今年新たに新設された60歳以上のレース、市民50kmオーバー60の初代優勝者となった茅木孝(内房レーシングクラブ)のレポートをお届け。加熱する市民レースにとうとう設けられた60歳以上のクラスを制した茅木さんは大の沖縄好き。年令を重ねてもレースにかける情熱は衰えることを知らない。



市民50kmオーバー60の初代優勝者となった茅木孝さん(内房レーシングクラブ)市民50kmオーバー60の初代優勝者となった茅木孝さん(内房レーシングクラブ) photo:Makoto.AYANO初めてツールドおきなわに参加したのは19??年(もはや記憶がない)。50kmの部に参加して、11位だった。当時は11位まで壇上で表彰されたが、袖の下で地団駄を踏んだ。

数年経って再度参戦し始めると、チームの池畑さんが80kmで2回も優勝したのだ。それを見て、俺も大好きな沖縄の特別なレース「ツール・ド・おきなわ」の歴史に自分の名前を刻みたいとずっと思っていた。

2011年に50kmの部にオーバー50代が新設された時は飛び上がって喜んだ。「絶対勝つ」と思い参戦したが結果は4位。また袖で地団駄踏んだ。

数年後、今度はチームの根本君が140kmで優勝。優勝をあきらめていた自分には眩しすぎる表彰式だった。

しかし今年の7月に新たに50kmの部に「オーバー60」が新設と知った時は、身震いと同時に一人「うおーーーーー!!」と雄叫びを上げた。その反面、あの人も絶対参戦してくると予想。まだ一回も勝てたことがない相手、福島さんだ。

それからは練習内容も短距離スプリントに絞った。長距離走はやめ、疲労を残さないでなるべく毎日なにかしら行った。サドルに跨がらない日は筋トレし、あまり飲まないプロテインも飲んだ。面白い事に、この年齢になっても身体が少しマッチョに、これは新鮮だった(笑)。体重もあまり気にしないでよかったので気分的には楽。スプリンターって楽しい!!

9月。家族旅行で名護へ。毎朝夜明け前から戦略を考えながらコースを走った。
10月。連日の雨にはまいったが、ZWIFTがあった。雨の日はモニター内の世界中のサイクリストが練習相手。これは相当なアドバンテージだ。
11月。早起きと集団走行に慣れようと(基本夜型人間)、あまり普段参加しないチーム内の有志で行っている早朝練習へ。なぜか絶不調。一回も最後のスプリントまで残れない、急には朝型人間にはなれないのかと焦ったまま当日を迎えることになる。

ホイールは最後まで迷った。高速走行に適したアイオロス7で行くか、踏み出しの軽いコスミックカーボンで行くか出発前日まで迷った。レースで逃げが出来るかスプリントになるのかの選択。結局スプリントになると読んだ。

スタート前の茅木孝(内房レーシングクラブ)さん。「仲間に優勝宣言をしてしまった!」スタート前の茅木孝(内房レーシングクラブ)さん。「仲間に優勝宣言をしてしまった!」 今年はチーム総勢16名の大所帯で名護入り。受付会場では色々な方にご挨拶が出来、一年にこの時期にしか会えない人も!こんなところもツール・ド・おきなわの醍醐味だ。

60歳代の強者、福島雄二さんを発見。ご挨拶をしたら、なんと松葉杖姿だ! 聞けばシマノ鈴鹿ロードで落車して、まだ脚にボルトが入っていると言う。そしてなんとそれでもレースは走ると言う。

「悪いことは言わないからレースはやめとけば」と助言した。ライバルが一人減るからと言う訳ではなく、ボルトが入ったまま落車でもすれば取り返しのつかないことになるから(ライバルが減ってラッキーと、多少は思いましたが...)。

当日の朝が来た。顔には出さないが緊張で押しつぶされそうになり、早く走り出したい気持ちが高ぶり、そんな時にチームメイトの前で思わずやってしまった優勝宣言!! 退路は断った。

おにぎり1個とアンパン1個食べて10km走りスタート地点へ。50kmなら蓄えてある物だけで充分。ポケットには大好きなナッツクランチ。水分だけは少しづつ摂り続ける。少しでも血液を濃くしたくないから。

レース
60代の方達だけとのレースは初めて。どんな展開か? スピードはどのくらい? 坂はどうなんだろう? すべて未知のレースだった。ニセコクラッシックも60代だったが、色々な世代との混合レースだった(この時はパンク途中棄権)。

10km地点までは様子見。つねに10番手くらいに位置して周りの方たちをじっくり観察。その後はローテーションに加わる、本部橋の登りを使ってちょっと飛び出してみる。誰が付いてくるか見たかったから。でも誰も来なかった。

そのまま先頭交代をしながら水族館坂へ。少しでもふるい落としたいので積極的に坂でペースアップし、スピードが落ちないようにする。

沿道では住民の方たちによる暖かな応援が繰り広げられる沿道では住民の方たちによる暖かな応援が繰り広げられる photo:Makoto.AYANO水族館を過ぎたあたりで福島さんがアタック! すかさず追走したが、どう見ても後姿が変。お尻の大きさが左右違うしペダリングもギクシャク。一か月前から走り始めて実走は2回しかしていないらしい。ペースも落ちてきたので追走もやめる。この時点で集団は20名に。

ここから今帰仁までは下り基調。適当に流して走って行き、一番重要と考えていた今帰仁坂へ。先頭付近で登ることだけ考えて登る。一人が飛び出したが無視。まあ問題は無いだろうと判断。そのくらいは観察して読んでいた。

今帰仁の坂を超えて集団は12名。後ろを見ても追走集団は見えない。イオン坂まではフラット。もう積極的には引かない。スピードが落ちたって構わない。順番が回ってくれば引くだけだが、白っぽいジャージの方二名が積極的に引いてくれているのは有難い。

沿道ではチームメイトか友人への応援が沿道ではチームメイトか友人への応援が photo:Makoto.AYANOそして最後のポイントのイオン坂! 「絶対誰も逃がさない」と、ここも先頭付近で登る。周りを見回すとほとんどの方がダンシングで重いギア。私はシッティングで軽いギア。もしかして皆さん意外と疲弊してるのかな?と推理した。自分は絶好調で、やっとエンジンが掛って来た(スロースターターなんです)。

ここからゴールまでは4km。とにかく6番手以内で走る事だけ考えて走る、今まで一度も先頭に出てこなかった方が出てきた。そのチームジャージに「やっぱりな」と後ろに着く。

そのままラスト1km地点へ。2番手で走っている福島さんの後ろにつこうと思うが、間に一人居てつけない、ならば、とラインを変えて5番手くらいで残り500mほどで一か八かで早掛けのスプリントを開始。

市民50kmオーバー60の部をスプリントで制した茅木孝(内房レーシングクラブ)市民50kmオーバー60の部をスプリントで制した茅木孝(内房レーシングクラブ) photo:Satoru.Kato
MAX700Wくらいで数秒もがくと、一人飛び出せた。後ろを見ると集団がかなり後方に見えたので、ゴールかなり前からガッツポーズでフィニッシュ!。

「俺ってカッコいい。まるでチポッリーニみたいだろ!」と自画自賛(私の年代で憧れのスプリンターはチッポなんです)。しかしゴール付近で見ていたチームメイトは、ゴールはまだ先なのにガッツポーズはまだ早い!とヒヤヒヤしていたらしい(笑)。

優勝って最高! やっとツール・ド・おきなわの歴史に名前を刻めた、それも60代初代チャンピオンとして。ゴールしてからも皆が褒めたたえてくれる。最高の瞬間だ。自転車に乗っていて良かった~!。

市民50kmオーバー60表彰式 2位の福島雄二さん(左)は松葉杖とともに上がった 市民50kmオーバー60表彰式 2位の福島雄二さん(左)は松葉杖とともに上がった photo:Satoru Kato
しかし振り返ってみれば福島さんは2位。あの身体でまさに超人だ。60代って世間ではお年寄りに見られてしまうけど、今回参加した人たちの走っている姿を見てたら絶対ジジイには見えない!。身体は締まっているし、皆さんカッコいい。「ずっとスポーツやってる人って老けないんだなー」と実感。クールなサングラスにヘルメット被ってロードバイクに乗ってる姿はまだまだバリバリだよ!。

レース後は羽地ダムの登りに移動して仲間たちを応援&サポートする楽しみもレース後は羽地ダムの登りに移動して仲間たちを応援&サポートする楽しみも photo:Makoto.AYANO
この年齢になっても元気な身体に産んでくれた両親、気持ちよく送り出してくれる家族、最後にいつも練習に付き合ってくれるチームメイトに感謝です。そして今回60代の部を作ってくれた森兵次会長に感謝、感謝です。

表彰式ではブリヂストンの藤田晃三さんが褒めてくれた。嬉しい。なんと息子さんも優勝したとのことで、凄い親子鷹になりそうだ。

羽地ダムの観戦スポットで内房レーシングの仲間たちと羽地ダムの観戦スポットで内房レーシングの仲間たちと photo:Makoto.AYANO市民50kmオーバー60を制した茅木 孝さんを藤田晃三さんが祝福市民50kmオーバー60を制した茅木 孝さんを藤田晃三さんが祝福 photo:Makoto.AYANO


チームの仲間も皆、表彰台の前に陣取ってビール片手に盛り上がっている。あー早く俺もその中に入りたい、と思いながら控え席で表彰を待っていた。

市民50kmオーバー60を制した茅木 孝さんを祝う内房レーシングの皆さん市民50kmオーバー60を制した茅木 孝さんを祝う内房レーシングの皆さん photo:Makoto.AYANO
レース後の夜は名護で一番美味い知り合いの居酒屋さんで大宴会。2次会では地元名護のNew Sun Racingの皆さんと合流。普通の酔っぱらいおじさんに戻りました。

来年からはまた市民100kmに戻り、羽地の坂を両足攣らせながら登ることにします、応援よろしくお願いします!

レース後の打ち上げでは居酒屋でいつもの酔っぱらいオジサンに戻りました(笑)レース後の打ち上げでは居酒屋でいつもの酔っぱらいオジサンに戻りました(笑) ■プロフィール 茅木 孝(内房レーシングクラブ)
1957年生まれ(60歳)
千葉県木更津市出身、木更津市在住
内房レーシングクラブ会長
カヤギサイクル勤務

■最近の戦績
2011年
 ツールド沖縄 50歳以上の部 4位
2013年
 ツールド北海道 55歳以上の部
 第1ステージ 3位 第2ステージ 優勝
2016年
 ウィンターサイクルマラソンinそでがうら 100km 50代1位(総合10位)

■使用機材
フレーム : トレック EMONDA SLX(2016モデル)
ホイール : マヴィックCOSMIC CARBONE ULTIMATE
タイヤ  : Continental ATTACK&FORCE TUBULAR
コンポ  : Shimano 9070+9150Di2ミックス
ペダル  : TIME XPRESSO 10
ウェア  : ウエイブワン製ワンピース
シューズ : SHIMANO RC9
ヘルメット: Bontrager Ballista MIPS
サングラス:OAKLEY Jawbreaker
OTHER :RIDEA 楕円リング、WISHBONE チタンBB、SACRA SLFコーティングチェーン

text:Takashi.KAYAGI
photo:Makoto.AYANO,Satoru.KATO
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