都道府県大会最終日ロードは男女ともに地元福井県勢が優勝した。男子は後半に同じキナンの阿曽圭佑(三重)とともに逃げた中島康晴(福井)が、女子はスプリントを制した中村愛花(日本体育大)が制した。



大会最終日は清々しい好天に恵まれた大会最終日は清々しい好天に恵まれた photo:Hideaki TAKAGI
2018年に福井国体で使われるロードレースのコースをそのまま使うのが都道府県福井ロード。大会3日目、清々しい好天のもと8月26日(土)に男女のロードレースが行われた。女子は2016年国体から正式採用されている種目だ。コースは標高差270mの大きな上りを含む1周15kmの小周回を挟むもので、男子は小周回を5周、女子は2周してスタート/フィニッシュ地点へ戻るもの。総距離は男子93.9km、女子48.9kmになる。勝つためには登坂力のあることが条件だが、下りきって10kmは平坦なので単独で逃げ切ることもまた難しいものだ。クラス分けは男女のみで成年・少年の区分はない。

逃げた樫木祥子を吸収したスプリントで中村愛花が優勝

男子から3分の時差でスタートした女子は、コースの適正から見て有力どころは樫木祥子(東京 オーエンス/AVENTURA AIKOH VICTORIA RACING)と中原恭恵(広島)だ。中原は昨年の都道府県大会ロードを制し、今大会でもポイントレースを制している。レースのスタート後は集団で進むものの、小周回に入ってすぐの上りで樫木が抜け出す。「誰も来なかったのでそのまま行った」という樫木は上り頂上で集団に50秒のタイム差をつける。下り切った時点で集団も追い上げ25秒差に。

しかし2周目の上りに入って樫木は1分05秒までその差を広げてフィニッシュへ向かう。ふつうの女子ロードレースならばこれで樫木の優勝が決まりだ。だがこのレースは違った。下りから平坦にかけて11人の集団は中原のリードでローテーションして先頭の樫木を追う。こうなると1人対11人で集団が有利だ。タイム差を劇的に詰めてラスト2kmで集団は樫木を吸収しスプリント勝負へ。このコースはラスト1.5kmがややテクニカルで位置取りが重要だ。最終コーナーを3番手で通過した中村がスパートして差をつけ優勝。見事に地元開催の大会で優勝した。

女子スタート 大野城を望む場所から女子スタート 大野城を望む場所から photo:JCF女子 序盤は集団に女子 序盤は集団に photo:Hideaki TAKAGI

女子周回1周目 最初の上りで仕掛ける樫木祥子(東京 オーエンス/AVENTURA)女子周回1周目 最初の上りで仕掛ける樫木祥子(東京 オーエンス/AVENTURA) photo:Hideaki TAKAGI女子周回2周目 1分差で独走を続ける樫木祥子(東京 オーエンス/AVENTURA)女子周回2周目 1分差で独走を続ける樫木祥子(東京 オーエンス/AVENTURA) photo:Hideaki TAKAGI

「ロード初の優勝がこの大会で嬉しい」中村愛花(福井 日本体育大)

樫木さんが逃げていて追いつけない不安は少しありましたが、最後の平坦になってからは中原さんが声をかけてみんなで回して追いつけると思いました。スプリントに向けては中島さんにその走り方を教えてもらっていたのが良かったです。上りのきついコースですが自分にとって展開が良かったです。ロードの入賞は今までなかったのでしかも地元で勝てて本当に嬉しいです。

女子周回2周目 1分差で先頭を追うメイン集団女子周回2周目 1分差で先頭を追うメイン集団 photo:Hideaki TAKAGI女子 スプリントを制した中村愛花(福井 日本体育大)が優勝女子 スプリントを制した中村愛花(福井 日本体育大)が優勝 photo:JCF

キナンサイクリングチームの中島康晴と阿曽圭佑がワン・ツー

男子は小周回を5周する計93.9kmのレース。有力どころはまず山梨県の3人、水野恭兵(インタープロサイクリングアカデミー)、山本哲央(韮崎高)、依田翔大(甲府工高)だ。水野は2013年、2016年の都道府県ロードを制しており、直前のJプロツアーでも8位に入っている。山元と依田は今年3月の高校選抜で1位2位であり、山梨県勢3人のチーム力が筆頭だ。さらに地元の中島康晴(キナンサイクリングチーム)、阿曽圭佑(三重 キナンサイクリングチーム)、中田拓也(長野 インタープロサイクリングアカデミー)、白石真悟(山口 シマノドリンキング)らが挙げられる。

レースはスタート後、小周回に至るまでに4人の逃げが形成される。メンバーは金田聡士(鳥取 鳥取県車連/AVENTURA AIKOH VICTORIA RACING)、大浦尭(富山 日本大)、新村穣(茨城 CS Slinger)、一丸尚伍(大分 太陽の家/ブリヂストンアンカー)だ。この4人はタイム差を最大2分まで広げて逃げ続ける。

スタート地点からは大野城が望める。男子パレードスタートスタート地点からは大野城が望める。男子パレードスタート photo:Hideaki TAKAGI男子 序盤から逃げる4人男子 序盤から逃げる4人 photo:Hideaki TAKAGI

男子周回4周目 追走が合流し先頭は6人に男子周回4周目 追走が合流し先頭は6人に photo:Hideaki TAKAGI男子周回4周目 先頭は3人に絞られる男子周回4周目 先頭は3人に絞られる photo:Hideaki TAKAGI

小周回3周目にメイン集団から中島と阿曽がアタックしこれに、藤田俊輔(岡山 京都産業大)、中田、山本の5人が抜け出し前を追う。金田と大浦の2人になっていた先頭へ4人が合流し小周回4周目の坂を上る。ここで中島と阿曽がペースを上げたため集団は人数を減らし、藤田のみが残って3人で小周回の5周目へ。この上りで中島が「ゴールスプリントは2人のほうがいいのでペースを上げて千切った」と阿曽とともにペースを上げて藤田が離れ、先頭は同じキナン所属の中島と阿曽の2人に。

いっぽうのメイン集団も数を減らし15人ほどで追うがタイム差は縮まらない。依田、一時逃げていたが集団に戻った山本、水野の山梨県勢をはじめ、全員でペースを作るが届かない。1分以上あった差は45秒にまで縮めたがこれが限界だった。先頭2人は協調して逃げ続けフィニッシュ地点へ向かう。フィニッシュ地点前のテクニカルな個所は中島が先行しそのままスプリントを制して優勝。中島は国体ロードの優勝経験は2度あるが都道府県大会は初だ。

男子周回5周目 優勝候補の水野恭兵(山梨 インタープロ)自身で集団を引く男子周回5周目 優勝候補の水野恭兵(山梨 インタープロ)自身で集団を引く photo:Hideaki TAKAGI男子周回5周目 同じキナンサイクリングチームの阿曽圭佑(三重)と中島康晴(福井)が逃げ続ける男子周回5周目 同じキナンサイクリングチームの阿曽圭佑(三重)と中島康晴(福井)が逃げ続ける photo:Hideaki TAKAGI

男子周回5周目 時速90キロオーバーの下りを攻める先頭2人男子周回5周目 時速90キロオーバーの下りを攻める先頭2人 photo:Hideaki TAKAGI男子 後続のスプリントは水野恭兵(山梨 インタープロ)、依田翔大(山梨 甲府工高)が3位4位に男子 後続のスプリントは水野恭兵(山梨 インタープロ)、依田翔大(山梨 甲府工高)が3位4位に photo:Hideaki TAKAGI

地元の中島が登坂の厳しいこのコースに備えて体調を整え、満を持して自らアタックし、普段ともに走る阿曽と抜け出せたのが最大の勝因だ。水野は逃げができた時にチームメイトが乗ったため見送ったが、マークされていた水野にとってはそれでも集団のワン・ツーを依田とともに獲ったことが成果だ。

男子 中島康晴(福井 キナンサイクリングチーム)が地元大会を制する男子 中島康晴(福井 キナンサイクリングチーム)が地元大会を制する photo:Hideaki TAKAGI
「思い入れのある地元の大会で勝てたことがうれしい」中島康晴(福井 キナンサイクリングチーム)

正直、鬼のようにきついコースですがこの日のために体を絞ってきました。厳しいコースでも集団が小さくならず、逃げ3人とのタイム差が縮まらなかったので小周回3周目でペースを上げて前に追いつけました。少人数でゴールへ向かう作戦を立てていたのでその通りに行けました。阿曽選手も強くて利害が一致したので彼と2人で攻撃していました。普段は仲間ですが今日はライバルです。でも彼がいなかったら逃げ切りはできなかったですね。一緒に逃げた藤田選手そして中田選手も強かったですね。とくに藤田選手は5周目にも残っていたので、ゴールスプリントを考えて上りで千切りました。都道府県ロードは高校2年生の時に出て以来16年ぶりの出場です。そのときは少年で出て自分は3位、別府史之選手が勝っていました。初めて全国大会で入賞できたレースでした。思い入れのある大会、しかも地元で声援のある中で勝てて嬉しいです。

来年度に地元国体を控える福井県がロード男女ともに優勝の快挙来年度に地元国体を控える福井県がロード男女ともに優勝の快挙 photo:Hideaki TAKAGIロードレースの形態をなした女子。2016年国体から正式種目になったロードレースの形態をなした女子。2016年国体から正式種目になった photo:Hideaki TAKAGI

女子ロードレース 表彰女子ロードレース 表彰 photo:Hideaki TAKAGI男子ロードレース 表彰男子ロードレース 表彰 photo:Hideaki TAKAGI

結果

男子 93.9km

1位 中島康晴(福井 キナンサイクリングチーム)2時間30分04秒
2位 阿曽圭佑(三重 キナンサイクリングチーム)
3位 水野恭兵(山梨 インタープロサイクリングアカデミー)+1分12秒
4位 依田翔大(山梨 甲府工高)
5位 白石真悟(山口 シマノドリンキング)
6位 片桐東次郎(東京 昭和第一学園高)
7位 上之薗鉄朗(大阪 茨木工科高) 
8位 池田和貴(新潟 Fin's)
9位 近谷涼(富山 三和シャッター工業/ブリヂストンアンカー)
10位 青木拓穂(群馬 高崎工高)

女子 48.9km

1位 中村愛花(福井 日本体育大)1時間31分05秒
2位 中冨尚子(熊本 千原台高)
3位 川嶋百香(三重 日本競輪学校)
4位 小口加奈絵(栃木 作新学院高)
5位 川上唯(徳島 小松島西高)
6位 中原恭恵(広島)
7位 太郎田水桜(東京 東京成徳大学高)
8位 盛永母映(新潟 新潟東病院)
9位 内野艶和(福岡 祐誠高)
10位 成海綾香(鹿児島 南大隅高)

男子総合
1位 愛媛県 37点
2位 茨城県 36点
3位 福井県 33点
4位 大分県 31点
5位 熊本県 30点
6位 富山県 29点
7位 岡山県 28点
8位 岐阜県 26点

女子総合
1位 福井県 31点
2位 埼玉県 25点
3位 熊本県 17点
4位 福岡県 16点
5位 宮崎県 14点
6位 広島県 11点
7位 三重県 10点
8位 岐阜県 10点

photo&text:高木秀彰

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