10月にオープンした福島県玉川村「スキルパークたまかわ」で開催された、ファミリータイプのMTBエンデューロレース。ここにMTB全日本XCOチャンプ・平林安里(スコット・テラシステム)がゲスト参加。平林が乗るスコットの2023年モデル試乗会も行われ、スキルパークで自然にライダー同士のセッションが始まった。スコット2023年モデルの簡単なインプレと施設の利用方法も合わせてお伝えしよう。



23モデル試乗会にジャンプセッション、そして平林安里XCOチャンプもきた

スキルパークたまかわで行われたエンデューロレースに参加した面々で記念写真スキルパークたまかわで行われたエンデューロレースに参加した面々で記念写真
12月11日、福島県玉川村の「スキルパークたまかわ」にてエンデューロレースが行われた。本気なガチ勢から将来有望なファミリーチームまで、ローカル主体のエンデューロレースでみんなが楽しめる1日となった。

福島県玉川村の「サイクルヴィレッジたまかわ」は、MTBを中心とした体験型の観光アクティビティ複合施設。福島空港内を含む周辺土地に作られた合計6.5km全5コースのトレールと今年10月にオープンしたばかりのMTB/BMX用ジャンプ&パンプトラックの「スキルパークたまかわ」がその中心地だ。

スキルパークたまかわの全景、奥側のスタートが一段高くペダリングなく最初の加速ができるスキルパークたまかわの全景、奥側のスタートが一段高くペダリングなく最初の加速ができる photo:Koichiro Nakamura
2022MTB全日本選手権XCOチャンプ、1年前の絶望的な怪我から復活して、五輪レガシーコースを完全に制覇した平林安里。その笑顔にも自信が宿る2022MTB全日本選手権XCOチャンプ、1年前の絶望的な怪我から復活して、五輪レガシーコースを完全に制覇した平林安里。その笑顔にも自信が宿る photo:Koichiro Nakamura平林のエンデューロでの光景。いつも赤いジャージなので今日は青くてびっくりする平林のエンデューロでの光景。いつも赤いジャージなので今日は青くてびっくりする photo:Koichiro Nakamura


スキルパーク、スタートから見た光景。右側のジャンプは徐々に大きく、左のパンプはリズムでロールと膝丈ジャンプを使いこなす練習になるスキルパーク、スタートから見た光景。右側のジャンプは徐々に大きく、左のパンプはリズムでロールと膝丈ジャンプを使いこなす練習になる photo:Koichiro Nakamura
少し離れたところにBMX/スケートボード用の屋内パーク「アーバンスポーツたまかわ」や別のMTBトレイルなどもあり、これらライド施設群をまとめ「サイクルヴィレッジたまかわ」として、4年ほど前から管理運営を行なっている。

この福島空港周辺のトレイルコースとスキルパークを使って行われた11日の《トレイルライド&エンデューロレース》だ。これにゲストライダーとして2022年度MTB全日本XCOチャンピオンの平林安里選手が参加し、平林選手が乗るスコットも2023年新バイク群の試乗会を行った。

数年かけて走り締めた走行ライン、ここにはライドの文化がある

エンデューロの参加者たち。子供の多さにも驚くが、みんなほんとにうまくてビックリもするエンデューロの参加者たち。子供の多さにも驚くが、みんなほんとにうまくてビックリもする photo:Koichiro Nakamura
エンデューロレースでは全部で3つのステージを走った。SS1(第1ステージ)がパンプトラックのタイムアタック。SS2、SS3が空港の周囲を走る「空港トレイル」内の特設コースを走り、これら3つのタイムを合計する。

それぞれコースの設定は1分以内と短かったが、なかなかに本格的。トレイルの設置が行われ始めたのは4年前。そこから実際に走るライダートレイルのライン取りやメンテナンスを長くMTBに乗る人々が中心に行っているからだ。このトレイル・プロジェクトは4年ほど前から実施されており、だからこそコースは何年も走りこまれてきたほどにしっかりとラインができている。

コース途中にある不思議な造形。地元の林業従事者がチェーンソウのみで製作したベンチとジャケット、バックパック掛けコース途中にある不思議な造形。地元の林業従事者がチェーンソウのみで製作したベンチとジャケット、バックパック掛け photo:Koichiro Nakamuraコースは走り締められている。これは今日のレースコースだが、それだけではない長年のライン跡が見受けられるコースは走り締められている。これは今日のレースコースだが、それだけではない長年のライン跡が見受けられる photo:Koichiro Nakamura


落ち葉がある時期のトレールはやっぱりすてきだ。滑りやすく信じられないが目に美しい落ち葉がある時期のトレールはやっぱりすてきだ。滑りやすく信じられないが目に美しい photo:Koichiro Nakamura手前のグラベルは、水が溜まりやすくぬかるみやすい箇所への処置。なるほどと思わせられる技量テクもトレイル内に多い手前のグラベルは、水が溜まりやすくぬかるみやすい箇所への処置。なるほどと思わせられる技量テクもトレイル内に多い photo:Koichiro Nakamura


コース自体も、愛好家らが何年も走り作り込んできただけあって、それぞれ異なった性質のトレイルラインとなっている。気軽なダブルトラックからフジテンのようなフロウ系まで、軽い起伏と地形をうまく利用したコースレイアウトで作られる。

エンデューロレースへの参加者の多くは地元のライダーで、その多くがファミリー層。トレイルライドをよく楽しんでいるなという風貌と走りだった。4年かけてこの「空港トレイル」を育ててきてくれたのだろう。特に子供たちが楽しそうに、しかも鋭く走っている姿が印象的だった。

寒かったので、SSの間はみんな止まっていられずいつの間にかセッションからのトレインへ寒かったので、SSの間はみんな止まっていられずいつの間にかセッションからのトレインへ photo:Koichiro Nakamura
この大会で特別賞をもらった村上耀太くん(前左から2番目)7歳とそのファミリー+平林安里。耀太くんは、前回のレースでは上りが登れなかっていたのに、今度はうまくなってジャンプまで飛んじゃってすごい!という理由での特別賞受賞。それがここのスピリット!この大会で特別賞をもらった村上耀太くん(前左から2番目)7歳とそのファミリー+平林安里。耀太くんは、前回のレースでは上りが登れなかっていたのに、今度はうまくなってジャンプまで飛んじゃってすごい!という理由での特別賞受賞。それがここのスピリット! photo:Koichiro Nakamura
さらに驚いたのは、そのライダーの多くがバシバシにジャンプを飛んでいたこと。スキルパークができてまだ2ヶ月も経っていないのに、一番大きなジャンプを子供から白髪まで皆飛んでいる。平林選手も皆に混じって、楽しそうに飛んでいる。そのライダーの数と幅広い年齢層に圧倒された。ここには走る文化が、小さくはない規模でできている。

このプロジェクトのリーダーとも言えるのが、一般社団法人サイクルヴィレッジたまかわ代表理事の國分洋平さん。20年以上MTBに乗ってきて、長距離レースからストリートトリックまでMTBでなんでもこなす。「自分が乗るトレイルが欲しかった、というのが、ここができたいちばんの理由です」。知り合いにいた自転車好きな県職員の方から少しずつツテをたぐっていって、「4年前から正式に事業化、今年から法人化しています」。

サイクルヴィレッジたまかわの発起人であり代表者である國分洋平さん。最初は自分のために、それからは増えていく仲間のために。MTBがスポーツでありライフスタイルであることを実証する第一人者であるサイクルヴィレッジたまかわの発起人であり代表者である國分洋平さん。最初は自分のために、それからは増えていく仲間のために。MTBがスポーツでありライフスタイルであることを実証する第一人者である photo:Koichiro Nakamura
もう少し聞くとさらに切実な事情があった。「実は近い山には熊が出て、一度その姿を見てから走れなくなってしまって……」。その気持ちわかります。「でも空港近辺のこの辺りには熊が出ないので、どうしてもここにトレイルが欲しくて」その気持ち、心底わかります。

スコット'23モデル、SPARK RCとGENIUSを試乗した

スコットの'23試乗車の中からジャンプを飛ぶのに平林が選んだお気に入りは、やっぱり乗り慣れたレース仕様のSPARK RC。このフロントの曲げ挿しからのおつりでリアにキレのあるウィップを入れるスコットの'23試乗車の中からジャンプを飛ぶのに平林が選んだお気に入りは、やっぱり乗り慣れたレース仕様のSPARK RC。このフロントの曲げ挿しからのおつりでリアにキレのあるウィップを入れる photo:Koichiro Nakamura
SPARK RCと GENIUSに共通する、特徴的で機能的な内蔵型サスユニット。ロックされたカバーはボタン一つで開くSPARK RCと GENIUSに共通する、特徴的で機能的な内蔵型サスユニット。ロックされたカバーはボタン一つで開く photo:Koichiro Nakamura
スコットの2023年バイクに試乗した。ともにフルサスのSPARK RCとGENIUSだ。XCO、すなわちクロスカントリー・オリンピックの世界で、伝説のレーサーであるニノ・シューター(SCOTT-SRAM MTB Racing Team)と共に1位を走りつづけてきたスコット、両モデルともニノによる最強で最新の知見が詰まっている。

その大きな特徴が、BB部に一体化したリアサスペンションだ。サスユニットを一番下にしたことで、低重心の効果を得られてコーナリングでの車体の取り回しが軽くなる。走りの中で一番重みを感じにくい場所でもあるので、さらに車体の軽やかさを感じられる。

しかもこのリアサスをカバーすることで、リアサスは汚れにくい。その機能がフレッシュなままである、というのが、特に選手として今年の平林にはとても重要だった。平林にはその話をじっくり聞いたが、これはまた別の記事でお届けする。

SPARK RC TEAM ISSUE クロスカントリーレース向け、トラベル量は前後共に120mm、価格968,000円(税込)SPARK RC TEAM ISSUE クロスカントリーレース向け、トラベル量は前後共に120mm、価格968,000円(税込) photo:Koichiro Nakamura
ヘッド周りからケーブル類をすべて内部に取り込んでいる。作業には手間はかかるが空力性能は格段に向上するヘッド周りからケーブル類をすべて内部に取り込んでいる。作業には手間はかかるが空力性能は格段に向上する photo:Koichiro Nakamura言われなければこの下にサスユニットがあるとは思えない。こういった新しいアイディアを具現化するのが昔からスコットは得意だ言われなければこの下にサスユニットがあるとは思えない。こういった新しいアイディアを具現化するのが昔からスコットは得意だ photo:Koichiro Nakamura


SPARK RC TEAM ISSUEは、平林選手も乗るXCO用レーシングモデル。前後サスは共に120mmトラベル、走りの味付けは文句なしのレーシングモデルである。バック部をピボットレスにして軽量性と剛性を高め、カーボンのしなり自体を加速性につなげるというのがデザインの狙いだ。

実際に乗ると、そのピボットレスの剛性とリアサスの挙動が、前に伸びるように送り出される感覚だ。試しにジャンプを飛ぶと前に出る。レーシングスタイルの低いエアを挿しやすくて気持ちいい。価格は968,000円(税込)。

GENIUS 930 トレイル・エンデューロ向け、トラベル量は前160mm、後150mm。価格660,000円(税込)GENIUS 930 トレイル・エンデューロ向け、トラベル量は前160mm、後150mm。価格660,000円(税込)
リアサスのサグはメインピボットにつけられたサグ計で行う。こういうところがスコットだリアサスのサグはメインピボットにつけられたサグ計で行う。こういうところがスコットだ photo:Koichiro NakamuraGENUISのリア三角は後輪車軸の斜め下にピボットがつく。これにより後輪の動きは完全な4バーシステムとなり、より滑らかな挙動にGENUISのリア三角は後輪車軸の斜め下にピボットがつく。これにより後輪の動きは完全な4バーシステムとなり、より滑らかな挙動に photo:Koichiro Nakamura


一方の'23 GENIUS 930はトレイル/エンデューロ系のバイク。SPARK RCとその性質を大きく変える象徴が、チェーンステーのエンド部にピボットが追加されること。一つ増えた可動部のおかげでリア荷重時の挙動がよりまろやかに、衝撃を受け止めるように感じさせる。

軽めの乗り味で飛び出しも狙いやすく、大きく飛んでも安心できるオールマウンテン系の前160mm、後150mmトラベル。これで白馬イワタケの上のジャンプ部をリフトで回したい。ドライブトレインはシマノ XT/DEORE、そのレベルに合った実用的なパーツがついて価格は660,000円(税込)。

サイクルヴィレッジたまかわの施設を利用するには

ジャンケン大会の模様。このジャンケン担当女性がとても強くて参加者は難儀ジャンケン大会の模様。このジャンケン担当女性がとても強くて参加者は難儀 photo:Koichiro Nakamura
ガイドツアーではレンタルバイクも借りられる。JrMTBペダルバイクからeバイクまで用意されるガイドツアーではレンタルバイクも借りられる。JrMTBペダルバイクからeバイクまで用意される photo:Koichiro Nakamura
サイクルヴィレッジたまかわの屋外施設である「空港トレイル」「岩法寺トレイル」と「スキルパークたまかわ」は、基本的に予約してガイド付きの利用となる。利用料金=ツアーガイド料金は、2022年12月時点では1人3時間2,500円~に設定される。ツアー時間は9:00~12:00、13:00~16:00に設定されている。何せ公共事業なので色々固そうだが、実際に相談してみればなんとかならなくもなさそうな気もする。

それ以外にもスキルパークは月に1度は一般オープン日が設定され(詳細はSNSにて告知)、実際に走れるイベントも積極的に開催している。今回スキルパークたまかわができたことで、トレイルエリアの目印にもなり、ライド前のウォームアップにもなる。もちろんガイドツアーと銘打って、ジャンプだけを楽しむ使い方もできる。ツアー詳細は公式Webページ並びに各SNSよりご確認を。

eバイクは3時間のツアーを2000円でレンタルできる。ペダルバイクの場合は1000円eバイクは3時間のツアーを2000円でレンタルできる。ペダルバイクの場合は1000円 photo:Koichiro Nakamura
サイクルヴィレッジたまかわには、ライドへの情熱があるサイクルヴィレッジたまかわには、ライドへの情熱がある photo:Koichiro Nakamura

サイクルヴィレッジたまかわ公式サイト:https://cycle-village-tamakawa.com
SCOTT SPARK RC / GENIUS:https://www.scott-japan.com/publics/index/1087/

TEXT: Koichiro NAKAMURA

最新ニュース(全ジャンル)

シクロパビリオン創設15周年を記念して、春の奥武蔵を走った日仏交流サイクリング Makoto Ayano 2024/04/28(日) - 14:23
エキップアサダがつなぐ日本とフランスの関係