昨年に続いての参戦ながら未だに勝てなかったランプレ・メリダ。大黒柱のポッツァートが失いながらも唯一のUCIプロチームとしての意地を見せ、ニッコーロ・ボニファツィオが集団スプリントを制し、プロ初優勝。富士山と伊豆で力を見せつけたポルセイエディゴラコールが総合優勝を果たした。



日比谷の公官庁街がスタート日比谷の公官庁街がスタート photo:Yuya.Yamamoto


不出走にも関わらず会場でファンサービスに努めたフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)不出走にも関わらず会場でファンサービスに努めたフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Yuya.Yamamoto1週間前に大阪・堺を出発したツアー・オブ・ジャパンはスタート時から人数を半分以下に減らしながら、ゴール地点の東京に到着した。前日の伊豆ステージで発生した大量の失格を受けてこの日出走できたのは僅かに41名。大きな期待を集めたフィリッポ・ポッツァート(イタリア、ランプレ・メリダ)、東京ステージを制した経験のある宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPO)や西谷泰治(愛三工業)も東京ステージを走ることは出来ず。雨の多い東京ステージにあって珍しく2年連続の晴天となったが、スタートラインは少し寂しい印象となった。

無数のビルが立ち並ぶ大都会を駆け抜ける無数のビルが立ち並ぶ大都会を駆け抜ける photo:Yuya.Yamamotoコースとなったのは官公庁街の中に位置する日比谷公園を出発し、旧海岸通りなどを走る14.7kmの移動区間を経て大井埠頭の周回コースへと入り、1周7kmのコースを14周回する毎年恒例の112.7km。周回コースに向かう途中のオーバーパスや運河に架かる橋こそあれどほぼフラットで、集団スプリントでの決着が通例となっているレイアウトだ。

序盤から積極的な走りを見せたインホン・ヤング(香港、OCBCシンガポール)序盤から積極的な走りを見せたインホン・ヤング(香港、OCBCシンガポール) photo:Yuya.Yamamotoスタートを前に日比谷公園には多くのファンが詰めかけ、選手と交流を楽しんだ。特に女性ファンの多さは例年以上で、自転車競技の人気の高まりを感じさせるものであった。また、前日でリタイアとなったにも関わらずポッツァートをはじめ多くのライダーが姿を見せ、ファンサービスに努めた。

ダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストン・アンカー)が先頭集団を牽引するダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストン・アンカー)が先頭集団を牽引する photo:Yuya.Yamamotoレースは定刻通りの11時にスタートが切られた。無数のビルがひしめき合う大都会を南へと進みながら、逃げを決めようと、集団からはアタックが頻発。周回コースに入ってなお、逃げ集団のメンバーが目まぐるしく入れ替わる展開に。

2周目に設けられた1回目のホットスポットは移動区間から積極的な動きを見せるインホン・ヤング(香港、OCBCシンガポール)、トム・モーゼス(イギリス、ラファコンドールJLT)、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)の順で通過した。

飛出しと吸収を繰り返した末、単独での逃げを決めたのはヤング。南から風が吹き付ける中を力強いペダリングでタイム差を拡大した。一方メイン集団はグリーンのリーダージャージを纏ったミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン)を先頭にタブリーズペトロケミカルが2名とのタイム差をコントロールする。

いったんは落ち着いたメイン集団ではあったが、先頭のタブリーズペトロケミカルに連日の疲れが見え始めてきた。そして残り9周になると、ホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)とダミアン・モニエ(フランス、ブリヂストン・アンカー)がメイン集団からハイスピードで飛び出す。



湾岸地域の高層ビルを背に走るメイン集団湾岸地域の高層ビルを背に走るメイン集団 photo:Yuya.Yamamoto


前日の伊豆で山岳賞ジャージを確定させたヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT)前日の伊豆で山岳賞ジャージを確定させたヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT) photo:Yuya.Yamamotoオールラウンダーながら、ここまで思うような走りが出来ていない日本チームの外国人2名は協調しながら1周もたたない間にヤングに合流した。

この後の2回目のホットスポット(6周目)はモニエ、ヤング、ビセンテの順に通過。先頭3人とメイン集団のタイム差は一旦20秒まで縮まったものの、モニエの気迫のけん引によって差が広がり始める。

リーダージャージを着ながらメイン集団の先頭で走るミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)リーダージャージを着ながらメイン集団の先頭で走るミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル) photo:Yuya.Yamamotoこの後も徐々にタイム差を拡大し、残り5周で45秒差まで広げることに成功する。一方メイン集団では、タブリーズペトロケミカルの隊列の後ろで待機していたランプレ・メリダから2名のライダーがペースコントロールに協力。ここからタイム差は徐々に減少し、集団スプリントによる決着の様相を呈してきた。

ランプレ・メリダとタブリーズペトロケミカルが協調してペースをコントロールするランプレ・メリダとタブリーズペトロケミカルが協調してペースをコントロールする photo:Yuya.Yamamoto逃げる3名は徐々にタイム差を縮められながらも、3回目のホットスポット(10周目)をホセ、モニエ、ヤングの順で通過。メイン集団はランプレ・メリダが先頭でペースを上げ、タブリーズペトロケミカル、ラファコンドールJLT、ドラパックの順にスプリントに備える。

ポイント賞ジャージを着用しながらもチームメイトが残っていないグレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)にとっては少々厳しい状況だ。

大井ふ頭に詰めかけた観客の熱気も高まる中、ジャンが鳴らされ、先頭3名のまま約10秒の差をもって最終周回へ。メイン集団からはラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)が単独で飛び出し、モニエらへの合流を図る。後方では逃げを吸収するためにランプレがペースアップ。その後ろにはラファコンドールJLTが構える。

そして、モニエ、ホセ、ヤングの長時間にわたる逃げは終演を迎える。ゴールゲートの反対車線側で先頭3名を飲み込んだメイン集団はランプレ・メリダ、宇都宮ブリッツェン、ドラパックと主導権を変えながら最後の直線に。



最終周回でメイン集団が先頭3人を捉える最終周回でメイン集団が先頭3人を捉える photo:Yuya.Yamamotoメイン集団からアタックしたラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)メイン集団からアタックしたラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック) photo:Yuya.Yamamoto

ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを制したのはニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを制したのはニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Hideaki.TAKAGI


優勝インタビューを受けるニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)優勝インタビューを受けるニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Yuya.Yamamotoホームストレートで先頭に踊り出たのはランプレ・メリダ。アンドレア・パリーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)の強力なリードアウトから解き放たれたニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)が残り200mからスプリントを開始。スリップに入ったグレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)を寄せ付けず、そのまま先頭でゴールに飛び込んだ。

4賞ジャージとステージ優勝者がそろい踏み4賞ジャージとステージ優勝者がそろい踏み photo:Yuya.Yamamotoレース後、「スポンサー、恋人、家族、チームメイト…僕をサポートしてくれるすべての人に感謝を伝えたい」と語ったボニファツィオは1993年生まれの弱冠20才。昨年ランプレ・メリダでデビューしたプロ2年目のスプリンターだ。前座の堺国際クリテリウム優勝、美濃ステージ2位と続いて、公式レースでの嬉しいプロ初勝利となった。

そして、ランプレ・メリダにとっても悲願の勝利となった。昨年唯一のUCIプロチームとして日本に乗り込んだものの、ステージ優勝を手にすることは出来ず。リベンジを誓った今年も、ここまでステージ優勝は無し。加えて前日にエースのポッツァートが足きりで失格になるというハプニングに見舞われ、苦しみながらもツアー・オブ・ジャパン初ステージ優勝を手に入れた。

総合上位勢は首位と同タイムでゴールしため順位に変動はなし。長時間にわたって集団をけん引するなど最終ステージでも積極的な走りを見せたポルセイエディゴラコールがリーダージャージを守りきって総合優勝。アジア屈指のステージレーサーの実力を日本でも見せつけた。

ポイント賞はコンスタントに上位ゴールを続け、東京ステージでは2位に入ったボーレ。山岳賞と新人賞はタブリーズペトロケミカルチームの攻勢に対抗し、富士山と伊豆2ステージを2位でフィニッシュしたヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT)が獲得している。



ツアー・オブ・ジャパン2014 第6ステージ東京結果
1位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
2位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)
3位 ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック)
4位 ジャック・ベッキンセール(オーストラリア、アヴァンティ)
5位 アンドレア・パリーニ(イタリア、ランプレ・メリダ)
6位 ベンジャミン・プラド(スペイン、マトリックスパワータグ)
7位 吉田隼人(日本、シマノレーシング)
8位 トム・モーゼス(イギリス、ラファコンドールJLT)
9位 鈴木譲(日本、宇都宮ブリッツェン)
10位 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックスパワータグ)
2h24'14"










個人総合成績
1位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカル)
2位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)
3位 ガデル・ミズバニ(イラン、タブリーズペトロケミカル)
4位 ホセ・ビセンテ(スペイン、Team UKYO)
5位 トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカーサイクリング)
6位 ヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT)
7位 アミール・コラドゥーズハグ(イラン、タブリーズペトロケミカル) 
8位 キャメロン・ベイリー(オーストラリア、OCBCシンガポール)
9位 ベンジャミン・プラド(スペイン、マトリックスパワータグ)
10位 増田成幸(日本、宇都宮ブリッツェン)
15h05'01"
+1'51"
+3'48"
+4'15"
+5'13"
+5'48"
+5'54"
+6'59"
+7'28"
+8'32"


個人総合ポイント賞
1位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニ・NIPPO)
2位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
3位 ジャック・ベッキンセール(オーストラリア、アヴァンティ)
65Pt
51Pt
41Pt


個人総合山岳賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT)
2位 ミルサマ・ポルセイエディゴラコール(イラン、タブリーズペトロケミカルチーム)
3位 アイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックスパワータグ)
32Pt
27Pt
15Pt


個人総合新人賞
1位 ヒュー・カーシー(イギリス、ラファコンドールJLT)

チーム総合成績
1位 タブリーズペトロケミカルチーム 
2位 チーム右京 
3位 ラファコンドールJLT 
45h24'59"
+19'25"
+21'08"



text:Yuya.Yamamoto
photo:Hideaki.TAKAGI, Yuya.Yamamoto

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