5月にカチューシャ・アルペシンとの契約終了を発表し、事実上第一線から身を引いていたマルセル・キッテル(ドイツ)が正式に引退を発表した。キッテルは「これ以上トップレベルで走り続けるための犠牲を払えない」とその理由について語っている。



TVのコメンテーターとしてツール・ド・フランスの会場に現れたマルセル・キッテルTVのコメンテーターとしてツール・ド・フランスの会場に現れたマルセル・キッテル photo:Makoto.AYANO
「自転車のない将来を考えることが多くなり、そして自転車競技のような美しいのみならず、非常に厳しいスポーツがもたらす代償について考えるようになった。ここ数ヶ月自問自答してきたのは、”トップレベルで走り続けるために必要な犠牲を払い続けられるか?”ということ。答えはノーだった」。5月9日にカチューシャ・アルペシンとの契約を終了し、実質的にプロキャリアを終えていたマルセル・キッテル(ドイツ)は、自身のSNS上で引退の理由を語った。

「トップアスリートであればあるほど、生活の品質の損失は大きくなる。だからこそ今、自分の気持ちに従い新しい方向に向かうための決断を下せたことが誇らしく、そして幸せに思っている」。と率直な思いを綴るキッテル。

「この判断は早急に下したのではなく、親しい友人や家族と共に長い時間をかけて導き出したものだ。20年に及ぶスポーツ選手としてのキャリアの中で、信じられないような成功もあれば困難な瞬間もいくつかあった。それらを受け入れてきたからこそ、学び、改善に努めてこれたと思う。自分を支えてくれた人達も含め、その考えが自分を成功したアスリートの一人に押し上げ、古きを大切にしながら新しきを学ぶ姿勢を教えてくれたんだ。例えば自分の将来の家族(SNS上で妻の妊娠を発表していた)のように、単なるスポーツよりも大切なものがある」。

2018年から成績は低迷。カチューシャでは合計3勝に留まった2018年から成績は低迷。カチューシャでは合計3勝に留まった
現在31歳のキッテルは2011年にスキル・シマノでプロデビュー。188cmという体格を生かしたパワフルなスプリントでグランツールを含めてトップレースで勝利を量産。2016、2017年はエティックス・クイックステップ(現ドゥクーニンク・クイックステップ)に移籍し、屈強なスプリントトレインを得たことで更に勝利量産体制を加速。ジロ・デ・イタリアではステージ通算4勝、ツール・ド・フランスではステージ通算14勝をマークし、最強スプリンターとして時代を築いた。

キッテルのキャリアに陰りが見えたのが2018年。カチューシャ・アルペシンに移籍するも調子は上がらず、勝利数はティレーノ〜アドリアティコでのステージ2勝止まり。2019年も春先に1勝したものの、その後は調整不足を理由に戦線離脱。5月にチーム離脱を発表してからはレポーターとしてツール・ド・フランスに帯同するなど実質的にプロ選手としての生活から離れていた。

キャリア最後の勝利は2019年2月のチャレンジマヨルカ最終日だったキャリア最後の勝利は2019年2月のチャレンジマヨルカ最終日だった photo:CorVos
「僕のキャリアを支えてくれた全ての人、昔のチームメイトたち、トレーナー、友人、家族、そしてここ数年素晴らしいサポートをしてくれたファンたちに感謝したい。これからの自分の人生が楽しみだ」と感謝を語っている。

text:So.Isobe

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