地元チームのプレッシャーをはね除け、アレクサンドル・クリストフがアブダビツアー第1ステージで勝利。マーク・カヴェンディッシュがニュートラルゾーンで落車リタイアする波乱の中、5日間にわたる中東第3戦がスタートした。


スプリンターチームを先頭に直線的な幹線道路を進むスプリンターチームを先頭に直線的な幹線道路を進む photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
地元の子供たちがスタート地点で選手たちを出迎える地元の子供たちがスタート地点で選手たちを出迎える photo:LaPresse - Ferrari / Paoloneリタイアを決めたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)リタイアを決めたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

アブダビツアー第1ステージの舞台はアブダビから車で2時間ほど内陸に入った砂漠地帯。マディーナット・ゼイドから幹線道路を南に90km走り、Uターンしてマディーナット・ゼイドに戻る189kmのコースが設定された。コースの99%は片側2車線の道幅ある幹線道路で、緩やかな起伏のある砂漠地帯をまっすぐに貫いている。

全長6.2kmのニュートラルゾーン走行中に集団前方で落車が発生し、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)が地面に叩きつけられた。一時は再スタートしたが、脳震盪の影響のためカヴェンディッシュがリタイアを選んでいる。ちょうど1年前にこの日と同じマディーナット・ゼイドのフィニッシュで勝利しているカヴェンディッシュのアブダビツアーが、正式スタート前に、終わった。落車の原因は、ニュートラルゾーンで先頭を走るメルセデスのディレクターカーの自動ブレーキが働いたためとされる。後ろや隣を走る選手が車両に近づきすぎたため、運転者の意思に反してブレーキが作動。そこで前が詰まり、止まりきれないレオナルド・バッソ(イタリア、チームスカイ)にカヴェンディッシュが突っ込んだ。

延々と50km近く続く直線的な幹線道路でダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)、トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード)、ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)、ニコライ・トルソーフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)、シャルル・プラネ(フランス、ノボノルディスク)の5名が逃げグループを形成する。砂漠の街リワに設けられた1回目のスプリントポイントはトルソーフが先頭通過した。

長い時間メイン集団を牽引したのはカレブ・ユアン(オーストラリア)擁するミッチェルトン・スコットとアンドレ・グライペル(ドイツ)のロット・スーダル、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)のクイックステップフロアーズ。幅広の幹線道路は大集団に味方し、タイム差は縮まっていった。

逃げグループを形成するダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)ら逃げグループを形成するダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)ら photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
比較的ゆるいペースで進むメイン集団比較的ゆるいペースで進むメイン集団 photo:LaPresse - Ferrari / Paolone延々と続く直線路を進む延々と続く直線路を進む photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

残り62km地点に差し掛かるとスクインシュが早めのアタック。スクインシュはスプリントポイントを先頭で通過したものの、再び逃げグループは一つに戻る。メイン集団が後方から迫り抜く中、残り20km地点から独走に持ち込んだカルーゾも残り13km地点で吸収された。

フィニッシュに向けて来た道を引き返す形で直線路を進んだのち、ロットNLユンボを先頭に残り2.3kmの直角右コーナーと残り1.2kmの直角左コーナーをクリア。最も多くの人数を残したクイックステップフロアーズがリードアウトトレインを形成し、ファビオ・サバティーニ(イタリア)がエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)を解き放つ。しかし時を同じくして別のラインからカレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)が加速した。

低い体勢で向かい風に立ち向かったユアンがヴィヴィアーニに並ばせることなく先頭に立ったが、そのスリップストリームからヨーロッパチャンピオンジャージのアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が加速する。誰よりも速いトップスピード65.2km/hをマークしたクリストフがライバルたちを振り切った。

カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)をかわすアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)をかわすアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone
スプリント勝利を飾ったアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)スプリント勝利を飾ったアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

「リードアウト役のロベルト・フェラーリと離れてしまったものの、カレブ・ユアンの後ろに飛びついてスプリントへ。先にスプリントを開始した彼のスリップストリームに入り、そこから向かい風に向かって加速した。わずかながら登り基調のストレートだったことが味方した」と、ツアー・オブ・オマーン最終ステージに続く今シーズン2勝目を飾ったヨーロッパチャンピオン。体重78kgのクリストフは残り1kmを59秒間、平均60.2km/hで駆け抜けており、その間の平均出力は666W。スプリント中の最大出力は1,368Wで、ラスト18秒間の平均出力は1,143Wだった。

2017年大会の期間中にスポンサーとしてエミレーツ航空(拠点はアブダビではなく隣の首長国ドバイ)を迎え入れ、UAEアブダビからUAEチームエミレーツに名称を変更した地元チームが初日から結果を残した。「先週のツアー・オブ・オマーンに続く勝利で、自分にとっても、そして地元のUAEチームエミレーツにとってもこれは大きな勝利。プレッシャーから解き放たれた気分だ。この中東3連戦をこなすことで、クラシックやグランツールに向けてコンディションを上げることができると思っている。チームにとっては(コスタとアルの)総合成績が最優先事項だけど、明日はレッドジャージを着てもう1勝したい」とクリストフはさらなる活躍を誓う。

アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)やマルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)といったビッグスプリンターが下位に沈む中、ステージ3位に入ったユアンは「スプリント開始が早すぎた。でもそうするしかなかったんだ。向かい風が吹いていたので、早めに仕掛けなければスピードが死んでしまった。理想より50mほど手前からのスプリントになってしまい、あとは先頭で堪えるしかなかった。調子は良いので明日リベンジしたい。同じミスは繰り返さない」とコメント。体重61kgのユアンは1分間平均出力666W、最大出力1,291W、16秒間平均出力1,080Wという高いパワーレシオ数値を残している。

先頭でフィニッシュラインを切るアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)先頭でフィニッシュラインを切るアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone赤いリーダージャージを手にしたアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)赤いリーダージャージを手にしたアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) photo:LaPresse - Ferrari / Paolone

アブダビツアー2018第1ステージ結果
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 4:48:24
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF)
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)
4位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)
5位 ダニエル・マクレー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
6位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
7位 ミカエル・ブレシアーニ(イタリア、バルディアーニCSF)
8位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNLユンボ)
9位 ルディ・バルビエ(フランス、アージェードゥーゼール)
10位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)
個人総合成績
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 4:48:14
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 0:00:04
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 0:00:06
4位 ニコライ・トルソーフ(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)
5位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)
6位 トムス・スクインシュ(ラトビア、トレック・セガフレード) 0:00:07
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング) 0:00:09
8位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 0:00:10
9位 ダニエル・マクレー(イギリス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)
10位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)
ポイント賞
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) 20pts
2位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、バルディアーニCSF) 16pts
3位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 12pts
ヤングライダー賞
1位 カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 4:48:20
2位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、バルディアーニCSF)
3位 ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ) 0:00:04
チーム総合成績
1位 バルディアーニCSF 14:25:12
2位 アージェードゥーゼール
3位 バーレーン・メリダ
text:Kei Tsuji