スペシャライズドが放つE-BIKE、"TURBO"シリーズ。軽量E-MTBという新たなカテゴリーを提案し、注目を集める"LEVO SL"で半日ほどトレイルを走り回った二人の編集スタッフが感じたことをただしゃべる、放談インプレッションをお届け。



スペシャライズド LEVO SL EXPERT CARBON スペシャライズド LEVO SL EXPERT CARBON
今年の初め、スペシャライズドが発表したTURBO SLシリーズ。2月の発表会で用意されたE-ROADのCREO SLでその走りを堪能したCW編集スタッフの安岡と磯部だが、その出来の良さにすっかりやられてしまい、「これはLEVO SLも気になるよねえ」、なんて話していたある日。

噂をすればなんとやら、「お届け物でーす」と突然編集部にLEVO SLがやってきた。これは乗らずにはいられない、とそれぞれ半日ばかりトレイルに持ち出してみたのでした。以下、遊び疲れた二人のお喋りをノーカットでお届けします。

CREOのインプレッションはこちら

安岡と磯部がCREOに続きLEVOについて語り合う安岡と磯部がCREOに続きLEVOについて語り合う
磯部:一言で言うと、めっちゃくちゃ楽しかった。

安岡:わかりみが深い。いや、自分もちょっと坂一本登って下って帰ってこようと思ってたんだけど、気付いたら夕方だったよ……。

磯部:全然帰ってこなかったもんね(笑)この前はロードのCREOに乗ったわけだけど、LEVO SLはまた違った性格に感じたな。CREOに乗った時、トルクが細いのがMTBだったらどうなるんだろう、って話してたでしょ?実際のところ、どう感じた?

安岡:まず、理論的な話で行けばスペシャのSL1.1ユニットって、高速になればアシスト比率が下がっていく日本の法規制的には割と不利なユニットだと思うんだよね。トルクが細い=回転数(ケイデンス)を上げないとパワーが出ないわけだから、おいしいところが少ないハズで。

磯部:うんうん。

安岡:で、低速域が多くなるオフロードだとケイデンスを上げづらいシーンもあるし、どうしてもパワー不足を感じることがあるのかな?という予想もしてたわけですが、まあ実際のところ杞憂でしたね。絶対的なパワーが足りなくて困るとか、もっとパワフルだったら!みたいに不満を感じることはほぼ無かった。

華麗にフロントアップを決める磯部 重量バランスの良さあってこそ。華麗にフロントアップを決める磯部 重量バランスの良さあってこそ。
磯部:ホント?個人的には、やっぱり激坂とかでパワー不足を感じるシーンもあったんだけど。他社との比較になるけど、ちょっと前に試したジャイアントのTRANCE E+で登れたところを、同じ感じで頑張らずに登ろうとしたら登れなかったよ。

安岡:え、ホント!?それってあそこの激坂?(※編集部の近くにトンデモない斜度の丘があるのです)えぇ、TRANCEと遜色ないところまで行けたけどなぁ……。でも確かに、頑張って踏んではいたと思う。最初からギアをローに入れて、回しながらいけば登れる、という感じではあったし、そこが醍醐味という印象だったんだよね。

そういう意味でキャパシティーは少ないかな。オフロードの登りってテク不足をパワーで補えるところもあるじゃない?ラインどりミスっても、力技で突破!みたいなことはLEVOだと難しかった。そこはトルクが細いこのユニットの弱点だよね。

リンケージシステムはスペシャライズド自慢のFSRを採用リンケージシステムはスペシャライズド自慢のFSRを採用
磯部:でもそれって、逆にいえば自転車っぽい楽しさがあるとも言えない?実際、これまで乗ったことあるE-MTBって、そのパワフル感自体の楽しさはあるんだけど、MTBとしてはちょっと重すぎるというか持て余す感じはあったんだよね。なんか、登りも下りもバイク任せ、みたいなさ。

MTBにとって何が正義なのか?っていうのを考えた時に、コントロール性は大きいと思うんだ。例えば、同じ坂があったとして、パワー系E-MTBだったら楽に登れるかもしれないけど、それは楽ってだけじゃない?LEVOは登れないかもしれないけど、楽しいんだよね。

安岡:人間の占める比率が大きいよね。自転車って人間の身体性の拡張なわけじゃない?まあ全ての道具がそうなんだけども。例えば、MTBとE-MTBとモトクロスがあったら、人間が占める割合はだんだん少なくなっていく一方で、その分人間離れしたことが出来るようになっていく。

磯部:お、おう。(なんか言い出したぞコイツ)

思わず笑顔がこぼれる楽しさがLEVOにはある思わず笑顔がこぼれる楽しさがLEVOにはある
安岡:で、あえて自転車が好きで趣味にしてる人たちって、基本的に人間中心主義でしょ。だからE-BIKEに対して拒否反応を示しがちなんだと思うんだよね。あからさまなアシスト感とか重量からくる鈍さとか、自分の思い通りにならない機械に対する嫌悪感があるんだろうし、その感覚は分からなくはないんですよ。

でも、LEVOに関していえば、その人間⇔機械のバランスが本当に絶妙なんだと思う。重量だってDHバイクだったらこれくらいのはあるだろうし、アシストフィーリングも人間の感覚に近い。ルックスに至っては、ほぼほぼ普通のMTBですよ。

それでいて、E-MTBとして実用的なレベルのパワーはちゃんと確保されているから、ノーマルバイクとは比べ物にならない体験ができる。しっかりと乗り手が主体でありながら、出来ることの幅が一気に広がってる。さっきの言い方を借りれば、どのMTBよりも楽で、どのE-MTBよりも楽しい特異点のようなバイクなんじゃないかな。

E-MTBの中ではダントツの下り性能。下手なノーマルMTBよりも下るかも?と安岡E-MTBの中ではダントツの下り性能。下手なノーマルMTBよりも下るかも?と安岡
磯部:なるほどね。ちょっとわかりづらいトコロもあったけど、つまりノーマルバイクに近いフィーリングだってことだよね。でも、辛いところでは助けてくれる。普通のMTBだったら登ろうとも思わないセクションに挑戦したくなるし、何本も登って、降りてを楽しめるのは良いよね。

安岡:そうそう。結構登りの話を中心にしてきたけど、下りも凄くない?このバイク。

磯部:凄い。というか下りこそ凄い。E-MTBって重量があるからさ、コーナーでもアンダー出やすいしブレーキも距離が必要になるじゃない。そういう感覚はほぼ無かったよね。ちょっと重めのMTBレベル。サスのバネ感が良いのと、あと全体のアッセンブルもいいんだろうね。タイヤのフィーリングともマッチしてるし、下りの楽しさは半端ない。

安岡:今回ちょっとしたS字セクション下ったんだけどさ、人生で一番気持ちよく下れた(笑)。E-BIKEって「強くなった自分」を味わえるツールではあるけど、LEVO SLは「上手くなった自分」も楽しめる。しかも、何度登っても疲れ知らずで下りを走れるんだから、実際のスキルアップにも繋がる。バイクに助けてもらって上手く走れるだけじゃなくって、自分自身も成長できる。

ベースモデルとなったSTUMPJUMPERのアイコンでもあるアシンメトリックデザインはLevoにも受け継がれているベースモデルとなったSTUMPJUMPERのアイコンでもあるアシンメトリックデザインはLevoにも受け継がれている
磯部:個人的にはバッテリー容量だけは気になったかな。途中からどんどんインジケーターが消えていって、焦ったよ。

安岡:そこに関しては、ちょっとわかんないんだよね。話を聞く限り、似たようなコースを似たような時間走ってたと思うんだけど、自分は2メモリくらいしか減らなかったんだよね。で、そのままバトンタッチして…。

磯部:全部バッテリーを使いきった(笑)。なんでだろ。でも、ECOモードで3.5時間だとしたら、そんなものかな?

安岡:確かに、合計ではちょうどそれぐらいの時間だったか。とすると、やっぱりレンジエクステンダーは欲しいかもね。トレイルを長距離走るのであれば何かしらのストレージはあるだろうから、お守りとして携行したほうが良いとは思う。

電池の減り方は使い方によってマチマチみたいだ電池の減り方は使い方によってマチマチみたいだ
磯部:CREOだったら、正直レンジエクステンダーは無くてもいいかな、と思ってたけどLEVOだと欲しいね。オンロードだとバッテリー消費量も読めるし、最悪バッテリーが切れてもCREOだったらノーアシストでもなんとか走れる。LEVOはやっぱりキツい。

安岡:E-MTBの中で比べればLEVOは相当走る部類だけど、やっぱりオフロードだとね。MTBだとできれば下りだけ走りたい!って人も多いだろうし、アシストの重要性は段違いだよね。

磯部:いや、でもホントに楽しいバイクだった。このバイクが楽しすぎて、MTB持ってないのにヘルメットだけ買っちゃったもん(笑)。

ステアリングコラムには携帯工具を入れておけるSWATシステムが用意されているステアリングコラムには携帯工具を入れておけるSWATシステムが用意されている
センサーも非常にコンパクト ケーブルは内装され外観もスマートセンサーも非常にコンパクト ケーブルは内装され外観もスマート コンパクトなスイッチでモード切替の押し間違えも少ないコンパクトなスイッチでモード切替の押し間違えも少ない


EXPERTグレードにはロヴァールのカーボンホイールがアセンブルされるEXPERTグレードにはロヴァールのカーボンホイールがアセンブルされる
安岡:正直、今一番欲しい自転車は?って聞かれたらこのバイクになると思う。S-WORKSは手は出ないけど、カーボンフレームの一番安いモデルなら現実的なんじゃないか?とか考えちゃうよね。

磯部:でもさ、カーボンホイール欲しくない?CREOもそうだったけど、バイクの性能が良いからホイールの違いも分かりやすいでしょ?やっぱり、もう一つ上のグレードのほうが良いと思うけどなあ……。

安岡:それもそうなんだよねぇ……、確かにホイールは影響大きそう。迷うなあ……って、もはや注文前提みたいになってるんですけど!?

磯部:10万円振り込まれたんじゃない?頭金にすれば?

安岡:その手があったか……ってなんでやねん!



スペシャライズド Turbo Levo SL Expert Carbon
フレーム:FACT 11m full carbon, 29 Trail Geometry, Integrated down tube battery
フォーク:FOX Performance 34 FLOAT 29, 51mm offset,3-position adjustment,150mm of travel
リアショック:FOX FLOAT DPS Performance,52.5x210mm, Rx Trail Tune
ハンドルバー:Specialized Trail, 7050 alloy, 8-degree backsweep, 6-degree upsweep, 27mm rise, 780mm, 31.8mm clamp
シートポスト: X-Fusion Manic, infinite adjustable, two-bolt head, bottom mount cable routing, remote SRL LE lever, 34.9mm, S: 125mm, M/L: 150mm, XL: 170mm
ブレーキ:SRAM G2 RSC, 4-piston caliper, hydraulic disc, FRONT/200mm, REAR/180mm
ドライブトレイン:SRAM GX Eagle
リムRoval Traverse Carbon 29, hookless carbon, 30mm inner width, hand-built, 2Bliss Ready
フロントタイヤ:Butcher, GRID TRAIL casing, GRIPTON® compound, 29x2.3"
リアタイヤ:Eliminator, GRID TRAIL casing, GRIPTON® compound, 2Bliss Ready, 29x2.3"
モーター:Specialized SL 1.1, custom lightweight motor
バッテリー:Specialized SL1-320, fully integrated, 320Wh
カラー:Carbon / White、Oak Green / Aqua
価格:869,000円(税抜)


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