しまなみ海道の大三島で行われた愛媛国体ロード。成年はラスト3kmからアタックした草場啓吾(京都、日本大)が集団に2秒差で逃げ切り優勝。少年は集団スプリントを西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が制した。



愛媛国体最終日10月5日(木)は今治市大三島でのロードレース。コースはしまなみ海道の大三島を丸ごと1周するもので、小さいながらも6か所のピークがありトータルでの標高差は1200mを超える1周40.4kmで、成年、少年ともに3周する121.2kmだ。全体のおよそ2/3は海岸沿いで、瀬戸内海と浮かぶ島々が美しい国内でも屈指のロケーションを誇る。島内の幹線道路を完全交通規制するが、高速道路のインターチェンジは生かされており会場も近いことから多くの観客が訪れた。

成年男子 草場啓吾(京都、日本大)が2秒差で逃げ切り優勝。自身全国大会ロード初優勝成年男子 草場啓吾(京都、日本大)が2秒差で逃げ切り優勝。自身全国大会ロード初優勝 photo:Hideaki TAKAGI
成年は強力な逃げができる展開

朝9時にスタートした成年は早々に岡本隼(和歌山、日本大)ら強豪選手数名がアタックと吸収を繰り返す展開。チームといっても2名なので実質のチーム戦が取りにくい単騎でのレースに近いものだ。草場啓吾(京都、日本大)と小山貴大(群馬、シマノレーシング)の2人が逃げ続るがこれも集団に戻る。

2周目に入ってすぐ42km地点の平坦区間で逃げが決まる。前方で展開していた選手数名とその後ろに差が少しできると、中村龍太郎(千葉、イナーメ信濃山形)らがペースを上げて逃げの態勢に。中川拳(北海道、早稲田大)、吉田隼人(奈良、マトリックスパワータグ)、杉山文崇(山口、ヴィクトワール広島)、今村駿介(福岡、中央大)でこれに水野恭兵(山梨、インタープロサイクリングアカデミー/水野ファーム)が加わった6人だ。元全日本TTチャンピオン、今季4勝を挙げているスプリンター、トラック中距離の第一人者、そして昨年の同コースでの都道府県大会を制した選手で構成される強力な逃げだ。

成年男子スタート成年男子スタート photo:Hideaki TAKAGI成年男子1周目2km地点 多々羅大橋をバックに大三島を1周する成年男子1周目2km地点 多々羅大橋をバックに大三島を1周する photo:Hideaki TAKAGI

成年男子2周目、逃げる先頭5人成年男子2周目、逃げる先頭5人 photo:Hideaki TAKAGI成年男子3周目、メイン集団前方はアタックが繰り返される成年男子3周目、メイン集団前方はアタックが繰り返される photo:Hideaki TAKAGI

メイン集団とのタイム差は2分となり、強力なメンバーから逃げ切りも予想される展開に。だがメイン集団もそれを警戒してタイム差をそれ以上開かせない。2周目終了時点でタイム差は1分にまで縮め追い上げの態勢を見せる。残り30km地点でメイン集団から冨尾大地(鹿児島、鹿屋体育大)が単独で追走し、残り20km地点で先頭の6人に追いつくが、ほどなくメイン集団も追いつきレースは振り出しに。

ラスト3kmで冨尾大地と草場啓吾がアタック

そのカウンターで安原大貴(大阪、マトリックスパワータグ)がアタックし、これに水谷翔(鹿児島、シマノレーシング)、中川の3人が、そして野本空(愛媛、明治大)と中村駿佑(宮崎、宮崎大)が抜け出しを図り先頭3人に合流するが、この5人も活性化したメイン集団にラスト5kmで吸収され集団は一つになる。

そして向かい風平坦区間のラスト3kmでアタックしたのは冨尾。すかさず草場が合流し2人で逃げるが冨尾はラスト2kmで離れ、草場が単独でフィニッシュを目指す。メイン集団も追い上げるが届かず草場が優勝した。そのわずか2秒後に集団は近谷涼(富山、ブリヂストンアンカー/三和シャッター)、孫崎大樹(京都、早稲田大)の順にフィニッシュした。

成年男子3周目、メイン集団から冨尾大地(鹿児島、鹿屋体育大)がアタックする成年男子3周目、メイン集団から冨尾大地(鹿児島、鹿屋体育大)がアタックする photo:Hideaki TAKAGI成年男子3周目ラスト12km、安原大貴(大阪、マトリックスパワータグ)、水谷翔(鹿児島、シマノレーシング)、中川拳(北海道、早稲田大)が逃げる成年男子3周目ラスト12km、安原大貴(大阪、マトリックスパワータグ)、水谷翔(鹿児島、シマノレーシング)、中川拳(北海道、早稲田大)が逃げる photo:Hideaki TAKAGI

成年男子3周目ラスト10km、野本空(愛媛、明治大)と中村駿佑(宮崎、宮崎大)が追走し先頭3人へ合流する成年男子3周目ラスト10km、野本空(愛媛、明治大)と中村駿佑(宮崎、宮崎大)が追走し先頭3人へ合流する photo:Hideaki TAKAGI成年男子3周目ラスト5km、各チームがアタックするが決まらない成年男子3周目ラスト5km、各チームがアタックするが決まらない photo:Hideaki TAKAGI

集団から抜け出す力よりも引き戻す力のほうが大きく、有力選手が動くものの抜け出すには至らなかった。その中でアタックを見せた冨尾とそれに反応して逃げ切った草場の走りは、1カ月前のツール・ド・北海道の山岳賞をめぐる戦いを再現したものだった。競い合った両者は北海道では冨尾に軍配が上がったが、この日は草場がその雪辱を果たした。冨尾はラスト30kmからの10km間を追走のため独走で脚を使っていたことが響いた。

「自分からつかんだ勝利」優勝した草場啓吾のコメント

序盤の小山との逃げはいい脚の刺激になりました。終盤の危険なアタックには(孫崎)大樹と連携して対応できました。冨尾選手がラスト3kmでアタックした時は集団が止まって自分が前にいたので、これは逃がしたら本当に逃げ切られると思って追いました。行けるぞと声を掛けて回しましたが、冨尾から”無理”と言われて一人になって、もう行くしかないと全開で踏みました。

今日はスプリントで行く予定だったのですが、冨尾が逃げたのを見て踏みました。彼とは因縁のライバルですね(笑)。これまでずっと悔しい思いが続いていたので嬉しいです。ロードでの優勝は初めてで、インターハイは2位、去年のインカレも2位、今年のインカレは3位で、やっと勝てました。序盤逃げたし積極的に攻めて勝利を自分からつかみ取れたのではないかと思っています。

スタート前の成年男子京都勢。草場啓吾(左、日本大)が優勝、孫崎大樹(右、早稲田大)が3位。ともに北桑田高校同期だスタート前の成年男子京都勢。草場啓吾(左、日本大)が優勝、孫崎大樹(右、早稲田大)が3位。ともに北桑田高校同期だ photo:Hideaki TAKAGI成年男子 表彰成年男子 表彰 photo:Hideaki TAKAGI


少年は成年と同じ距離のレース

朝9時10分のスタートとなった少年は成年と時差スタート10分だけで、同じコース同じ距離を走る。注目は地元愛媛の日野泰誠といとこの日野凌羽だ。ともに松山城南高の2年生で今夏のインターハイロードと全日本選手権ロードを、ともにレースを動かしつつワン・ツーフィニッシュという偉業を達成している。愛媛県での7年以上にわたる国体強化事業の集大成がこの国体少年ロードだ。

少年男子 集団スプリントを西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が制し、自身ロード全国大会初優勝少年男子 集団スプリントを西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が制し、自身ロード全国大会初優勝 photo:Hideaki TAKAGI
レースはスタートからアタックが繰り返され、平安山良希(沖縄、北中城高)のアタックをきっかけに日野凌羽(愛媛、松山城南高)、小堀敢太(北海道、札幌旭丘高)、高橋舜(宮城、東北高)、加藤拓斗(同)の5人が抜け出し、メイン集団に1分からやがて1周目を終えるときには3分にまで差を広げ逃げ続ける。2周目に入りペースの上がらないメイン集団から7人が抜け出して追走し先頭に合流、12人の先頭集団ができる。

やがてメイン集団もペースを上げて2周目を終える時点でタイム差は40秒にまで縮まる。8人にまで減った先頭集団と追うメイン集団の構図でついにはラスト18kmで逃げは吸収され集団は一つになる。ここからは日野泰誠(愛媛、松山城南高)や松田祥位(岐阜、岐阜第一高)、山本哲央(山梨、韮崎高)ら有力選手のアタックで活性化するが逃げは決まらない。

少年男子1周目、瀬戸内海の島々が美しい少年男子1周目、瀬戸内海の島々が美しい photo:Hideaki TAKAGI少年男子1周目の先頭集団。中央は地元愛媛の日野凌羽(松山城南高)少年男子1周目の先頭集団。中央は地元愛媛の日野凌羽(松山城南高) photo:Hideaki TAKAGI

集団スプリントを西原裕太郎が制する

少人数の逃げはすべて吸収されて約30人によるスプリント勝負へ。ラスト400mを切ってから集団前方で数名の落車があるが影響を受けなかった松田祥位(岐阜、岐阜第一高)を先頭にスプリント勝負へ。ここでラスト1kmからアタックしていた渡邊鈴(長野、松本工高)も吸収されてラスト100m切ってから西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)が抜け出して優勝した。

西原は今夏のインターハイロード5位、優勝したチームパーシュートのメンバーだが全国大会のロードは初優勝だ。期待された日野凌羽は4位、日野泰静は7位となった。「落車の影響は受けましたが、その位置にいる自分が」と日野泰静は位置取りを反省する。いつもならば自ら風を受けながらも主導権を握って勝つのが日野泰静のスタイルだった。ラスト400mでの落車が明暗を分ける結果となった。

少年男子1周目、大三島最南端を行くメイン集団。先頭は地元愛媛の日野泰誠(松山城南高)少年男子1周目、大三島最南端を行くメイン集団。先頭は地元愛媛の日野泰誠(松山城南高) photo:Hideaki TAKAGI少年男子1周目、2分差のメイン集団少年男子1周目、2分差のメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI

「逃げはやめてスプリントに切り替えた」優勝した西原裕太郎のコメント 

いま3年生で最後の最後に勝ててほっとしています。最初の5人の逃げに乗るかどうか迷っていましたが、それが12人になったときにやばいと思って日野君、松田君、佐藤(健)君たちみんなで回して追いつけました。それからも特に日野君がガンガン引いていて自分の足はつっていたので、逃げはやめてスプリントにしようと思ったのが良かったと思います。先頭に出たのは直前、ラスト100mを切ってからだと思います。今まで見てくださった先生、家族、監督そしてみんなに感謝したいです。

少年男子2周目へ少年男子2周目へ photo:Hideaki TAKAGI少年男子 表彰少年男子 表彰 photo:Hideaki TAKAGI

結果

成年 121.2km

天皇杯(男女総合)表彰天皇杯(男女総合)表彰 photo:Hideaki TAKAGI1位 草場啓吾(京都、日本大)2時間56分50秒
2位 近谷涼(富山、ブリヂストンアンカー/三和シャッター)+02秒
3位 孫崎大樹(京都、早稲田大)
4位 岡部祐太(広島、日本体育大)
5位 石井駿平(群馬、鹿屋体育大)
6位 黒枝咲哉(大分、鹿屋体育大)
7位 武山晃輔(山梨、日本大)
8位 白石真悟(山口、シマノドリンキング)
9位 湊諒(青森、シマノレーシング)
10位 河賀雄大(広島、Team UKYO Reve)

少年 121.2km

皇后杯(女子総合)表彰皇后杯(女子総合)表彰 photo:Hideaki TAKAGI1位 西原裕太郎(奈良、榛生昇陽高)3時間09分50秒
2位 佐藤健(熊本、九州学院高)
3位 依田翔大(山梨、甲府工高)
4位 日野凌羽(愛媛、松山城南高)
5位 松田祥位(岐阜、岐阜第一高)
6位 仮屋和駿(和歌山、和歌山北高)
7位 日野泰誠(愛媛、松山城南高)
8位 兒島直樹(福岡、祐誠高)
9位 今崎勇希(埼玉、栄北高)
10位 吉武慶太(宮崎、延岡学園高)


天皇杯(男女総合)成績

1位 福岡県 91点
2位 熊本県 72点
3位 東京都 70点

皇后杯(女子総合)成績

1位 東京都 47点
2位 福岡県、福井県 39点

photo&text:高木秀彰
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の画像 愛媛原人
投稿者: 富岡 乃美, L(エル)
出版社: 原人舎出版 (2012)
装丁: 新書, 224 ページ