Jシリーズ開幕戦の後半は、箱館山に会場を移し、ダウンヒル競技が開催された。今年からマディソン・サラセンに所属し、海外レースを走る清水一輝が予選からトップタイムをマークし、完全勝利を飾った。



決勝のシングルを走る清水一輝(マディソン・サラセン)この直後、ワンハンドでジャンプを飛んだ決勝のシングルを走る清水一輝(マディソン・サラセン)この直後、ワンハンドでジャンプを飛んだ photo:Hiroyuki.NAKAGAWA
今期のチーム体制を見渡すと、まずは昨年のナショナルチャンプ、清水一輝がイギリスのチームであるマディソン・サラセンに移籍し、活動の拠点をヨーロッパに移した事が挙げられる。すでにチームに合流している清水は、ワールドカップ開幕戦の南アフリカと第2戦のケアンズに参戦、今回はケアンズから帰国したタイミングでの参戦となった。

コース中間部のドロップオフを飛ぶ清水一輝(マディソン・サラセン)コース中間部のドロップオフを飛ぶ清水一輝(マディソン・サラセン) photo:Hiroyuki.NAKAGAWAコースはゴンドラ山頂駅からしばらく下った位置にある岡の上からスタート、まずはペダリングセクションを進み、昨年使われた、右に進入する短いシングルトラックは今年はカット、連続するシングルを繋いでジープロードのつづら折れを下り、エキスパート・エリートクラスには後半のシングルが復活、最後は直線をペダリングしてゴールへ至る。

練習日は雨となり、マッドコンディションとなったが、決勝日は朝から晴れ。土質から路面の回復は早く、予選の頃にはドライとなった。この予選をトップ通過したのは清水一輝。2位には昨年の白山一里野大会で優勝した九島賛汰(玄武/Ninjya TV)が入ったが差は4.584秒。箱館山のコースでは圧倒的と言っても過言ではない大差をつけて決勝に挑んだ。決勝前の清水は「いつも通り、予選も全開で走りました。調子は良いし、勝てると思います」とコメントし決勝のスタートに向かった。

午後に開催された決勝でも、清水は他を寄せ付けない走りを決め、2位となった九島勇気に4.775秒の大差をつけて優勝。この決勝で最終走者だった清水は、多くの観客を集めた最終シングルのジャンプでワンハンドを決め、観客に勝利へのサインを贈る余裕すら見せた。

レース後の清水は「マディソン・サラセンチームはとてもきっちりとした、選手へのサポートも万全の素晴らしいチームです。結果を出す選手から順に、チーム内には明確な順序があって、今は女子で優勝を争えるマノン・カーペンターを最優先に、サム・デイル、マット・シモンズ、その後に僕という事になります。チームからは、今はとにかくがむしゃらに頑張れ!と言われていますが、だからと言って結果が出なくても怒られるような事はありません。」

「常に前向きに、次に頑張れば良いから、と言われます。その言葉の裏側に込められた意味はもちろん理解した上で頷きますが、スミマセン、申し訳ありません、と言うような雰囲気じゃないし、チームもそんな言葉を求めていません。そして、レース本番、スタートサポートの最後には「楽しんでこい!」と言って送り出してくれます。これはレースをやっていると忘れがちな事ですが、ストイックにワールドカップに参戦するライダー達も、楽しんでいないと結果が出ないよ!って事だと今は理解しています。」

「だから今日のレースは、まずは楽しんで、決勝でもシングルをワンハンドで飛びましたけど、それぐらいの余裕があるところを見せたかったからです。あとは結果として、優勝しましたっていうレポートをマネージャーに報告できるのが嬉しいです。それから、今年はなんとしても全日本のタイトルが欲しい。ナショナルチャンプのジャージでワールドを走りたいですからね。」とコメントした。

イギリスのグローバルチームに加入後、わずか2戦のワールドカップ経験、そこで迎えたJシリーズ開幕戦だったが、早くも清水には心境の変化が現れているように見えた。

ダウンヒル男子Top10、女子Top3に集まってもらったダウンヒル男子Top10、女子Top3に集まってもらった photo:Hiroyuki.NAKAGAWA
いよいよ開幕したJシリーズ、XCOは斉藤亮(ブリヂストン・アンカー)、末政実緒(ユニオールツールズ/ライテック)、DHIは清水の圧勝で幕を閉じた。現地で観戦したファンの多くは、三人の豪快な走りに魅了されたはずだ。しかし、一方でこの三人が挑戦しているワールドカップの舞台は、彼らの力を持ってしても簡単には完走を許されず、予選すら通過できないというレベルの中での争いが繰り広げられている。ケアンズに参加し、世界トップレベルで揉まれたきたばかりの三人が好走したJシリーズ。現在の世界と日本のレベルを比較するための、わかりやすい基準となったのではないだろうか。

今年も国内のトップライダーの多くがワールドカップへの参戦をスケジュールに入れている。上記の三人に加えて井手川直樹(ダビンチ・ストライダー)、永田隼也(アキ・ファクトリーチーム)、黒沢大介(トランジション/FUST)、井本はじめ(ラブバイクス)、九島勇気(玄武・ターナー)、加藤将来(ラブバイクス・アクセル)達がそうだ。国内Jシリーズの盛り上がりはもちろんだが、トップライダー達の成長にも期待しつつ、今後のJシリーズの結果に注目して欲しい。



J1びわ湖高島大会 DHI#1 結果
男子エリート
1位 清水一輝 (マディソン・サラセン)
2位 九島勇気 (玄武/ターナー)
3位 浅野善亮 (ジャイアント)
4位 青木卓也 (ジャイアント)
5位 井手川直樹 (ダビンチ/ストライダー)
6位 永田隼也 (アキ・ファクトリーチーム)
7位 九島賛汰 (玄武/NinjyaTV)
8位 阿藤寛 (コメンサル/トップノット)
9位 黒沢大介 (トランジション/FUST)
10位 浦上太郎 (トランジション/Cleat)
3:19.454
3:24.229
3:25.775
3:26.419
3:26.705
3:27.057
3:27.582
3:30.467
3:31.426
3:31.648


女子エリート
1位 末政実緒 (ダートフリーク/サラセン)
2位 中川綾子 (チームYRS)
3位 九島あかね (玄武)
3:54.326
4:02.067
4:15.845


photo&text:Hiroyuki.NAKAGAWA/SLm

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