176kmにわたる雨のインカレロードを制したのは日本大の吉田悠人。ともに逃げた橋本英也(鹿屋体育大)を下し日本大は10年ぶりのロード優勝。女子は樫木祥子(駒沢大)が圧倒。鹿屋体育大が男女総合優勝し男子は3連覇達成。



吉田悠人(日本大)が雨中の激戦を制する吉田悠人(日本大)が雨中の激戦を制する photo:Hideaki TAKAGI
インカレ4日目最終日のロードレースが8月30日(日)、長野県大町市美麻で行なわれた。コースはアップダウンのある1周12.6kmを女子は5周63.0km、男子は14周176.4kmで、終日降り続いた強めの雨と20度を下回る低温で、耐久戦が予想された。

女子は樫木祥子(駒沢大)が圧勝
17人でスタートした女子。1周目序盤は中井彩子(鹿屋体育大)や齋藤望(日本体育大)がペースを上げるが1周目後半になると樫木が先頭でペースを上げ集団が絞られ4人で2周目へ。メンバーは樫木、中井、齊藤、谷伊央里(日本体育大)。樫木は上りでペースを上げ、下りと平坦で他選手を待つ走りを繰り返し、上りのたびにライバル達の脚がそがれる。

序盤から各選手がペースを上げる序盤から各選手がペースを上げる photo:Hideaki TAKAGI独走する樫木祥子(駒沢大)独走する樫木祥子(駒沢大) photo:Hideaki TAKAGI

2周目には齊藤が、そして中井も下がり3周目には樫木と谷の2人に。谷も上りで離れがちになり3周目中盤で樫木がいよいよ単独になる。ここから残りの30kmを樫木は逃げ切って優勝。6月の学生個人ロードを制し実業団レースでも活躍する強い樫木の勝ちパターンで念願のインカレタイトルを獲得した。

後半30kmを独走した樫木祥子(駒沢大)が優勝後半30kmを独走した樫木祥子(駒沢大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
「通常の」ロードレースが予想された男子

1周目終盤、20人の逃げがメイン集団に吸収1周目終盤、20人の逃げがメイン集団に吸収 photo:Hideaki TAKAGI2周目、橋本英也(鹿屋体育大)ら8人の追走集団2周目、橋本英也(鹿屋体育大)ら8人の追走集団 photo:Hideaki TAKAGI男子はU23の制限距離いっぱいの176.4kmと長丁場で、168名がスタートラインに。前日から降り続いた雨は時折強く降り、やむことはない。気温も20度に達せず寒さも覚えるほど。注目どころは鹿屋体育大の徳田優が3連覇を達成するか、総合で鹿屋を唯一逆転可能と言ってよい朝日大が秋田拓磨を中心にどう展開するか。そして大学対抗総合で逆転が難しくなった大学がどう走るのか。鹿屋体育大の点差が大きいため「通常の」ロードレースの展開になるであろうことは誰もが予想した。
4周目、ひとつになった集団前方は優勝候補たちが4周目、ひとつになった集団前方は優勝候補たちが photo:Hideaki TAKAGI10周目、橋本英也(鹿屋体育大)が抜け出し独走へ10周目、橋本英也(鹿屋体育大)が抜け出し独走へ photo:Hideaki TAKAGI11周目、メイン集団から追走に出た吉田優樹(日本大)、馬渡伸弥(鹿屋体育大)に吉田悠人(日本大)が追いつく11周目、メイン集団から追走に出た吉田優樹(日本大)、馬渡伸弥(鹿屋体育大)に吉田悠人(日本大)が追いつく photo:Hideaki TAKAGI
徳田優を巡る包囲網

スタートからアタックがかかるがその中心は鹿屋体育大勢。1周目には8人がさらに後続が加わって20人ほどの逃げに。だが2周目に入る時点でメイン集団と混ざりふたたび6人が抜け出す。さらに橋本英也(鹿屋体育大)や秋田ら8人が抜け出し追走するが3周目にはすべて吸収されひとつに。メイン集団では優勝候補の徳田の周囲に他校のエース格やアシストらが集まりマークが集中する。

5周目に5人の逃げができる。メンバーは山本大喜・冨尾大地(鹿屋体育大)、大浦恭史・大浦尭(日本大)、堀川裕輝(法政大)。メイン集団は鹿屋体育大がコントロール。そのメイン集団から6周目に馬渡伸弥(鹿屋体育大)、中井路雅(京都産業大)、野本空(明治大)、伊藤和輝(早稲田大)の4人が抜け出す。6周目終盤には法政大が6人でメイン集団からしかけるが離すには至らない。7周目には先頭5人、2分10秒差で4人の追走、さらにメイン集団の構図だったが翌8周目には先頭5人とメイン集団に戻る。

11周目に4人の勝ち逃げ

レースが大きく動いたのはすべての逃げが吸収されひとつの集団となった10周目。小さな上りで橋本が抜け出すと単独に。11周目にはメイン集団から吉田優樹の抜け出しに馬渡が反応、さらに吉田悠人が追い、3人の追走ができる。そして先行していた橋本にこの3人が追いつき先頭は4人に。日本大2人と鹿屋2人だ。この4人はローテーションをまわして逃げに集中する。

メイン集団は牽制を続け先頭4人とのタイム差が2分に拡大しても変わらず牽制を続ける。残り周回は減っていき、タイム差と残り距離を見比べる展開に。この間、先頭集団から馬渡が下がり3人に。さらに吉田悠人が落車したがすぐに再乗、橋本もメカトラブルで2回降りたがそれぞれの場面で他選手が待つ動きをする。13周目にはメイン集団も活発化しアタックがかかる。このため2分以上あった差は1分半になったがそれでも残り12kmで1分半は大きい。先頭3人の逃げ切りが濃厚に。

吉田悠人(日本大)が優勝

最終周回中盤までは協力してローテーションしていた3人だが、残り4kmを切ってから3人の間での戦いに。吉田優樹が上りでアタックするとこれをペースで追った橋本が吸収、下り区間で橋本が抜け出すも日本大2人で追ってラスト1kmで吸収し3人のまま。ここからフィニッシュ地点への一番きつい上りで吉田悠人が抜け出して日本大の応援を背にしてフィニッシュ。日本大がインカレロードで10年ぶりの優勝を果たした。

4位にはメイン集団から抜け出したU23全日本チャンピオンの中井路雅(京都産業大)が入り、同大はロード単独の総合を2位で終えた。20位までに与えられる得点で競われる総合成績は、翌年のツール・ド・北海道出場要件3大会のうちのひとつであり重要なもの。そしてもっともマークされた徳田は10位でフィニッシュした。

最終周回、ローテーションを続ける吉田悠人(日本大)、橋本英也(鹿屋体育大)、吉田優樹(日本大)最終周回、ローテーションを続ける吉田悠人(日本大)、橋本英也(鹿屋体育大)、吉田優樹(日本大) photo:Hideaki TAKAGI

アシストからチャンピオンへ

ラスト1km、先頭の橋本英也(鹿屋体育大)に吉田悠人(日本大)、吉田優樹(日本大)が追いつきフィニッシュへラスト1km、先頭の橋本英也(鹿屋体育大)に吉田悠人(日本大)、吉田優樹(日本大)が追いつきフィニッシュへ photo:Hideaki TAKAGI優勝の吉田悠人(左、日本大)と3位の吉田優樹(日本大)。日本大に10年ぶりのロード優勝をもたらし総合2位へ押し上げた優勝の吉田悠人(左、日本大)と3位の吉田優樹(日本大)。日本大に10年ぶりのロード優勝をもたらし総合2位へ押し上げた photo:Hideaki TAKAGI優勝した吉田悠人も2位の橋本も、逃げのきっかけはチームへのアシストだった。しかし脚のあるメンバー4人が集まり、いっぽうでメイン集団は徳田を巡る徹底マークでペースが上がらずタイム差を開かせた要因に。先頭4人のフェアプレー、吉田悠人の勇気そして序盤から動いていた橋本の能力の高さそれぞれ称えられていいだろう。
ロードレース女子表彰ロードレース女子表彰 photo:Hideaki TAKAGIロードレース男子表彰ロードレース男子表彰 photo:Hideaki TAKAGI大学対抗総合女子表彰大学対抗総合女子表彰 photo:Hideaki TAKAGI大学対抗総合男子表彰大学対抗総合男子表彰 photo:Hideaki TAKAGI各大学の4年生たち各大学の4年生たち photo:Hideaki TAKAGI鹿屋体育大が男女優勝2回目、男子3連覇鹿屋体育大が男女優勝2回目、男子3連覇 photo:Hideaki TAKAGI
日本大は3位に吉田優樹が入りトラックとあわせた大学対抗総合成績を、前日の6位から一挙に2位にまで押し上げた。日本大は31連覇のかかった2013年大会で総合を鹿屋に僅差で逆転されて以降、2014年のインカレでは1種目も優勝はなく、今年のインカレもトラックでは勝ち星がなかった。2年ぶりに流れる日本大の校歌を高らかに歌う選手やOBは、最後の最後に笑顔でインカレを締めくくった。

優勝した吉田悠人(日本大)のコメント
11周目、マサキ(吉田優樹)が抜け出したとき片桐善也と相談して自分がアシストの気持ちで追走し合流しました。チームとしては片桐、マサキ、そして草場啓吾の3人が優勝を狙うこととしてスタートしました。自分は逃げられるところまで逃げようと思っていたのですが、優勝できとても嬉しいです。

1年生の時に8位でしたが、そのとき(故)和田力先輩はポイントレースで骨折していたのでロードに出られていませんでした。骨折しても走り続けた和田先輩の走りは僕に勇気をくれました。今日は和田先輩が応援していてくれたのだと思います。

2位橋本英也(鹿屋体育大)のコメント
負けは負けです。ここで中距離の偉大な先輩の角令央奈先輩が優勝していたので自分も続きたかったですが。10周目に集団がひとつになったとき、積極的な走りをしようと自分がアタックしました。タイム差も広がり途中から勝ち逃げのグループだと思いました。

今回はポイントレースも団抜きも失敗してしまったのでロードでは優勝して4年間お世話になった大学に恩返しをしたかったのですが。大学として3連覇できたこと、そして自分を4年間支えてくださったみなさんに感謝します。

結果 
女子 63.0km
1位 樫木祥子(駒沢大)1時間56分45秒
2位 谷伊央里(日本体育大)+1分30秒
3位 中井彩子(鹿屋体育大)+3分23秒
4位 齋藤望(日本体育大)+4分00秒
5位 江藤里佳子(鹿屋体育大)+7分50秒
6位 伊藤真央(日本体育大)+8分18秒

男子 176.4km
1位 吉田悠人(日本大)4時間47分08秒
2位 橋本英也(鹿屋体育大)+07秒
3位 吉田優樹(日本大)+12秒
4位 中井路雅(京都産業大)+1分16秒
5位 小玉凌(中京大)+1分25秒
6位 島袋大地(法政大)+1分38秒
7位 間瀬勇毅(京都産業大)+1分44秒
8位 金子智哉(早稲田大)+1分54秒
9位 岡本隼(日本大)+1分55秒
10位 徳田優(鹿屋体育大)+1分56秒
11位 秋田拓磨(朝日大)+2分00秒
12位 浦佑樹(東京大)+2分05秒
13位 岡部祐太(日本体育大)
14位 仲沢優祐(朝日大)+2分07秒
15位 齊藤瞭汰(日本体育大)
16位 丸志信(東洋大)+2分08秒
17位 中井唯晶(京都産業大)+2分10秒
18位 高木三千成(立教大)+2分12秒
19位 浅井創(法政大)
20位 谷岡尚輝(法政大)

女子ロード総合成績
1位 日本体育大 13点
2位 駒沢大 10点
3位 鹿屋体育大 10点

男子ロード総合成績
1位 日本大 28点
2位 京都産業大 16点
3位 鹿屋体育大 13点

女子総合成績
1位 鹿屋体育大 53点
2位 日本体育大 41点
3位 八戸学院大 21点
4位 駒沢大 10点
5位 順天堂大7点
6位 中京大 6点

男子総合成績
1位 鹿屋体育大 78点
2位 日本大 52点
3位 朝日大 51点
4位 法政大 36点
5位 中央大 36点
6位 早稲田大 29点
7位 京都産業大 23点
8位 明治大 20点
9位 日本体育大 16点
10位 順天堂大 16点

photo&text:高木秀彰
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