KOMパラコームの山頂に向かってダンシングでハイペースを刻んだリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)。獲得標高差3,000mの厳しいステージを制したポートが自身初のリーダージャージに袖を通した。



ツアー・ダウンアンダーを迎えるデコレーションツアー・ダウンアンダーを迎えるデコレーション photo:Kei Tsuji
スポンサーのタグホイヤーをつけるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)スポンサーのタグホイヤーをつけるリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji笑顔でマキュアンのインタビューに答えるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)笑顔でマキュアンのインタビューに答えるエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji


オーストラリアではお馴染みのカンガルーの標識オーストラリアではお馴染みのカンガルーの標識 photo:Kei Tsujiサントス・ツアー・ダウンアンダー総合争いにおいて最も重要なステージは、KOMオールドウィランガヒル(平均7.5%/全長3.0km)にフィニッシュする最終日前日の第5ステージではなく、断続的なアップダウンの末にKOMパラコーム(平均8.8%/全長1.6km)にフィニッシュする第2ステージであるとの声が開幕前から囁かれていた。

単独で逃げ続けるヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)単独で逃げ続けるヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター) photo:Kei Tsujiスターリングからパラコームまでの148kmで行われた第2ステージ。スタートからフィニッシュまで、前半の周回を含めて、登りと下りしかないジェットコースターのようなコースが設定されている。

集団牽引を一手に担うオリカ・スコット集団牽引を一手に担うオリカ・スコット photo:Kei Tsuji獲得標高差が3,000mに達するアップダウンコースを締めくくるKOMパラコームは、前半にかけて10%オーバーの勾配が続くパンチの効いたもの。KOMオールドウィランガヒルよりもタイム差がつきやすいため、実質的なクイーンステージとして注目を集めた。

オーストラリアチャンピオンのマイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)が集団のペースを上げるオーストラリアチャンピオンのマイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)が集団のペースを上げる photo:Kei Tsuji前日は気温が41度まで上がる熱波に見舞われたが、この日は気温が25度までしか上がらない涼しげな夏の日。雲に覆われたスタート時点は18度と肌寒く、どの選手も空を見上げながら身支度を整える。

スタートが切られるやいなやオンドレイ・シンク(チェコ、バーレーン・メリダ)とキャメロン・マイヤー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)が飛び出した。しかし、過去に逃げ切りで得たリードを総合優勝につなげた経験があるマイヤーの逃げは危険であるとオリカ・スコットは判断。マイヤーらの逃げは引き戻された。

前日のローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)に代わり、ソロエスケープを敢行して観客の声援を独り占めしたのはヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)。「チームメイトのスペイン人たちの英語より自分のスペイン語のほうが上手いので、チーム内のコミュニケーションはスペイン語」というズッタリンが最大5分リードで逃げた。

オリカ・スコットがコントロールしたメイン集団では比較的平穏な空気が流れたものの、やがてレース後半に差し掛かるとチームスカイとBMCレーシングのペースアップが開始される。

延々と続く丘のワインディングロードで、オーストラリアチャンピオンのマイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)と、ポイント賞ジャージのダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)がローテーションを回してペースアップ。イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)らもここに加わると、先頭ズッタリンは残り40km地点で吸収された。



レースの進行とともに雲が去り、気温が上がるレースの進行とともに雲が去り、気温が上がる photo:Kei Tsuji
マイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)率いるメイン集団が逃げを追うマイルズ・スコットソン(オーストラリア、BMCレーシング)率いるメイン集団が逃げを追う photo:Kei Tsujiヴィスコンティを連れて集団先頭まで上がる。ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ)ヴィスコンティを連れて集団先頭まで上がる。ニッコロ・ボニファツィオ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Kei Tsuji


チームメイトのアシストを受けてポジションを守るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)チームメイトのアシストを受けてポジションを守るリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei TsujiKOMパラコームへのカウントダウンが始まる中、アデレード定番のヒルクライムコースであるノートンサミットの下りでセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チームスカイ)が前輪パンク。すぐさま従姉妹のセバスティアン・エナオのホイールを受け取ってことなきを得たが、しばらくして今後は後輪がパンクする。

カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が集団を率いて残り10kmを切るカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)が集団を率いて残り10kmを切る photo:Kei Tsujiエナオはバイク交換後にチームメイトの力を借りて猛追し、なんとか最後のKOMパラコームの登りが始まるまでに集団復帰。2年前のKOMパラコーム覇者ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)も後輪パンクに見舞われたが、難なく集団に復帰している。

KOMパラコームでアタックするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)KOMパラコームでアタックするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiチームスカイ勢の相次ぐパンクに乗じてオリカ・スコットやモビスターが集団先頭に陣取ってペースを作り、渓谷に沿って徐々に高度を上げていく。前半からボトル運びを献身的に行っていたリーダージャージのカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)も身を粉にして集団を牽引した。

ライバルたちを置き去りにしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ライバルたちを置き去りにしたリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji残り3km表示を過ぎると世界チャンピオンのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭に立ち、そのまま集団を率いてKOMパラコームに突入する。チームメイトのジェイ・マッカーシー(オーストラリア)が好位置で登坂を開始したことを確認したサガンは仕事は終了。

独走でフィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)独走でフィニッシュするリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji勾配のある登りでウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ)のペースアップに乗じて、ポートがダンシングで加速した。しばらく食らいついたゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)も、ポートのペースには太刀打ちできなかった。

そのままダンシングでライバルたちを置き去りにしたポートがイサギレとエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)を16秒、そしてチームメイトのデニスを含むボリュームある集団を19秒引き離してフィニッシュ。4年連続ステージ優勝を飾るとともに、一躍総合首位に立った。

「オーストラリア最大のレースでリーダージャージを着るのは最高だ」。まだ1月だと言うのにカリカリに絞り込んでいるポートはフィニッシュ後すぐの囲みインタビューでそう答えた。「パラコームの登りを想定して、オフシーズンに地元ロンセストンの登りで繰り返しトレーニングした。2年前(チームスカイ所属時)は牽制でチャンスを失っていただけに、チームメイトの完璧な仕事を勝利で締めくくることができて夢のような気分」。

ポートは16秒のアドバンテージに加えてボーナスタイム10秒も獲得したため、総合2位以下を大きく引き離すことに成功。数秒差で総合争いが決まることの多いダウンアンダーにおいて、ポートが1日で築いた20秒のリードは大きい。残る4ステージでは、マッカーシーを始めとするスプリント力あるオールラウンダーたちが攻勢を仕掛けてくるはずだ。



16秒遅れの3位に入ったエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)16秒遅れの3位に入ったエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji19秒遅れでフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)19秒遅れでフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
ステージ優勝を飾ったリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)ステージ優勝を飾ったリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiリーダージャージを獲得したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを獲得したリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji



サントス・ツアー・ダウンアンダー2017第2ステージ結果
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     3h46’06”
2位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)            +16”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)
4位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)       +19”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
6位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)
7位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)
8位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
9位 マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール・ドラパック)
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)

個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)     7h10’14”
2位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)            +20”
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)      +22”
4位 ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +24”
5位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)    +27”
6位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEアブダビ)          +29”
7位 ネイサン・アール(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
8位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)
10位 ラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)

ポイント賞
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)      15pts
2位 カレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)     15pts
3位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)           14pts

山岳賞
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)      16pts
2位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・スコット)     12pts
3位 ローレンス・デヴリーズ(ベルギー、アスタナ)         10pts

ヤングライダー賞
1位 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、トレック・セガフレード)  7h10’43”
2位 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)
3位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、UniSAオーストラリア)

チーム総合成績
1位 UniSAオーストラリア                    21h32”25”
2位 トレック・セガフレード                    +11”
3位 モビスター                          +12”

敢闘賞
ヤシャ・ズッタリン(ドイツ、モビスター)

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia