最大40秒の差をつけて先行していた與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)。しかし追い上げる萩原麻由子(Wiggle HONDA)がゴール前の登坂区間でその秒差を縮めてくる。そしてゴール前のカーブの先に現れたのは萩原。満面の笑みでTTとの2冠を達成した。



女子エリート 1周目上り。先頭は須藤むつみ(Ready Go JAPAN)女子エリート 1周目上り。先頭は須藤むつみ(Ready Go JAPAN) photo:Hideaki.Takagi岩手県八幡平市で6月29日(日)に行なわれた全日本選手権ロードの女子エリート。朝から雨が降る中、レースは男子エリートから5分差の8時05分にスタートした。

注目はやはり、一昨日の個人TTを制し2012年まで3年連続ロードチャンピオンの萩原と、昨年にダブルチャンピオンとなった與那嶺の対決だ。萩原がTTの勢いのまま勝つのか、それとも與那嶺がTTの雪辱を果たすのか、その走りが注目された。

3周目入り霧の中を独走する萩原麻由子(Wiggle HONDA)3周目入り霧の中を独走する萩原麻由子(Wiggle HONDA) photo:Hideaki.Takagiスタートから2周目までは大きな変化無く集団のままレースは進む。3周目の下り、針谷千紗子(Live GARDEN BICI STELLE)が単独アタック。登りで追った萩原が針谷を抜き先行する。集団からは與那嶺も抜け出し、針谷とともに萩原を追う。およそ半周かけて與那嶺は萩原に追いつき、そして集団も合流した。

5周目後半、集団はコミッセールにより停止させられる。後方からやってくる男子エリートの集団が、女子エリートのゴールに被さる可能性が出てきたためだ。10分間停止ののち、グループ単位に時差をつけて再スタート。条件は全員同じとはいえ、選手によっては受け取り方に差が出たのは確かだ。

集団を引くのは平地では萩原そして上野みなみ(鹿屋体育大院)。上りでは萩原、上野、金子広美(イナーメ信濃山形)、崎本智子(ナカガワAS.K'デザイン)ら。ほか数人が先頭交代に応じるが、全体にペースは上がらない。與那嶺は萩原の後方または集団内にいることが多かった。



5周目、男子エリートを先行させるため、女子エリートがストップ5周目、男子エリートを先行させるため、女子エリートがストップ photo:Hideaki.Takagi
5周目、時差をつけて再スタート5周目、時差をつけて再スタート photo:Hideaki.Takagi7周目、萩原麻由子(Wiggle HONDA)先頭に蛇行する集団7周目、萩原麻由子(Wiggle HONDA)先頭に蛇行する集団 photo:Hideaki.Takagi



7周目、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)がアタック開始7周目、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)がアタック開始 photo:Hideaki.Takagi7周目の上り区間では萩原が先頭固定。後退のため横へ移動しても後方が牽制で蛇行状態になる場面が多く見られる。するとその動きが小休止したとき、與那嶺が先頭に立ちペースを徐々に上げ、シッティングのまま次第に加速。

7周目、独走する與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)7周目、独走する與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) photo:Hideaki.Takagiこの動きには誰も反応できず、すぐに独走状態となった與那嶺は上りを終え、最終周回の鐘を聞いた。緩い下り区間を踏み続けた與那嶺は、追う萩原との差を最大40秒にまで広げる。

通常ならば平坦区間で追いついておかないとゴールまでの登坂区間で追いつき追い越すのは難しい。與那嶺は上り区間へ入ったときも萩原との差を保ち、與那嶺が優勢状態でゴールへ向かう。しかし追う萩原はその差をアナウンスがあるたびに5秒ずつ縮めていく。そのアナウンスに会場は大きくどよめいた。

そしてゴール前に現れたのは萩原。なんと登坂区間で追い込み、ゴール前で逆転して優勝。満面の笑みでゴールする萩原に会場から大きな歓声と拍手が贈られた。破れた與那嶺は周囲に感謝の言葉を述べながらゴールラインを通過し、同じく拍手が送られる。会場にいたおそらく99%の人が與那嶺優勝を予想していたが、それを覆したのは萩原の体力と精神力、そしてかつて体得した追い込みのタイミング。

「かつて三浦さんのもとではまさに今日のような状況を想定してトレーニングをしていました。距離を見計らって差を詰めて、そして一気に抜き去るようなやり方ですね」と萩原。前チームの三浦恭資監督に、前に目標を置いて追い込む走り方の練習を繰り返していた。



8周目、追走する萩原麻由子(Wiggle HONDA)8周目、追走する萩原麻由子(Wiggle HONDA) photo:Hideaki.Takagi8周目、先頭の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)を追う萩原麻由子(Wiggle HONDA)8周目、先頭の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)を追う萩原麻由子(Wiggle HONDA) photo:Hideaki.Takagi
ラスト2.5km、先頭の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)に萩原麻由子(Wiggle HONDA)が近づいてくるラスト2.5km、先頭の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)に萩原麻由子(Wiggle HONDA)が近づいてくる photo:Hideaki.Takagi


萩原麻由子(Wiggle HONDA)が與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)をかわして優勝萩原麻由子(Wiggle HONDA)が與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)をかわして優勝 photo:Hideaki.Takagi優勝した萩原麻由子(Wiggle HONDA)

與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が周囲に感謝しながら2位でゴール與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が周囲に感謝しながら2位でゴール photo:Hideaki.Takagi最後は三浦さんが「勝てるぞ!目一杯行けー!」と応援してくれました。これで出場が決まっている女子のジロ・デ・イタリアをナショナルチャンピオンジャージで走ることができます。本当に嬉しいですね。

自分の勝ちパターンで優勝できたので、本当に良かった。私のキレが悪く、攻撃を仕掛けたものの吸収されることが多かった。集団には自ら動こうという選手がいなかったため、安心して集団内で脚を休めることができていました。

與那嶺さんがアタックした時には"ついに来たか!"と。追っても差が開く一方で半ば諦めかけたのですが、"これで負けたら仕方が無い"と逆に開き直って全力を出すことができました。最後は距離が縮まってきたので、これはいけるかな?と。

ナショナルチャンピオンジャージでヨーロッパのレースを走ることになりますが、本当に誇りに思いますし、向こうでも注目されるはず。でも日本王者だからといって特別扱いはされないので、これからもチームの大きな勝利に貢献していきたいですね。

昨年は力を落としてしまい、そこからの復調は自分でも感じているところ。昨年はプロとしての自覚が足りていなかったのですが、周りの一流選手から多くを学んできました。このままの調子をキープして与えられた仕事を120%こなし、結果として繋げていきたいですね。


女子エリート表彰女子エリート表彰 photo:Hideaki.Takagi


女子エリート結果
1位 萩原麻由子(Wiggle HONDA)
2位 與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)
3位 合田祐美子(早稲田大)
4位 上野みなみ(鹿屋体育大)
5位 崎本智子(ナカガワAS.K'デザイン)
6位 米田和美(Ready Go JAPAN)
7位 西加南子(LUMINARIA)
8位 樫木祥子(駒沢大)
9位 金子広美(イナーメ信濃山形)
10位 斎藤望(日本体育大)
3時間52分02秒
3時間52分15秒
3時間54分36秒
3時間54分37秒
3時間54分41秒
3時間54分45秒
3時間54分45秒
3時間54分52秒
3時間54分59秒
3時間56分37秒


text&photo:Hieaki.Takagi

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