スコットが展開するパーツブランド、シンクロスよりフルカーボンロードホイール"Capital SL"シリーズが登場。リムとスポークが一体化したワンピース構造によって、超軽量かつ最高レベルの駆動効率、高いエアロダイナミクス、そしてグラベルまで対応するキャパシティを誇るフラッグシップレーシングモデルだ。



シンクロス Capital SL (c)スコットジャパン

ロード、MTBを問わず常に最先端のレーシングモデルをリリースし続けるスコット。高性能を誇るスコットバイクにマッチするような専用コックピットやシートポスト、サドル、そしてホイールなどを手がけるパーツブランドがシンクロスだ。

今回紹介するCapital SLは、シンクロスがサポートするワールドチーム"チームDSM・フェルメニッヒ"がツールでも使用したカーボンホイールだ。リムと同時にカーボンスポークを成型するワンピース構造を最大の特徴とし、圧倒的な軽量性と剛性、そしてエアロダイナミクスを誇るレーシングモデルとして40mmハイトのCapital SLと、60mmハイトのCapital SL Aeroの2モデルで展開される。

山岳コースで強い味方となる軽量性を誇る (c)スコットジャパン

カーボンスポークを採用しているホイールをラインアップしているブランドは業界全体を見渡しても数少ないが、シンクロスは以前よりフルカーボンMTBホイールのSilverton SLを開発。ニノ・シューターらと共に、ここ数シーズンのワールドカップでその高い性能と信頼性を証明してきた。今回発表したCapital SLは、Silvertonで培ったノウハウを活かしつつロードホイールに求められる多くの要素を盛り込んだ意欲作となっている。

シンクロスがCapital SLのコンセプトとしたのは"System For Speed"。既存のパーツを組み合わせるのではなく、ホイールという系全体をスピードの為に定義し、理想を追求した設計を施した。それがモノコックホイールシステム(MWS)だ。

リム、スポーク、ハブフランジが一体化したモノコックホイールシステムを採用する (c)スコットジャパン

独自の特許取得技術によって、Capital SLはリム、そしてリムとリムを繋ぐスポーク、ハブフランジとの接合部分までがワンピース構造となっている。このMWSが実現するのは、より軽く、より強く、よりエアロ、そしてより高い応答性を持つホイール。つまりレーシングホイールとして求められるあらゆる要素を高次元で満たす革新的な一本としてCapital SLはデザインされている。

多くの要素がSilverton SLから受け継がれているが、大きく異なるのはハブシェルのカーボンを排除した点。これにより部品点数削減による軽量化、そしてハブとフランジ径を小さくすることでの空力向上という2つのメリットを同時に達成可能となった。

モノコックホイールシステムを実現する金型 (c)スコットジャパン

スポークも職人の手によって成形される (c)スコットジャパン
非常に細やかなカーボンシート積層 (c)スコットジャパン



カーボンハブシェルの廃止を可能としたのは、ワンピース成型されたモジュールにDTスイス 240EXPハブを挟み込んで接着する工法。さらにこの構造はカーボンスポークに対しプリテンションを与え、ホイール全体の剛性向上にも寄与している。カーボンスポークは強度にも優れており、一般的なステンレススポークに対してより軽量でありながら35%高い強度を実現している。

これらのオリジナリティ溢れる設計により、Capital SLは40mmハイトで1,170g、60mmハイトのエアロモデルで1,290gという重量を達成。同クラスのホイールと比較し、20%に及ぶ回転慣性削減を実現したという。

ハブとカーボンモジュールは接着される (c)スコットジャパン

DTスイス 240EXPのカスタムハブを使用する (c)スコットジャパン
この工法によって、カーボンスポークにプリテンションを掛けることを可能とした (c)スコットジャパン



この低慣性に加え、モノコック構造と独自のプレストレインプロセスが生み出すホイール全体の高い駆動剛性と横剛性によって、Capital SLは極めて鋭い加減速、そしてハンドリング性能を実現し、登りでも下りでも比類なきパフォーマンスを発揮する。

空力という面においても、妥協のない開発が行われている。シンクロスのエンジニアは最適な空力性能を実現すべく開発当初からライド時の速度や風速、風向といった現実の使用条件を考慮した設計を追求していたという。

徹底的なCFD解析が行われた結果、横風に強いリム形状を実現 (c)スコットジャパン

まず、ホイールの約200カ所に対して、CFD(数値流体力学)によるシミュレーションを実施。サポートするチームDSMから得た3年間のレースにおける風向データに基づいて得た結果をもとにリム形状を最適化することで、より横風に近い角度においてもリムからの層流剥離を抑えるデザインに辿りついた。これが意味するのは、走行抵抗の軽減はもちろん、横風にハンドルを取られづらい高い安定感を有するホイールであるということだ。

シンクロスのエンジニアたちは、更なるエアロダイナミクスの最適化のため、カーボンファイバー製スポークを使用したユニークなワンピース・デザインを風洞実験施設へと持ち込んだ。エンジニアたちは実際の使用条件に近しい結果を得るべく、これまで一般的であった無回転時の抵抗測定だけでなく、ホイールが実際に回転した際の空気抵抗も検証できる専用システムを開発し、Capital SLとCapital SL Aeroの設計テストを行ったという。

CFDの後に風洞実験で形状を煮詰めたという (c)スコットジャパン

風洞にはいくつかのリム形状をテストできる可変式の模型が持ち込まれた (c)スコットジャパン

こうして決定されたリム形状がもたらすエアロ効果は、同時にテストに掛けられた同等のリムハイトを持つライバルホイールたちに対して、最低でも7%以上優れた空気抵抗値を示したという。別の角度で表現するならば、40mmハイトのCapital SLは競合他社の60mmハイトと同レベルの空力性能を発揮するとも。

さらに、シンクロスはタイヤを含めたホイールシステムとしてCapital SLを開発することで、より優れたパッケージ性能を実現する。リム内幅25mmかつフックレスデザインを採用したリムにマッチし、最高のエアロダイナミクスと転がり抵抗を発揮するタイヤとして、シュワルベとPro One Aeroを共同開発。

実際にホイールを回転させた状態でのエアロダイナミクスも測定された (c)スコットジャパン

フロントとリア、それぞれに求められる特性を鑑み、前後専用設計とされたPro One Aeroタイヤ。フロントモデルは現代のリムで最もエアロダイナミクスに優れた形状に設計され、リアタイヤは、低転がり抵抗と駆動輪に必要な耐久性に特化しているという。

なお、このPro One Aeroタイヤ以外のロード/グラベルタイヤも使用可能となっているが、フックレスリムということもあり、シンクロスはメジャーなタイヤブランドの各モデルについて互換性保証を公表している。なお、タイヤの銘柄を問わず最高空気圧は5気圧となる。

Capital SLにベストマッチするよう開発されたシュワルベ Pro One Aeroタイヤ (c)スコットジャパン

ワンピースカーボンホイールという構造は修理しづらいものであるが、そういった問題に対してシンクロスはクラッシュリプレイスメントプログラムを準備して対応する。ファーストオーナーが購入より3年間、落車等によりホイールが修理不能なダメージを負った場合は、特別価格(1年目は希望小売価格の50%、2年目は70%、3年目は80%)にて新品を購入可能となるプログラムだ。

国内での販売時期は2024年ごろを予定しており、価格などは追って発表される予定だ。

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