スペシャライズドから新型グラベルバイク"DIVERGE STR"が登場。前後に独自のサスペンション機構である"Future shock"を搭載したフルサス仕様でありながら、リジッドバイク並みのペダリング効率を備えた一台へ進化した。



スぺシャライズド Diverge STRスぺシャライズド Diverge STR (c)スぺシャライズド・ジャパン
オンロードバイクのタイヤキャパシティーの増加、グラベルレースの普及などに伴い、だんだんとロードバイクとグラベルバイクの境界はグラデーションのように細分化してきている。先般行われたグラベル世界選手権では、エンデュランスロードで参加する選手も多く見られるなど、コースや乗り方に合わせて、ラベリングにとらわれない機材選択が重要となってきた。

レースシーンを牽引するスペシャライズドもまた、豊富なラインアップにより、その需要にこたえるブランドの一つだ。エンデュランスレーサーのRoubaix、グラベル/CX両対応のCRUX、そして最もキャパシティが大きなグラベル/アドベンチャーバイクとして用意されるDivergeという3つのラインアップで、広がり続けるドロップハンドルオフロードライドの世界をカバーしている。

3年以上の開発期間を経たFuture shockリア3年以上の開発期間を経たFuture shockリア (c)スぺシャライズド・ジャパン
今回発表されたのは、最もアグレッシブにオフロードを走破するためのバイクであるDivergeの進化形。Diverge STRと名付けられた第4世代は、従来のフロント用に加え、リア用に開発された新たなFuture Shockを搭載し、フロント20mm、リア30mmストロークを実現するフルサスグラベルバイクへ生まれ変わった。

簡単におさらいしておくと、Future ShockとはRoubaixやDivergeに採用されてきたフォークコラム内蔵型サスペンションシステム。一般的なサスペンションがホイールを動かすことで、バイクの挙動を安定させようとするのに対し、Future Shockはバイクまで動くことを許容する代わりにライダーへ振動や衝撃を伝えず、サスペンションがもたらす安定したコントロール性と、リジッドバイク並みの軽量性と反応性を両立することを狙っている。

リアホイールの軌跡を相殺するようにサドルの位置が動き、ライダーを路面の振動から切り離すリアホイールの軌跡を相殺するようにサドルの位置が動き、ライダーを路面の振動から切り離す (c)スぺシャライズド・ジャパン
2016年に初代Future ShockがRoubaixに搭載されたのち、2017年にはDivergeにも伝播した。当初コイルスプリングのみだったFuture Shockに油圧ダンパーが追加され、さらに動きを洗練させたFuture Shock2.0を備えた新型Roubaixが2019年に登場すると、翌年にモデルチェンジしたDivergeにも同じものが与えられた。

スペシャライズドは、その間にもリア用のFuture Shockシステムの開発を続けていたという。コンセプトエンジニアのクリス・ダルージオが悪路が続くユーレカ渓谷で受けた「振動と切り離すのはバイクではなく、ライダーだ」という天啓を形にするため、多くのプロトタイプが作られたという。

最初期のスライドリンク式プロトタイプ最初期のスライドリンク式プロトタイプ (c)スぺシャライズド・ジャパン
当初はシートチューブを独立し、エアショックと組み合わせたスイングリンク方式を実験するも、パワー伝達効率や反応性は求めるレベルに達さなかった。そこでスペシャライズドのエンジニアたちは、既存のRoubaixやDivergeに解決策があることに気づいたという。

つまり、シートポストを積極的にしならせることで、リアバックの追従性を生み出していたこれらのバイクは、段差を乗り越える際のリアホイールの軌道をしっかり相殺するサドルの動きを生み出していた。このアプローチのまま、必要なトラベル量を確保し、またリバウンド時にライダーを前方へと押し出すエネルギーを相殺するためのダンピングを実装することが次なる目標となった。

エキセントリックBBでストロークを生み出したセカンドプロト。ダウンチューブ内蔵のエアショックで制御するエキセントリックBBでストロークを生み出したセカンドプロト。ダウンチューブ内蔵のエアショックで制御する (c)スぺシャライズド・ジャパン
フレームポストの弾性をスプリングとして利用する方向を決めたプロトタイプ。現在の形に近づいてきたフレームポストの弾性をスプリングとして利用する方向を決めたプロトタイプ。現在の形に近づいてきた (c)スぺシャライズド・ジャパンDivergeのフレームにFuture shockリアを移植した最終プロトDivergeのフレームにFuture shockリアを移植した最終プロト (c)スぺシャライズド・ジャパン

ほぼ最終モデルと同じ構造のダンパー周り。テンドンの武骨さがプロトらしいほぼ最終モデルと同じ構造のダンパー周り。テンドンの武骨さがプロトらしい (c)スぺシャライズド・ジャパン
このアイデアを形にするために最初に選定されたのが、エキセントリックBBを利用してトラベルを生み出すというアプローチ。しかしこれは構造が複雑になると同時に重量もかさむという欠点があった。

そして、最終的に選ばれたのが、優れた柔軟性によってスプリングの役割を果たす「フレームポスト」によって前後方向のトラベルを確保する方式。このフレームポストをトップチューブに内蔵されたダンパーユニットと接続することで最適な動きを実現している。

Future shockリアを構成する部品。左からフレームポスト、ダンパー、2つを繋ぐテンドンFuture shockリアを構成する部品。左からフレームポスト、ダンパー、2つを繋ぐテンドン (c)スぺシャライズド・ジャパン
動きやすさを決定するスプリングレシオを調整するために、そのしなやかさに応じて9種類のフレームポストが用意され、フレームサイズに応じてその中から2種類が同梱される。フレームポストは挿入する角度を選ぶことで、カーボンレイアップによりハードとソフトを調整でき、当初のパッケージのみで4種類から好みの硬さを選べる。

一方、動きの速さを決めるのがトップチューブに内蔵されたダンパーだ。サドルが後ろに動くコンプレッション(プル式なのでダンパーは伸びる動きとなるが)側に3段階の調節機能が備えられている。オープンでは最も制限のないアクティブな動きに、クローズドではより緩やかな動きとなる。なお、完全に動きを封じるロックアウト設定は無いようだ。

目玉となるFuture shockリア目玉となるFuture shockリア photo:Makoto Ayano
コンプレッション調整ダイヤル 3段階から選択可能コンプレッション調整ダイヤル 3段階から選択可能 photo:Makoto Ayano
また、サドルが元の位置に戻る速さに影響するリバウンドダンピングも調節可能となっている。こちらはフレームポストの剛性とライダーの体重や好みによって最初に設定することで、最適な動きを得るためのものとなる。

このようにして、シンプルかつ軽量で調節可能なリアサスペンションとして完成したリアのFuture Shockだが、シートポストに専用品を使う必要が無いことも大きなメリットだ。27.2mm径の丸形シートポストであれば、ドロッパーポストにも対応している。ペダリングを続ける必要のあるシチュエーションではトラクションとコントロールを高めるリアのFuture Shockが、よりアグレッシブに下るシーンではドロッパーが、それぞれライダーを助けてくれるだろう。

どんな地形でも路面の振動からライダーを切り離すどんな地形でも路面の振動からライダーを切り離す (c)スぺシャライズド・ジャパン
フロント/リアのFuture Shockを搭載しつつ、従来のDivergeに比べると前後Future Shock、SWATなどを含むシステム重量では400gの増加にとどめられ、日本で展開される最上位グレードのDiverge STR PROの完成車重量は8.9kgとアンダー9kgを堅持。わずかな重量増と引き換えに、圧倒的な快適性とトラクション、コントロール性能の向上を実現している。

フレームジオメトリーについても、Divergeとスタック・リーチは共通とされており、同じポジションを実現可能。細かな違いとなるが、BBドロップが5mm、チェーンステー長が4mm増加しており、シートアングルが最大0.5度立たされている。これらは、リアのFuture Shockのサグ(静止状態の初期移動量)を補正するための変更とのことだ。

タイヤクリアランスは現行モデルと同様の最大700×47mm、650Bであれば52mm(2.1インチ)でフォーク/フレームとの間に最低6mmの間隔を確保しているとのことだ。フロントフォークにはラックやケージを取り付けられるアイレットを搭載する一方で、フレーム側にはフェンダーやラックを取り付けられる台座は用意されていない。

ダウンチューブをストレージとして使えるSWATダウンチューブをストレージとして使えるSWAT photo:Makoto Ayano
ダウンチューブに設けられた内蔵ストレージシステム、"SWAT"はDiverge STRにも備えられている。ボトルケージ台座を兼ねる蓋がワンタッチで取り外せ、手軽に内部ストレージへとアクセスできる。2つの専用袋が用意され、チューブやタイヤレバー、ツールや鍵などを収納可能だ。

また、Diverge STRはほとんどのフレームバッグやバイクパッキング用のシートパックに対応しているというが、いくつかの注意点がある。ハンドルバッグなどはFuture Shockのラバーブーツに干渉しないものが望ましく、また大容量のサドルバッグを使用する際にはスプリングとなるフレームポストの変更が必要となる可能性があるとのことだ。

あらゆる地形を走破するために生み出されたDiverge STRあらゆる地形を走破するために生み出されたDiverge STR (c)スぺシャライズド・ジャパン
路面による振動からライダーを切り離す前後Future shockを搭載することで、スペシャライズドのグラベルバイク史上最高レベルの追従性を確保しつつ、軽くキビキビと走る反応性をも両立したDiverge STR。

国内ではFact11rのカーボンフレームを採用したS-Works Diverge STRフレームセットが825,000円、おなじくFact11rのフレームにスラム Force eTap AXS Eagle、ロヴァール Terra CLを組み合わせたDIVERGE STR PRO完成車が1,210,000円 、フレームは共通でスラム Rival eTap AXS Eagleとロヴァール Terra Cを組み合わせたDIVERGE STR EXPERT完成車が990,000円(全て税込)にて用意される。

また、シクロワイアードでは、Diverge STRの魅力を更に深堀りする特集記事も今後掲載予定だ。お楽しみに。

かつてない路面追従性と運動性能を両立するDiverge STRかつてない路面追従性と運動性能を両立するDiverge STR (c)スぺシャライズド・ジャパン


スペシャライズド S-WORKS DIVERGE STR FRAMESET
サイズ:49,52,54,56
カラー:Satin Forest Green/Dark Moss Green/Black Pear
価格:825,000円(税込)

スペシャライズド DIVERGE STR PRO
フレーム:Diverge FACT 11r carbon frameset with front and rear Future
Shock suspension, SWAT™ Door integration, threaded BB,
internal routing, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドルバー Roval Terra, carbon, 103mm drop x 70mm reach x 12º flare
コンポーネント:SRAM Force eTap AXS Eagle
ホイール:Roval Terra CL
フロントタイヤ:Tracer Pro 2BR, 700x42
サイズ:52,54,56
カラー:Satin Blaze/Violet Ghost Pearl Fade
価格:1,210,000円(税込)

スペシャライズド DIVERGE STR EXPERT
フレーム:Diverge FACT 11r carbon frameset with front and rear Future
Shock suspension, SWAT™ Door integration, threaded BB,
internal routing, 12x142mm thru-axle, flat-mount disc
ハンドルバー:Specialized Adventure Gear Hover, 103mm drop x 70mm reach
x 12º flare
コンポーネント:SRAM Rival eTap AXS Eagle
ホイール:Roval Terra C
フロントタイヤ:Tracer Pro 2BR, 700x42
サイズ:49,52,54,56
カラー:Satin Black/Diamond Dust、Satin Harvest Gold/Gold Ghost Pear
価格:990,000円(税込)

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