ドイツのセキュリティブランドであるABUSが手掛けるフラッグシップモデルのヘルメット"AIRBREAKER"。モビスターとアルペシンフェニックスが使用し、軽量性と通気性を備えたヘルメットをインプレッション。



ABUS AIRBREAKER(POLAR WHITE)ABUS AIRBREAKER(POLAR WHITE) photo:Michinari TAKAGI
1924年創業の老舗セキュリティブランドABUS(アブス)はサイクルロックでヨーロッパ最大のシェアを獲得しているブランド。コンパクトに収納できるブレードタイプのBORDOシリーズを始め、チェーンロックやU字ロックなど多くのモデルをラインアップし、自転車盗難防止に貢献している存在だ。

優れた安全性によってロックの分野で高い評価を得てきたABUSが次にターゲットとしたのは、サイクリストの安全を守るヘルメットだ。2018年にモビスターと共同開発で生まれたGAMECHANGERで、ABUSはロードバイク用レーシングヘルメットへ本格参入を果たした。その年にアレハンドロ・バルベルデが世界チャンピオンに輝き、ABUSのヘルメットの存在を世に知らしめた。

2021年シーズンからアルペシン・フェニックスへと供給していることもトピックだ。シクロクロスの世界チャンピオンでロードレース、マウンテンバイクとあらゆる競技で活躍するマチュー・ファンデルプールが、ABUSのヘルメットを着用しているシーンを見たことがある方も少なくないだろう。

前方からの空気を取り込みやすいシェルデザイン前方からの空気を取り込みやすいシェルデザイン
サイドにブランドロゴを配置サイドにブランドロゴを配置 ヘルメット後部に配置された大型のエアベントヘルメット後部に配置された大型のエアベント"AIRPORT"から排気

ヘルメットのトップ部にはハニカム構造のベンチレーションを搭載ヘルメットのトップ部にはハニカム構造のベンチレーションを搭載
現在GAMECHANGERに加え、プロ選手が主に着用するのが新モデルとなるAIRBREAKER。エアロヘルメットとして空気抵抗削減を狙ったロードヘルメットのGAMECHANGERに対し、AIRBREAKERはGAMECHANGERをベースとしつつ軽量化と通気性を高めたモデルだ。

AIRBREAKERはラインアップの中で最軽量に仕上げられており、Sサイズで200gという重量を達成していることが特徴だ。軽量なオールラウンドヘルメットとされているため、プロレースでも着用されるシーンは非常に多く、一般サイクリストにとってもヒルクライムやロングライドなど幅広いシチュエーションでも活躍してくれそうだ。

数多くのベンチレーションホールが設けられたAIRBREAKERは、内部の空気の流れに注目して開発されたことが特徴。前頭部はもちろんのこと額部分にも溝が設けられており、ヘルメット内に風を取り込もうという意図が見える。そして、深さのある内部チャネルは後頭部の大型エアベントまでつながっており、風が遮られることなく外へ排出される設計のため、ヘルメット内に熱がこもる心配も少ないだろう。

ベンチレーションデザインという面でユニークなのが、ヘルメットのトップ部に設置されたハニカム構造のホールを備えたプレートだ。ヘルメットの周りに流れる空気の速度に応じて、ハニカムから排出される空気の量が変化するというエアロダイナミクスを活かした設計となっている。

左右に大きな樹脂製サポートが備えるZOOM ACEシステムを採用左右に大きな樹脂製サポートが備えるZOOM ACEシステムを採用
上下に多段階の調整が可能上下に多段階の調整が可能 JCF公認のヘルメットJCF公認のヘルメット

ストラップはバックルがなく縫い合わせられているストラップはバックルがなく縫い合わせられている
左右ストラップのサイドバックル(2本の顎紐を束ねる物)が省略され、顎紐が縫い合わせられている仕様も特徴的だ。軽くなることはもちろん、樹脂パーツが顔に当たらないため、ストラップが顔に沿う状態でも快適な着用感を得られるようになっている。

アジャスターシステムであるZOOM ACEは、左右に大きな樹脂製サポートが備えられており、後頭部をしっかりと支えてくれる。ポニーテールにも対応する形状のため、長髪の方でも使いやすいはずだ。ダイヤルも片手で簡単に調整できる仕様だ。

JCF公認ヘルメットのため、サイクリングイベントからレースまで使用できる。カラーは16色と豊富なカラー展開で、自身が所属するチームやウエアコーディネートに合わせて選ぶことができるだろう。サイズはSとM、Lの3サイズ展開で価格は32,780円(税込)。



―編集部インプレッション

普段はMサイズだが、AIRBREAKERではLサイズがジャストフィット普段はMサイズだが、AIRBREAKERではLサイズがジャストフィット
AIRBREAKERは、シクロクロスの世界チャンピオンでロードレースでも活躍しているマチュー・ファンデルプール(オランダ)が今シーズンから着用していることでも個人的に注目していたモデルであった。

アジアンフィットのヘルメットと相性が良い私が普段着用するブランドやサイズは、カスクやジロだとMサイズ、カブトの場合はS/Mサイズ。ABUSのヘルメットは初めて着用するため、今回はMサイズとLサイズのAIRBREAKERを借り受けた。

典型的な日本人頭でもキノコ頭になりにくい典型的な日本人頭でもキノコ頭になりにくい
Mサイズは寸法としては問題ないのだが、頭頂部と側頭部が帽体に当たるため、いわゆるユーロフィットのヘルメットという印象を受けた。続いてLサイズを被ってみると、サイズとしては大きいのだが、アジアンフィットヘルメットのようにバッチリとフィットする。ヘルメットのインナーパッドが部分ごとに分割されず、1枚のシート状になっていることやフローティング構造になっていることで、ヘルメットが許容する頭の形が広いためだろう。

大きめのサイズなのだが、ヘルメットが前後や左右にずれてしまったりということもなく、適正サイズのヘルメットとして使うことができるフィット感を得られた。フィット感に優れているため、重量面で不利なLサイズでも据わりがよく、軽量ヘルメットに相応しい印象を受ける。長時間のライドでも首への負担が軽減されるため、快適なライドをすることができるだろう。

クロージャーのダイヤルは細かく凹凸があり調整しやすいクロージャーのダイヤルは細かく凹凸があり調整しやすい
アイウェアをヘルメットの前方に差し込むことで保持できるアイウェアをヘルメットの前方に差し込むことで保持できる 後ろにもアイウェアをかけることが可能後ろにもアイウェアをかけることが可能

アジャスターシステムのZOOM ACEも高いフィット感に貢献している。大きなアジャスターが頭を包み込み、広範囲にわたってしっかりと支えてくれ、ライド中にヘルメットがずれにくい。上下にも細かく調整できるため、試着する時は細かく調整してフィットするか試しても良いだろう。

着用感に影響する美点は左右の顎紐にバックルが設けられていないこと。耳にバックルが当たることがないので、長時間のライドで痛みが発生することがない。また、しなやかな顎紐が顔に沿ってフィットしてくれることもメリット。ストレスになりにくいため、顎紐をしっかり締められるというメリットもあるはずだ。

通気性が良く、ヘルメット内部に熱がこもらないため快適だった通気性が良く、ヘルメット内部に熱がこもらないため快適だった

走り出してみてまず感じられるのは、前頭部にあるエアインテークから風が積極的に入りこみ、額に当たること。風が当たることで、涼しさを感じられる。そして、深い溝を風が通り抜けていき、AIRPORTから一気に排気されるのも感じられ、風がこもらないことによる涼しさも体感できる。これからのジメジメした梅雨時期や猛暑の夏でも快適なライドができるだろう。

ライド中にかけていたアイウェアはヘルメットの前方と後方にかけることができる。しっかりとホールドできるため、サイクリング中にカフェや食事、どこかへ立ち寄る時や、休憩をする時にも利便性が高いと思う。

フラッグシップモデルらしい軽量さを備え、首への負担が軽減しているフラッグシップモデルらしい軽量さを備え、首への負担が軽減している
カラー展開は16色と多くラインアップされており、シンプルなデザインのため、ご自身が所属するチームウェアや愛車のカラーに合わせて選ぶことができる。また、トータルコ―ディネートにも加えやすく、お洒落に着用可能だ。

ABUS AIRBREAKERは軽量性と通気性を備えたヘルメットであった。フラッグシップモデルであることからレースではもちろん、梅雨時期や夏のサイクリングでワンランク上の快適さを楽しみたいライダーに試してもらいたい。



ABUS AIRBREAKER
カラー:GLEAM SILVER、VELVET BLACK、STEEL BLUE、BLAZE RED、CELESTE GREEN、CELESTE GREEN、POLAR WHITE、SHRIMP ORANGE、PINK、MOVISTAR TEAM、FLIPFLOP PURPLE、BLACK GOLD、OPAL GREEN、LIGHT GREY、BLACK RED、DARK GREY
サイズ:S(51~55cm)、M(52~58cm)、L(58~62cm)
重量: 200g(S) / 220g(M) / 230g(L)
価格:32,780円(税込)
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