地元・宇都宮での勝利を目指し果敢に攻めたブリッツェンの沢田時と小坂光。しかし沢田を襲ったチェーントラブルが明暗を分けた。好機を逃さなかった織田聖が、そこから圧倒的な走りを披露。昨年に続く連覇に結びつけた。今季負けなしの織田は下馬評通りの勝利をモノにした。



スタートを待つ男子エリート50人。陽が射すが徐々に気温は下がっていく photo:Makoto AYANO

ともに欧州ワールドカップ連戦を重ねた竹之内悠と織田聖
シマノレーシングからPEDALチームにジャージを着替えた横山航太



栃木県宇都宮市で開催された第29回シクロクロス全日本選手権。この日は酷寒の予報で、午前の予想気温は−6℃というものだった。結局は好天に恵まれるも、気温は10℃以下と低く、日陰のキャンバー路面は硬く凍てつき、この日のレースをより難しいものにした。

男子エリート50人の選手がスタート。ホールショットは竹内遼(GHISALLO RACING) photo:Makoto AYANO

50人の選手により14時30分にスタートが切られた男子エリート。ホールショットは竹内遼(GHISALLO RACING)がものにするが、ホームストレートを越えて砂場セクションを抜けたときには沢田時 (宇都宮ブリッツェン) がリードし、同じ赤のジャージを着たチームメイトの小坂光が続く。

三段坂を先頭でクリアする沢田時と小坂光 (宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO

そのまま三段坂から抜きどころの少ない林間のシングルトラックへ。地元勝利を切望するブリッツェンにとって、リード集団の先頭を固めたワン・ツー体制は理想的なフォーメーション。今季は調子が今ひとつ上がりきらない小坂だが、好調の沢田を早い段階で前に送り出すアシストの役割を担ったのだろう。

沢田時がリードし、竹内遼、小坂光、織田聖、横山航太、竹之内悠が続く photo:Makoto AYANO

日陰のキャンバーの路面は硬く凍てついていた photo:Makoto AYANO

沢田にとって第2の故郷となるここ宇都宮は、22歳のエリート初年度に全日本タイトルを獲得した幸運の場所。2度めのタイトル獲得に向けて意欲を剥き出しにしてリードを奪いにかかる。

積極的に飛ばし続ける沢田時 (宇都宮ブリッツェン)に織田聖と竹内遼が続く。この後、沢田がトラブルに見舞われる photo:Makoto AYANO

2周目、リードする沢田時に竹内遼と織田聖が食らいつき、3人による先頭パックが後続を引き離す。少し遅れて竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)、横山航太(PEDAL)、小坂光の3人が続く。前を行く3人がハイペースを保つなか、早くもレースの流れが決まったかに見えたとき、沢田をメカトラブルが襲った。

奥のキャンバーでバイクに飛び乗ったときにチェーンが外れ、それを直すために立ち停まる沢田。20秒ほどをロスし、7位にまで落ちる遅れを喫してしまう。

「なぜチェーンが外れたのかは分からなかった」とレース後に語った沢田だが、これがレースの明暗を分けた。

沢田のトラブルに早々に独走体制を固めた織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

これをチャンスと見た織田はすかさずペースを上げ、竹内をも振り切って独走状態に入る。腰を上げて力強く踏み込むと、竹内とは一気に20秒の差が開いた。ここでレースは決まったかに見えた。

シケインをバニーホップでクリアする織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

後は淡々とハイペースを刻む織田。今季の国内レースで負け無しの実力は、後続に差をつけた状態でさらに安定感を増す。沢田も追走を諦めず、ついたタイム差をおおかた返上し、竹内に追いつくと2位にまで浮上するが、織田に追いつくには至らない。

ラストラップで竹内遼を振り切って2位を確定させた沢田時 (宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO

それに続き4位につけるのは竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)。今季は欧州に遠征し、ワールドカップクラスのレースを5戦走って帰国。その疲労を残しての帰国だが、その鮮やかなライン取りとバイクさばきの見事さに観客からは感嘆の声が漏れる。竹之内は先日、シクロクロス日本ナショナルチームの監督に就任することが決まっている。

華麗なテクニックを披露する竹之内悠(/slash Cinelli-Vision)を小坂光がマーク photo:Makoto AYANO

力強い独走を続ける織田は大きな差をもって余裕のフィニッシュ。バイクを高々と掲げ、昨年に次ぐ勝利で初のエリートレース2連覇を遂げた。ジュニア時代より各カテゴリーでトップに居続けた織田だが、2年連続のタイトル獲得はエリートにして初のこと。

観客にハイタッチして連覇のフィニッシュに向かう織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

織田は言う。「トッキー(沢田時)が前に居た時点でのチェーントラブルだったので、すかさずアタックして差を開きました。独走に持ち込んでからはミスしないように心がけながら走りました。連覇というのは初めて。アンダーのときも勝っては翌年は落としてを繰り返したので、2年連続での勝利は初めてで、来年も日本ジャージを着て走れるのは嬉しいですね」。

フィニッシュするとバイクを掲げて一礼した織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Makoto AYANO

織田に遅れること1分40秒、2位でフィニッシュした沢田は地面に倒れ込むと悔し涙を見せた。

「チェーンがなぜ外れたのかは分からなかったんですが、直すのに手間取って差が開いてしまいました。まぁその後差を詰められなかったので、ヒジリが強かったんです。でも調子はすごく良かったですし、走れていたと思うんですが、それ以上にヒジリが強かったです」。

2位でフィニッシュすると悔し涙を見せた沢田時 (宇都宮ブリッツェン) photo:Makoto AYANO

レースを終えてみれば下馬評通りの強さで勝利した織田聖。今季国内負け無しだが、それに決して満足はしていない。

EF・NIPPOディベロップメントチームの選手としてロードシーズンは欧州中心に海外で走り、先の年末年始には竹之内同様に欧州シクロクロス遠征を敢行し、研鑽を積んだ。CXワールドカップを走った成果は「全体的にスピード域の高い走りができるようになりましたし、轍をトレースする能力は確実に向上したので、今日の砂場セクションは以前に比べて速く走れるようになりました」と話す。

男子エリート表彰 1位 織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) 、2位 沢田時 (宇都宮ブリッツェン) 3位、竹内遼(GHISALLO RACING) photo:Makoto AYANO

前日には織田のマトリックス・パワータグへの加入が発表されている。織田にとっては今後ロードレースを走りつつ、シクロクロスは別チームである弱虫ペダルに所属して走ることができるという、希望を叶える形態だ。

そして表彰式のあと、次シーズンのシクロクロス全日本選手権もこの宇都宮で開催されることが日本自転車競技連盟より発表された。30回記念大会となる次回の開催日は12月中になるため、11ヶ月後には再びこの宇都宮・ろまんちっく村にて日本チャンピオンを賭けたレースが開催されることになる。

沢田は話す。「来年も同じ会場ということなので、あまり時間は無いと思って取り組んでいきたいと思います。次こそ地元宇都宮で勝利を飾れるように」。
シクロクロス全日本選手権2024男子エリート結果
1位 織田聖 (弱虫ペダルサイクリングチーム) 58:27(av28.22km/h)
2位 沢田時 (宇都宮ブリッツェン) 1:40
3位 竹内遼(GHISALLO RACING) 2:06
4位 竹之内悠(/slash Cinelli-Vision) 2:44
5位 小坂光 (宇都宮ブリッツェン) 3:26
6位 加藤健悟(臼杵レーシング) 4:25
7位 横山航太(PEDAL) 4:49
8位 松田賢太郎(SUPACAZ) 4:57
9位 島田真琴(PEDAL) 5:07
10位 丸山 厚(BOMA/ROND CX TEAM) 5:12
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