前日のチームTTでチーム全体に1分のペナルティを受け、リーダージャージを失ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が1級山岳ラ・モリーナの山頂フィニッシュでリベンジ達成。36歳のベテランがトップレーサーが集う山岳バトルに勝利した。



ボルタ・ア・カタルーニャ2017第3ステージボルタ・ア・カタルーニャ2017第3ステージ image: Volta Ciclista a Catalunyaボルタ・ア・カタルーニャ第3ステージは今大会最も厳しいクイーンステージ。地中海沿いのマタロをスタート後に徐々に高度を上げ、フランス国境にまたがるピレネー山脈に向かう188kmコースで、獲得標高差は4,000mを超える。

BMCレーシングやトレック・セガフレードを先頭に山岳地帯に向かうBMCレーシングやトレック・セガフレードを先頭に山岳地帯に向かう photo: TDWsport / KT残り70kmを切ってからは標高1,700mクラスの1級山岳が3つ立て続けに登場する。1級山岳アルト・デ・トセス(6.3km/平均7%)と1級山岳ラ・モリーナ(11.6km/平均4.3%)をクリアし、スキーリゾート地として知られる1級山岳ラ・モリーナ(12.2km/平均4.7%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。最終山岳は下り区間を含んでおり、実質的な平均勾配は7%ほど。

クイーンステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ)クイーンステージを走る新城幸也(バーレーン・メリダ) photo: Miwa Iijima前日のチームタイムトライアルではモビスターがトップタイムで優勝し、表彰台でホセ・ロハス(スペイン)がリーダージャージを受け取った。しかしレース中にチームメイトを押したとしてロハスが3分のペナルティを受け、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)がリーダージャージを着ることで決着。しかしこの第3ステージの朝に再びリザルトに修正が入った。

リーダージャージを着て走るベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)リーダージャージを着て走るベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング) photo: TDWsport / KTフランス語と英語のUCIルール内容に相違があったことで生まれた今回の混乱。UCIコミッセールはロハスら個人ではなくモビスターのチーム全体に1分のペナルティを与えることを最終決定とした。これによりモビスターのチームTTの成績はステージ1位から4位にダウン。ステージ2位のBMCレーシングがステージ優勝に輝くとともに、ベン・ヘルマンス(ベルギー)がリーダージャージを着て第3ステージを走ることに。一転バルベルデらは1分ビハインドで総合逆転を狙う立場となった。

集団先頭で上りをこなすクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら集団先頭で上りをこなすクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら photo: TDWsport / KT総合争いや山岳賞争いにおいて重要なステージだけに、この日は序盤から熾烈なアタック合戦が繰り広げられた。1時間半におよぶアタック合戦の末に60km地点で飛び出したのはナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)ら4名。新城幸也(バーレーン・メリダ)は「今日は逃げに乗れるように動いた。何度か抜け出しもしたが、逃げることは出来なかった。逃げることに集中していたので、山岳に入るころには脚を結構使ってしまっていた・・・」とコメントしている。

牽制しながら1級山岳ラ・モリーナを上るアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)ら牽制しながら1級山岳ラ・モリーナを上るアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)ら photo: TDWsport / KT逃げグループはBMCレーシングが牽引するメイン集団から7分のリードを得て後半の山岳地帯へ。ベルハネが積極的に山岳ポイントを獲得したが、チームスカイの集団ペースアップによってタイム差は縮まっていく。最終の1級山岳ラ・モリーナの登坂が始まってすぐ、先頭で最後まで粘っていたベルハネは吸収された。

上りスプリントで勝利したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)上りスプリントで勝利したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo: TDWsport / KTダルウィン・アタプマ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)やカルロス・ベローナ(スペイン、クイックステップフロアーズ)らがアタックを仕掛けたが、チームスカイがペースを作るメイン集団からは抜け出せない。ビッグネームが動きを見せないままメイン集団は30名ほどに絞られていく。

残り3kmを切るとモビスターが先頭に立ってペースメイク。アタックを許さないハイペースで残り1kmを切り、そこからダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)がペースを上げて先頭へ。マーティンの加速に反応して食らいついたバルベルデが、残り100mからのスプリント一騎打ちに勝利した。

「逃げが生まれるまでレース序盤はハイスピードで、終盤もまたハイスピードでタフだった。チームスカイがタフな展開に持ち込んだもののマルク・ソレールが素晴らしいアシストぶりで援護してくれた。彼がアタックを封じ込めてくれたので、自分はスプリントに集中するだけだった。マーティンのアタックにはすかさず反応。今日のような上りスプリントは完璧に自分向きで、負けるわけがないと思っていたよ」。バルベルデはキャリア101勝目をそう振り返った。

この日の結果を受けてリーダージャージはティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の手に。45秒差の総合4位に浮上したバルベルデは「昨日の出来事についてコメントは控えたい」と語りながらも、「モビスターがフェアプレーで勝利したことは誰の目にも明らかだった」とUCIコミッセールの決断を批判している。

総合首位に立ったヴァンガーデレンは「昨日は様々な議論が交わされたけど、自分たちはレースに集中した。スタート直前に突然リーダージャージがチームにやってきたのでチーム戦略を急いで変更。それでも上手くレースを進めることができたと思う。厳しい第5ステージで再びライバルたちは攻撃を仕掛けてくるだろう。大きなリード(トーマスに対して44秒)を得ているし、チームはジャージを防衛する準備ができている」とコメント。チームTTでタイムを伸ばせなかったアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)らは依然として1分以上遅れたままだ。

24分44秒遅れでフィニッシュした新城は「最初の1級山岳は少し遅れただけで頂上を越え、下りで先頭集団に復帰。しかし、2回目の1級山岳で力尽きてしまい、メイン集団でゴール。グルペットはペースが遅いので体が温まらず寒かった(笑)しかしこれ以上頑張れる脚(体力)も残っていなかったし、トータル4,000mも登って今日は力をたくさん使った気分だ」とコメントする(チームユキヤ通信より)。翌日の第4ステージは残り13km地点に2級山岳が設定されたアップダウンコース。上りで絞られた小集団スプリントに持ち込まれるだろう。




ボルタ・ア・カタルーニャ2017第3ステージ
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)         5h07'12"
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)            +03"
4位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
5位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
6位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
8位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
9位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)        +09"
10位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)

個人総合成績
1位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)   10h24'33"
2位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)           +41"
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)             +44"
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           +45"
5位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)          +49"
6位 マルク・ソレール(スペイン、モビスター)              +1'10"
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)    +1'13"
8位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)           +1'18"
9位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)         +1'25"
10位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、トレック・セガフレード)

スプリント賞
1位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)      6pts
2位 ムリーロ・アフォンソ(ブラジル、ソールブラジル)          5pts
3位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)      5pts

山岳賞
1位 ムリーロ・アフォンソ(ブラジル、ソールブラジル)          48pts
2位 アントニオ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)        37pts
3位 ナトナエル・ベルハネ(エリトリア、ディメンションデータ)      32pts

ヤングライダー賞
1位 マルク・ソレール(スペイン、モビスター)            10h25'43"
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・スコット)           +08"
3位 カルロス・ベローナ(スペイン、クイックステップフロアーズ)    +22'00"

チーム総合成績
1位 チームスカイ            31h16'56"
2位 トレック・セガフレード          +46"
3位 モビスター               +1'10"

text:Kei Tsuji
photo:TDWsport

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