世界チャンピオンがハットトリックを達成。石畳も登場するテクニカルなスイスステージでアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)を接戦の末に下したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)がステージ3勝目を掴んだ。



スイスに向かって東に進むメイン集団スイスに向かって東に進むメイン集団 photo:TDWsport/Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2016第16ステージツール・ド・フランス2016第16ステージ image:A.S.O.ツール・ド・フランス2016第16ステージツール・ド・フランス2016第16ステージ image:A.S.O.


2人逃げを開始したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)2人逃げを開始したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsujiジュラ山脈の山あいの町モワラン・アン・モンターニュからスイスの首都ベルンに向かう209kmコースは一見フラット。カテゴリー山岳も1つしか登場しない。しかし残り2.5kmから7%ほどの石畳坂が登場し、フラムルージュ(残り1kmアーチ)まで高低差およそ60mを駆け上がってフィニッシュ。ピュアスプリンター向きではないテクニカルなコースが用意された。

追走するティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)ら4名追走するティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)ら4名 photo:TDWsport/Kei Tsuji休息日を前にした1日は高速アタック合戦で幕開ける。アタックに次ぐアタックの末にメイン集団から抜け出したのはトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)の2人。チームメイトがコンビを組んでメイン集団を引き離し始めた。

チームメイトに守られて安全に走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)チームメイトに守られて安全に走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji主に逃げの先頭を引いたのはTTスペシャリストのマルティンで、追走するティモ・ルーセン(オランダ、ロットNLユンボ)、ローソン・クラドック(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)、ピエールリュック・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)を寄せ付けない走りを披露する。レース最初の1時間の平均スピードは49.5km/hに達した。

長い追走の末にルーセンらはメイン集団に吸収されたが、マルティンとアラフィリップの2人がタンデム走行を継続し、メイン集団から最大6分のリードを得る。マルティンの超長距離タイムトライアルはレース後半に入ってもスピードが落ちなかった。

メイン集団の先頭に立ったのは、ブライアン・コカール(フランス)で勝利を狙うディレクトエネルジーと、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー)のBMCレーシング、ペーター・サガン(スロバキア)のティンコフ、そしてエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)のディメンションデータ。抜けるような青空のした、国境を越えてスイスに入ると逃げとメイン集団のタイム差は縮まった。



ジュラ山脈のアップダウンコースを逃げるトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)らジュラ山脈のアップダウンコースを逃げるトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)ら photo:TDWsport/Kei Tsuji
逃げるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)とトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)逃げるジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)とトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ中盤にフランスからスイスに入るステージ中盤にフランスからスイスに入る photo:TDWsport/Kei Tsuji
BMCレーシングが積極的にメイン集団をコントロールするBMCレーシングが積極的にメイン集団をコントロールする photo:TDWsport/Kei Tsuji


残り20km地点でアタックするルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)残り20km地点でアタックするルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) photo:TDWsport/Kei Tsujiフィニッシュ32km手前のスプリントポイントはアラフィリップのとマルティンの順で通過。1分20秒後方のメイン集団では本格的なスプリントが繰り広げられ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)を下したサガンがマイヨヴェールのリード拡大に成功している。

先頭で石畳坂を駆け上がるソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)ら先頭で石畳坂を駆け上がるソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)ら photo:TDWsport/Kei Tsujiやがて先頭からはアラフィリップが脱落し、マルティンがソロエスケープを継続。しかしメイン集団の足音は徐々に近づき、残り22km地点でタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)とトマ・ヴォクレール(フランス、ディレクトエネルジー)がメイン集団から飛び出すとついにマルティンの逃げに終止符が打たれた。

石畳坂で長く伸びるメイン集団石畳坂で長く伸びるメイン集団 photo:TDWsport/Kei Tsujiその後もアタックは断続的にかかり、ツール・ド・スイスで3度の総合優勝を誇るルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)が単独で抜け出すことに成功したが、しばらくの独走の末に吸収される。スイスのBMCレーシングが中心となってメイン集団のペースを上げ、ベルンの旧市街に突入した。

ベルンの石畳コースを走る新城幸也(ランプレ・メリダ)ベルンの石畳コースを走る新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:TDWsport/Kei Tsuji石畳が敷かれた登りでメイン集団の人数は60名ほどに絞られ、そのまま残り2kmアーチを切って勾配6〜7%の登りに差し掛かる。セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)らのアタックはジャイアント・アルペシンの牽引によって吸収。フラムルージュを潜り抜け、ピュアスプリンターを欠いた集団によるスプリントが始まった。

登りでペースを上げるワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)登りでペースを上げるワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) photo:TDWsport/Kei Tsuji残り250mでロングスパートに持ち込んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を追う形でスプリントがスタート。今シーズン限りでの引退を表明している地元ベルン出身ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)やマイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ももがく中、クリストフが好位置から加速する。

スプリントで競り合うペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)とアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)スプリントで競り合うペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)とアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:TDWsport/Kei Tsujiすぐさま先頭に立った真赤なジャージのクリストフに対抗したのは真緑のサガン。両者ともに時折目線を上げてフィニッシュラインまでの距離を確認しながらスプリントする。クリストフが先頭をキープしていたが、フィニッシュラインの寸前でサガンがハンドルを投げ込む。わずかにハンドルを投げるのが遅れたクリストフを、サガンが差し切った。

「ステージ2位だと思っていた」というサガンがステージ3勝目。最終スプリントのスピードは65.6km/hだった。この日の平均スピードは47.1km/h。

「負けたと思っていたけど、オーガナイザーのスタッフに呼び止められて勝ったことを知ったんだ。アンビリーバブルな気持ち。これまでステージ2位ばかりが続いていたけど、ようやく歯車がかみ合っている」とサガンは語る。サガンはマイヨヴェール争いで他を大きく引き離すことに成功。実質的にスプリンターに残されたチャンスは最終日パリだけだ。

一方、僅差で敗れたクリストフは「正直言って勝ったと思った。全開で踏み続けたのでフィニッシュラインが見えず、ハンドルを投げるのが少し遅れてしまった」と悔やむ。クリストフは第14ステージに続く今大会2回目の2位を経験した。

しっかりと集団前方でフィニッシュしたフルームがマイヨジョーヌをキープ。フルームは総合2位バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)から1分47秒、総合3位アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)から2分45秒、そして総合4位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)から2分59秒のリードを得て大会最後の休息日を迎える。



タイミングよくハンドルを投げたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が先着タイミングよくハンドルを投げたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が先着 photo:TDWsport/Kei Tsuji
世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が今大会3勝目世界チャンピオンのペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)が今大会3勝目 photo:TDWsport/Kei Tsujiペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の登場に歓喜するスロバキア応援団ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)の登場に歓喜するスロバキア応援団 photo:TDWsport/Kei Tsuji
敢闘賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)敢闘賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) photo:TDWsport/Kei Tsuji


ツール・ド・フランス2016第16ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)                4h26’02”
2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
3位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)
5位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)
7位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)
8位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)
9位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)
10位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
119位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                    +2’54”

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               72h40’38”
2位 バウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)             +1’47”
3位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)         +2’45”
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                 +2’59”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +3’17”
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +4’04”
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシング)             +4’27”
8位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)         +4’47”
9位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)    +5’03”
10位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                   +5’16”

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)                 405pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)        291pts
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)        228pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ)                 127pts
2位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)              90pts
3位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)                69pts

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)      72h43’23”
2位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、ランプレ・メリダ)          +3’03”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)          +16’30”

チーム総合成績
1位 モビスター                              218h03’31”
2位 チームスカイ                               +6’29”
3位 BMCレーシング                              +9’01”

ステージ敢闘賞
トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)

リタイア
なし

text&photo:Kei Tsuji in Bern, Switzerland

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