高校選抜ロードは最終周回でアタックした橋詰丈(昭和第一学園高)が独走で全国大会初優勝。女子は梶原悠未(筑波大坂戸高)が序盤から独走し圧倒、大会3勝目を挙げた。

3月20日から同23日まで福岡県北九州市と熊本県山鹿市で行われた高校選抜大会。トラックレースは小倉メディアドームで、ロードレースは山鹿市周辺公道コースで熱戦が繰り広げられた。
高校選抜大会は高体連所属校選手にとってはインターハイとともにトップレースであり、高校1年と2年(新2年、3年)が出場できる。ここでの成績は8月のインターハイに直結しその動向を占うこともできる。インターハイでの女子は現在、正式種目では無いため、女子選手にとっては貴重な全国大会でもある。

トラックレース優勝者
男子
スプリント 太田竜馬(小松島西高)
1kmタイムトライアル 栗本武典(敬愛学園)1分08秒055
3kmインディヴィデュアルパーシュート 阿部将大(日出暘谷・日出総合高)3分36秒688(予選時)
ケイリン 釘尾真幸(南大隅高)
スクラッチレース 池西拓海(栄北高)
ポイントレース 武智気吹(松山中央高)

女子

2kmインディヴィデュアルパーシュート 梶原悠未(筑波大坂戸高)2分37秒553 大会新記録
500mタイムトライアル 鈴木奈央(星陵)37秒696 大会新記録
スクラッチレース 梶原悠未(筑波大坂戸高)
ケイリン 鈴木奈央(星陵)
 
女子は短距離種目で鈴木奈央(星陵)が大会新記録を出すなど2冠達成。中距離種目は1年生の梶原悠未(筑波大坂戸高)が同じく大会新記録を含む2冠達成。梶原はスクラッチでスタートの号砲から逃げ切ってしまう圧巻の走りを見せた。


ロードレース

最終日に行われたロードレースを柿木孝之JCFロード部会員によるレポートでお届けする。

平成25年度全国高等学校選抜自転車競技大会レポート 
JCFロード部会員 柿木孝之

4周目のメイン集団4周目のメイン集団 photo:Takayuki KAKINOKI平成25年度全国高等学校選抜自転車競技大会ロードレースが熊本県山鹿市内の11.5kmの周回コースで行なわれ、男子はこのコースを7周する80.5kmで争われた。コースは途中登り区間1.2kmとゴール前に400mの登りを含むコース設定である。1.2kmの登り区間からゴールまでは下り区間と平坦区間が7kmほどある。
5周目の山岳賞手前で集団から抜け出しを図る橋詰丈(昭和第一学園高)5周目の山岳賞手前で集団から抜け出しを図る橋詰丈(昭和第一学園高) photo:Takayuki KAKINOKI
登りで引き離しても大きくタイム差を稼げる距離ではないこともあり、力だけではなく、攻撃を行なう区間と攻撃の仕方、攻撃のタイミングがポイントになるコースでもある。登りの得意な選手だけではなく、展開によってはスプリントの得意な選手にもチャンスのあるコースであり、優勝のチャンスは多くの選手にあると思われた。
5周目の登り、集団前方で動く孫崎大樹(北桑田高)、日野竜嘉(松山聖陵高)、岡部祐太(広島城北高)、野本空(松山工業高)、石上優大(横浜高)ら5周目の登り、集団前方で動く孫崎大樹(北桑田高)、日野竜嘉(松山聖陵高)、岡部祐太(広島城北高)、野本空(松山工業高)、石上優大(横浜高)ら photo:Takayuki KAKINOKI
レースは1周目の登りで優勝候補の石上優大(横浜高)が抜け出し、それに同じく優勝候補のひとり、小山貴大(前橋育英高)が合流し、集団に15秒から20秒の差をつける。厳しいレースになった場合の優勝候補の大本命2名のアタックに集団も一気に集団の人数を減らしながら一列で追いかける。

2周目の登り口で集団は先頭2名に追いつくが、さらに次の登りで石上が攻撃をかける。集団もペースを上げて、スタート時には180名いた選手が50名弱にまで絞られていく。3周目に入り集団は落ち着きをみせるが、集団はすでに40名も残っていない。

4周目から6周目は登り区間で橋詰丈(昭和第一学園高)が攻撃するが、石上、小山、日野竜嘉(松山聖陵高)、中本優司(奈良北高)、野本空(松山工業高)、孫崎大樹(北桑田高)といった登りが得意な選手が続き、集団は大きく崩れず、登りで分断されても下りと平坦でまた一つになるというのを繰り返して周回をこなしていく。
5周目登り、小山貴大(前橋育英高)、水谷翔(南大隅高)、須貝翔吾(取手一高)、古田潤(昭和第一学園高)5周目登り、小山貴大(前橋育英高)、水谷翔(南大隅高)、須貝翔吾(取手一高)、古田潤(昭和第一学園高) photo:Takayuki KAKINOKI
6周目の下り区間では、登りで分かれた集団が20名強の集団になるが、そこでの牽制からアタックもなく集団が2つに分かれる。野本、中本、日野、阿部将大(日出暘谷高)、中井唯晶(瀬田工業高)、當原隼人(与勝高)、岡部祐太(広島城北高)、古賀友康(鹿町工業高)の8名が抜け出す。
ラスト周回に入る先頭グループの9名ラスト周回に入る先頭グループの9名 photo:Takayuki KAKINOKI
それに単独で小山が追いつき9名の集団でラスト1周を通過する。後ろの集団とは10数秒離れたが、第2集団は石上が中心となりゴール地点の登りを使い12名の集団を引っ張り先頭集団は再び21名の1つの集団になる。

ラスト1周の登りでは前半から攻撃的な走りをみせつづけた石上が登り口から集団をふるいにかけるため先頭固定で牽き続けると20名の集団は崩壊する。登り中腹を超えたあたりで石上の後ろにただ1人つけていた橋詰が攻撃をかけるとその後ろは誰も反応できない。
ラスト周回へ、第2集団を引っ張る石上優大(横浜高)ラスト周回へ、第2集団を引っ張る石上優大(横浜高) photo:Takayuki KAKINOKI
ばらけた集団も少しずつ1つにまとまるが、その中では橋詰の1人逃げを認めず諦めずに優勝を狙う選手、ロードレース優勝よりチーム総合を狙う選手、2位狙いの最後のゴールスプリント狙いの選手が混在して牽制が入ったため、橋詰とのタイム差20秒が縮まらない。
逃げ切り勝利の橋詰丈(昭和第一学園高)逃げ切り勝利の橋詰丈(昭和第一学園高) photo:Takayuki KAKINOKI
下り区間、平坦区間でも差は縮まらず、ゴール前のラスト400m登り入り口でもまだ20秒のリードを保った橋詰がそのまま独走で優勝。2位争いはチーム団体総合のかかった北桑田高の孫崎と日出暘谷高の高橋優斗が激しく競り合い、孫崎が先着した。
2位以下は学校対抗総合成績の争いも。孫崎大樹(北桑田高)、高橋優斗(日出暘谷・日出総合高)ら2位以下は学校対抗総合成績の争いも。孫崎大樹(北桑田高)、高橋優斗(日出暘谷・日出総合高)ら photo:Takayuki KAKINOKI
高校選抜大会はトラック種目を含めた学校対抗の総合成績があり、今回はトラック終了時に総合上位校が僅差ということで、その学校対抗の得点争いがロードレースの展開にも影響を与えた。チーム総合得点も考えて走らねばならない選手もおり、この日のロードレースの優勝だけを狙う選手との意思とが合致しない場面が多くみられた。

その中で橋詰は得意分野の登り坂でのアタックを有効に生かし、登り区間で稼いだタイム差をゴールまでキープして優勝した。レースでは優勝を目指して選手は走るのであり、選手それぞれの脚質にあった戦い方を考える。9位となり入賞こそならなかった石上は、レース前半から自分が勝つためにレースを厳しくしようと動き、個の力でレース全体を大きく動かした。

ヨーロッパでのネイションズカップや世界選手権で勝負するためには自分自身で動くことが出来る能力が求められる。今回レースを厳しくしなければ優勝するチャンスはないと判断してレース前半から最後まで優勝するために攻撃を続けた石上の走りと力は評価できる。

女子は男子と同じコースを3周回で争われた。1周目の登りで梶原悠未(筑波大坂戸高)が攻撃をかけると、中井彩子(日向高)が反応する。ただトラック種目において個人追い抜き、スクラッチで圧勝している梶原のスピードは抜きんでており、すぐに独走が始まる。そのまま集団とのタイム差を拡げ続け優勝。2位以下の選手に力の差を見せつける走りをみせた。

結果
男子表彰男子表彰 photo:Takayuki KAKINOKI 女子表彰 優勝は梶原悠未(筑波大坂戸高)。2km個人追抜き、スクラッチレースとともに3種目優勝女子表彰 優勝は梶原悠未(筑波大坂戸高)。2km個人追抜き、スクラッチレースとともに3種目優勝 photo:Takayuki KAKINOKI
ロードレース男子 80.5km
1位 橋詰丈(昭和第一学園高校)2時間03分51秒
2位 孫崎大樹(北桑田高校)+12秒
3位 高橋優斗(日出暘谷・日出総合高校)
4位 直井駿太(取手一高)
5位 阿部将大(日出暘谷・日出総合高)
6位 沢田桂太郎(東北高)
7位 野本空(松山工業高)
8位 小山貴大(前橋育英高)
9位 石上優大(横浜高)
10位 日野竜嘉(松山聖陵高)

ロードレース女子 34.5km
1位 梶原悠未(筑波大坂戸高)1時間02分06秒
2位 鈴木奈央(星陵高)+1分52秒
3位 大谷杏奈(桜丘高)
4位 三浦涼香(桜花高)
5位 伊藤真生(東北高)
6位 中井彩子(日向高)
7位 元砂水咲美(榛生昇陽高)+2分27秒
8位 古山稀絵(昭和第一学園高)+2分35秒

photo&text:柿木孝之
edit:高木秀彰