大学が複数でアタックを仕掛けた。そして、それを追えたのは登坂を得意とする綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)と総合4位につけるチョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)のみ。その状況で、彼らはアタックを潰すために脚を使わざるを得なかった。そして残り4kmでステージ勝者となるゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)が先行する。

ステージ優勝したゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)ステージ優勝したゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学) (c)Sonoko.Tanaka追走集団のスプリントにて2番手に入った綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)追走集団のスプリントにて2番手に入った綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) (c)Sonoko.Tanaka

綾部勇成は先行するポウルセイディには追いつけなかったものの、追走集団のスプリントで2番手に入り区間3位でフィニッシュ。「イランを追える選手が香港の選手と自分しかいなかったのがキツかった。ゴールスプリントは先行で仕掛けて、最後に刺されたような形ですが、限界の3位だったと思います。距離は短いですが、ハードなステージでした」と綾部はレースを振り返る。そして6Bステージを終えて、総合10位から8位に順位を上げた。

総合リーダーはアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)が難なくキープ総合リーダーはアミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)が難なくキープ (c)Sonoko.Tanaka王宮の前が本日の表彰台王宮の前が本日の表彰台 (c)Sonoko.Tanaka

翌、第7ステージも、午前と午後のダブルヘッダーで開催される。そして午前中に開催される7Aステージは標高1,000mほど上る山岳ステージとなっており、総合順位を決定づけるものとなる。

ステージ順位 6A
1位 イーミン・ジャオ(中国、ホーリーブラザー)2h16'52"
2位 エリクソン・オバサ(フィリピン、セブンイレブン)
3位 アレックス・マローン(オーストラリア、チームプランB)
4位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+23"
5位 ファジャー・ムリア・マルリ(インドネシア、CCCコロッシ)
6位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+26"
7位 チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)+1'55"
8位 フタヒラ・アブドゥラー(インドネシア、プリマ・ムッダ)
9位 ルリー・イブル・ファロカ(インドネシア、プリマ・ウタマ)
10位 アリン・イスワナ(インドネシア、DKTジャカルタ)
12位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
34位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)
41位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
50位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
68位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)


ステージ順位 6B
1位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)1h04'24"
2位 ワイ・チャン・リー(台湾、アクションサイクリング)+04"
3位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
4位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)
5位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)
6位 バンバン・スルヤディ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)
7位 トモ・スコールズ(CCN・コロッシ)
8位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)
9位 チュン・カイ・フェン(台湾、アクションサイクリング)
10位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)
30位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+47"
33位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)
39位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)
49位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+2'22"
60位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+4'16"
79位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+7'41"


総合成績(6Bステージ終了時)
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)13h35'35"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+14"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+1'50"
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'49"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+6'56"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+7'47"
7位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)+7'59"
8位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)+9'37"
9位 チュン・カイ・フェン(台湾、アクションサイクリング)+10'01"
10位 ホー・チン・コワ(香港、香港ナショナルチーム)+10'02"
15位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)10'52"
16位 伊藤雅和(愛三工業レーシングチーム)10'58"
32位 松尾修作(フジ・サイクリングタイムドットコム)+19'07"
47位 木守望(愛三工業レーシングチーム)+27'43"
60位 鈴木謙一(愛三工業レーシングチーム)+34'26"
61位 五十嵐丈士(フジ・サイクリングタイムドットコム)+34'42"

チーム総合首位
アザド大学

ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)

山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)

photo&text:Sonoko.Tanaka