昨年から始まった新形態のトラックレース「バンクリーグ」の第2戦が、11月14日に宇都宮競輪場で開催された。Jプロツアーを戦う6チームが出場し、シマノレーシングが昨年に続き優勝した。イベントの模様と、3年目に向けて見えた課題をレポートする。




宇都宮競輪場のナイター照明に照らし出されたバンクを走る宇都宮競輪場のナイター照明に照らし出されたバンクを走る photo:Satoru Kato
「バンクリーグ」は、各地の競輪場=バンクを舞台に、国内ロードレースチームがバトルを繰り広げるレースイベントとして昨年スタート。自転車レースイベントとしては異例の有料観戦のスタイルを取り、昨年は全4戦、今年は8月の名古屋と今回の宇都宮の2戦が開催された。

第1戦名古屋ラウンドの覇者・キナンサイクリングチームとマトリックスパワータグの対決第1戦名古屋ラウンドの覇者・キナンサイクリングチームとマトリックスパワータグの対決 photo:Satoru Kato
バンクリーグのレースは、独自の「3ポイントレース」。1チーム4名で構成した2チームが出走し、1周おきに設定されるポイント周回において、先頭でコントロールラインを通過した選手のチームに1ポイントが与えられる。先に3ポイントを取ったチームが勝ちとなり、ポイント周回は3周目からなので、最短で7周、最長で11周のレースとなる。

昨年は1人の選手が獲得できるポイントは2ポイントまでとされていたが、ルールが改定されて1ポイントまでとされた。これにより1人の選手が逃げてポイントを連取することが出来なくなり、より拮抗したレース展開が生まれるようになった。先にポイントを取った選手は次のポイント周回で牽引役を務めるなど、チームでの役割分担と戦略も見ものだ。

バンク内側のVIPエリアからの眺めバンク内側のVIPエリアからの眺め photo:Satoru Kato
スタート前の選手へフェンス越しに声援を送るスタート前の選手へフェンス越しに声援を送る photo:Satoru Kato地元チーム宇都宮ブリッツェンの選手入場地元チーム宇都宮ブリッツェンの選手入場 photo:Satoru Kato

最初にも書いた通り、バンクリーグの観戦は有料チケットの購入が必要だ。今回の宇都宮ステージでは、バンク外の自由席はおとな1,500円、こども500円。バンク内側から観戦できるVIPエリアチケットは、おとな7,000円、こども3,500円。レース前にバンク走行を体験できるバンク走行会付VIP席はおとな8,000円、こども4,000円の設定。VIP席では、アルコールを含む飲食がセットとなる。自由席に比べ割高感のあるVIP席だが、先に完売となるのはVIP席。販売数が少ないこともあるが、今回も早々に完売となったそうだ。

VIPエリアでなくても、宇都宮競輪場なら選手を間近に見ることができる。スタート前、透明樹枝板のフェンス越しに整列する選手は、観客席の目の前。コロナ禍でアクリル板の仕切りが各所でみられるが、はからずもコロナ対策にも役立っていると言えようか。

宇都宮競輪場名物モツ煮宇都宮競輪場名物モツ煮 photo:Satoru Katoこの背中は・・・!この背中は・・・! photo:Satoru Kato

会場内には飲食の出店もあるが、今回は宇都宮競輪場常設の売店やレストランも開店。スタンド側にある売店では、うどんやラーメン、ホットドリンクなどが提供されていた。中でも、噛む必要がないくらい柔らかく煮込まれた宇都宮競輪場名物のモツ煮は必食の旨さだ。

今年は観戦可能なレースが少なかったこともあり、多くの観客が来場した今年は観戦可能なレースが少なかったこともあり、多くの観客が来場した photo:Satoru Kato競輪選手会栃木支部とバンクリーグ選抜メンバーで行われたエキシビジョンマッチ競輪選手会栃木支部とバンクリーグ選抜メンバーで行われたエキシビジョンマッチ photo:Satoru Kato

決勝は愛三工業レーシングチームvsシマノレーシング決勝は愛三工業レーシングチームvsシマノレーシング photo:Satoru Kato
お互いの動きを観察しつつ、仕掛け時をさぐるお互いの動きを観察しつつ、仕掛け時をさぐる photo:Satoru Katoコースサイドから指示を出すシマノレーシング野寺監督とチームメイトコースサイドから指示を出すシマノレーシング野寺監督とチームメイト photo:Satoru Kato

さて、今回のレースには、地元栃木県の宇都宮ブリッツェンと那須ブラーゼンをはじめ、トラック種目に強い選手を揃える愛三工業レーシングチーム、名古屋ステージ優勝のキナンサイクリングチーム、昨年の宇都宮ステージ優勝のシマノレーシング、Jプロツアー総合優勝のマトリックスパワータグの、計6チームが出場した。

東西3チームずつに分かれて予選リーグが行われ、地元2チームを容赦無く切り捨てた愛三工業レーシングチームと、名古屋に続き連勝を狙うキナンサイクリングチームを下したシマノレーシングが勝ち上がり決勝戦へ。お互い2ポイントずつを獲得して最後までもつれた対決は一丸尚伍が3ポイント目を獲って勝負を決め、シマノレーシングが昨年に続き宇都宮連覇。餃子100人前の賞品を手にした。

決勝戦 3ポイント目を一丸尚伍が獲ってシマノレーシングが宇都宮ラウンド連覇を決めた決勝戦 3ポイント目を一丸尚伍が獲ってシマノレーシングが宇都宮ラウンド連覇を決めた photo:Satoru Kato
賞品は餃子100人前!賞品は餃子100人前! photo:Satoru Kato優勝したシマノレーシング 優勝したシマノレーシング photo:Satoru Kato

走路を汚さないように、シャンパンではなく炭酸水ファイト走路を汚さないように、シャンパンではなく炭酸水ファイト photo:Satoru Kato引退選手に各チーム監督やチームメイトから花束が贈られた引退選手に各チーム監督やチームメイトから花束が贈られた photo:Satoru Kato




バンクリーグ2年目の成熟と課題

昨年もレースごとにルールの手直しがなされてきたが、1人1ポイント制を導入したことでさらに面白いレースが見られるようになった。出場チームも戦い方を会得してきて、特に今回優勝したシマノレーシングは定番戦法となったマンツーマンだけでなく、自在な戦い方を見せた。ルール改定とチームの戦法が相まって、3ポイントレースは完成の域に達したと感じた。(バンクリーグの戦法についてはこちらを参照)

スタンド側自由席の張り紙スタンド側自由席の張り紙 photo:Satoru Kato一方で、観客に対するソフト面では課題も見えた。

VIP席では飲食がセットとなるためテーブル席が用意される。席数はチケット販売数だけ用意されるため、昨年も相席をお願いするアナウンスがなされていたが、今回も相席をお願いされたと言う。公式サイトでは新型コロナウィルス対策を呼びかけていたことを考えると、チグハグな対応と言わざると得ない。

VIP席とは言っても、テーブルは早く来た人から順に確保される自由席。来場のタイミングによっては、グループで観戦に来ても別々の席に座ることになってしまう場合もある。例えばテーブルごとのチケット販売や指定席制などを検討する必要性を感じる。

VIP席の前を通過する選手に声援を送る。ハイタッチはなし。VIP席の前を通過する選手に声援を送る。ハイタッチはなし。 photo:Satoru Kato他にも、ドリンク券と交換するソフトドリンクが足りなかったことや、バンク内と外の行き来のタイミングが難しいという声も聞かれた。選手を間近に見られるという特典以外の価値を今後高めることが求められよう。

来年は、先日発表されたジャパンサイクルリーグ(JCL)が企画運営することが発表されている。開催時期や参加チーム等については今後の発表を待つことになるが、レースイベントとして更なるブラッシュアップを期待したい。


text:Satoru Kato