4月14日、UCI(国際自転車競技連盟)がプレスリリースを出し、現在行われているロードレースにおけるディスクブレーキのトライアル(試験的な使用)を中止すると発表した。パリ〜ルーベでディスクブレーキが起因とする怪我が発生したことを受け、選手側から反対の声が強まったためだ。



パリ〜ルーベにディスクブレーキを投入したディレクトエネルジーパリ〜ルーベにディスクブレーキを投入したディレクトエネルジー photo:Makoto Ayanoプレスリリースによると、すべてのプロチームをまとめるAIGCP(国際プロ自転車競技チーム協会)と、選手をまとめるCPA(プロ選手連盟)によるリクエストを受け、UCIがトライアル中断を決定した。パリ〜ルーベでフランシスコ・ベントソ(スペイン、モビスター)が怪我を負ったことを受け、選手側からディスクブレーキに反発する声が強まっていた。

ランプレ・メリダもパリ〜ルーベにディスクブレーキを投入ランプレ・メリダもパリ〜ルーベにディスクブレーキを投入 photo:Makoto Ayanoベントソはパリ〜ルーベのレース中、約140km地点のセクター21で落車が発生した際に怪我を負った。ベントソ自身は落車しなかったものの、前走者のディスクブレーキのローターと接触し、左膝に脛骨が見えるほどの深い傷を負ってリタイア。パリ〜ルーベではランプレ・メリダとディレクトエネルジーの2チームがディスクブレーキを使用していた。

パリ〜ルーベでは2チームがディスクブレーキを使用パリ〜ルーベでは2チームがディスクブレーキを使用 photo:Makoto Ayano病院で治療を受けたベントソは、縫合した痛々しい膝の写真(閲覧注意)を自身のFBページにアップするとともに、モビスターのチーム公式サイトを通じてオープンレターを配信。その中でベントソは語気を強めてディスクブレーキの使用を非難している。

「自分の事故発生から15km後に、エティックス・クイックステップのニコラス・マースが同じ救急車に乗り込んできた。彼もディスクブレーキによる怪我を負っていた。2年前、シクロクロスにディスクブレーキが登場し、ロードレースでのテストが実施されるという噂が出た時、本当に誰も危険だとは思わなかったのか?巨大なナイフとなって選手を切る可能性を誰も考慮しなかったのか?最高速が80〜100km/hに達するロードレースで落車が発生すれば、巨大なナイフが選手を襲うことになる。頸静脈や大腿静脈を切ってしまう可能性だってあるだろう。198名の選手全員がディスクブレーキを使用すれば、396ものローターがポジションを争う集団内に存在することになる。CPAや自転車連盟、チーム、そして選手自身が反対の声をあげなかったために今回の事故が発生した。今回は自分だったけど、明日はより深刻な怪我が起こり得るんだ。選手には選択の権利がある。選択を行うのは選手自身だ(レターより抜粋)」。

ディスクブレーキのトライアルは2015年8月に開始。UCIワールドチームに限定し、シーズン中2レースでの試験的な使用を認めた。2016年にUCIはトライアルの範囲を拡大し、すべてのチームがすべてのレースで使用することを容認。正式なディスクブレーキ導入に向けてモニタリングを続けていた。

今後UCIはディスクブレーキの使用について専門家による協議を継続的に行う。これまでもこれからも、選手の安全が最優先事項であることをUCIは改めて確認している。

text:Kei Tsuji