超級山岳ロズ峠で繰り広げられた山岳バトル。逃げ切りから初勝利を掴んだフェリックス・ガルはレース後のインタビューで涙を流し、失速したポガチャルは「自分でも何が起きたのか分からない」と困惑を素直に口にした。第110回ツールのクイーンステージを終えた選手たちのコメントを紹介します。



区間優勝 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)

プロ2勝目を初出場のツールで飾ったフェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) photo:CorVos

素晴らしい。この気持ちをなんて表現すればいいのか分からないほどだ。今年は最良のシーズンとなっており、ツール・ド・フランスでの勝利だなんて信じられない。しかもそれがこのクイーンステージ。僕に多くを与えてくれたチームに感謝したい。

3週間に渡るステージレースを走ることは簡単ではなく、僕は徐々にチームで総合エースの役割を担わなければならなくなった。その役割を全うしようと自分自身に必要以上のストレスをかけていた。だがここ2日は調子が徐々に上がっていた。

最後の数kmは後ろに追いつかれてしまうと思い、とても怖かった。そしてフィニッシュした瞬間は喜びの感情以外、何もなかった。

クイーンステージ勝利を表彰台で噛みしめるフェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) photo:AG2R Citroën Team

今日は一日を通して調子が良かったものの、逃げ集団からステージ優勝者が出るとは思っていなかった。ステージは厳しかったがスタートから脚は軽かった。だから有力な選手たちからアドバンテージを奪って最終山岳に入るために逃げに乗ったんだ。

最終山岳に入る前から調子の良さを感じており、ベン(オコーナー)が素晴らしいアシストをしてくれた。急勾配区間まで待ち、そこからアタックを仕掛けた。既にコンディションの良し悪しなど感じないほど苦しかったが、手元の数字を見る限り良いペースで踏めていたのでそのまま突き進んだ。

ツールで勝つことが幼い頃からの夢というわけではないものの、1年〜1年半前の自分からは想像もできなかった勝利。本当に嬉しいよ。

区間2位 サイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)

勝利に一歩届かなかったサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー) photo:So Isobe

残酷な結果だ。この高い標高であっても彼(ガル)は素晴らしい走りをした。脱帽だよ。彼を下りで捉えることができればと思ったのだが、テクニカルなコースに僕自身のペースが上がらなかった。チーム全体としてこのステージを狙っていた。ローソン・クラドックが逃げ集団を牽引してくれ、最終山岳ではクリス・ハーパーがペースを作ってくれた。彼らには本当に感謝している。

勝利には届かなかったものの、自分の走りには満足しているよ。

区間4位&マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

逃げ集団を追い抜きながらロズ峠の頂上を目指すヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:So Isobe

今日のプランはレースを厳しい展開に持ち込むこと。その作戦を実行することができたし、総合タイムを稼ぐことができて嬉しい。レース中の無線でポガチャルの不調が伝えられ、その30秒後に集団から遅れたのでセップ(クス)に集団先頭を牽いてもらった。

もちろん大幅なリード(7分35秒)を得ることができ、とても嬉しい。だけどまだ僕らはパリに到着していないし、最後の3日目でマイヨジョーヌを失うことも大いにあり得る。

マイヨジョーヌのリードを大幅に拡大したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

―最終山岳でのアタックは総合タイムを稼ぐためか?あるいはステージ優勝を目指していたのか?

ステージ優勝を目指していた。だがフェリックスは強く、彼に今日の勝利は相応しい。

―ライバルの実質的なマイヨジョーヌ争いからの脱落に、一抹の悲しさのような思いはあるか?

もちろんある。だが僕自身にとって良い日となったことが嬉しいよ。

ヴィンゲゴーから5分45秒遅れでフィニッシュしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

苦しむ表情でフィニッシュに辿り着いたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

やってしまった。もう終わりだよ。自分に何が起こったのか分からない。可能な限り補給を摂ったのだが、そのエネルギーがお腹に留まり脚にいかなかった。約3時間半走っただけで空っぽになってしまった。最終山岳の麓では既に身体の力はなくなっていた。

もしチームの素晴らしいサポートがなければ総合表彰台も危うくなっていただろう。そんな中でも最後までマルク(ソレル)と共に踏み続け、チームメイトや声援を送ってくれたファンに感謝している。

失速の原因が(序盤の)落車かどうかは分からない。そこまで痛みはなかったものの、何かしら影響を及ぼしたのかもしれない。(昨年のツール第11ステージで失速した)グラノン峠でもこれほど酷い体調ではなかった。

今日は競技人生で最も悪い日だ。でも、この後も変わらず戦い続ける。マルク・ソレルのおかげで限界まで自分を追い込むことができた。この後は回復に努め、第20ステージもあるのでチーム一丸となりステージ優勝を狙いたい。それに、このまま僕とアダムで総合表彰台に立ちたい。

text:Sotaro.Arakawa
photo: So Isobe, CorVos, A.S.O.

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