平均勾配7%の山頂フィニッシュが設定されたツアー・オブ・オマーン第3ステージで窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)がエスケープ。熾烈な登りバトルの末、22歳のソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)がプロ初勝利を飾った。



真っ白なモスクに向かって進むメイン集団真っ白なモスクに向かって進むメイン集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport


逃げに乗った窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)逃げに乗った窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji / TDWsportオマーンの首都マスカットから山岳地帯を抜けて東に向かう第3ステージ。162kmコースに登場するKOM(キング・オブ・マウンテン)は33km地点のブシェールアラムラット(3.6km/10%)とフィニッシュ地点のクリヤット(2.8km/7%)の2つ。終盤にかけて断続的なアップダウンが登場する。

メイン集団をコントロールするBMCレーシングメイン集団をコントロールするBMCレーシング photo:Kei Tsuji / TDWsportこの日、10km地点で形成された6名の逃げグループの中に窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)が入った。「今日は逃げに乗るよう指示があった。スタート後20分前後で自分たちの逃げが決まり、追走で3人が加わり、合計6人でエスケープを開始。先月、アルゼンチンで行われたサンフアンのレースでは40度の気温のなか、160kmをエスケープしているので、今回のエスケープでは精神的に余裕があった」と窪木は振り返る。

窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)を含む6名の逃げ窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)を含む6名の逃げ photo:Kei Tsuji / TDWsportマシュー・ブラマイヤー(アイルランド、アクアブルースポート)やフェン・チュンカイ(台湾、バーレーン・メリダ)らと逃げた窪木の目標は中間スプリントとKOMでの合計ポイントで争われる総合敢闘賞ジャージを獲得すること。

KOMクリヤットでアタックしたローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)KOMクリヤットでアタックしたローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ) photo:Kei Tsuji / TDWsport窪木は最初のKOMブシェールアラムラットを先頭通過し、第1中間スプリントで2着に。しかし第2中間スプリントで3着に終わり、ジャージ獲得を逃している。「チームカーから敢闘賞のジャージが着れるチャンスだから頑張れとの指示があった。最後の中間スプリントで1着なら現在のリーダーと同点となり総合成績が上位である自分がジャージを獲得できる。最後のチャンスを物にしたくて最後のスプリントに備えていたが、結果的にはベルギーの選手に競り負けてしまい敢闘賞ジャージを手にすることはできなかった。かなり悔しかったがこれが実力。物にできるかできないか。今日はずっと向かい風でかなり疲れたので、しっかりリカバリーしたい(NIPPOヴィーニファンティーニ公式サイト)」。この日の結果を受けて窪木は総合敢闘賞4位に浮上している。

デプルスを抜いて先頭に立つソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)デプルスを抜いて先頭に立つソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsportBMCレーシングに加えてアスタナやカチューシャ・アルペシンがコントロールしたメイン集団は残り15km地点で逃げを吸収。そしてそのまま最後のKOMクリヤットに突入する。

登りスプリントを制したソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)登りスプリントを制したソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport30km/h近くのハイスピード(参照:ロマン・バルデのSTRAVAログ)で平均勾配7%の登りを進む集団から口火を切ったのはジュリアン・アレドンド(コロンビア、NIPPOヴィーニファンティーニ)。続いてアタックしたローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)が単独で飛び出し、5秒ほどのリードを得て残り1kmを独走する。

登りの進行とともにバラける集団から飛び出したのはアンデルセンで、先頭デプルスを残り100mで勢い良くパス。ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEアブダビ)や総合リーダーのベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)を振り切り、22歳のアンデルセンが先頭でクリヤットの頂上にたどり着いた。

2016年にジャイアント・アルペシンでプロ入りし、同チームで2年目を迎えるデンマーク出身のアンデルセン。タイムトライアルやスプリントもこなせるオールラウンダーであり、若手の登竜門として知られるツール・ド・ラヴニールで2015年にステージ2勝。2016年のツアー・オブ・カタールでヤングライダー賞に輝いている。

ビッグネームを退けてプロ初勝利を飾ったアンデルセンは「チームメイトのおかげでフレッシュな状態で登りの麓までやってきた。うまく位置どりして残り250mからスプリント開始。先頭でフィニッシュするのは最高の気分だった。今日という日を忘れることはないだろう(サンウェブ公式サイト)」とコメント。ボーナスタイム10秒により総合でも8位に浮上している。

ステージ2位のコスタに2秒奪われたもののヘルマンスがリーダージャージをキープ。翌日の第4ステージは、この日前半に登ったKOMブシェールアラムラット(3.6km/10%)を後半にかけて3回リピートするアップダウンコースが設定されている。再びパンチャー系選手によるバトルに持ち込まれる可能性が高い。



プロ初勝利を飾ったソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)プロ初勝利を飾ったソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ) photo:Kei Tsuji / TDWsport


ツアー・オブ・オマーン2017第3ステージ結果
1位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)      3h53’11”
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEアブダビ)
3位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)
4位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
5位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
7位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
8位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                  +04”
10位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)

個人総合成績
1位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)            11h00’15”
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEアブダビ)                +02”
3位 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)               +10”
4位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)        +18”
5位 ダビ・デラクルス(スペイン、クイックステップフロアーズ)        +21”
6位 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)
7位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)
8位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                  +25”
10位 ハニエル・アセベド(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)

ポイント賞
1位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)             24pts
2位 ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEアブダビ)               24pts
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)  17pts

ヤングライダー賞
1位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)      11h00’33”
2位 ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)      +03”
3位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)

チーム総合成績
1位 ディメンションデータ                        33h02’03”
2位 アスタナ                                +04”
3位 BMCレーシング                             +40”

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele