最大勾配17%のハッタダムで繰り広げられた登りスプリントバトル。軽快なダンシングで抜け出したフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)が勝利し、ステージ2位に入ったジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)が総合首位に立った。



岩肌が露出した山岳地帯をいく岩肌が露出した山岳地帯をいく photo:Tim de Waele
真っ白なモスクの前を通過する逃げグループ真っ白なモスクの前を通過する逃げグループ photo:Tim de Waele逃げグループを形成するフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)ら逃げグループを形成するフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)ら photo:Tim de Waele


ラクダもドバイツアーを観戦ラクダもドバイツアーを観戦 photo:Tim de Waeleドバイツアー名物のハッタダム激坂スプリント。ドバイのインターナショナルマリーナから砂漠を走って東に向かい、山岳地帯にあるハッタダムを目指す172kmコースに122名が挑んだ。心臓に疾患が見つかったマイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ)がこの日唯一のDNS。

新チームで走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)新チームで走るマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleスタートしてすぐ、今大会2度目の逃げとなるフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)やフェン・チュンカイ(台湾、ランプレ・メリダ)ら6名がエスケープを開始する。中間スプリントで毎回競り合う逃げグループの約2分後方で、リーダージャージのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)擁するチームスカイが常に目を光らせた。

ハッタダムに向けて山岳地帯を進むプロトンハッタダムに向けて山岳地帯を進むプロトン photo:Tim de Waeleレース中盤の補給地点では落車が発生し、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)が鎖骨骨折でリタイア。その後、重要なアシストを一人失ってしまったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)はレースが加速する残り10kmでパンクに見舞われ、ステージ優勝と総合優勝のチャンスを失っている。

もしもしポーズでフィニッシュするフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)もしもしポーズでフィニッシュするフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleハッタダムに向かうアップダウンが始まると、メイン集団からデミトリ・グルージェフ(カザフスタン、アスタナ)がアタックし、それまで逃げていた選手たちを抜いて先頭へ。スプリントに持ち込みたくないアスタナは攻撃の手を緩めず、グルージェフが吸収されると今度はリエーベ・ヴェストラ(オランダ)とローレンス・デフレース(ベルギー)を解き放ったが、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)がぴったりマークに入る。

2秒差の2位に入ったジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)2秒差の2位に入ったジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele結局アスタナ勢の作戦は失敗に終わり、モビスターやエティックス・クイックステップ、トレック・セガフレード先頭のメイン集団がアタックを封印。スピードを上げて残り1kmアーチをくぐり抜け、いよいよハッタダムの17%ゾーンに突入した。

6位でフィニッシュしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)6位でフィニッシュしたマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が先頭でペースアップしたものの、ハイシーズンのような鋭い加速は見られない。代わってロバトがダンシングで先行し、ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)やファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が追いかける。赤いポイント賞ジャージを着るマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が堪えた一方で、リーダージャージののヴィヴィアーニは勝負に絡めず。

30秒程度の高強度登坂スプリントで先頭を守ったロバトがステージ優勝。右手の親指をくわえ、左手で電話をかけるポーズでフィニッシュを切った。「息子に勝利を捧げたくて、おしゃぶりのポーズでフィニッシュした。そして(ツール・ド・サンルイスで重傷を負った)アドリアーノ・マローリにも捧げたいと思ったんだ」とロバトは語る。

ロバトは前年度のハッタダムで3位。登れるスプリンターとして力を伸ばしているロバトは「次なる目標は選手として夢の存在のミラノ〜サンレモ制覇だ。憧れの存在である(ミラノ〜サンレモ3勝の)オスカル・フレイレに少しでも近づくことが出来れば最高だ」と語っている。

ヴィヴィアーニに代わってリーダージャージに袖を通したのはステージ2位のニッツォロ。最終日を残し、ロバトから2秒、キッテルから6秒のリードで総合首位に立ったイタリアンスプリンターは「最終日を前に、総合で追いかける立場よりも追われる立場の方がいい。ロバトの走りには驚かなかった。自分は今大会が初出場だけど、映像を見て彼がどれだけこのフィニッシュが得意なのか確認していた」と言う。ニッツォロはティレーノ〜アドリアティコとミラノ〜サンレモに出場予定だ。

平坦コースで争われる最終ステージは大集団スプリントに持ち込まれる可能性が高い。フィニッシュ地点のボーナスタイムによるニッツォロ、ロバト、キッテルの総合争いの行方に注目だ。

選手コメントはレース公式サイトより。



リーダージャージを獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)リーダージャージを獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:Tim de Waele



ドバイツアー2016第3ステージ結果
1位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)           4h13’23”
2位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)     +02”
3位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)         +04”
4位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
6位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
7位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)            +07”
8位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ)
9位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)
10位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)

個人総合成績
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)   11h56’11”
2位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)            +02”
3位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)   +06”
4位 シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)         +12”
5位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)            +19”
6位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)        +21”
7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)
8位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、ティンコフ)         +24”
9位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)
10位 ソフィアネ・ハディ(モロッコ、スカイダイブドバイ)        +25”

ポイント賞
1位 ジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)

中間スプリント賞
1位 マルチン・ビアロブロキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)

ヤングライダー賞
1位 ソフィアネ・ハディ(モロッコ、スカイダイブドバイ)

チーム総合成績
1位 モビスター

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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