12月17日(日)、キナンレーシングチーム配下の育成チームとなる「キナンレーシングチーム みえジュニア」の説明会が三重県立朝明高校で開催され、入団を希望する子供達と保護者らが参加した。説明会の模様と育成チームの狙いをレポートする。



キナンレーシングチーム みえジュニアの拠点となる三重県立朝明高校 photo:Satoru Kato

「キナンレーシングチーム みえジュニア」は、キナンレーシングチーム配下の育成チームとして2024年1月から活動を開始する。前日に行われたキックオフミーティングでも概要が説明されたが、この日は入団希望者を集めての説明会が行われた。会場となった三重県四日市市にある三重県立朝明(あさけ)高校は、三重県自転車競技連盟の協力の下チームの活動拠点となる。

このチームは、将来自転車プロ選手を目指す若い力を発掘・育成することを目標に、浅田顕氏が進める次世代選手発掘プロジェクト「ロード・トゥ・ラヴニール」とも提携し、ロードレースの本場ヨーロッパへの道も用意される。対象は小学5年生以上、高校生までの男女。小学4年生以下については応相談としているが、すでに何件か問い合わせがあるという。

入団者を集めて行われた説明会 photo:Satoru Kato

朝明高校に集まっての活動は土日祝日のうち月3回を予定。そのうち1回はキナンレーシングチームがホストを務めるレース「AACAカップ」への出場も含まれる。走力やスキルを数値化してレベルアップを図るだけでなく、レース1ヶ月前からの準備やレース後の振り返りまでを一貫して指導し、より実戦に即した知識を得られるプログラムが用意される。いずれは実際にエースとアシストの役割分担を決めてレースを走ることや、力をつけた選手がキナンレーシングチームのトレーニングキャンプへ参加することも予定されている。

とは言え、入団した全員がトップを目指すのではなく「スイミングスクールやダンススクールなどと同様の習い事の一種として、社会性や協調性を身につける場としても活用して欲しい」と、キナンレーシングチームの石田哲也監督は説明する。強い選手になれば世界へ挑戦する道も開けるが、そこまで望まなくても個々のレベルに合わせた指導を行うとしている。

パワーメーターを使った練習について説明する筧五郎コーチ photo:Satoru Kato
メンタル育成の必要性を話す金子広美コーチ photo:Satoru Kato


講師は、テレビ番組「チャリダー」でおなじみ筧五郎さんと、東京五輪女子ロードレース代表の金子広美さんに加え、キナンレーシングチームの選手が担当する。筧さんはパワーメーターを使用したスキルアップなど実践的な部分を担当し、金子さんはメンタル部分を主に担当するという。特にメンタルについて金子さんは「強くてもメンタルをやられて辞めてしまった選手を何人も見てきた。そうならないように、メンタル=心を育てることが必要と考えている。何かあれば相談して欲しい」と、入団希望者を前に話した。

説明を聞く入団希望者 photo:Satoru Kato

実技指導の説明をする筧五郎コーチ photo:Satoru Kato
キナンレーシングチームの選手に続いてスラロームを走る photo:Satoru Kato


直前に左右どちらかの指示を受けてボトルを受け取る photo:Satoru Kato
終了後に筧コーチの話を聞く入団希望者 photo:Satoru Kato


説明会後半では実際に自転車に乗っての実技指導が行われ、数名のグループに分けて集団走行を前提としたスラロームやボトル受け取りを実践した。これにより個々のレベルを判断し、入団後のグループ分けの参考とされる。

今回の説明会に限らず、「キナンレーシングチーム みえジュニア」への加入は随時受付を行なっている。



競技者数の底辺拡大と選手のセカンドキャリアを見据えて

ジャパンカップクリテリウムでパレードするブリッツェン・ステラのメンバー photo:Satoru Kato

浅田顕氏が進める「ロード・トゥ・ラヴニール」では、競技者数の底辺拡大は必須とされている。しかし高校でも全ての学校に部活があるわけではない自転車競技に対し、野球やサッカーは小学生のクラブや中学・高校の部活に加え、サッカーのJリーグでは育成チームを配下に持つことが必須とされており、これらが競技者数の大きな差に表れている。

今回の「キナンレーシングチーム みえジュニア」のように、小学生から高校生まで幅広い年齢層を対象とした育成チームは、宇都宮ブリッツェン配下の「ブリッツェン・ステラ」と「ブラウ・ブリッツェン」が代表例として挙げられる。一部クラブチーム等での活動もあるが、まだ少数派だ。こうした動きが他の国内チームにも波及し、底辺拡大の一助になることが期待される。

一方で、「育成チームは選手のセカンドキャリアのためでもある」と石田監督は言う。「自分も選手経験があるが、セカンドキャリアを考えて早めに引退を選んだ。このチームで育って選手として活躍し、引退した後は再びこのチームに戻って後進を育成するという形が出来れば理想」と話す。一朝一夕に出来ることではないが、そのような循環が成立するようになれば日本の自転車競技に大きくプラスになるだろう。


text&photo:Satoru Kato

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