冷たい雨が降るスイス東部の山岳地帯でレース序盤から逃げたピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)が独走勝利。連日の悪天候によって調子を落とす選手が続出し、閉幕まで3ステージを残して総合成績も動いた。



アルトドルフの街を通過するプロトンアルトドルフの街を通過するプロトン photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第6ステージツール・ド・スイス2016第6ステージ image:Tour de Suisseツール・ド・スイス第6ステージは超級山岳クラウセン峠(23.8km/平均6%)を越え、1級山岳アムデン峠(6.9km/平均10.7%)にフィニッシュする。山岳コースと冷雨の組み合わせは過酷そのもので、新城幸也(ランプレ・メリダ)が「今日も雨。雨。雨。ガーミンの温度は3度だったが、雨に濡れた身体で20km以上下っていると体感気温はもっと低く感じた。(超級山岳クラウセン峠の)頂上は視界が50mぐらいしかなくて、ダウンヒルは神経を使いストレスフルだった」と振り返るほど。

イエロージャージの上にレインジャケットを着て走るピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)イエロージャージの上にレインジャケットを着て走るピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele序盤から先行し、メイン集団から6分を超えるアドバンテージを奪ったのは15名。フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)やポイント賞2位のマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)、山岳賞トップのアントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)が逃げに乗り、AG2Rラモンディアール率いるメイン集団を引き離す。

AG2Rラモンディアールがメイン集団をコントロールするAG2Rラモンディアールがメイン集団をコントロールする photo:Tim de Waele2つあるスプリントポイントを先頭通過したリケーゼはペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)からポイント賞トップの座を奪うことに成功。また、超級山岳クラウセン峠を先頭通過したトルホックは山岳賞のリードを広げている。

雨の超級山岳クラウセン峠で逃げグループは人数を減らしたが、テクニカルなダウンヒルで概ね人数は元通りに。一方、メイン集団からは総合7位・27秒差のゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)が下りでアタック。イサギーレは逃げグループから下がったヤッシャ・ズタリン(ドイツ、モビスター)の力を借りてメイン集団から3分先行した。

フィニッシュに向かう1級山岳アムデン峠の麓に到着した時点で、逃げグループから3分30秒でモビスターの2人、6分20秒でチームスカイとロットNLユンボ、ジャイアント・アルペシンがコントロールするメイン集団という位置関係。各選手が上半身を左右に揺らす急勾配の登りが始まるとウェーニングの独走が始まった。



雨と霧に包まれた超級山岳クラウセン峠の下り雨と霧に包まれた超級山岳クラウセン峠の下り photo:Tim de Waele
雨の超級山岳クラウセン峠を下るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)雨の超級山岳クラウセン峠を下るファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele悪天候に見舞われたスイス東部の山岳地帯を進む悪天候に見舞われたスイス東部の山岳地帯を進む photo:Tim de Waele


フィニッシュまで独走するピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)フィニッシュまで独走するピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ) photo:Tim de Waele「当初の逃げの目的は超級山岳クラウセン峠でのアントワン・トルホックの山岳ポイント獲得だった。その目標を達成してからステージ優勝に気持ちを切り替えた。最後の登りで飛び出してからは一定ペースで走ることを心がけ、頂上まで全開で踏み続けた」というウェーニングが雨の1級山岳アムデン峠に到着。2番手のリケーゼを2分37秒差、メイン集団を4分31秒差で振り切る独走勝利を飾った。

2番手で1級山岳アムデン峠を登るマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)2番手で1級山岳アムデン峠を登るマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele一方、チームスカイがハイペースを刻むメイン集団からは残り5kmでディフェンディングチャンピオンのサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)がアタックを仕掛けたが決まらない。イエロージャージを着るピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)や、連日の冷雨で体調を崩したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)は脱落してしまう。

1級山岳アムデン峠を登るマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)ら1級山岳アムデン峠を登るマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)ら photo:Tim de Waeleジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、キャノンデール)が強力にペースを作るメイン集団からはゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)も脱落。超級山岳クラウセン峠の下りから先行していたイサギーレは吸収された。

1級山岳アムデン峠にフィニッシュするピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)1級山岳アムデン峠にフィニッシュするピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ) photo:Tim de Waele5〜6名にまで人数を減らしたメイン集団はフィニッシュラインに向けてスプリントを繰り広げ、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)とアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)、ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)の3名が同タイムでフィニッシュ。ケルデルマンが総合首位に立ち、バーギルが総合2位、タランスキーが総合3位に浮上した。

集団先頭でフィニッシュするウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)集団先頭でフィニッシュするウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waeleイエロージャージを手にしたケルデルマンは「最後の登りでは無駄なエネルギーを使わないようにして、最後の数百メートルでアタックした。高地トレーニングを行ったので、標高が高ければ高いほど自分向き。個人タイムトライアルでも良い走りができると思うので、総合上位は狙えるだろう」とコメント。2014年ジロ・デ・イタリアで総合7位、同年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合4位に入っている25歳が自信を見せる。

ケルデルマンから1分51秒遅れたヴァンガーデレンは総合13位までダウン。「本来は雨や酷い気象条件が得意なのに、今日は他の選手たちよりも寒さに苦しめられた。超級山岳クラウセン峠の頂上で完全に凍えてしまった。今日まで調子が良かったので、単純に寒さにやられたのだと思う。ツール・ド・フランス期間中ではなく今バッドデーがやってきたことは歓迎すべきなのかもしれない」と、ツールでリッチー・ポート(オーストラリア)とともにBMCレーシングのエースを担う予定のヴァンガーデレンは語っている。

「今日は逃げに送りこまなかったが、明日は逃げを狙う日」と語るのは19分01秒遅れでフィニッシュした新城。「しっかりとチームの期待に応えたい。寒い。雨。としか言ってないスイスだけど、逃げるチャンスは明日なので頑張ります」。

選手コメントは各チーム公式サイトとTeamユキヤ通信より。



イエロージャージを手にしたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)イエロージャージを手にしたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele


ツール・ド・スイス2016第6ステージ結果
1位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ルームポット・オラニエ)        4h33’47”
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ) +2’37”
3位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)   +3’57”
4位 クリスティアン・コレン(スロベニア、キャノンデール)            +4’13”
5位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)             +4’31”
6位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)
7位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                  +4’35”
9位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)           +4’36”
10位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)              +4’39”
14位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)                 +5’03”
15位 ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)           +5’22”
16位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
18位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)                +5’30”
28位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)         +6’22”
124位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)                    +19’01”

個人総合成績
1位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)           22h43’12”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)            +16”
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール)            +19”
4位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)                   +34”
5位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)            +39”
6位 ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)            +51”
7位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)               +52”
8位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)                 +56”
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)                  +59”
10位 ヤルリンソン・パンタノ(コロンビア、IAMサイクリング)          +1’03”

ポイント賞
1位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)

山岳賞
1位 アントワン・トルホック(オランダ、ルームポット・オラニエ)

スイスライダー賞
1位 マルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)

チーム総合成績
1位 ロット・ソウダル

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele