UAEチーム所属の元世界チャンピオンが標高1025mのジュベルハフィートに先頭でフィニッシュ。牽制するビッグネームを寄せ付けず、大会唯一の山岳を制したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)がアブダビツアー総合優勝に王手をかけた。



オレンジ色の砂漠地帯をメイン集団が進むオレンジ色の砂漠地帯をメイン集団が進む photo:Kei Tsuji / TDWsport
アブダビツアー2017第3ステージアブダビツアー2017第3ステージ image:RCSsportアブダビツアー2017第3ステージアブダビツアー2017第3ステージ image:RCSsport



アルアインの街をスタートしていく選手たちアルアインの街をスタートしていく選手たち photo:Kei Tsuji / TDWsportアブダビツアーの総合優勝者を決める第3ステージは、UAE(アラブ首長国連邦)東部に位置する岩山ジュベルハフィートを駆け上がる。風吹きすさぶ平坦な砂漠地帯を走行後、標高1,025mの頂上に向かう全長10.8kmの登りにアタックする。

UAE国旗を横目にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)らが進むUAE国旗を横目にマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)らが進む photo:Kei Tsuji / TDWsportジュベルハフィートの平均勾配は7%で、場所によっては10%を超える区間も。4ステージのうちこの第3ステージだけが山岳ステージであり、しかも登場する山岳はこのジュベルハフィートだけ。時間にして25分の登坂タイムが実質的に総合成績となる。

集団内で走る小石祐馬と窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)集団内で走る小石祐馬と窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji / TDWsportクラシックシーズン幕開けを迎えたベルギーは好天だと言うのに、この日は朝から想定外の雨模様。砂漠の上に停滞する薄紅色の雲から雨粒が落ちたが、レース中に本降りになることはなかった。

アブダビ第二の都市であるアル・アインを出発後すぐ、ワイルドカード枠で出場しているUCIプロコンチネンタルチーム所属の4名の逃げが決まる。NIPPOヴィーニファンティーニ、ガスプロム・ルスヴェロ、ノボノルディスク、バルディアーニCSFがそれぞれ逃げに1人ずつを送り込んだ。

メイン集団はディメンションデータのコントロール下に置かれたが、砂漠を行く直線的な幹線道路に横風が吹きつけたためにわかにペースアップ。総合系チームがメイン集団の先頭に陣取ってペースを上げると、最大4分半まで広がっていたタイム差は縮小を始める。風で集団が割れるようなシーンは見られなかったが、常に集団内にはピリピリとした空気が流れた。

風の中を逃げていたパヴェル・ブラット(ロシア、ガスプロム・ルスヴェロ)らは残り14kmで吸収。直後の中間スプリントではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)とマルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)が本格的なバトルを繰り広げ、カヴェンディッシュがポイント賞のリードを広げることに成功している。

逃げを飲み込んだメイン集団はモビスターとトレック・セガフレードを先頭にジュベルハフィートの登坂を開始した。



風吹きすさぶ内陸の砂漠地帯を進む風吹きすさぶ内陸の砂漠地帯を進む photo:Kei Tsuji / TDWsport
いくつものモスクを通過し、ジュベルハフィートを目指すいくつものモスクを通過し、ジュベルハフィートを目指す photo:Kei Tsuji / TDWsport曇り空の砂漠地帯を進む逃げグループ曇り空の砂漠地帯を進む逃げグループ photo:Kei Tsuji / TDWsport
ジュベルハフィートの麓に向かって別府史之(トレック・セガフレード)が集団を牽引ジュベルハフィートの麓に向かって別府史之(トレック・セガフレード)が集団を牽引 photo:Kei Tsuji / TDWsportジュベルハフィートの登りに突入するメイン集団ジュベルハフィートの登りに突入するメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
岩がむき出しになったジュベルハフィートを登る岩がむき出しになったジュベルハフィートを登る photo:Kei Tsuji / TDWsport



荒涼とした風景が広がるジュベルハフィートを登る荒涼とした風景が広がるジュベルハフィートを登る photo:Kei Tsuji / TDWsport頂上まで9kmを残した早いタイミングで最初に動いたのはナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)だった。もちろんこの総合優勝候補のアタックにはライバルたちが即座に反応する。

真っ先にアタックしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)真っ先にアタックしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji / TDWsport続いて残り7km地点で飛び出したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)が先行を開始。イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)だけがコスタに単独ブリッジし、互いに協力してライバルたちを引き離し始めた。

メイン集団から飛び出したバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)メイン集団から飛び出したバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji / TDWsport牽制が続くメイン集団からトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)とバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が抜け出した一方、キンタナのアタックにはアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)が徹底的にマークに入る。

牽制の中からアタックするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)牽制の中からアタックするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsportデュムランとモレマはそれぞれ個人TTのごとくハイペースを刻んで追走。3番手のデュムランは先頭2名の6秒後方にまで迫ったが追いつくには至らない。ステージ優勝の行方はコスタとザカリンの2人に絞られ、残り300m地点で腰を上げたコスタがスプリントでフィニッシュに飛び込んだ。

コンタドールを引き離そうとアタックを繰り返すナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)コンタドールを引き離そうとアタックを繰り返すナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsportボーナスタイムも加算したコスタが総合首位に躍進。早めの仕掛けが功を奏し、並み居るトップレーサーを下して赤いリーダージャージを射止めた。「一流のクライマーが集結していたので決して簡単な勝利ではなかった。前半から風の強い区間で集団分裂を試みるチームもいたし、最後の登りが始まるとモビスターが強力なペースを作った。誰が反応するのか様子を見るためにアタックすると、すぐに脚の状態が良いことがわかった。追いついてきたザカリンとは上手く協調体制を築けていた。協調体制が今日のキーポイントで、さもなくば後ろの選手たちに追いつかれていたと思う。早めにアタックして先頭で耐え抜く作戦が見事にハマった」とコスタは語る。

先行するイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)とルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)先行するイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)とルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji / TDWsportUAEのレースでUAEのチームが総合首位に立った。エミレーツ航空を新たなスポンサーに獲得し、UAEチームエミレーツとして迎えた初戦で総合優勝に王手。「チームにとってこの勝利はとても重要で、少なくとも何か結果を残さなければならなかった。ツアー・オブ・オマーンで結果を残していたけど、それよりもスポンサーのお膝元であるこのアブダビツアーでの活躍は必須条件。強力なメンバーを揃えて出場した以上、良いパフォーマンスを発揮してスポンサーに勝利をプレゼントする必要があったんだ」と、ミッションを完遂したコスタはコメントしている。

コスタとザカリンに続いてデュムランとモレマがそれぞれフィニッシュし、続いて集団はジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)を先頭にフィニッシュラインにやってきた。アラフィリップはヤングライダー賞ジャージを獲得している。

最も多くの回数アタックしたキンタナはコンタドールを押さえ込んだものの、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)らに先行を許してフィニッシュ。キンタナは「ステージ優勝に絡めず残念だった。誰もが自分のアタックを待っている状態だったので、アタックしてもすぐにチェックが入って引き戻された。そして他の選手のアタックに反応する役目も自分。ライバルたちを完全に引き離す力はなく、逆にライバルたちに付いていけなかった」と、苦しい勝負を振り返る。

一方、モレマが先行したことでチェック役に徹したコンタドールは「ナイロが最も危険な存在であると判断し、彼のすべてのアタックに反応した。牽制の隙を突いてバウケが飛び出したものの、先に逃げていた2人には追いつかなかった。本来ならアタックしてレースを動かすのが自分のスタイルだけど、今日はバウケと戦略的に走ることを選んだんだ」とコメントしている。



ジュベルハフィートを制したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)ジュベルハフィートを制したルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
集団の先頭でフィニッシュするジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)集団の先頭でフィニッシュするジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsportライバルに先行を許したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ライバルに先行を許したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji / TDWsport
リーダージャージを手にしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)リーダージャージを手にしたルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji / TDWsport



アブダビツアー2017第3ステージ結果
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)          4h34’08”
2位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)                +10”
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)           +28”
5位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)   +46”
6位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
7位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
8位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
10位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              +58”
12位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
13位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)    +1’01”
15位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)     +1’05”
16位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、オリカ・スコット)
25位 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)

個人総合成績
1位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)         12h39’15”
2位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)        +04”
3位 トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)                +16”
4位 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)           +38”
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)         +56”
6位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)
8位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール)
9位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)
10位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)         +1’08”

ポイント賞
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)     37pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)       28pts
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)           20pts

ヤングライダー賞
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)12h40’11”
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、UAEチームエミレーツ)      +19”
3位 カルロス・ベローナ(スペイン、オリカ・スコット)

スプリント賞
1位 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)       17pts
2位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、UAEチームエミレーツ)         16pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)       8pts

チーム総合成績
1位 UAEチームエミレーツ                        38h00’18”
2位 アージェードゥーゼール                        +46”
3位 ロットNLユンボ                            +53”

text&photo:Kei Tsuji in Abu Dhabi, UAE

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