ツール・ド・フランス第19ステージは、ゴール16km手前に設定された2級山岳レスクリネ峠を乗り切ったスプリンターたちの闘いに持ち込まれ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が圧巻の5勝目。スプリント最前線に絡んだ別府史之(日本、スキル・シマノ)がステージ7位に入った。

20名の強力な逃げグループが形成

アタックを仕掛けるカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)らアタックを仕掛けるカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)ら photo:Makoto Ayano総合争いにおいて重要な個人タイムトライアルとモンヴァントゥー頂上ゴールに前後を挟まれた第19ステージは、レース主催者の区分的には“平坦ステージ”。しかし2級山岳レスクリネ峠がゴールの16km手前に登場するため、集団スプリントには不向きだと思われた。

ティエリー・ウポン(フランス、スキル・シマノ)のファーストアタックで幕開けたレースは、アタックとカウンターアタックの応酬によって20名の先頭グループが早速形成される。

メイン集団をコントロールするラボバンクメイン集団をコントロールするラボバンク photo:Cor Vosこの先頭グループにはカデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)やシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)ら、“すでに総合成績で大きく遅れ、ステージ優勝に目標をスイッチしたオールラウンダー”が大勢入った。

タイム差を広げ始めた20名の逃げ切りが濃厚と思われたが、メイン集団はスプリンターチームがコントロールしたため、タイム差が3分を超えない。ラボバンクとミルラムの強力な集団牽引によって、タイム差は広がるどころか縮小を始めた。

タイム差が2分を切った残り67km地点で、先頭グループからデーヴィッド・ミラー(イギリス、ガーミン)ら5名がアタックして先行したが、スプリンターチームの追い上げには敵わず残り31km地点で全て吸収。逃げを全て飲み込んだメイン集団は、スプリンターチームを先頭に、2級山岳レスクリネ峠に突入した。

2級山岳で生き残ったカヴェンディッシュ

メイン集団のスピードを上げるラボバンク、サイレンス・ロット、ランプレメイン集団のスピードを上げるラボバンク、サイレンス・ロット、ランプレ photo:Cor Vosスプリンターチームがペースを作るメイン集団から飛び出したのはローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)。これに世界チャンピオンのアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)が合流し、先頭を2人で逃げる展開に。

ルフェーブルとバッランは10秒リードしてレスクリネ峠をクリアしたが、メイン集団の中にはカヴェンディッシュを始め、トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)やゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)らの姿が。この峠頂上からゴールまでは16km。メイン集団はスプリンターチームがスピードを上げた。

2級山岳レスクリネ峠で飛び出したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)とローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム)2級山岳レスクリネ峠で飛び出したアレッサンドロ・バッラン(イタリア、ランプレ)とローラン・ルフェーヴル(フランス、Bboxブイグテレコム) photo:Cor Vos降り始めた雨は路面を濡らし、下り区間でメイン集団からルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)が飛び出したが失敗。先頭のルフェーブルとバッランは10秒のリードを維持したままラスト10kmのアーチを通過したが、チームコロンビア・HTCとミルラムの集団牽引によってタイム差は縮まるばかり。

諦めずに逃げ続けたルフェーブルとバッランは結局ゴール1200m手前で吸収され、メイン集団はチームコロンビア・HTCを先頭にフラムルージュ(ラスト1kmアーチ)を駆け抜けた。

先頭でスプリントするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)、後方に別府史之(日本、スキル・シマノ)先頭でスプリントするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)、後方に別府史之(日本、スキル・シマノ) photo:Cor Vosメイン集団の主導権を握ったのはチームコロンビア・HTC。発射台を務めるヒンカピー(アメリカ)とマルティン(ドイツ)がカヴェンディッシュを引き連れ、その後方にフースホフトやチオレック、そして別府史之が続く展開に。

若干の上り勾配の最終ストレートでスプリントバトルが始まった。早めに仕掛けたカヴェンディッシュは力強いスプリントで後続を突き放してゴールへ。その後方では、有力スプリンターに混じって別府史之がスプリント。カヴェンディッシュが片手を突き上げるその後ろで、別府史之は7位でゴールに飛び込んだ。

片手を突き上げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)片手を突き上げるマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC) photo:Cor Vosカヴェンディッシュは第2、第3、第10、第11ステージに続く今大会5勝目。スプリント勝負に持ち込まれれば負け無しだ。この日はミラノ〜サンレモのチプレッサ(平均勾配4.1%・登坂距離5.6km)やポッジオ(平均勾配3.7%・登坂距離3.7km)よりも難易度の高い2級山岳レスクリネ峠(平均勾配4.1%・登坂距離14km)をこなして勝利を掴んだ。

第3ステージの8位を上回る好成績を残した別府史之は、自身2度目のトップ10フィニッシュ。激しいスプリンターたちのポジション争いに負けず、すでに3週間近く走っているカラダで7位に入った。名実共にトップ選手の仲間入りだ。

この日はスプリンターたちのスピードにより集団は分裂し、ステージ12位と13位の間に4秒のタイム差がつけられた。総合上位陣の中でステージ12位以上に入ったのは総合3位のランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)だけ。総合が動かないと思われた平坦ステージで、アームストロングは思わぬ4秒のリードを得た。

ツール・ド・フランス2009第19ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)3h50'35"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、サイレンス・ロット)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)
7位 別府史之(日本、スキル・シマノ)
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)
10位 マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン)
55位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2'01"

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)77h06'18"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+4'11"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+5'21"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+5'36"
5位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+5'38"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+5'59"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+7'15"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+10'08"
9位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)+12'37"
10位 ミケル・アスタルロサ(スペイン、エウスカルテル)+12'38"
116位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+2h40'52"
126位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+2h51'33"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)260pts
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)235pts
3位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)148pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)196pts
2位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)135pts
3位 ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)99pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)77h10'29"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+3'04"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+9'57"

チーム総合成績
1位 アスタナ 229h55'00"
2位 ガーミン・スリップストリーム +16'14"
3位 アージェードゥーゼル +23'45"

第19ステージ敢闘賞
レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)