超級山岳ラルプデュエズで繰り広げられたステージ優勝とマイヨジョーヌをかけたダブルアタック合戦。ティボー・ピノ(フランス、FDJ)が栄光を掴み、キンタナに1分20秒引き離されながらもクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がマイヨジョーヌを守った。



モビスターの2人が超級山岳クロワ・ド・フェール峠で先行モビスターの2人が超級山岳クロワ・ド・フェール峠で先行 photo:Tim de Waele
逃げグループを率いるアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)逃げグループを率いるアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele超級山岳クロワ・ド・フェール峠を下るプロトン超級山岳クロワ・ド・フェール峠を下るプロトン photo:Tim de Waele超級山岳クロワ・ド・フェール峠でアタックするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)超級山岳クロワ・ド・フェール峠でアタックするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele最終日前日はお決まりの個人TTではなくラルプデュエズ決戦。110.5kmのショートコースの最後に、3週間におよぶマイヨジョーヌ争いの最後に、21のヘアピンコーナーが続くツールを代表する超級山岳ラルプデュエズ(13.8km/8.1%)が登場する。

盛り上がるオランダコーナー盛り上がるオランダコーナー photo:Tim de Waele当初は1級山岳テレグラフ峠と超級山岳ガリビエ峠を通過予定だったが、地滑りの危険があるとしてガリビエ頂上のトンネルが閉鎖中。そのためレース主催者はガリビエを諦め、前日にも通過した超級山岳クロワ・ド・フェール峠(登坂距離29km・平均勾配5.2%)で迂回する代替ルートを使用することを決めた。

イタリア国境に近いモダンヌをスタートしてすぐ、160名の中から飛び出したのはアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)とラムナス・ナヴァルダスカス(リトアニア、キャノンデール・ガーミン)で、ここにラルスイティング・バク(デンマーク、ロット・ソウダル)とニコラ・エデ(フランス、コフィディス)が合流して先頭は4名。

V字の渓谷に沿った平坦路を進んだ先頭4名は、最大4分のリードを得てサンジャン・ド・モーリエンヌの街を抜け、超級山岳クロワ・ド・フェール峠の登坂を開始する。標高2067mの頂上まで6kmを残して逃げグループからジェニエが飛び出し、鉄の十字架が空に伸びる峠を先頭でクリア。そのままラルプデュエズ麓のブールドワザンに向かう長いダウンヒル区間に一人で飛び込んでいく。

超級山岳ラルプデュエズを登るマイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)超級山岳ラルプデュエズを登るマイヨジョーヌのクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleメイン集団ではマイヨアポワ狙いのAG2Rラモンディアールがペースを上げ、続くアスタナのペースアップによって総合7位マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)の他、チームスカイの山岳アシストであるゲラント・トーマス(イギリス)やワウト・ポエルス(オランダ)が相次いで脱落する。

リーダーチームの隙を突いたのは総合3位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)。頂上まで3kmを残してアタックしたバルベルデにはフルームは反応せず、カウンターアタックで飛び出した総合2位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がバルベルデに合流。リッチー・ポート(オーストラリア)がマイヨジョーヌを率いるモビスターの2人を追う展開に。

フィニッシュまで60km以上を残したキンタナとバルベルデのアタックはチームスカイにダメージを与えることができたものの、フルームを15秒以上引き離すことができずに頂上を越える。マイヨジョーヌグループはキンタナとバルベルデを捉え、ダウンヒル区間に突入した。

独走するジェニエの後方では新たに追走グループが形成される。下りでメイン集団から抜け出したライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)、ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、モビスター)、ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)が前から落ちてきたナヴァルダスカス、バク、エデをキャッチ。幾分人数を増やしたメイン集団を引き離しながら、追走グループは先頭ジェニエとのタイム差を詰めた。


オランダコーナーでヘシェダルを引き離すティボー・ピノ(フランス、FDJ)オランダコーナーでヘシェダルを引き離すティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Kei Tsuji
超級山岳ラルプデュエズで飛び出したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)超級山岳ラルプデュエズで飛び出したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waeleマイヨアポワを着て走るロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)マイヨアポワを着て走るロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele



超級山岳ラルプデュエズの麓でパンクしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)超級山岳ラルプデュエズの麓でパンクしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele超級山岳ラルプデュエズを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)超級山岳ラルプデュエズを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiマイヨジョーヌを牽引するリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)マイヨジョーヌを牽引するリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Tim de Waele超級山岳ラルプデュエズの麓に位置するブールドワザンのスプリントポイントをジェニエは独走で通過し、1分50秒遅れでヘシェダルやピノら9名、3分50秒遅れでメイン集団という展開。いよいよツール第102回大会を決定づける「21コーナー」の登りが始まった。

ラルプデュエズに入ってもなおモビスターは攻撃を継続。マイヨブランを着るキンタナが真っ先にアタックを仕掛け、チームスカイがこの動きを封じ込める。タイミング悪くパンクしたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やフランクは集団から脱落した。

独走で超級山岳ラルプデュエズを駆け上がるティボー・ピノ(フランス、FDJ)独走で超級山岳ラルプデュエズを駆け上がるティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele先頭ではジェニエが独走を続けたものの、後方からヘシェダル、ピノ、アナコナゴメスが迫る。チームメイトの先行によって追走グループ内で力を温存していたピノがヘシェダルを連れて残り9kmでジェニエに合流。ヘシェダルのアタックは決まらず、残り6kmの通称「ダッチコーナー」でピノがアタックを成功させた。

メイン集団ではモビスター勢がペースアップを続け、アタックを連発したキンタナがついにマイヨジョーヌを引き離すことに成功。逃げグループから下がったアナコナゴメスの力を借りて、キンタナがライバルたちを突き放した。

残り5kmの時点で先頭ピノから追走アナコナゴメスとキンタナまで1分、マイヨジョーヌグループまで1分40秒。残り2kmでキンタナは先頭ピノの25秒後ろにまで迫ったが、勾配が緩むとタイム差の縮小も緩む。キンタナの追撃を振り切ったピノがラルプデュエズの頂上にフィニッシュした。

「ラルプデュエズの雰囲気は最高だった」。今大会の目玉ステージで勝利を飾ったピノは喜びを語る。「厳しいツールだったけど、決して諦めなかった。運に見放され続けたもののFDJはモチベーション高く挑み続けたんだ。アレクサンドル・ジェニエが序盤から逃げてくれたことが大きな助けになったよ。『悔いを残さずにパリに向かう』という目標を達成できた」。

18秒差のステージ2位でレースを終えたキンタナに対し、フルームは1分38秒差のステージ5位。キンタナはタイム差1分20秒とボーナスタイム6秒を獲得したものの、フルームからマイヨジョーヌを奪うには1分12秒足らなかった。

「クロワ・ド・フェール峠でアタックして先行するプランAが失敗に終わったので、ラルプデュエズでプランBを実行。フルームを引き離したものの大きなリードは得られなかった。この2日間、全力を尽くしたので悔いはない」と最速でラルプデュエズを駆け上がったキンタナは語る。



ステージ優勝を飾ったティボー・ピノ(フランス、FDJ)ステージ優勝を飾ったティボー・ピノ(フランス、FDJ) photo:Tim de Waele
フルームを引き離してフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)フルームを引き離してフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Tim de Waeleバルベルデとスプリントしながらフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)バルベルデとスプリントしながらフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele
ツール2勝目をアピールするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ツール2勝目をアピールするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele


一方、2度目の総合優勝に王手をかけたフルームは「ラルプデュエズを登っている間、過去の思い出が走馬灯のように駆け巡ったよ。家族と離れて何週間もトレーニングに打ち込んだ記憶が背中を押してくれた。110kmのステージだったけど300kmを全開で走ったような気分。ツールでまた勝つことができて信じられない気持ちだ」と安堵の表情を浮かべながら語った。

総合成績同様に山岳賞もフルームとキンタナがワンツー。パリにフィニッシュする最終ステージでフルームがマイヨジョーヌ、キンタナがマイヨブラン、サガンがマイヨヴェール、そして山岳賞3位のバルデがマイヨアポワを着る。




Résumé - Étape 20 (Modane Valfréjus > Alpe d... par tourdefrance


ツール・ド・フランス2015第20ステージ結果
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)               3h17’21”
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)            +18”
3位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)     +41”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)        +1’38”
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)          +1’41”
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)        +2’11”
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、モビスター)        +2’32”
9位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)           +2’50”
10位 ルーベン・プラサ(スペイン、ランプレ・メリダ)

14位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)  +3’30”
15位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
16位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
18位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
20位 ロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
23位 マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)       +4’38”

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)             81h56’33”
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              +1’12”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           +5’25”
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)           +8’36”
5位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)       +9’48”
6位 ロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)           +10’47”
7位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)      +15’14”
8位 マティアス・フランク(スイス、IAMサイクリング)           +15’39”
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)          +16’00”
10位 ピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)            +17’30”

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)          420pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)           316pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)       281pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)              119pts
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              108pts
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)          90pts

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)             81h57’45”
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)          +14’48”
3位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)       +30’03”

チーム総合成績
1位 モビスター                            246h55’21”
2位 チームスカイ                            +57’23”
3位 ティンコフ・サクソ                        +1h00’12”

ステージ敢闘賞
アレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)

リタイア
なし

text:Kei Tsuji in Alpe d’Huez, France

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