超級山岳サレンヌ峠と2級山岳ラルプデュエズの組み合わせが登場したクリテリウム・デュ・ドーフィネ第7ステージでピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ)が逃げ切り勝利。攻撃に出たリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)がさらに総合リードを広げた。


アルプス山脈の山岳コースを走るアルプス山脈の山岳コースを走る photo:TDWsport
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージ image:A.S.O.ドーフィネ第7ステージのフィニッシュ地点は、2010年以来2回目の登場となるラルプデュエズ。おなじみのスイッチバックが連続する南側からの登坂ではなく、超級山岳サレンヌ峠(全長15.3km/平均6.9%)を経て東側からのアプローチ。平坦区間を挟んで、最後は2級山岳ラルプデュエズ(全長3.7km/平均7.2%)を駆け上がる。

山岳ポイント量産のチャンスだけに、山岳賞トップをキープしたいクーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ)は当然逃げに乗った。ピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ)のイニシアティブによって形成されたのは総勢17名の逃げグループ。この総合争いに関係しない先頭17名のグループの逃げ切りをメイン集団が実質的に容認すると、タイム差はレース中盤に最大6分まで広がった。

逃げて山岳賞のリードを広げたクーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ)逃げて山岳賞のリードを広げたクーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:TDWsport
メイン集団を徹底的にコントロールするBMCレーシングメイン集団を徹底的にコントロールするBMCレーシング photo:TDWsport
ボウマンは3つのカテゴリー山岳で山岳ポイントを連取したが、超級山岳サレンヌ峠の登りでステージ優勝をかけた逃げグループ内のアタック合戦には対応できず脱落してしまう。このサレンヌ峠でケニャック、デリオ・フェルナンデス(スペイン、デルコ・マルセイユKTM)、イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・ソウダル)の3名が先行し、ここに遅れてヘスス・エラダ(スペイン、モビスター)、ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が追いついて先頭は6名に。ここからさらにセレクションが掛かると、先頭はケニャックとスウィフトというイギリス人選手2名に絞られた。

BMCレーシングが終始コントロールしたメイン集団からこのサレンヌ峠で抜け出しを図ったのは、総合14位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)と総合9位ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)の2人。総合5位ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)のアタックは引き戻される。

総合ジャンプアップを狙うバルデは、逃げグループから下がってきたアレクシー・ヴィエルモーズ(フランス、アージェードゥーゼール)の力を借りてリード拡大に成功。そのままサレンヌ峠の頂上をクリアし、タランスキーとともに2級山岳ラルプデュエズを目指した。

超級山岳サレンヌ峠でアタックを仕掛けたロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)超級山岳サレンヌ峠でアタックを仕掛けたロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) photo:TDWsport
アルプスの難関山岳ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ)アルプスの難関山岳ステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo:TDWsportメイン集団から飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)メイン集団から飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:TDWsport

先頭で2級山岳ラルプデュエズの登坂を開始したケニャックとスウィフトの間には登坂力の差が出始め、ミラノ〜サンレモで2度表彰台に上っているスプリンターのスウィフトが脱落する。残り3kmを独走したケニャックがラルプデュエズの山頂で拳を突き上げた。スウィフトは13秒差の2位で頂上にたどり着いている。

先頭ケニャックとスウィフトから約3分遅れ、バルデから約1分遅れでラルプデュエズの登りに入ったメイン集団内ではマイヨジョーヌ争いが本格化。総合リーダーのリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)が自らアタックを仕掛けると、総合逆転を狙う立場のクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落する。ポートの加速に反応したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)もやがては遅れ始め、食らいつくことができたのはヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)だけだった。

ステージ優勝者から1分14秒遅れでフィニッシュしたバルデに対し、遅れること42秒でポートとフルサングが並んでフィニッシュ。ポートを基準に考えると、コンタドールは8秒、アルは17秒、そしてフルームとアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は23秒を失う結果となった。

ラルプデュエズに単独でフィニッシュするピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ)ラルプデュエズに単独でフィニッシュするピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport
2級山岳ラルプデュエズでアタックを仕掛けるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)2級山岳ラルプデュエズでアタックを仕掛けるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:TDWsport
逃げ切り勝利を果たしたケニャックは「7月を前に調子が上がっていたので、逃げグループも強力だったしチャンスがあると思っていた。ベン・スウィフトがサレンヌ峠で見せた登坂力には驚いたよ。お互い9歳の頃から知っている仲なので登りが得意な選手だとは分かっていたけど、登りで引き離せずにスプリントなったらどうしようと焦っていた」と打ち明ける。ケニャックは2012年ロンドン五輪トラックの団体追い抜きで金メダルを獲得しているが、「ラルプデュエズでの勝利は、オリンピックの金メダルより大きな価値があると感じるよ」と喜んだ。この勝利によりチームスカイのツールメンバー入りを確定させたと言っていいだろう。

「攻撃は最大の防御だ」と言い切り、再びライバルたちを圧倒したポートはフルームに対して1分02秒、フルサングに対して1分15秒リードで最終山岳ステージに挑むことに。「明日はライバルたちが断続的に攻撃を仕掛けてくるはず。距離が短い(115km)だけに強度は上がる。レースの行方は最後まで分からないけど、強力なチームメイトたちに支えられているし、良い形で1週間を締めくくりたい」とオーストラリア・タスマニア生まれの総合リーダーはコメントしている。

ピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ)と抱き合うベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ)ピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ)と抱き合うベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ) photo:TDWsport
総合ライバルたちを引き離してフィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)総合ライバルたちを引き離してフィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:TDWsportポートから23秒遅れたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ポートから23秒遅れたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport

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クリテリウム・デュ・ドーフィネ2017第7ステージ結果
ステージ成績
1位 ピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ) 4h43'59"
2位 ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ) +13"
3位 ヘスス・エラダ(スペイン、モビスター) +1'11"
4位 イエール・ヴァネンデル(ベルギー、ロット・ソウダル) +1'13"
5位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) +1'14"
6位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) +1'56"
7位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +2'04"
9位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +2'13"
11位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
12位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +2'19"
13位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)
14位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
15位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)
個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) 25h38'29"
2位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) +1'02"
3位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) +1'15"
4位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ) +1'41"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +1'43"
6位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) +2'07"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) +2'15"
8位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ) +2'31"
9位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +2'53"
10位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +3'43"
ポイント賞
1位 アルノー・デマール(フランス、エフデジ) 59pts
2位 フィル・バウハウス(ドイツ、サンウェブ) 47pts
3位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー) 36pts
山岳賞
1位 クーン・ボウマン(オランダ、ロットNLユンボ) 24pts
2位 ピーター・ケニャック(イギリス、チームスカイ) 21pts
3位 ベン・スウィフト(イギリス、UAEチームエミレーツ) 21pts
ヤングライダー賞
1位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 25h41'22"
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ) +1'01"
3位 ティエシー・ブノート(ベルギー、ロット・ソウダル) +1'27"
チーム総合成績
1位 アージェードゥーゼール 77h07'54"
2位 オリカ・スコット +1'51"
3位 モビスター +2'40"