冬の一大イベント、UCIシクロクロス世界選手権大会が今週末、チェコで開催される。レースの見所や、現地入りした選手たちの最新情報をお届けしよう!

雪深い現地に入った日本人選手&スタッフ

降り積もった雪に立ち往生するクルマが続出降り積もった雪に立ち往生するクルマが続出 photo:Sonoko Tanaka今年の開催地であるチェコはドイツの東、イタリアの北に位置する人口約1,000万人の小さな国だ。首都のプラハは、中世の重厚な街並みを残す上品で美しい街並みが有名。そしてレースが開催されるのは、プラハより南に80kmほど離れたターボルという街の郊外だ。

レースは1月30日(土曜日)に、ジュニアとアンダー23カテゴリー、翌31日(日曜日)に女子とエリートカテゴリーのレースが予定されている。

日本代表とそれを支えるスタッフたち日本代表とそれを支えるスタッフたち photo:Sonoko Tanaka日本の代表選手は7名。アンダー23カテゴリーが竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)と小坂光(宇都宮ブリッツェン)、女子が豊岡英子(パナソニックレディーズ)、森田正美(チームブリヂストン・アンカー)、志村みち子(ラヴニールあづみの)、福本千佳(Ready Go JAPAN)、そしてエリートが辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と、全日本チャンピオンを含む、有力選手が顔を揃えている。

選手全員が、前週にオランダで開催されたワールドカップに参戦したあと、空路で27日(水曜日)に、チェコに入った。

直前まで気温はー20℃を下回っていたと言うが、現在気温はー10℃〜0℃程度。予想していたよりも寒くない印象だが、日本の気候と比較すると言うまでもなく寒い。天候は夜間に雪が降り積もり、日中は曇り空という具合だ。

28日(木曜日)と29日(金曜日)の午後に会場へ行き、選手たちは思い思いに試走を行った。起伏の多い3300mの周回コースは、一面凍った雪に覆われ、とにかく滑りやすいのが特徴的。雪に不慣れな選手だけでなく、経験豊かな現地の選手ですら、落車を繰り返している。


U23の2名はそれぞれの思いを胸にコースを試走

レースを翌日に控えてコースを試走する竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)レースを翌日に控えてコースを試走する竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka限られた試走時間を使って、各選手はコースレイアウトを把握し、苦手なポイントを何度も反復練習している。試走を終えた選手に話を聞いていこう。

まずは、楽しむかのように試走をしていた竹之内悠選手。年明けから新しくなったグリーンのバイクも目を引く。今年がアンダー23カテゴリー最後の年であり、今回の世界選手権には特別な思いがこもる。

U23にエントリーした小坂光(宇都宮ブリッツェン)がコースを試走U23にエントリーした小坂光(宇都宮ブリッツェン)がコースを試走 photo:Sonoko Tanaka「年末年始にベルギーを拠点として、3週間ほどヨーロッパのレースを走っています。年始に一度帰国したものの、世界選手権の前からヨーロッパで走れていることはよかったし、それが、今の自信につながっていると思います。雪でスリッピーで何が起こるかわからないコースだけど、今年は慣れてきているし、逆に何が起こるかわからないというのは、チャンスでもあると思う。運が大事だし、どれだけラッキーを呼び込めるかがキーになると思う。スタート後の混乱をうまく避けて、前のグループで走りたい」。

「直前のワールドカップでも、ラップタイムは20位前後の選手と変わらないので、とにかく前に出て、安定して走ることができれば上位を狙えると思っています。新しいバイクの感触もすごくいいので、今はレースが本当に楽しみですね!」と笑顔を見せる。

もう1人のアンダー23代表の小坂光選手にも期待がかかる。昨年は父親である小坂正則選手(スワコレーシングチーム)と親子で世界選手権に出場したことでも脚光を浴びたが、今年は単独での参戦となる。

「父からは思いっきり走ってくるように言われました。試走をしてみて、ここまでの雪は初めてなので戸惑っていますが、このコースでは、ヨーロッパの選手も苦戦すると思う。だから、条件は同じ。自分にもチャンスがあるかもって思いますね」。

「年始に体調を崩して、先週のワールドカップは万全の体調ではなかったんです。思った以上に走れなくて、自信を失いかけたりもしたけど、体調は回復してきているし、レースが楽しみです。所属チームの地元、栃木もシクロクロスに注目してくれています。チームの協力もあるので、前に出て頑張りたいと思います」。


エリート女子には4名がエントリー

コースを試走する全日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニック・レディース)コースを試走する全日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニック・レディース) photo:Sonoko Tanaka女子選手は4人がエントリーする。注目は、今季ライバルとして国内レースを沸かせた豊岡英子選手と森田正美選手だろう。涙ながらに全日本チャンピオンの座を獲得した豊岡英子選手は、今回が5回目の世界選手権参戦となる。

ヨーロッパでのレース経験が豊富で、今季も全日本選手権後から渡欧。ワールドカップをはじめ多くのレースに参戦し、コンディションを高めてきた。

雪の降り積もったコースを試走する志村みち子(ラヴニールあづみの)雪の降り積もったコースを試走する志村みち子(ラヴニールあづみの) photo:Sonoko Tanaka「この雪はもっと滑るかと思っていたけど、予想していたよりもマシ。でも滑るから、すべてのコーナーが勝負のポイントになってくるのだと思う。ルーベのワールドカップ(1月17日)であまりのキツさから体調を崩して、先週はあまりよくなかったけど、今週になって戻ってきている」。

「チェコは2シーズン前に滞在していたから知り合いが多くって、みんなが応援してくれている。だから、前だけを見て走って、10番代の順位を狙っていきたい。焦らないように、落ち着いてレースに対応していきたいと思う」と話す。これまでの経験からか、少し余裕が感じられる。

世界選手権に初めて出場する福本千佳(Ready Go JAPAN)世界選手権に初めて出場する福本千佳(Ready Go JAPAN) photo:Sonoko Tanaka一方の森田正美選手もブランクがあるものの4回目の世界選手権となる。「雪か氷のレースになると聞いていたけど、ここまで一面の雪だとは思っていませんでした。思ってもいないラインに進んでしまったりと、想像できないアクシデントが多くて、4回目にして、初めてのコンディションに驚いています。でも、ようやく時差ボケも抜けて、しっかり眠れるようになってきているので、当日はケガをすることなく、1つでも前に行きたいと思っています」。

セレクションレース・ポイント3位の志村みち子選手は「北海道出身で、松本に住んでいたことがあるので、寒さは大丈夫。先週のワールドカップでは、転倒が多くうまく走れなくて、力を出し切ることができなかった。だから、世界選手権では、自分の走りをして、自分の力をすべて出していきたいですね」とコメント。

そして4人目は、世界選手権初参戦となる17才、高校生ライダーの福本千佳選手。小柄な体格ながら、初めての世界のビッグレースに体当たりで挑んでいるような印象だ。スタッフのアドバイスを聞きながら、うまくこなせるようになるまで、同じポイント何度も何度もを繰り返し練習している。

「コースはすべてが難しい。乗っても降りてもどっちも滑る。でも、先週のレースで、同じレベルの選手がいることもわかったので、最後まで諦めないで走ることが目標。今回の遠征はすべてが勉強だと思っています」。完走すら難しいワールドカップで、8分51秒遅れの43位でゴールし、周囲を驚かせた福本選手。女子選手にアンダー23やジュニアカテゴリーはないが、堂々とほかの選手に張り合うことができている。今回の世界選手権では、今後につながる貴重な経験ができるだろう。

コースを試走する森田正美(チームブリヂストン・アンカー)コースを試走する森田正美(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka世界選手権初出場の福本千佳(Ready Go JAPAN)がコースを試走世界選手権初出場の福本千佳(Ready Go JAPAN)がコースを試走 photo:Sonoko Tanaka寒さに震える辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)寒さに震える辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka


全日本選手権8連覇中の日本のエース、辻浦圭一

コースを試走する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)コースを試走する辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka今季、男子エリートは全日本選手権を8連覇した辻浦圭一選手のみのエントリー。この世界選手権をシーズン最大の目標とし、序盤のレースでは、とにかく気負わないこと、無理に頑張らないことを意識して、世界選手権に向けてコンディションを高めてきた。

期待がかかった昨年は直前にインフルエンザに罹患し、思うように走れなかった悔しさもあるのだろう。今季から、欧州遠征の拠点をベルギーに移し、滞在先での街をあげての応援も彼を後押しする。

「コンディションはよく仕上がっている。ルーベで転倒し、ケガをしてしまったが、そのレースではあまり疲労しなかったので、結果的によかったと思う。翌週、疲れがたまっていなかったから、集中してトレーニングすることができ、先週のワールドカップの走りもよかった」。

「チェコ・ターボルは、2001年に初めて出場した世界選手権の開催地。当時は完走することが目標だったけど、いまは違う。今回のレースでまた次につながる課題が見えてくればいいと思う」。あまり多くは語らないが、言葉の奥にレースに向けての熱い思いが感じられる。日本チームを率いるエースとして、期待を裏切らない素晴らしいレースを見せてくれることだろう。

関西シクロクロスblogには現地入りしたサポーターによるレポートや音声インタビューなどが続々とアップされる。そちらも合わせご覧下さい(編集部)。

text&photo:Sonoko Tanaka in Tábor, Czech

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