ツール・ド・フランス閉幕から1週間後の8月1日、スペイン・バスク地方のサンセバスティアンで、第29回クラシカ・サンセバスティアンが開催される。コンタドール(スペイン)やバルベルデ(スペイン)が顔を揃えるこのプロツアー第10戦には、新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が初出場する。

ハイスキベルとアルカレが名物の若いクラシック

ビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアンビスケー湾の真珠と呼ばれるサンセバスティアン photo:Cor Vosレースの舞台となるサン・セバスティアンは、ビスケー湾に面した港湾都市。バスク語ではドノスティアと呼ばれ、公式な都市名はドノスティア・サンセバスティアンだ。フランス国境から僅か15kmしか離れておらず、国内外から多数の観光客が集まるバスク地方随一のリゾート地として知られる。

熱狂的な自転車ファンを有する同地域を代表するワンデーレースであり、真夏の太陽の下、バカンス中の観客たちが声援を送る。レースは「クラシカ(クラシック)」の名を冠しているが、今年で開催29回目と比較的その歴史は浅い。

クラシカ・サンセバスティアン2009コースプロフィールクラシカ・サンセバスティアン2009コースプロフィール image:uciprotour.comコースは港湾都市サンセバスティアンの街をスタート&ゴールとし、山がちなバスク地方の内陸部を駆け抜ける237km。合計6つのカテゴリー山岳が登場する起伏に富んだコースで、脚質的には登坂力に長けたクラシックレーサー向き。スプリント力に長けていたとしても、上りで失速すれば勝利は見えてこない。

中でも、ゴール38km手前の1級山岳ハイスキベル峠とゴール15km手前の2級山岳アルカレ峠が勝負を分つ重要なポイント。標高465mの1級山岳ハイスキベル峠は平均勾配5.8%・登坂距離7.8kmで、毎年ここから本格的なアタック合戦が始まる。最大勾配が8%に達するため、ここで集団は一気に縮小するだろう。

クラシカ・サンセバスティアン2009コースマップクラシカ・サンセバスティアン2009コースマップ image:uciprotour.com続く2級山岳アルカレ峠は平均勾配6.3%・登坂距離2.7km。標高は215mほどしか無いが、ここを越えるとゴールまで15kmしかない。ラスト10kmはほぼ平坦で、上りで飛び出した選手と、追い上げる集団のハイスピードバトルが繰り広げられるはずだ。

コースレイアウト的に大集団でのスプリント勝負に持ち込まれるケースは少ない。これまでの大会のほとんどが、複数名or小集団によるスプリント勝負で決している。栄えある優勝者には、バスク地方特有の大きなベレー帽が授与されるのが特徴だ。

昨年は序盤から46名の巨大な先頭グループが形成され、メイン集団に残った選手たちはタイムオーバーで失格になっている。先頭グループはハイスキベル峠でアタックが繰り返されたが決まらず、アルカレ峠で5名が先行。これに8名が追いつき、13名によるスプリント勝負をアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)が制している。

ツールで活躍した選手が勢揃い。新城幸也が初出場!

昨年大会で13名のスプリント勝負を制したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)昨年大会で13名のスプリント勝負を制したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos歴代の優勝者の中で、今年出場するのは昨年度の覇者バルベルデだけ。CONI(イタリア五輪委員会)から2年間のイタリア国内レース出場停止処分を受けたバルベルデは、ツールに参加せず、このサンセバスティアンでシーズン後半に向けて再始動する。

ツール期間中、バルベルデはブエルタ・ア・マドリッド(UCI2.1)で総合2位に入っており、大会連覇に向けてコンディションは上々。名アシストのホアキン・ロドリゲス(スペイン)は心強い存在だ。

パリで2度目のマイヨジョーヌを受け取ったアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)パリで2度目のマイヨジョーヌを受け取ったアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Makoto Ayanoツール総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)は、昨年9位のアイマル・スベルディア(スペイン)らとともに2週連続表彰台を目指す。3週間の疲労やツール後のハードスケジュールにより、そのコンディション&モチヴェーションは未知数だ。

地元バスク地方のエウスカルテルは、ブエルタ・ア・エスパーニャに照準を合わすサムエル・サンチェス(スペイン)と、ツール総合11位ミケル・アスタルロサ(スペイン)がエース。サンチェスは昨年7位、アスタルロサは2007年に6位に入っている。地元チームだけに下手なレース運びは許されない。

リエージュで独走勝利を飾ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)リエージュで独走勝利を飾ったアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosサクソバンクはツールで活躍したフランクとアンディのシュレク兄弟(ルクセンブルク)が暫定スタートリスト入り。リエージュで独走勝利を飾ったAシュレクの存在はライバルたちの脅威になるが、もう一人注目したいのが、昨年2位のアレクサンドル・コロブネフ(ロシア)だ。2007年ロード世界選手権2位のコロブネフは、今年のアムステル・ゴールドレース6位、リエージュ9位など、起伏のあるワンディクラシックにめっぽう強い。

上りでクライマーたちの攻撃を抑え込み、スプリント勝負に持ち込むことが出来れば、オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)やフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)、アラン・デーヴィス(オーストラリア、クイックステップ)にも勝算がある。

ツールを完走した新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が初出場ツールを完走した新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が初出場 photo:Makoto Ayanoしかし上りの厳しさから、スプリンターの登場回数は少ない。集団スプリントに持ち込むためには、逃げを封じ込めるチーム力が問われそうだ。

ジロ・デ・イタリア総合3位&ツール山岳賞獲得のフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)は、2006年10位&昨年5位。レースとの相性は良い。イタリア勢としては、ツールを欠場してフレッシュな状態のダミアーノ・クネゴ(ランプレ)の存在にも注目したい。

他にもシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)やキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア・HTC)、セルゲイ・イワノフ(ロシア、カチューシャ)ら、アップダウンコースを得意とする選手の動きには警戒する必要があるだろう。昨年のバルベルデを除いて、近年は優勝候補に挙げられない選手が優勝を掴み取る傾向がある。

そして、ツールを完走し終えたばかりの新城幸也(Bboxブイグテレコム)のレース初出場が決まった。ツールで逃げに乗れなかったユキヤが、パリから1週間を経て、今度はバスクの山々に挑む。Bboxブイグテレコムはトマ・ヴォクレール(フランス)とピエリック・フェドリゴ(フランス)のツールステージ優勝コンビも出場予定。特に少人数グループでのスプリントで力を発揮するフェドリゴの走りに注目だ。

シクロワイアードでは8月1日(土)22時45分からクラシカ・サンセバスティアンのテキストライブを開催予定です!

出場予定チーム(注目選手は暫定)
ケースデパーニュ(バルベルデ、ロドリゲス)
チームコロンビア・HTC(キルシェン、マルティン)
アスタナ(コンタドール、スベルディア)
リクイガス(ペッリツォッティ、ニーバリ)
クイックステップ(シャヴァネル、デーヴィス)
カチューシャ(イワノフ、ポッツァート)
サクソバンク(シュレク兄弟、コロブネフ)
サイレンス・ロット(エヴァンス、ファンデンブロック)
ラボバンク(フレイレ、メンショフ)
エウスカルテル(アスタルロサ、サンチェス)
ランプレ(クネゴ、バンディエラ)
ガーミン(ヴァンデヴェルデ、ミラー)
アージェードゥーゼル(ノチェンティーニ、エフィムキン兄弟)
コフィディス(ポリオル、ケルヌ)
フランセーズデジュー(カザール、ザルツバーガー)
ミルラム(ベリトス、ゲルデマン)
Bboxブイグテレコム(フェドリゴ、新城幸也)
フジ・セルヴェット(コーボ、デラフエンテ)
コンテントポリス(ガルパルソロ、バスケス)

クラシカ・サンセバスティアン歴代優勝者
2008年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2007年 レオナルド・ベルタニョッリ(イタリア)
2006年 シャビエル・フロレンシオ(スペイン)
2005年 コンスタンティーノ・サバリャ(スペイン)
2004年 ミゲルアンヘル・ペルディゲロ(スペイン)
2003年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2002年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2001年 ローラン・ジャラベール(フランス)
2000年 エリック・デッケル(オランダ)
1999年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)
1998年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)
1997年 ダヴィデ・レベッリン(イタリア)
1996年 ウド・ボルツ(ドイツ)
1995年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1994年 アルマンド・デラスクエバス(フランス)
1993年 クラウディオ・キャプッチ(イタリア)
1992年 ハウル・アルカラ(メキシコ)
1991年 ジャンニ・ブーニョ(イタリア)
1990年 ミゲール・インドゥライン(スペイン)
1989年 ゲルハルト・ツァドロビレック(オーストリア)
1988年 ヘルトヤン・テュニス(オランダ)
1987年 マリノ・レハレタ(スペイン)
1986年 イニャキ・ガストン(スペイン)
1985年 アドリ・ファンデルポール(オランダ)
1984年 ニキ・ルッティマン(スイス)
1983年 クロード・クリケリオン(ベルギー)
1982年 マリノ・レハレタ(スペイン)
1981年 マリノ・レハレタ(スペイン)