大落車によって再び明暗が分かれたツール・ド・フランス。勝利を掴んだプリートは「完全に僕の間合いだった。力も最大限出すことができた」と激坂の名手らしいコメント。また、多くの選手が落車やニュートラル、明日の石畳について語っています。



ミュール・ド・ユイを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ステージ優勝を飾ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji
 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がクリス・フルームを離してフィニッシュに向かう ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がクリス・フルームを離してフィニッシュに向かう photo:Makoto.AYANOチームメイトと抱き合って喜ぶホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)チームメイトと抱き合って喜ぶホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Makoto.AYANO昨日落車したことで若干膝が痛んでいたので、昨日の夜から朝まではこのステージが若干恐ろしかった。でも走っている最中に調子も上向きに感じたし、最終的には絶好調にまで回復していた。今日はチームに助けられたが、ディミトリ・コズンチュクを落車で失ってしまったのがとても残念だ。前方にいたので落車自体は見ていないが、あの音は聞こえた。

ユイの壁での勝負に向けて最終盤はハイスピードだったので、カルーゾに少しスピードを落とそうとも伝えるほどだった。ユイでは全てが上手くいって、仕掛けたのはラスト400m。完全に僕の間合いだった。力も最大限出すことができたし、勾配は本当に自分向き。いつもよりも少し長く待って、全力でアタックしたことが功を奏した。

調子は良いし、昨日だって悪いタイミングでパンクと落車に巻き込まれただけで調子自体は悪くなかった。最終的にはあまり大きなタイム差を失うことは無かった。パリはずっと遠く、自分は希望を持っている。マイヨアポワはナイスだね。パリでも着用し続けられていれば良いけれど、自分の主な目標は総合成績だ。明日は僕の専門分野ではないパヴェ。落車しないよう大きくタイムを失わないことを祈っているよ。そしてようやく本当のツールが始まる。

ステージ2位、マイヨジョーヌを獲得したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

チーム全員の働きに対して感謝したい。コースが上下左右に切り返し、落車も多発するトリッキーな区間でもずっと集団前方にキープしてくれた。あのコースに対してはハッピーになれない。ただ決して自分向きではない登りで2位に入り、ライバルたちからリードを奪ったことに驚いている。こんな早い段階でレースをリードするとは予想していなかったけど、やっぱりマイヨジョーヌは嬉しい。

マイヨジョーヌに袖を通すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌに袖を通すクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に届かなかったがライバルの多くに差をつけたクリス・フルーム(チームスカイ)ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に届かなかったがライバルの多くに差をつけたクリス・フルーム(チームスカイ) photo:Makoto.AYANOマイヨジョーヌ獲得が早すぎるということは無いし、ライバルとの差を詰めていくよりもずっと良いと思う。一日をしっかりと乗り切っていくことが大切で、明日の石畳では可能な限り主導権を握っていく必要がある。毎日何かしら事が起きるし、タイム差だって一気に開く。明日はサポートカーは欠かすことのできない存在となるし、誰もが集団前方に位置したがるだろう。現時点ではまだ何も貯金があるわけではないし、ここ数日を問題無くやり過ごすことだけに注意したい。

僕はコミッセールの判断に賛成だ。あの決定は選手達の安全、治療を優先してのこと。最初は混乱が起こったけれど、僕は落車に巻き込まれた選手たちを気の毒に思ったよ。

再び1秒差でマイヨジョーヌを逃したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)

マイヨジョーヌ目指して全開のスパートを見せたトニ・マルティン(エティックス・クイックステップ)マイヨジョーヌ目指して全開のスパートを見せたトニ・マルティン(エティックス・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO今日のステージは大落車と共に始まった。全てがニュートライズされ、僕は少し混乱していた。すぐにニュートラルが終わるのか、まだ止まっている必要があるのか分からなかったんだ。落車の瞬間は大きな音が聞こえ、選手達が地面に投げ出されて行った。本当に残念だし、巻き込まれた選手達の早い回復を願っている。

ツール1週目にありがちだが、僕は集団内でずっとナーバスな気分だった。でもチームは100%僕のために走ってくれたし、特にクヴィアトコウスキーの仕事が際立ったと思う。ここ数年は僕が彼をサポートする事が多かったが、ここ2日は彼がそのお返しをしてくれた。とにかく彼やチームに感謝したいと思う。

今日の勝負どころはユイの壁だけでは無かった。その手前にも細く曲がりくねったアップダウンが続いたし、残り20km地点では既にとても疲れが出ていた。多分2日連続でカオスが続いたからだと思う。昨日はよく眠れなかった。今日は僕の日ではなかったし、本当に苦しめられてしまった。ユイの最終盤はほとんど死んでいたんだ。残りの100mはとても長く感じたし、キャリアの中で最も長く感じたラスト100mだと思う。

チームスタッフにフルームがマイヨジョーヌかもしれないと聞いたときは驚いた。明日のステージではタイム差を詰めるべく全力を尽くしたい。残念にも思うし、こんな僅差とも思っていなかったからある意味とてもハッピーだ。明日に集中できているし、チーム全員のモチベーションも高い。また明日もマイヨジョーヌのために戦うつもりだ。

苦しい表情を見せるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)苦しい表情を見せるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsujiフルームに水をあけられたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)

フルームは強い。彼は今日ステージ優勝を狙える位置にいた。でもツールはまだ長く、ポジティブになる必要がある。マイヨジョーヌは自信を与えてくれるが、同時にプレッシャーと責任も生み出すもの。でも僕は(それを含めて)マイヨジョーヌが欲しい。

明日のパヴェではサバイバルなレース展開となるだろう。年を追う毎にストレスフルになるし、必要以上にエネルギーを浪費する。注意深くある必要がある。何だって起こりうる。

脊椎骨折を負い、マイヨジョーヌとレースを失ったファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)

チームメイトにエスコートされながらフィニッシュしたファビアン・カンチェラーラ(トレックファクトリーレーシング)チームメイトにエスコートされながらフィニッシュしたファビアン・カンチェラーラ(トレックファクトリーレーシング) photo:Makoto.AYANO
疲労困憊と苦痛に顔を歪ませてフィニッシュするファビアン・カンチェラーラ(トレックファクトリーレーシング)疲労困憊と苦痛に顔を歪ませてフィニッシュするファビアン・カンチェラーラ(トレックファクトリーレーシング) photo:Makoto.AYANO信じられないほど落ち込んでいる。マイヨジョーヌを獲得したことでチームの士気が上がっていたのに。今シーズンはチームとして落車や怪我続きで、ようやく手に入れた希望だったが、たった24時間で事態が暗転してしまった。期待していたのはマイヨジョーヌを守ることであって、80km/h(?)で地面に転がることでは無い。勝つ日もあれば負ける事もあるが、こんなのは良くない。

ひどく破れたジャージでフィニッシュするグレッグ・ヘンダーソン(ロット・ソウダル)ひどく破れたジャージでフィニッシュするグレッグ・ヘンダーソン(ロット・ソウダル) photo:Makoto.AYANOE3での落車から復帰し調子を戻すのはとても難しかったし、明日のパヴェでマイヨジョーヌが僕に力を与えてくれるはずだった。シーズン第二章に向けてポジティブになるべきだ。

ゴール地点から病院に向かうトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)ゴール地点から病院に向かうトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVos落車は若干下り勾配の場所で起こった。集団の右側から落車が広がり、選手の間を縫って切り抜ければと祈ったが、進んだ先に排水溝があった。最終的にそこに腰をぶつけてしまい、その後にどうなったか良く分からない。でもニュートラルの判断には感謝したい。地面に転がるたくさんの選手を見れば正しい判断だったと思う。

肩関節を骨折しレースを去ったトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)

一日中ナーバスな展開で、残り60km地点で前の選手が落車し、彼を右からパスしようとした時に後ろの選手にぶつけられてしまった。一直線に草地に突っ込んでしまい、これは良くないとその瞬間に思った。美しい一日になるはずだったのに、悪夢になってしまった。とても悲しい。

各選手のコメントはチーム公式サイト、レース公式サイトより。

text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO,Kei Tsuji,CorVos