ジロ第17ステージは、50kmを過ぎて新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)を含む逃げ集団が形成され、残り3kmでアタックをかけたダミアン・モニエ(フランス、コフィディス)がステージ優勝。新城はメカトラで勝負どころで後退し、13位に終わった。

19名の大きな逃げグループに入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)19名の大きな逃げグループに入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsuji山岳ステージが連続する最終週のジロ・デ・イタリア。この日も山岳ステージだが、設定される山岳ポイントは1級がひとつと、比較的難易度の低い山岳ステージとなった。この山岳ポイントから30km下って、30kmを登ってゴールというコースから、むしろこちらのノンカテゴリーのゴール前の登りに注目が集まった。

173kmと短めのコース設定からか、レースは序盤からアタックが繰り返される。この日と翌日以外のステージは実質、逃げでの勝利が難しいことを受けて多くの動きが起こるが、どれも決定打に欠いた。


チームメイトに守られて1級山岳を上るマリアローザのダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)チームメイトに守られて1級山岳を上るマリアローザのダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Riccardo Scanferlaこの日50kmを過ぎて、決まった逃げは19人の大人数の逃げ。ここには新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が入り、今大会2度目の逃げグループ入りを果たす。他にはダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)、ニキ・セレンセン(デンマーク、サクソバンク)、レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)ら各チームの中堅選手が入る。

この逃げはみるみる集団との差を開き、90km地点では11分44秒差を稼ぎ出す。106km地点の1級山岳パラーデ峠でも19人はまとまったまま走り、逃げ集団のまま下りへ。マリアローザのダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)擁するケスデパーニュが牽引するメイン集団はこの山頂を8分12秒差で通過。


中間スプリントポイント目がけてアタックしたミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)中間スプリントポイント目がけてアタックしたミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ) photo:Riccardo Scanferla残り30km地点で差は9分18秒。19人の逃げる選手がステージ優勝の可能性を意識する中、まず最初にこの先頭集団で動いたのはミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)。思い切りのよいアタックでひとり飛び出す。

イグナチエフは5kmほどを単独で逃げた後、追走集団に吸収される。新城を含む誰もがアタックのチャンスをうかがう中、残り20km地点でセレンセンがアタック。しかしこれも決まらず、すかさず追走が吸収する。


チェーントラブルの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)がゴール15km手前でストップチェーントラブルの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)がゴール15km手前でストップ photo:Riccardo Scanferlaセレンセンの吸収で間が生まれた先頭集団からダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)がアタックするとそれに新城が反応。2人で抜け出す動きになりかかるが、すかさず追走が入る。

しかし残り18.3km地点で今度は新城がアタックして単独で先頭集団から抜け出す。第5ステージでも魅せた積極的なスタイルで、自らレースを作っていく。この新城をチェックするのはホンド、デュケ、スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)の3人。


何とか逃げグループに復帰した新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)何とか逃げグループに復帰した新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Riccardo Scanferla少しの間、4人で先頭を走るが、後続が続々と合流。再び逃げ集団内の動きが活性化するが、ここで新城はチェーン脱落でストップを余儀なくされる不運に見舞われる。メカニックの助けを得て再び走り出し、チームカーの隊列を利用して逃げ集団に復帰するが、その時にはすでに前では逃げが決まっていた。

先頭集団からさらに逃げを成功させたのはホンド、ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)、ダミアン・モニエ(フランス、コフィディス)の3人。これを単独で追走するのはスティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)。そして後方集団からクミングスを追って飛び出したのは再び新城だ。


逃げグループから飛び出したダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)ら3名逃げグループから飛び出したダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)ら3名 photo:Riccardo Scanferla新城は単独5番手で残り10kmのバナーを通過。しかしこの動きは多くの後続の選手を引連れる結果となり、新城は前を捕えることなく追走集団に吸収される。ただひとり、モレーノだけがクミングスに合流し、先頭3人、追走2人、集団14人という構図に。

残り4km地点で先頭の3人は新城集団から1分差を稼ぎ出す。先頭の3人は登りでも、いいペースを刻んで走っていく。クミングスとモレーノも30秒後方で懸命の追走を見せるが追いつかない。


ガッツポーズでゴールするダミアン・モニエ(フランス、コフィディス)ガッツポーズでゴールするダミアン・モニエ(フランス、コフィディス) photo:Kei Tsujiそして残り3kmのバナーのところでモニエがアタック。一気に加速し、追いすがるクルイスウィックを突き放す。ここまで登りで一番苦しそうな表情を浮かべていたモニエがこれで単独先頭でゴールを目指す。

上体を揺らしながらもぐいぐいとペダリングに力のあるモニエがどんどんクルイスウィックとホンドに差をつけ、そのままラスト1kmへ。最後は右手に力を込めたガッツポーズでゴール。記念すべきプロ初勝利をジロの勝利という大金星で飾った。


ステージ13位に入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)ステージ13位に入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム) photo:Kei Tsuji2位にはホンドが入り、3位にはかわされたクルイスウィックが入った。モニエは結局、この2人に対してゴールで30秒以上の差をつけた。

果敢に走った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)はチェーンのトラブルもあり、2分12秒遅れの13位でゴール。しかし、残り20kmを切ってからのアタック合戦に加わり、自ら活路を見出していく積極的な走りが光った。第5ステージの走りは言うに及ばず、「戦う」レースで魅せる走りは多いに評価されてしかるべきだろう。


メイン集団はミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)を先頭にゴールメイン集団はミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ)を先頭にゴール photo:Riccardo Scanferla総合上位陣は9分53秒遅れでゴール。リクイガス・ドイモが急激に登りでペースアップをし、総合争いが活性化すると思われたが、総合上位の選手は遅れること無く15人ほどの小集団でゴール。しかしカルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム)とリッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)は数秒タイムを失っている。

翌第18ステージはスプリンターに最後のチャンスとなる156kmの平坦ステージ。ここまで残っているスプリンターは多くはないが、熾烈なゴール前の争いが展開されるだろう。




ジロ・デ・イタリア2010第17ステージ結果
1位 ダミアン・モニエ(フランス、コフィディス)           4h29'19"
2位 ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)     +36"
3位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)        +39"
4位 ダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)       +1'05"
5位 スティーブ・クミングス(イギリス、チームスカイ)          +1'18"
6位 シモーネ・ストルトーニ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)    +1'48"
7位 アレクサンドル・エフィムキン(ロシア、アージェードゥーゼル)    +1'55"
8位 マルコ・マルツァーノ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)  +1'57"
9位 イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、サーヴェロ・テストチーム)+2'01"
10位 カルロスホセ・オチョア(ベネズエラ、アンドローニ・ジョカトーリ) +2'07"
13位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)               +2'13"


個人総合成績
1位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)          73h11'38"
2位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)            +2'27"
3位 リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)        +2'44"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)      +3'09"
5位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロテストチーム      +4'41"
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       +4'53"
7位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)     +5'12"
8位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ) +5'24"
9位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ファルネーゼヴィニ)  +9'21"
10位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、リクイガス・ドイモ)  +9'32"
107位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)            +2h29'32"

山岳賞 マリアヴェルデ
マシュー・ロイド(オーストラリア、オメガファーマ・ロット)

ポイント賞 マリアロッソパッショーネ
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)

新人賞 マリアビアンカ
リッチー・ポルト(サクソバンク、オーストラリア)

チーム総合成績
リクイガス・ドイモ

総合フーガ(逃げ)賞
ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)

ステージ敢闘賞
ダニエル・モレーノ(スペイン、オメガファーマ・ロット)

text:Yufta Omata
photo:Kei Tsuji,Riccardo Scanferla

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