オーストラリア・ヴィクトリア州のジーロングで開催された第2回カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース(UCI1.HC)でピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)がアタック。残り12kmを独走したイギリスチャンピオンがメイン集団を6秒差で振り切った。



グレートオーシャンロードを走るプロトングレートオーシャンロードを走るプロトン photo:Tim de Waele
グレートオーシャンロードを離れて内陸部に向かうグレートオーシャンロードを離れて内陸部に向かう photo:Tim de Waele


第2回カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース第2回カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース image:Cadel Evans Great Ocean Road Race2015年に引退したツール・ド・フランス覇者カデル・エヴァンスの名前を冠したカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースは、その名の通りヴィクトリア州自慢の風光明媚な海岸線「グレートオーシャンロード」が舞台だ。2010年ロード世界選手権の開催地であり、オーストラリアの自転車競技において中心的な位置づけのジーロングを発着する174kmで開催された。

シーズンインしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)シーズンインしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Tim de Waeleまずはグレートオーシャンロードに向かって海岸線を南下し、内陸を走ってジーロングに帰着。そこから2010年ロード世界選で使用された周回コースと一部共通する20.2km周回を3周する。周回の中盤に位置する「チャランブラ・クレセントの登り(登坂距離1.4km/平均勾配7%/最大勾配19%)」がスプリンターたちにとって厄介な存在だ。

ヨーロッパから遥か遠いオーストラリアでの開催ながら、直前のツアー・ダウンアンダーや直後のジェイコ・ヘラルドサンツアーとの転戦組がこぞって参加。開催2回目を迎える2016年大会にはカチューシャ、チームスカイ、BMCレーシング、オリカ・グリーンエッジ、ロット・ソウダル、トレック・セガフレード、ロットNLユンボ、IAMサイクリング、ディメンションデータを含む22チームが出場した。

日本からは別府史之(トレック・セガフレード)、小石祐馬、窪木一茂(NIPPOヴィーニファンティーニ)の3名が出場。いずれも2月3日から7日までヴィクトリア州で開催されるジェイコ・ヘラルドサンツアーにも出場予定。また、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がこのレースで新チームデビューしている。

小石のアタックで始まったレースは、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)やパトリック・レーン(オーストラリア、アヴァンティ)、クリスティアン・ハウス(イギリス、ワンプロサイクリング)を含む6名が先行する展開。最大6分差で逃げた6名を、ロット・ソウダルやオリカ・グリーンエッジが中心となって追いかける。「グレートオーシャンロード」を過ぎ、ジーロングの周回コースに差し掛かる頃にはタイム差が2分台にまで縮まっていた。



逃げグループを形成する6名逃げグループを形成する6名 photo:Tim de Waele
メイン集団のペースを上げるイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)らメイン集団のペースを上げるイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)ら photo:Tim de Waele


逃げるパトリック・レーン(オーストラリア、アヴァンティ)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)逃げるパトリック・レーン(オーストラリア、アヴァンティ)とアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele「チャランブラ・クレセントの登り」を含むジーロングの周回コースではメイン集団からカウンターアタックが相次ぎ、2周目に入ると11名の追走グループが形成される。先頭で逃げ続けていたデマルキとレーンはこの追走グループに吸収され、そこからラファエル・バルス(スペイン、ロット・ソウダル)とサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームスカイ)、キャメロン・マイヤー(オーストラリア、ディメンションデータ)が抜け出して最終周回に突入した。

ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がメイン集団を率いるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)がメイン集団を率いる photo:Tim de Waeleカヴェンディッシュをはじめとするピュアスプリンターたちが脱落する中、最終周回の「チャランブラ・クレセントの登り」でアタック合戦が始まる。先頭で逃げ続けたバルスを追って、10秒後方のメイン集団からネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)やケノーがアタックを仕掛けて飛び出した。

独走勝利したピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)独走勝利したピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele軽快なダンシングでライバルたちを振り切るとともに、先頭バルスを追い抜いたイギリスチャンピオンが独走で頂上をクリアし、フィニッシュまで12kmを残して独走開始。登りでばらけたメイン集団が追走を組織するまでの間に、ケノーは20秒のリードを築くことに成功する。

勾配のある短い登りでもケノーのスピードは落ちず、後方ではカウンターアタックに対してベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)がチェックに入る。残り5kmからのアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)のカウンターアタックも届かない。IAMサイクリングとオリカ・グリーンエッジ、カチューシャ率いるメイン集団を振り切ったまま残り1kmアーチを駆け抜けたケノーが、後方を振り返って勝利を確信した。集団スプリントの結果、2位にはオリカ・グリーンエッジから移籍したリー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)が、3位にはランプレ・メリダから移籍したニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)が入っている。

「まずはルーク・ロウに感謝したい。レース中ずっと僕に落ち着くよう諭してくれた」と、チームメイトへの感謝をケノーは述べる。「残り1周でアタックに反応した時もルークは『この逃げは機能しないから集団に戻れ』と指示してくれたし、実際にその通りだった。彼のおかげで冷静を保ったまま勝負に挑めたんだ。最終周回でアタックした時は『振り向かずにただ前を向いて突き進め』と言われたよ」。

ケノーの勝利は2015年6月のイギリス選手権ロードレースぶり。終盤にメイン集団から抜け出して独走するスタイルは2015年クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ開幕ステージでも成功させている。2012年のトラック世界選手権とロンドン五輪の団体追い抜きで金メダルを獲得したスペシャリストとしてのスピードを発揮した。なお、ロンドン五輪団体追い抜きでは3分51秒659(Ave.62.231km/h)の世界記録を樹立している。

「近年ライダー達はパワーメーターの数値のとらわれがちで、個人的にはその風潮は好きじゃない。でも実際はパワーメーターを駆使してトレーニングを積んでいるし、今日はフィニッシュまでのペースメイキングに役立ったよ。振り返ってそこに追走選手が見えたら精神的に崩れていたかもしれない。だから最終ストレートまで後ろを振り向かなかった。それが勝利につながったよ。」(チームスカイ公式サイトより)



表彰台に登場したカデル・エヴァンスとピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)表彰台に登場したカデル・エヴァンスとピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele


カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース2016結果
1位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)          4h04’59”
2位 リー・ハワード(オーストラリア、IAMサイクリング)       +06”
3位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、トレック・セガフレード)
4位 ピム・リヒハルト(ベルギー、ロット・ソウダル)
5位 サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)
7位 アレクセイ・ツァテヴィツク(ロシア、カチューシャ)
8位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
9位 エンリコ・バッタリーン(イタリア、ロットNLユンボ)
10位 ディオン・スミス(ニュージーランド、ワンプロサイクリング)

32位 別府史之(日本、トレック・セガフレード)           +2’14”
89位 小石祐馬(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)        +12’27”
DNF 窪木一茂(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele